早慶戦1イニングで先発に代打を送った大久保秀昭監督~攻め時ならばカードを切るべし
東京六大学野球は5月28日、早稲田大学対慶応大学で早稲田大学が勝ち、立教大学が1999年秋以来18年ぶりの優勝を決めた。黒柴スポーツ新聞編集局長は法政命なのだがEテレ解説の鬼嶋一司さん(元慶応大学監督)ファンなのでテレビ中継を見ていた。
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この日も選手をくささないさわやかな鬼嶋節がさく裂。慶応大学キャッチャーの郡司がショートバウンドの投球を身を挺して捕るたび「その後の動作がいい。何気ない動作だが(ピッチャーに)安心感を呼ぶ」「マスク越しの笑顔がいい」「そうやってピッチャーとの信頼関係がつくられていく」と賛辞を惜しまなかった。
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決して不必要に熱くならない「静」の鬼嶋一司さんに対し「動」なのが應武篤良さん(元早稲田大学監督)。気迫を出すプレーに心を動かされるタイプ。この日も「敵チーム」ながら、ピンチの局面でのファウルフライに向かってダイビングキャッチを試みた慶応大学の4番・岩見に対して「気持ちが表れてる。チームを鼓舞するファイティングポーズだ」と絶賛していた。
きょう扱うネタは慶応大学の2回の代打について。まだ2回なのに慶応大学の大久保秀昭監督は先発の菊地に代打を送ったのだった。鬼嶋一司さんは「思い切った作戦。攻めの姿勢だ」と評価していた。應武篤良さんは「5回を3点に抑えてこいというのであればもう少し投げさせただろう」と振り返っていた。慶応大学にしてみれば早慶戦で早稲田大学に敗れた瞬間、優勝が消滅する。一戦必勝の姿勢が超早めの投手交代になった。應武篤良さんは同じ監督経験者なので「大久保監督の気持ちは痛いほど分かる」と言っていた。常に勝負せざるを得ない。それが伝統校を預かる監督なのだろう。
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鬼嶋一司さんもこの日の慶応の戦い方について「9回を戦おうとしてはだめ。そのイニングを戦う積み重ねが9回(になる戦い)でいい」と言っていたので大久保秀昭監督の作戦を否定はしなかった。が、当然早め早めの継投にならざるをえなくなったわけで、後半の投手交代がやや間延びしたようにも思えた。
結果的に慶応大学の高橋亮吾が早稲田大学の代打・福岡に逆転3点タイムリーを喫したのだが低めの変化球はよく沈んでおり「あれを打たれたのは仕方ない」と鬼嶋一司さんも應武篤良さんも言っていた。スコアは6-12と大差がついたが勝負は紙一重だった。なので大久保秀昭監督の超早めの先発降板は「あり」。アグレッシブな戦法はだいたいハイリスクなのだ。
プロ野球でももっとこういうアグレッシブな采配が見たい。野村克也氏も最近言っていた。今のプロ野球には「采配の妙」というのがない、と。監督の手腕で勝つという試合が少ない、と。高校野球みたいに一球一球打者がベンチを見るのは好きじゃないが、きょうはこう勝つんだこう戦うんだという姿勢を指揮官であれば見せてほしいと思う。野村克也氏が言うには今は投手交代においても100球だとか6回まで7回までという「プランありき」になっているから「誰が指揮してもそう変わらない=つまらない」のだそうだ。
慶応大学は負けてしまい優勝も逃したが初回先頭バッターがいきなりヒットで出るとか先ほど書いた岩見のダイビングとかアグレッシブなプレーはあったので負けたことは残念がるとは思うがある程度は納得できるのではないか。やはり手元にカードがあるのであれば温存するよりここぞという時にスパッと切れる決断力と行動力がほしいものだ。なのできょうは大久保秀昭監督の大胆采配に出合えてちょっとうれしかった。
大久保秀昭監督はプロ野球の近鉄に在籍していたし、社会人のJX-ENEOSでの指揮経験もあり日本一を3度勝ち取っている。一発勝負の厳しさを知っているからこその采配にも思えた。
あなたは手元にカードがあったら、できるだけ温存しておきたい派ですか? 出し惜しみせず切る派ですか?
これまで温存派だったが年々アグレッシブになってきた筆者。特に震災以降はいつでも死ぬ可能性があるならチャンスを逃したくないと考えるようになった。というわけで今度の旅行の時は旅行先からさらに遠方の知人に会うべく足を延ばす作戦を検討中だ。会いたい人には会える時にあっておかないと、「次」はいつになるか分からない。そうやって人は年を取っていく。
とっておきのカード、あなたもサクッと切ってみませんか?