黒柴スポーツ新聞

ニュース編集者が野球を中心に、心に残るシーンやプレーヤーから生きるヒントを探ります。

青木宣親日米2000安打で宮崎日日新聞がラッピング紙面~プルーブ・ユアセルフ・ライトの意味とは?

2017年6月12日(日本時間)にアストロズ青木宣親が日米2000安打を達成した。関連記事はいろいろ読んだが、青木宣親の好きな言葉が興味深かった。

 

「プルーブ・ユアセルフ・ライト(自分が正しいと証明しろ)」

 

カタカナで書かれていたので、見当を付けて英和辞典を引いてみた。

 

あった。

prove oneself  C = (自分が)Cであることを証明する

青木宣親の場合、「ライト(right=正しい)」を使っているから、自分が正しいということを証明する、となる。

 

社会人としてもかみしめたい言葉だ。過程も含め評価してくれる先生がいる学生とは違い、社会人は評価に値する結果を出し続けるしかないのだ。

さて、努力の結晶である2000安打ハンターを自任する黒柴スポーツ新聞編集局長は荒木雅博の地元、熊本県で発行される熊本日日新聞をゲット。偉業達成を報じる地元紙の手厚さを再確認した。

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引き続きアンテナを張っていた結果、青木宣親の出身地で発行されている宮崎日日新聞が出した、青木宣親の2000安打号外と記念のラッピング紙面(6月14日付)を入手できた。

 

サクッと写真でお見せしたいところだが、紙面写真を勝手にネットにアップするのはご法度だ。それにできれば実物を楽しみに見ていただきたいので(入手方法は後述)、文字でダイジェストをお届けする。

MIZUNO(ミズノ) 青木宣親選手 2000本安打達成記念フェイスタオル 12JRXA0200

MIZUNO(ミズノ) 青木宣親選手 2000本安打達成記念フェイスタオル 12JRXA0200

 

ラッピング紙面とは新聞1部を、1面から最終面まで文字通り「包んだ」もの。包んでいる紙面は、書籍のカバーのイメージだ。青木宣親の「表紙」は、打ってから駆け出す青木宣親の縦写真を左右見開きではなく上下展開で使っていた。なかなかダイナミックだ。

 

その裏面は左右見開き。青木宣親少年がいかにして一流打者になっていったのか、小学校時代から大リーグまでの写真を並べた「アルバム」形式だ。写真は全部で8枚使われている。宮崎県民および青木宣親ファン必見の紙面と言っていい。

 

8枚の写真の下には地元企業がお祝いの広告。青木宣親の出身小中高校PTA、放送局、プロ野球宮崎県人会のほか一般企業も含め幅広く広告が集まっていて地元感満載だ。

 

青木宣親は甲子園で名を馳せた訳でもなく、早稲田大学出身だが野球推薦で入れたら訳でもなく、プロ入り初年度から活躍できた訳でもなく、大リーグも華々しいデビューではなかった。史上初の2度目のシーズン200安打や、メジャーリーグの剛球対策、頭部への死球からのカムバック。青木宣親は2000安打を達成した日も3安打とサクサク安打を重ねたように見えてしまいがちだがまさに「プルーブ・ユアセルフ・ライト(自分が正しいと証明しろ)」を実践してきた。

 宮崎日日新聞もラッピング紙面では「青木選手2000安打達成おめでとう」という巨大見出しのほか、本紙1面の本人コメント、社会面の少年野球教室風景と、地元紙ならではの展開。「プルーブ・宮崎日日新聞・地元紙」といったところだ。

 

黒柴スポーツ新聞の取材により、このラッピング紙面の問い合わせ先が判明した。宮崎日日新聞読者局0985-26-9300です。1部180円。郵便振替用紙が同封されるので送料とともに支払う方式だそう。興味がある方はもう二度とない青木宣親2000安打ラッピング紙面をぜひ手に入れてください。スマホではあり得ない超特大サイズの紙面、なかなかです。

プロ初勝利の公文克彦の異常な勝負強さ~降雨ノーゲーム、けが、トレードにも負けず

日本ハム公文克彦が6月14日にプロ初勝利を挙げた。巨人が山口俊、マシソン、カミネロのノーヒットノーラン継投をしたからその調べものをしていて気付かなかったが、朝、新聞のインデックス見て気が付いた。

そして公文克彦の経歴をおさらいしていたら、実に勝負強いことに気が付いた。

1.史上初の2戦連続降雨ノーゲームを経て甲子園勝利

公文克彦高知高校出身。高知高校明徳義塾高校などと甲子園行きを争うのだが同時期には明徳義塾からホンダを経て楽天入りする石橋良太がいた。公文克彦明徳義塾に勝って見事甲子園切符を手に入れた。

しかし初戦の如水館戦は苦戦。3回を終わって0-2だったが雨のためノーゲームに。仕切り直しの試合も5-6と接戦だったが5回表にまた降雨ノーゲームに。いずれもリードしていた如水館には本当に気の毒だが「三度目の正直」で3戦目は高知高校が勝った。公文克彦は14奪三振の力投だった。降雨ノーゲームの是非はいろいろあろう。個人的には選手にも応援団にも負担の少ない京セラドーム開催案を提案しておく。

2.肩を痛めて伴侶をゲット

公文克彦高知高校卒業後、大阪ガスに入社。そして肩を痛めてしまう。ピッチャーには選手生命に関わる大ピンチだが、治療に訪れた先の看護師さんがどストライクだった。交際は順調だったらしく、公文克彦がプロ入り後に結婚した。これぞ災い転じて福となす、である。

3.大田泰示日本ハムにトレード

報道的には巨人のドラフト1位だった大田泰示日本ハムにトレードされたニュースだったが、2016年、公文克彦もセットで新天地、日本ハムへ。巨人では埋没感があったので個人的には非常に楽しみなトレードだった。
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何せ行き先が、投手をやりくりして勝つのがうまい日本ハム。ちょうど2016年は日本ハムが日本一に輝いている。栗山英樹監督や吉井理人投手コーチがどう公文克彦の良さを引き出してくれるかなあとワクワクしていた。2017年は2軍での調整もあったがすでに1軍で、巨人時代の15試合を上回る16試合に登板(6月14日現在)。プロ5年目で念願の初勝利を挙げた。古巣巨人戦でも好リリーフ。一緒に来た大田泰示日本ハムでブレイクしており、公文克彦も続きたいところだ。
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どうだろう。どれも運命の分かれ道だがすべてよい方向に進んでいるように見える。運もあっただろうがもちろんサイドスローへの転向など本人の努力があってこそだ。初勝利は延長での登板だったが三者凡退で切り抜けたことで味方の得点につながった。表現的には初勝利が「転がり込んだ」のだろうがここは野球の神様から公文克彦へのご褒美なり激励と受け止めたいところだ。

うまくいかないことは誰にでもある。だったら公文克彦のように「災い転じて福となす」を実践したらいい。抑えのピッチャーはすぐに次の登板があるから下を向いている暇もない。それは毎日仕事を頑張る社会人も同じだ。切り替えを上手にして、一緒に充実した毎日を過ごしましょう!

大田泰示のブレイクは巨人の恥なのか?~成長を認めない思考にうんざり

久々に他人事で腹が立った。大田泰示が移籍先の日本ハムで大ブレイクしたことを、広岡達朗が「巨人の恥」と評した。

恥?

あえて好戦的に年長者を一つの枠にとらえるが、どうして大ベテランたちは若手の頑張りを認めないのか? 成長を素直に認めることをしない人って何なんだろう?確かに編成上、芽が出なかった選手がトレード先で花開いたら「見る目がなかった」「育てきれなかった」という話になるのは仕方ない。しかし大田泰示が巨人にいたのは8年。さすがに、育てきれなかったとコーチばかりを責める年月ではない。そして大田泰示自身、コーチのせいにはしないだろう。

よくも悪くも毎年新戦力が入りスタメン定着が難しい巨人ならではの側面もあっただろうが、それはプロ野球の球団なら大なり小なりあること。他チームにも失礼な比較だ。

注目された古巣巨人との対戦中、大田泰示は驚異の10打数7安打2本塁打と大暴れ。何でできたかってそんなの意地に決まっている。巨人への恩返しの気持ちは偽らざるところだろう。そして今はファイターズの戦力になっているという自覚がある。意地と自覚があるから結果は出て当たり前だ。それを広岡達朗は、大田泰示がこのまま成長したら巨人の恥だ、という。なぜに大田泰示の奮起と評価できないのか。いい加減、トレードを悲哀を込めて語るのはやめたらどうか。もはや移籍、転職も珍しくない時代。一つの組織でコツコツ勤め続ける姿勢もカッコいいが、自分に合わない所に縛られ続けるのは不幸な話だ。

適材適所という言葉がある。早々レッテルを貼る前にその人がどこなら輝くことができるのか、本人の意向も含めて考えた方が組織のためにも本人のためにもなる。本人が特性を勘違いしている例があるかもしれないが、そういう時は得てして、だれが見ても分かる。それなら、異動したらいい話。

大田泰示松井秀喜の後継者とも目される期待の星だった。しかし巨人という土壌では芽が出なかった。それが北の大地に移り、いま芽が出始めている。巨人在籍8年でホームラン9本の男が日本ハム1年目の6月11日の試合を終えてすでに8本。うち2本が古巣から。大田泰示は自分の力でこのトレードを「成功」にしている。

だからこそ恥、なんて言葉は使わないでもらいたい。

大田泰示と一緒に日本ハムに移籍した公文克彦も先日の巨人戦で中継ぎとして登場。後続を絶った。大田泰示同様、かつての巨人ドラフト1位だった村田透は巨人戦に先発しプロ入り10年目で念願の初勝利。今のところ日本ハム入りした選手たちの方が戦力になれている。大田泰示は10日の巨人戦でのお立ち台で「ファイターズ最高」の決めぜりふのフリを受けるも「諸事情があるので」と固辞したという。これにはネット上でいい奴だな的な賛辞が。奇しくも古巣巨人は6月に歴史的な13連敗を記録しており、放出した大田泰示に「ファイターズ最高」なんて絶叫されたらそれこそ恥をかくところだった。逆に、大田泰示に気遣われた巨人も痛々しい。いや、この際恥も外聞もない。高沢秀昭音重鎮ばりに古巣に戻った例もある。どうせ巨人OBが恥をかくならば大田泰示の再獲得を提言したらいかがだろうか。まあ、熱くなった日本ハムファンが簡単には許してくれないだろうけど。
 
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柳田悠岐21試合連続安打をアシストした工藤公康監督の言葉とは

21試合連続安打で止まった柳田悠岐だが、ちょっと前までは不調で、ストライク、ボールの判定に不満を漏らすこともあったという。

 

 

すごく気持ちが分かる。うまくいかない時は当たりたくなる。何かのせいにしたくもなる。特に自分なりに頑張っているんだという自負がある時はなおさらだ。 しかし学生ならいざ知らず、社会人ともなれば思ったことをそのまま口にするのはスマートではない。発言の影響まで想像する力は必須だ。かくいう筆者も売り言葉に買い言葉的に地雷を何度も踏んでしまった。

 

発した言葉は自分に帰ってくる。ミスった時の「自打球」で悶絶する姿ほど痛々しいものはない。イライラしていた柳田悠岐球審の印象を害していたかもしれない。

 

新聞記事で読んだのだが、そんな柳田悠岐に送った工藤公康監督の一言にうならされた。

 「心穏やかに一日を過ごそう」 

そう、それがいかに大事なことか。 柳田悠岐ほどのバッターであれば技術をとやかくいう話ではない。心と技のバランスが大事だ。そこを工藤公康監督は突いた訳だ。

 

 

こういう指摘ができる上司や先輩ってカッコいい。ついつい「焦るな」と禁止のワードを伝えてしまいがちだ。そうじゃない。「穏やかに過ごそう」と「let's~」という、やってみよう的なアドバイスができる人は生き方そのものがスマートだ。

指摘の仕方は人間性が出る。「let's」の対局は「why」だ。なぜキミはできない?やらない?と畳み掛ける。ただでさえうまくいっていない人を追い詰めてもうまくいくはずがないのに。

確かに伸び悩んでいる人に毎回「let's」というのもしんどい話。そこまで懐は広くないよという声もありそうだ。しかし経験は少しずつしか積めない。まずは「丁寧に」事に当たる姿勢を徹底しないと、いずれ支障をきたす。

柳田悠岐の場合は経験があるから心技体のバランスさえ保てたら結果はついてくる。6月は冒頭8試合で7発と、ホームランを量産した。そしてあの歴史的なボテボテのサヨナラヒットまで出た。

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守っては6月10日にセンターからチャージして矢のようなバックホーム。刺せる自信があるから「(2塁ランナーは)3塁を回れ」とさえ思っていたという。そりゃ、刺せちゃうはずだ。

 

心の持ちよう一つで結果は変わる。それは技術力が確かな人ほど顕著だ。とかくストレスにやられがちな日常だけれども、まずは柳田悠岐のように心を穏やかに保つことで最良の結果を求めたい。

 

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荒木雅博2000安打を報じた熊本日日新聞紙面に感動~県出身5人目の快挙

熊本の知人と再会した。熊本と言えばこのほど2000安打を達成した荒木雅博の出身地。その話から知人が飲みながら「熊本って2000安打が5人くらいいるんで、結構スゴいんスよ」と言ったからさあ大変。

5人って?

荒木雅博は達成ほやほや。

前田智徳もまあまあ新しめ。

やっぱり定番は川上哲治
遺言 (文春文庫)

遺言 (文春文庫)

ここで止まってしまった。

伊東勤は2000安打に届かなかったんだよなあ。

石井琢朗?と思ったが栃木で大外れ。

疾走!琢朗主義

疾走!琢朗主義

広瀬叔功は広島だしなあ。

すると知人がスマホで探して「江藤慎一」。渋すぎる。「確か日鉄でしたよね」と返すと「知らないっす」とちびまる子ちゃんばりに顔にタテ線が入っていた。

江藤慎一―

江藤慎一―"闘将"と呼ばれた男 (名球会comics (3))

じゃあ最後の一人は?

うなっても全然出てこない。2000安打達成者だから絶対超有名人なのに……

悶絶していたら知人があっさり「あ、秋山」。秋山幸二を忘れていたとは……!

秋山引退記念―Hawks2002完全版

秋山引退記念―Hawks2002完全版

そして2000安打マニアにはたまらない、荒木雅博2000安打を報じる地元紙、熊本日日新聞をゲット!!!

確かに1面の見出しに「県出身5人目」と書いてあった。

全部の新聞をチェックしていないがおそらく1面は達成の事実を伝える記事、いわゆる内政面に横顔の記事、そしてスポーツ面には荒木雅博のサイドストーリー、というのが定番だろう。

熊本日日新聞もそうなのだが地元紙である上に荒木雅博の出身地、菊陽町もまた被災地であるため社会面でも荒木雅博の生き方を紹介していて、これがぐっときた。

社会面の記事によれば荒木雅博の実家は瓦は落ちるわ電気も水も止まるわで大変だった。親戚も被災した。町の家々がブルーシートで覆われているのを見て心を痛めた荒木雅博は被災地の支援活動をしたという。

荒木雅博が2000安打を打っても町の復興が急激にスピードアップするわけでもない。ただし荒木雅博はバッティングに関して非力なことを自覚しながらも努力努力で一流打者の仲間入りを果たした。この姿そのものが菊陽町への応援歌になっているはずだ。

こういう手厚い報道は地元紙の真骨頂。次の2000安打達成者が誰になるか分からないが、その時はまた地元紙がどんな紙面を作っているか見てみたい。

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中居正広の連敗巨人応援カツサンドからの巨人軍再建論

SMAPに好感抱いてなかったけど、中居正広は別。野球が好きだからこそ舞い込む仕事を熱烈にこなす。ジャニーズの肩書きに寄っ掛かっていないところがいい。

そして。中居正広は歴史的連敗のジャイアンツを慮り激励のメッセージとカツサンド数十人分を送ったという。スポーツ報知記事で見た。

キツイ状況でも応援するのが本当のファン。だから、筆者は巨人ファンながらあの暗黒時代も今も変わらず阪神に声援を送る虎党は本当に偉いなあと思っている。そういう意味では巨人ファンは久々にしんどかっただろう。
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あまりに負けたらファンが減ってしまう、と巨人OBの柴田勲が懸念していたが違和感を持った。ただ負けたからといってファンをやめるのはうわべだけのファン。愛がない。

そこはやはりあきらめずに必死のパッチで声援を送るとか、カツサンドを送るのが本当のファンだ。声援とカツサンドの後押しがあってついに巨人は13連敗でトンネルを脱した。

ずるずる負け続けたら高橋由伸監督の責任問題に発展しないかとヒヤヒヤしていた。長嶋茂雄ファンが42年前にやきもきしたように、ヨシノブファンもまたヒヤヒヤしていた。

とかく日本人は責任を取らせるのが好きだから今の風潮だと高橋由伸監督の連敗謝罪会見なんてものがセッティングされかねない。イギリスのメイ首相も過半数割れだから日本だったら即辞任だ。

野球界の伝統的パターンでは成績不振→休養→監督代行→新監督だ。休養というのがいかにも日本的。アメリカならトランプ氏の決めぜりふばりに「クビだ!」だろうに。巨人は15連敗していたら高橋由伸監督休養もあり得たかな、と想像していたところだ。だから連敗が止まった意味はすごく大きい。

トランプ自伝―不動産王にビジネスを学ぶ (ちくま文庫)

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一つ懸念があるのは高橋由伸がクールすぎることだ。阪神金本知憲監督は苦労人の岡崎が活躍したら抱き合って喜んでいた。ボスには品格が求められるが起死回生の活躍にはド派手なリアクションをしてもらいたい。そういう鼓舞の仕方があっていい。本当の信頼関係があれば、部下は上司を喜ばせたくなるものだ。
覚悟のすすめ (角川oneテーマ21 A 87)

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長嶋茂雄は燃える男だから球団史上初の最下位から優勝というリベンジができた。高橋由伸は秘めたる闘志はあれどそれをどうエネルギーに変えるのか。みんながみんな燃える男の時代はとうに過ぎた。それでもあえて地獄の伊東キャンプ的な荒療治をするのか、やらずにビジネス的にまた補強を繰り返すのか。高橋由伸監督が選ぶ再建策は興味深い。
長嶋茂雄語録 (河出文庫)

長嶋茂雄語録 (河出文庫)

個人的にはクールな高橋由伸監督が猛特訓を課せばこれまたクールな坂本勇人ら主力が一気に熱血軍団になるのでは、と期待している。歴史的連敗がただの黒星の羅列で終わるのか、つぎはぎ的な補強を繰り返すぜい肉体質と決別する分岐点になるかは、高橋由伸の双肩にかかっている。
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補強依存体質は巨人のアイデンティティー~13連敗は起きるべくして起きた

巨人のワースト13連敗が騒がしい。確かにつっこむべき話題。だがそんなにギャーギャー言いなさんな、と、巨人ファンという出自を明かした上で書いてみる。

巨人の結果が出ないと補強の失敗が糾弾される。2017年も森福允彦、山口俊、陽岱鋼が槍玉に上がった。が、巨人のFA選手の失速はもはや伝統である。

補強するから育成がなってない、となる。一理あるがそもそも巨人は補強ぬを繰り返して覇権を握ってきた。大昔は南海のエース、別所毅彦をぶんどった。手続きは異なるが、南海の系譜を持つソフトバンクからは杉内俊哉がFA移籍。歴史は繰り返されるのだ。
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だから補強ばかりしているから育成が弱いという話ではない。今は「どちらもうまくいっていない」のだ。

逆に両方上手くいってるのはソフトバンク。2016年は早々にマジックが点灯しながら優勝を逃し「世紀のV逸」とまで言われた。だから柳田悠岐の負傷と共にV逸の要因であった打の助っ人の不足をデスパイネ獲得で解消した。上林誠知も売り出し中だ。投手陣は千賀滉大の成長を筆頭に、東浜巨ら生え抜きが頑張っている。今は首位ではないが、和田毅武田翔太もいないのだ。むしろよくやっている。
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もちろん巨人の若手も頑張ってはいるのだろうが、プロスポーツは結果がすべて。WBCでブレイクした小林誠司も巨人に戻ったらまただりつが低迷。正捕手として確固たる地位は築けずにいる。
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優勝に生え抜きの力が欠かせないのは2016年の広島優勝からも一目瞭然。巨人では原辰徳政権下の優勝がそれだった。だから高橋由伸監督も生え抜きを徹底的に鍛えるしかない。

実は黒柴スポーツ新聞ではこのところ、伊東キャンプ記事が読まれているようだ。なぜ今なのか疑問だがもしかしたらファンは最下位から奮起して頂上を目指したあの頃の青いジャイアンツを待ち望んでいるのか? 投げ込み、振り込み、走り込みをすることで生まれ変わるしかあるまい。茂林寺の猛練習、地獄の伊東キャンプに続く第三の猛特訓が必要だ。
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とにかく巨人の選手はまず一つ勝って連敗の話題を沈静化しないといけない。13連敗はしたがまだ負け越しは10だ。13連敗より借金の数に目を向けなければならない。

小さい数字ではないが借金10を一つずつ返すしかない。生え抜きが頑張ればオフの補強も小幅で済む(結局やるんかい!と言われそうだが)。頑張らなければまた場当たり的な補強をしてぜい肉体質は改善されないままだ。

84年の歴史の中で最弱の巨人かもしれないが、批判は勝つことでしか払拭できない。池に落ちた犬は叩けとばかりに巨人はバッシングされているが、巨人を本気で怒っていいのは負けても負けても声を枯らして応援し続けているファンだけ。面白がってはやし立てる声は無視して、一人一人の選手にはやるべきことをやってほしい。一塁ゴロを阿部慎之助が捕って、ピッチャーにトスしてもベースをきっちり踏めないとか、カバーが遅れるとか、そういうプレーをしているうちは勝てない。

忖度と業務命令は紙一重~三原脩監督の小芝居を知りつつ燃えた稲尾和久

忖度は2017年の流行語になると見た。忖度とパワハラは紙一重、という話をしたい。

稲尾和久の「神様、仏様、稲尾様 私の履歴書」から大好きなエピソードを引用する。

神様、仏様、稲尾様―私の履歴書 (日経ビジネス人文庫)

神様、仏様、稲尾様―私の履歴書 (日経ビジネス人文庫)

完投した稲尾和久が翌日、グラウンドで体をほぐしていた。名将・三原脩監督が「お疲れ。今日はあがりだな」と声をかける。つまり、ベンチには入らないでいいよ、と。

説明ばかりだとただ写しているような引用になるので以下、今風のセリフで。

「どこで試合見んの?」
「記者席とか」
「じゃあベンチでも変わんなくね?」
「そうっすね」

勘のいい人はこの辺でエンディングが予想されると思うがまあしばしお付き合いを。

試合が進むと三原脩監督はわざわざ稲尾和久の近くに来て、考えごとをして、難しい顔をする。デキる稲尾和久はうすうす三原脩監督の演技を怪しんでいる。

西鉄の旗色が悪くなると三原脩監督はブルペンとやり取りして「ダメか、困ったな」なんて聞こえよがしにしゃべりだす。ハイハイハイ、とうなずくあなたも毎日お仕事お疲れさまです!

魔術師〈上〉―三原脩と西鉄ライオンズ (小学館文庫)

魔術師〈上〉―三原脩と西鉄ライオンズ (小学館文庫)

デキる部下の稲尾和久は「ボク行きましょうか?」とキャッチボールをやり出す。ただし前の日完投しているから肩はバッキバキ。でもだんだんほぐれてきて川崎徳次コーチから声が掛かる。「行っちゃってくれる?」
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お客さんから「待ってました」と声援が飛ぶと稲尾和久のハートは「油紙のように燃え出した」という。

そう、稲尾和久はうまく三原脩監督に操縦された。それは手なずけられたという意味ではなく、気持ちはそう遠くなかったという意味だ。稲尾和久の燃える気持ちを三原脩監督がうまく引き出した。そういう意味ではパワハラではない。

しかしもともとは休息日だから優しくはない。実際、「あがりでもピッチャーは敵を見て勉強した方がいいよね」的な打診を稲尾和久にしていた。これを稲尾和久はズバリ「これはもう業務命令だ」と書いているし、この項目のタイトルが「三原監督の業務命令」になっている。

そう、上司の「やれるか?」は「やれ」なのだ。「Can you?」ではなく「do!」というか。

ただし言われる人がエースと2軍選手ではまったく意味合いが違う。やれるか?とエースが聞かれた場合はガチでの相談。なんなら全権委任されるから続投も降板も自分で決められる。一方、2軍選手は「やれるか?」と聞かれてもまったく心配されていない。むしろやれよ的な。むしろなぜキミはやらないの的な。

結局上司と部下に信頼関係があれば忖度なのだが、単なる主従関係なら業務命令、その最悪バージョンがパワハラなのだ。稲尾和久の気持ちは「油紙のように燃え出した」のだからどのような関係かは分かるというものだ。

あなたは上司が三原脩監督ばりに小芝居を始めたらどうするだろうか? 稲尾和久のように忖度して「行きましょうか?」と先回りするか、業務命令とあきらめるか。別に忖度は悪い言葉ではない。筆者は上司というだけでへーこらするつもりは毛頭ない。むしろ意気に感じたら居残りでも早出でもできるタイプ。右肩上がりの成長が難しい世の中だからこそ、稲尾和久のように意気に感じて油紙が燃えるように働きたいものだ。
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柳田悠岐、飛距離15メートルのサヨナラ打~ヒットにABCはない

推定飛距離15メートル。それでもサヨナラヒットだ。柳田悠岐が魅せてくれた。

「ヒットにA、B、Cはない」

打球の感想を聞かれた柳田悠岐はそう説明してくれた。

そう、ヒットにAランクもBランクもCランクもないのだ。

社会人になると、ついつい体裁にこだわってしまいがち。しかし社会人だからこそ、大事なのは結果を残すことだ。

柳田悠岐が打席に入ったら「内野安打でも点が入る」と解説の秋山幸二が言っていたがその通りになった。確かにバットに当てさえしたら何かが起きる、かもしれない。とにかくつべこべ言わず打席に立たねば何も始まらない。

年を取ったら何かにつけてやらない言い訳をするのはなぜだろう。いい年して必死のパッチの姿を見られたくないからか。失敗した時のダメージが年々大きくなるからか。チャレンジしなくなるとどんどん腰が重くなる。
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ヒットにA、B、Cはない。柳田悠岐、名言だ。

それに引き換え巨人はどうしたことか。選手は必死にやっているのだろうがついに長嶋茂雄監督時代の1975年以来、42年ぶりの11連敗。ボテボテのゴロでも勝てる時は勝てるし、負ける時は負ける。もう開き直りしかないだろう。
野球は人生そのものだ

野球は人生そのものだ

まずは打席に立つ。そしてバットを振る。当たったらたとえファウルになりそうなボテボテのゴロでもとりあえず一塁に向かって猛ダッシュしてみる。あなたもまずはそうしてみませんか?

荒木雅博の「逆境からの2000安打」から学べること~下手な僕が打つことに意味がある

 2017年6月3日に、中日の荒木雅博が2000安打を達成した。プロ野球48人目。これまでの達成者の中でも苦労したグループに分類されるであろう荒木雅博の生き方は、フツーの人の励みになる要素が満載だ。

 

2000安打のうちホームランは33本だけ

 プロ野球選手ならそこそこ打てそうなホームランだが荒木雅博は通算33本しか打っていない。プロ入り時に前に打球が飛ばなかったらしいが、それを裏付ける数字だ。

 フツーは打球が飛ばない時点で挫折する。しかし右打ちを習得するなど小技を磨いたことが、逆に2000安打を近付けた。

 そう、フツーの人でもフツーの人なりにコツコツやればいいのだ。

スイッチヒッターに挑戦

 入団時の監督は星野仙一。「ものになる予感」はあったそうで、スイッチヒッターになることを助言したという。
 ただ、右でも打てないのに……という批評も受けた。
 確かにそうかもしれないが、フツーの人はそれでもやらねば一生フツーの人のまま確定。じたばたすることは意味がある

オープン戦の1打が転機

 やれることをやってみた荒木雅博もプロ6年目には右打ちに専念した。そしてあるオープン戦の日、右打席で放った1打で手応えをつかむ。
 2000安打達成後、思い出の1打を聞かれた荒木雅博は2000安打にカウントされないこの1打を挙げた。
 フツーの人はこういう不意に訪れる転機をものにしないといつまでも一皮むけない

代走と守りは自信があった

 荒木雅博は小さいころから運動神経が抜群だった。バッティングの非力さは自覚していたが代走と守備は自信があったそうだ。2000安打を達成するためにはまずたくさん試合に出ないと始まらない。
 フツーの人でも何かしら長所はある。仕事が遅いかもしれないが確実性はあるとか。コンスタントに結果は残せないがたまに爆発力を発揮するとか。リーダーシップはないけど調整能力があるとか。
 フツーの人は短所を直す以上に長所で勝負しないといけない。
 荒木雅博の俊足は生まれ持った能力だろうが、守備に関しては倒れるまでノックを浴びるなど猛特訓があった。
 そう、結果を残すためにはやるしかないのだ。

決められたことはやりきる

 アライバと称される鉄壁の二遊間を組んだ相方、井端弘和・現巨人内野守備走塁コーチによると、荒木雅博は「決められたことを最後までやるタイプ」だそうだ。
 継続は、続けるぞという意思なしにはできない。荒木雅博は2軍時代、山口県の駅で名古屋に向かう新幹線を待っていた時「逆方向の新幹線に乗ったら(実家のある)九州に帰れるのに」とすら思ったそうだ。
 別に自分の人生だから苦手なことから逃げまくってもいいと思う。ただし、事を成し遂げた人の本やら記事や番組を見る限り、苦難と反対方向の列車に乗り換えた人はいない。
守備の力 (光文社新書)

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いつも不安だらけ

 荒木雅博は22年もプロ生活を送りながら「不安だらけ」「自信を持ってやれたことがない」という。
 確かに自信はあった方がいい。だが不安だからこそ、やっておける準備はある
 うまくいかない前提から準備しておけば、ピンチの時もあたふたしない。
 だから不安を感じるということは、決して悪いばかりではない。
 もっとも、荒木雅博の言う不安は、準備を何もしないで毎回「不安です」というのとは次元が違うので、額面通りに受け取ってはいけない。

次の目標は400盗塁

 2000安打を達成したら荒木雅博が燃えつきてしまわないか不安になる。
 しかしもう1つ、400盗塁という目標があるそうだ。
 目標がある限り、人は頑張れる
 400盗塁は過去7人しか達成していない価値ある記録だ。
 かつてのライバル、赤星憲広が「足は衰えていない」と言っていたから残り24という数字も無謀ではない。
 ただし荒木雅博は「勝ちにつながる盗塁」がしたいそうだ。2017年の中日は低空飛行が続いているが、荒木雅博が400盗塁に近づくほど、チームは上向いているということ。チーム全体でこの金字塔を目指してほしい。
 

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デキる人はランナーを進めない~早慶戦で指摘された「防げた失点」

無駄な失点は防げる、という話をしたい。
 
5月28日の早慶戦、3回表の慶応の攻撃中だった。解説者の一人、應武篤良さん(元早稲田大学監督)が「深いですね」と早稲田大学の外野守備を指摘した。ノーアウト2、3塁。ワンヒットで2点入りかねない。
斎藤佑樹と歩んだ1406日

斎藤佑樹と歩んだ1406日

 

 「内野は前進守備です」。内外野で意思の疎通ができていないことを應武篤良さんは指摘した。確かに内野が「1点もやらないぞ」と前進守備を敷くのなら外野も前進して、3塁ランナーは無理でも2塁ランナーは返さない。それがチームワークだ。

 

バッターの慶応大学の清水翔はセンター前にタイムリーを放った。センターは前に出てきて捕球しバックホームするもセカンドランナーは刺せなかった。
 
それどころか打者走者に2塁を陥れられてしまった。すかさず應武篤良さんが「(深く守ってたのなら)セカンドに行かせちゃいけない」と苦言。そう、センターはセカンドランナーを刺さないならセカンドに返球することで、タイムリーを単打にしなければならない。
 
打者走者が2塁に行くと、もう一人の解説者の鬼嶋一司さん(元慶応大学監督)が「(慶応大学は)チャンスですよ」と色めき立った。棚からぼたもち的なチャンスをものにすることで、相手のダメージを増幅させることはできる。ボクシングで相手がバランスを崩した時にタイミングよくパンチを繰り出せば、一気にダウンを奪えるのと同じ理屈だ。
さすが鬼嶋一司さん。「流れ」を重視する解説はいつ聞いていても面白い。

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 結局このセカンドランナーは3塁に進み、犠牲フライでホームに帰ってきた。早稲田大学の内外野が意思の疎通を図って前進守備を敷いていたら、防げた失点だった。

 

この日の試合は早稲田大学がひっくり返し、目の前の胴上げは阻止した。だからこの三回の守備のミスは致命的とは言えないのかもしれない。だが前進守備でバッテリーがどこまで内野ゴロを打たせる配球をしたかも含め、レベルアップのために振り返ってほしいシーンだ。 
早稲田大学野球部 (B・Bムック)
 

 野球に限らず、周囲と意思の疎通を図らないと、こういうムダが生じる。

 
理想を言えば外野は内野に言われなくても守備陣形を整えたい。ここは1点もやりたくないから前進守備だろう、と。それが本当の意味での意思の疎通だ。
 
ピッチャーとキャッチャー。セカンドとショート。内野と外野。打者と走者。野球ではいろいろなコンビネーションが求められる。意思の疎通をはかっておけば、失点は防ぐことができ、得点はしやすくなる。

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 仕事も同じ。人がやることだからミスは防げない。だからこそ常に次善の策を考えるくせをつけたいもの。不利な時こそ、次の失点につながるランナー(ピンチ、不確定要素)を得点圏に進めさせてはいけない。仕事がうまくいかない人、あるいはうまくいかない時というのは常に得点圏にランナーを背負っているようなものだ。いつも焦ってばかり。そして手元が狂う。

 
そうならないためにも周囲と協力して、ランナーに進塁させない用心が必要だ。周りの「仕事ができる人」を見ていれば分かる。その人は決してランナーに無駄な進塁をさせない。そして円滑な人間関係を構築している。
 
失点しない生き方が一番いいが、何かにチャレンジする限りミスはつきもの。である
なら次なる失点を防ぐ守備陣形をとればいいだけだ。それは意識さえすればできる。
 
野球のよいところの一つは、相手から1点でも多く取りさえすれば勝つことだ。川崎徳次なんかホームランを8本も打たれながら完投勝利したのだ。完璧な人なんていない。ならば1点でも相手を上回るため、最善の策を取ろう。「防げる失点」は、ある。

奪三振率そろそろイニングあたりに変えないか?~藤川球児が日本最速1000奪三振で野茂英雄超え

2017年5月30日、藤川球児が日本最速の1000奪三振を記録した。771回と3分の2での到達。あの野茂英雄の871回より100イニングも速い。いかに藤川球児が飛び抜けているかが分かる。

 

 

だが一点、腑に落ちない。奪三振率の計算方法だ。ネットでサクッと検索しただけだが以下の算式らしい。

奪三振率=奪三振数×9÷投球回数

 

こういうものは簡単に直せないとは分かっている。だがこの「×9」というのは何とかならないものか。「×9」で分かるように、そもそも奪三振率とは「1試合あたりで何個三振がとれるか」という率なのだ。

 

確かに野茂英雄なら先発して完投というのがしっくりくる世代。藤川球児は先発した時期もあるが抑えとして一時代を築いた選手だ。だから9回を投げていくつ三振を奪えたかと言われてもイメージがわきにくい。

 

試しにNPBの歴代最高記録の「奪三振」リストを見てみた。

 1 金田正一4490

 2 米田哲也3388

 3 小山正明3159

 4 鈴木啓示3061

 5 江夏豊 2987

 6 梶本隆夫2945

 7 工藤公康2859

 8 稲尾和久2574

 9 三浦大輔2481

10 村田兆治2363

 

この猛者たちは確かに先発完投型である。だから「×9」したくなるのは分かる。1000奪三振到達のスピードと通算奪三振数は次元が違う話と承知はしているがまあたくさんとれる人はそれなりの速さなのだろう。このレジェンドの中に三浦大輔が入っているのはちょっと意外だったがコツコツやったことの証だろう。

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しかしプロ野球も進化をとげている。いまだに先発完投型投手を想定している沢村賞があったり、イニングを長く投げる先発がエライ風潮があるが、今日のプロ野球では中継ぎ、抑えの存在価値は増すばかりだ。いつ出番があるかもわからず、登板しなくてもブルペンで肩をつくることを考えれば決して軽んじられるポジションではない。

 

それに追撃を断ち切る意味でも三振を奪ってほしい時に奪える守護神は頼もしい限り。狙ってとるのだから奪三振一個あたりの価値は試合序盤よりもあると言っていい。

 

なので藤川球児プロ野球最速1000奪三振はもっと注目してもらいたいし、ストッパーの存在意義を高めるためにも奪三振率は「奪三振数÷投球回数」というシンプルな算式に変えたらどうだろうか。これなら1イニングあたりでの比較ができるから、先発だろうが抑えだろうが関係はない。

 

1000奪三振時点で比較すると藤川球児野茂英雄はこうなる。

藤川球児 1000÷771.6=1.296

野茂英雄 1000÷871  =1.148

 

藤川球児野茂英雄超えを「何とも思っていない。(野茂の方が)全然上ですよ」と謙虚に話していた(新聞記事より)という。偉ぶらない藤川球児、何とさわやかだろうか。1000奪三振目は藤川球児も一時在籍した高知ファイティングドッグス出身の角中勝也からだった、というのも面白かった。

 

ちなみにNPB在籍時に限られるが、歴代奪三振数トップ100のうち、奪三振数が投球回数を上回っているのは杉内俊哉野茂英雄の2人だけである。

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早慶戦1イニングで先発に代打を送った大久保秀昭監督~攻め時ならばカードを切るべし

東京六大学野球は5月28日、早稲田大学対慶応大学で早稲田大学が勝ち、立教大学が1999年秋以来18年ぶりの優勝を決めた。黒柴スポーツ新聞編集局長は法政命なのだがEテレ解説の鬼嶋一司さん(元慶応大学監督)ファンなのでテレビ中継を見ていた。

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この日も選手をくささないさわやかな鬼嶋節がさく裂。慶応大学キャッチャーの郡司がショートバウンドの投球を身を挺して捕るたび「その後の動作がいい。何気ない動作だが(ピッチャーに)安心感を呼ぶ」「マスク越しの笑顔がいい」「そうやってピッチャーとの信頼関係がつくられていく」と賛辞を惜しまなかった。

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 決して不必要に熱くならない「静」の鬼嶋一司さんに対し「動」なのが應武篤良さん(元早稲田大学監督)。気迫を出すプレーに心を動かされるタイプ。この日も「敵チーム」ながら、ピンチの局面でのファウルフライに向かってダイビングキャッチを試みた慶応大学の4番・岩見に対して「気持ちが表れてる。チームを鼓舞するファイティングポーズだ」と絶賛していた。

 

きょう扱うネタは慶応大学の2回の代打について。まだ2回なのに慶応大学の大久保秀昭監督は先発の菊地に代打を送ったのだった。鬼嶋一司さんは「思い切った作戦。攻めの姿勢だ」と評価していた。應武篤良さんは「5回を3点に抑えてこいというのであればもう少し投げさせただろう」と振り返っていた。慶応大学にしてみれば早慶戦早稲田大学に敗れた瞬間、優勝が消滅する。一戦必勝の姿勢が超早めの投手交代になった。應武篤良さんは同じ監督経験者なので「大久保監督の気持ちは痛いほど分かる」と言っていた。常に勝負せざるを得ない。それが伝統校を預かる監督なのだろう。

 鬼嶋一司さんもこの日の慶応の戦い方について「9回を戦おうとしてはだめ。そのイニングを戦う積み重ねが9回(になる戦い)でいい」と言っていたので大久保秀昭監督の作戦を否定はしなかった。が、当然早め早めの継投にならざるをえなくなったわけで、後半の投手交代がやや間延びしたようにも思えた。

 

結果的に慶応大学の高橋亮吾が早稲田大学の代打・福岡に逆転3点タイムリーを喫したのだが低めの変化球はよく沈んでおり「あれを打たれたのは仕方ない」と鬼嶋一司さんも應武篤良さんも言っていた。スコアは6-12と大差がついたが勝負は紙一重だった。なので大久保秀昭監督の超早めの先発降板は「あり」。アグレッシブな戦法はだいたいハイリスクなのだ。

神宮へ行こう

神宮へ行こう

 

 プロ野球ももっとこういうアグレッシブな采配が見たい。野村克也氏も最近言っていた。今のプロ野球には「采配の妙」というのがない、と。監督の手腕で勝つという試合が少ない、と。高校野球みたいに一球一球打者がベンチを見るのは好きじゃないが、きょうはこう勝つんだこう戦うんだという姿勢を指揮官であれば見せてほしいと思う。野村克也氏が言うには今は投手交代においても100球だとか6回まで7回までという「プランありき」になっているから「誰が指揮してもそう変わらない=つまらない」のだそうだ。

 

慶応大学は負けてしまい優勝も逃したが初回先頭バッターがいきなりヒットで出るとか先ほど書いた岩見のダイビングとかアグレッシブなプレーはあったので負けたことは残念がるとは思うがある程度は納得できるのではないか。やはり手元にカードがあるのであれば温存するよりここぞという時にスパッと切れる決断力と行動力がほしいものだ。なのできょうは大久保秀昭監督の大胆采配に出合えてちょっとうれしかった。

 

大久保秀昭監督はプロ野球近鉄に在籍していたし、社会人のJX-ENEOSでの指揮経験もあり日本一を3度勝ち取っている。一発勝負の厳しさを知っているからこその采配にも思えた。

 

あなたは手元にカードがあったら、できるだけ温存しておきたい派ですか? 出し惜しみせず切る派ですか?

 

これまで温存派だったが年々アグレッシブになってきた筆者。特に震災以降はいつでも死ぬ可能性があるならチャンスを逃したくないと考えるようになった。というわけで今度の旅行の時は旅行先からさらに遠方の知人に会うべく足を延ばす作戦を検討中だ。会いたい人には会える時にあっておかないと、「次」はいつになるか分からない。そうやって人は年を取っていく。

 

とっておきのカード、あなたもサクッと切ってみませんか?

宮里藍の電撃引退から考える引き際の美学~小林繁、掛布雅之、赤星憲広…阪神選手の引退は衝撃大⁉

プロゴルファーの宮里藍が電撃引退する。スポニチ記事に服部道子による宮里藍の評があり、興味深く読んだ。

いわく、宮里藍はほかの選手が飛距離を出しても、自分も飛ばさなきゃ、とはならない。持ち味であるショットの正確さやコースマネジメントで相手を上回り、結果的にプレッシャーをかけられるという。

素晴らしい。思わず反省した。黒柴スポーツ新聞編集局長はつい周りと自分を比べてしまう。劣っていたら追いつけ追い越せでやってきた。

それも悪くはなかろうが、「持ち味がある人ならば」それを伸ばすのは手だ。せっかくの武器を使わない手はない。

同じ日に野村萬斎の記事(女性セブン)も興味深く読んだ。6月3日公開の映画「花戦さ」にからむインタビュー。野村萬斎は戦国時代の華道の人、池坊専好を演じている。

野村萬斎いわく、人間という花は美しいものも毒があるものもある。それぞれ精一杯生きていたらそれでいい、という。

深い。毒がある植物や雑草なんて意味あるの?なんて思ってきた。が、存在価値は他者がどうこう言うものでもないというのは確かにその通り。逆に生物学的には存在価値ありありなのだろう。

一点だけ言いたいのは、毒がある人の存在価値。ないとは言わないが、その毒素によって迷惑する人は確実にいる。自分の毒素で自分自身の評価を下げる人もいる。何ともったいないことか。そういう毒草は刈り取られても文句は言えまい。

さて、野球界に目を転じれば近年、ドーム球場の恩恵か長く活躍する選手が多くなっている印象だ。250ホームランを記録した井口資仁もまだまだやれそう。言い換えれば、電撃引退するプロ野球選手が少なくなった。

電撃引退の選手がいたなという印象は阪神が強い。小林繁掛布雅之赤星憲広。ヒーローインタビューで前代未聞の引退表明をした新庄剛志阪神出身だった。

 

赤星憲広はけがのダメージがひどかったようだからやむを得ず、なのかもしれないが、電撃引退した人に共通するのは一時代を築いた名プレーヤーなり、職人気質がある人という点だ。

分析してみたが、きっと自分の「できるイメージ」と「実力」のギャップの差に我慢ができないのだ。イメージしたように打てない、投げられない、守れない。それができないならやめた方がましだ、と。

筆者はやれるならぼろぼろになるまでやる選手が好きだが、一方で「散り際の美学」を持った人にも引かれる。惜しまれつつやめるか、少ない可能性を最後まで求めるか。難しい選択だが、それだけに引退とはドラマチックだ。

最初宮里藍の引退を知った時ひょっとしたらおめでた?と思った。まだまだプレーできそうだから外的要因なのでは、と。しかしそうでないのなら例の名人気質がそうさせたのかな、と。思うようにプレーできないのならやめたほうがいい、と。

先に引退表明した浅田真央の場合は燃えつき感が見え隠れしていた印象だから宮里藍とは違うように思える。一体本人の口からどんな説明が聞けるだろうか。

アスリートの電撃引退はショッキングではあるけれど、ひとつの生き方として肯定してあげてほしいと全くの第三者ながら思っている。

 

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つながった三つの連続~則本昂大の6試合連続2けた奪三振と鳥谷敬の連続試合出場と藤井聡太四段のデビュー以来19連勝

則本昂大(前回「昴」と間違い、大変失礼しました)が2017年5月25日、野茂英雄に並ぶ6試合連続2けた奪三振を記録した。黒柴スポーツ新聞は6試合連続いけるぞと記事を書いていたが本当になるとうれしいものだ。というかフクザツな心境だ。パ・リーグではホークスを応援しているからだ。

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筆者は前日に顔面死球を受けた鳥谷敬の動向が気になりラジオで阪神ー巨人戦を聞いていた。スポーツナビ鳥谷敬の代打出場を確認して、連続試合出場が継続されたのを知ってほっとした。野球選手のフェイスガード姿は初めて見た。宮本恒靖を思い出した。鳥谷敬に強い出場意欲があったのだろうがまずは阪神が勝っていないと代打でも出にくかっただろう。負けていての代打起用ならいかにも記録更新目当ての出場に見えてしまうからだ。そういう意味での阪神の先制点は大きかった。

伝統の一戦も終盤になった時、則本昂大についてのリポートがあり、「あと2イニングで三つ三振を奪えば野茂英雄に並ぶ」とアナウンサーが途中経過を伝えた時、正直ビミョーだなと思った。6人で三つ、とは簡単ではない。

 

だがあらためて則本昂大の姿を思い知った。なんと残り2イニングのうち最初の8回にさっさと3者連続三振に打ち取ってしまった。

 これぞプロ。あと6人の中から三つ三振を取ればいいという考えでは実は成功への確率が低くなる。目の前のコイツを料理する。凌駕する。そんな気持ちの積み重ねが6試合連続2けた奪三振につながったとみた。

 そして21時からNHKニュースを見ていたら将棋の藤井聡太四段がまた勝ってデビュー以来土つかずの19連勝を飾ったと報じていた。 羽生善治をも倒しており実力は折り紙付き。まだ中学2年生というから末恐ろしい。ニュースでは「澄んだ目」で戦局を見ているという評があった。

 

藤井聡太四段に変な先入観がないことが強さの要因なら、今後も「業界はこういうもんだ」的な変なアカにまみれないでほし。いと思う。誰もがフレッシュマンであったはずなのに、純粋な心と入れ替えに経験と知識を手にするのであれば、それはちょっと悲しい。

 

藤井聡太四段は純粋に勝ちたいと思っているかもしれないが、鳥谷敬則本昂大も、記録継続は意識していたに違いない。やはり骨太の記録は意思がないと続かない。「怖さも痛さも全然ない」という鳥谷敬はえらいなあと思う。代打での出場はサードゴロだったが一塁まで全力疾走したら鼻も揺れてさぞ痛かっただろうに。

 

監督が衣笠祥雄鳥谷敬に次ぐ連続試合出場歴代3位の金本知憲というのも追い風だろう。出られるのなら出ろよと言ってくれるだろう。部下の気持ちが分かる上司の存在はありがたい。

覚悟のすすめ (角川oneテーマ21 A 87)

覚悟のすすめ (角川oneテーマ21 A 87)

 

 阪神で連続試合出場といえば三宅秀史にも触れておかねばならない。金本知憲に抜かれるまで882試合出場、700試合連続イニング出場の日本記録保持者。同僚の小山正明が試合前にキャッチボールをしていたボールが三宅秀史の目を直撃。大記録が思わぬ形で途絶えてしまい選手としての輝きも失せてしまった悲劇の人。そう、主人公が悪くなくても大記録はいつ途絶えてもおかしくないのだ。三宅秀史について興味がある方は「哀愁のサード 三宅秀史」をぜひご覧ください。

哀愁のサード三宅秀史

哀愁のサード三宅秀史

 

 そう考えると連続記録は本人の「努力」と継続への強い「意思」と、そして「運」があって成しとげられるんだなと実感する。順番としてはまずこれをやるんだという強い気持ちを持ち、それに見合う努力をして、あとは運に任せる。これが一番だ。則本昂大鳥谷敬藤井聡太四段。どこまで記録を伸ばせるか興味津々だし、途切れた時にどんなコメントを残すのかも今から気になっている。

記録にまつわる話はこちら

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