黒柴スポーツ新聞

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黒田博樹引退表明の夜に敢えて加藤健論~第3の男が意地を見せ戦力外通告に

加藤健戦力外通告を受けた。巨人ファンにしかピンと来ない話題だろう。小林誠司、実松に次ぐ第3のキャッチャーだから試合に出られないことの方が遥かに多い。かといっていなければもしもの時はキャッチャー不在となる。ぶっちゃけ保険なのである。


ディスイズ、プロ野球プロ野球は平気で一人の人生を潰す。加藤健はプロ生活18年だが正捕手のシーズンはない。正捕手ではなく控えとして重宝されて長いキャリアとなった。細く長くと、短くとも彗星のように光を放つのと、どちらが幸せだろうか。


加藤健は18年で通算185試合出場。59安打。単純平均で年間10試合。それでも雇われるところが加藤健の魅力であり価値である。


野球にはポジションが九つある。このうちのどれを選ぶか、またはやらされるかで歩み方が違ってくる。有能な同僚がいたら自分が出られないのだ。


そこから脱出する方法は二つ。相手を上回る魅力を身に付けるか、自分が変わるかである。


プロ野球の世界、特にキャッチャー業界では力ずくで世代交代が行われる(首脳陣の方針も含めて)。勝てなくなったり、打てなくなったり、刺せなくなったりしたら交代。だが裏を返せばどれもできていればスタメン捕手は変わらない。


最も犠牲になったのは野村克也と同時代の南海の捕手。プロ野球記録大鑑には野村克也にチャンスを摘み取られた控え捕手が取り上げられている。22年間に38人が野村克也の同僚になったが100試合以上出られたのはたった2人。22人は1試合もマスクを被れなかったという。泣きそうだ…


加藤健阿部慎之助との競争に勝たねばならなかった。しかし無理だった。加藤健じゃなくとも2000安打が射程圏内の阿部慎之助を上回るキャッチャーはなかなかいないだろう。


阿部慎之助のコンディションを考え、また世代交代を促すべく巨人は小林誠司を一本立ちさせようとしている。阿部慎之助がファーストに回っても加藤健が正捕手とはならなかった。長打力も打率が高い訳でもない。もっとも加藤健にはこれまで与えられたチャンスが余りに少なかったのだが。


じゃあ正捕手がのほほんとしていられるかと言えば逆。巨人V9時代の森昌彦、西武黄金期の伊東勤も何人もの挑戦を退けその座をまさに死守してきた。プロ野球でレギュラーを維持するのは並大抵ではないのである。野村克也に葬られた捕手のことを先ほど書いたが野村克也もまた努力を続けたということだ。


関連画像として加藤健のカードを持っていないか探してみた。だが心当たりの時期の選手のセットが入ったファイルにはなかった。野球選手は活躍しないとカードにしてもらえない。チームごとのセットもあるので巨人ファンで熱心なカードコレクターなら加藤健のカードを持っているかもしれないが。


加藤健とはそういう選手である。だが控えには控えのしんどさがある。スタメンではないから出番がいつか分からない。抑えや中継ぎ、代打なら試合展開からそろそろお声が掛かりそうだと読めるがキャッチャー、しかも正捕手の交代は希。下手したら死球、自打球、捕球時のけがなどアクシデントによるもの。さらに言えば加藤健は第3のキャッチャーだから第2のキャッチャーに代打が送られた後に出場するなど、さらに読めないのである。


これを10年以上やったのだ。単純に試合にも出たかっただろうと思う。そう、それが今回戦力外通告に至った一番の理由ではなかろうか。


引退すれば球団内にポストが用意されていたとも聞く。加藤健はそれよりも現役続行の可能性を求めた。ゆえの戦力外通告。ヤクルトの田中浩康と同じパターンである。違うのは加藤健が第3の男という点だ。田中浩康ベストナインにも輝いたバリバリの1軍選手なのだ。
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第3の男ではあるが今、キャッチャーは絶対的な選手が少ない。ソフトバンクも最終的には細川亨が出てきたが高谷が正捕手になれたとは言えない。西武の炭谷銀二朗あたりが移籍を模索すれば競合しそうだ。加藤健もひょっとしたらオファーがあるかもしれない。

BBH2013追加 EP炭谷銀仁朗(西武)

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18年プロの飯を食うだけで十分すごいし、どうでもいい選手ならとっくに整理されるから加藤健は球団内で評価されてきたのだろう。だが加藤健にしてみればオレはまだ何もやっちゃいないと言いたいのだ。組織にいる=仕事をしている、ではない。


加藤健が待機することが巨人の危機管理だった。だから加藤健は出場しなくとも仕事はしていた。だが仕事とはその人にしかできないことをして初めて仕事。誰がやっても同じことは作業なのだ。


果たして第3の男が新天地で仕事をすることができるのか。そもそも新天地が見つかるのか。世間的には黒田博樹の引退表明で持ちきりの夜、敢えて加藤健の記事。これからもユニークな視点を大切にしていくのでぜひ皆さんの第3の暇つぶしメディアにしていただければ幸いです。
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きょうの1枚は小田幸平加藤健と同じく控えキャッチャーだったが中日に移籍した。とっくに巨人ブランドはあせているし、であるならプロ野球選手なら試合出場を模索するのは当然。輝けないのはその人に原因があるばかりでなく、環境とのミスマッチかもしれない。各球団は選手が最後まで悔いなく過ごせるよう、構想外になった選手もトレードなどで可能性を引き出してあげてほしい。
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