黒柴スポーツ新聞

ニュース編集者が野球を中心に、心に残るシーンやプレーヤーから生きるヒントを探ります。

出会いをいかに生かすか~取手二高の名将木内監督とエース石田そしてリリーフ柏葉

人生に一度だけ、ワンポイントリリーフを頼めたら……そんなことを考えた。本棚で「永遠の一球: 甲子園優勝投手のその後」 (河出文庫)を見つけた。石田文樹。取手二高で全国制覇したピッチャーの物語を読んだ。名将・木内幸男監督が亡くなった後であるだけに、今読む価値があるように感じた。

高校野球ファンなら基本のキだろうが年齢的なものもあり、私は取手二高の記憶がリアルタイムでは、ない。記録映像が頼りで、石田文樹は太めの眉で平たい顔という印象だ。そして確かプロ野球にも入ったとうっすら記憶していた。が、その程度だったから、この本の石田の章を先入観なく楽しめた。取手二高の快進撃を、試合進行を詳しく交えながら知りたい方はYouTubeとの併用をおすすめする。1984夏の甲子園取手二高が優勝するのだが、初戦(2回戦)は強豪の箕島高校。雨でぬかるんだグラウンドも味方して、取手二高は逆転勝ちする。3回戦は福岡大大濠、準々決勝は鹿児島商工、準決勝は鎮西。そして決勝はPL学園との対決となった。

石田は肩を傷めていたため、その穴を埋めたのは二番手の柏葉だった。映像で見るとソフトバンクの嘉弥真をさらにアンダースローにしたような、いわゆる変則投法のピッチャーだったが、この柏葉の存在が石田を、そして取手二高を支えることになる。

木内マジックには二つの意味があり、一つは人心掌握。もう一つが大胆な作戦である。人心掌握は、やんちゃぞろいの個性派軍団の取手二高野球部をまとめたことが知られている。木内監督は部員に自覚を求めるため1週間休みを与えるも、「レギュラーに休みを与えたが、補欠が休んでいいとは言っていない」として、補欠に退部を求めてしまった。これに部員は猛反発。練習のボイコットに発展したが、吉田剛主将(のち近鉄阪神YouTubeで見ると顔が元中日井端にクリソツ)は「補欠のことを監督に認めてもらおう」と提案して反発は沈静化。団結力が高まり甲子園での快進撃へとつながっていく。もう一つのマジックは作戦面で、決勝の9回裏に同点ホームランを喫し、さらに後続に死球を与えた石田をライトに下げ、柏葉をマウンドへ。1アウトを取ると再び石田をマウンドに上げた。「永遠の一球: 甲子園優勝投手のその後」でも、別の映像でも、石田の降板時と再登板時の顔つきが見違えるように好転したと紹介されていた。

石田文樹が死球を与えた次の打者は左打者。そこに変則左腕の柏葉を当てられるところが取手二高の強さなのだろうが、変に「エースと心中だ」などと覚悟を決めるのではなく、一打逆転負けの場面でエースを降板させてワンポイントリリーフをした上で、再び石田文樹の闘志に懸ける。この「信じる心」が延長での勝ち越し劇につながったのだと思う。そして石田のガッツはもちろん称賛されることなのだが、しびれる場面で、送りバントとはいえきっちり1アウトを取った柏葉(と素早く二塁に投げて走者を封殺したキャッチャー中島も)は素晴らしい。本当に苦しい時に助けてくれる仲間がそばにいるかどうか。人生の分かれ道だと思う。

柏葉というワンポイントリリーフを得た石田文樹は甲子園優勝投手となった。だが、伸び伸び野球で才能を開花させた石田も伝統の早稲田大学野球部ではなじめなかったのか、1年もたずに退部となった。理由は詳しく語られていない。その後入れた日本石油ではよき先輩に恵まれて持ち直しプロ入りを果たすが、ドラフト5位で入った大洋では25試合の登板に終わった。通算1勝。現役生活6年よりずっと長い14年、打撃投手を務めた。しかし、ガンに冒され、41歳で旅立ってしまった。治療の際にも復帰を見据えて右肩への処置を回避したくだりには、石田の投手としての気概を感じた。さすがにガンに対するワンポイントリリーフは願えるわけもなく、石田は天に召されてしまった。

取手二高を卒業後、石田と木内監督がどのような関係だったかは知らない。もう天国で二人は出会っただろうか。YouTubeで流れていた木内監督のコメントでは、甲子園で優勝したことをひけらかさないような生き方を選手に求めていた。石田に優勝投手としての変なプライドがあったら打撃投手は引き受けなかったようにも思う。公立高校・取手二高の快進撃を支えたエースと名将。そして陰で支えたワンポイントリリーフの柏葉。人生はいかに出会いに左右されるかを、あらためて感じた。

見出しに笑いと感動を~社会人野球・四銀、JR四国の「銀行員から駅員」継投に学ぶ

【社会人野球】銀行員から駅員への“継投”で四国勢43年ぶり8強! 四国銀行が初の都市対抗「2勝」
Full-Countの記事の見出しだ。銀行員から駅員。なんのこっちゃと思うかもしれないが、それこそが編集者あるいは記者の術に思えた。社会人野球の都市対抗野球で、四国銀行が強豪パナソニックを破り、初の8強入りした。四銀の先発菊池から、補強選手であるJR四国の山本への継投。だから「銀行員から駅員」なのだった。

 

ま、こういう説明をつらつらするとオシャレではなくなってしまうのだが、事情を知っている読者からすると「ん!うまい!」となるし、社会人野球に明るくない人が見たら「ン?何だ?」となる。今はみんな忙しくて、ネット上に情報があふれていても自由時間の奪い合い。よほど面白い、あるいは興味をそそる記事でないとクリックされないし、最後まで読まれない。記者や編集者は興味を持ってもらえるような工夫が必要だ。

 

そうやって記事を読んでもらうことが、今回の記事で言えば四国銀行野球部やJR四国野球部への応援につながる。見出しを付ける、というのはそのくらい責任重大であるとともに、同じくらい超楽しい作業でもある。同じ記事でも紙の新聞に載せる場合とネットに出す場合は、見出しの付け方を変えないと、というのはそうなのだろう。だが、紙の新聞の見出しこそ、もっとネットの世界に学ぶべきだと感じる。戸別配達もあるが駅やコンビニで選んで買われるスポーツ紙はその辺り、本当に努力のあとが見える。素晴らしい。ネットの見出しも工夫を感じる。選ばれるためには心を動かさねばならないのだから。もっと見出しに笑いと感動を。「銀行員から駅員」の見出しから、そんなことを考えさせられた。

ヘッドスライディングは惜別の言葉だったのか~ソフトバンク長谷川が移籍検討

スマートニュースのプッシュ通知、だったと思う。ソフトバンク長谷川の文字が見えた。移籍検討(日刊スポーツ)。「えっ!!」思わず声が出た。FA権の行使を考えているようだ。確かにソフトバンクは若手の台頭が著しい。とはいえ、長谷川勇也自身はまだまだやれる腹積もりだろう。実際、今年京セラで放った代打満塁ホームランなんかを見ると、現役バリバリである。何故のFA宣言かと言えば、そこは試合出場を模索してのことだろう。

FA宣言が本当ならば、それはいつから考えていたのだろうか。日本シリーズが始まる前か。だとしたら、あの第3戦で見せた鬼気迫るヘッドスライディング、そして感情むき出しの悔しがり方が少し違って見えてくる。あれはひょっとすると、最後にもう一度ファンの期待に応えたい、そんな気持ちの表れだったのかもしれない。そう深読みしたくなるほど心を打つヘッドスライディングだった。事実、そのことをつづった回は、このブログ「黒柴スポーツ新聞」史上最多のシェアを獲得。あらためて長谷川勇也の根強い人気を実感した。セカンドゴロの記事が140回以上シェアされる人もそうはいるまい。

長谷川にしてみたら、内川聖一のこともFAの判断に影響したのではないか。内川クラスでさえ1軍に呼ばれない。長谷川だって常時1軍にいられたわけではなかった。2021年、長谷川勇也が第2の内川になる可能性は、この日本シリーズ4連勝を見れば十分あり得るとだれもが思うだろう。試合に出られない恐怖、寂しさ。これは経験した人にしか分かるまい。一方で長谷川自身、まだまだやれる手応えがあるからこそのFA宣言だろう(まだしてないが)。私はソフトバンクファンになったきっかけがクライマックスシリーズで長谷川が涌井秀章から放った起死回生のタイムリーだから、もし長谷川がソフトバンクを離れるとしたら感慨深いものがある。しかし、現役を続けてもらうことの方が大事だから、必要とされる限りその卓越した打撃センスとストイックさをいかんなく発揮してもらいたいと思う。もちろん、ソフトバンクにはここ一番の必要な戦力だから、最大限の引き留めはしてもらいたい。どちらにせよ私は長谷川を応援するつもりだ。

日本シリーズ4連覇の余韻に浸る間もなく、長谷川の移籍検討&加治屋来季構想外&小久保ヘッドコーチ就任&森3軍監督就任&藤本2軍監督就任とビッグニュースてんこ盛りのソフトバンク。われわれにはゴールがない、前進あるのみという王会長の言葉が象徴的だ。進化し続けるソフトバンク日本シリーズ4連勝がすぐ過去のことになるくらい、このチームは恐ろしいスピードで前に進んでいる。

頼れるのは己れの力~平石コーチ、松本裕樹、岩嵜翔。それぞれのリベンジマッチ

よかったな、と思う。ソフトバンクが4年連続で日本シリーズを制したから? それはもちろんだが、私は3人の男のことを考えていた。平石洋介コーチ、松本裕樹、そして岩嵜翔。巨人との日本シリーズ第4戦は、彼らにとってのリベンジマッチとなったのだった。

 

まずは平石洋介コーチ。2019年に楽天クライマックスシリーズに導きながら、監督を事実上更迭された。生え抜きであり策士でもある平石監督を、ソフトバンクファンの私は厄介に思っていたのだが(バスターでサヨナラされたりダブルスチールを仕掛けられたこともある)、楽天は三木監督を選択。追い出される格好の平石コーチをソフトバンクは招き入れた。このことは以前コラムに仕上げたが、解任扱いされた自分を評価してくれた平石コーチは相当うれしかったのではと想像した。で、1年後どうなったか。平石コーチは最強軍団の一員として日本一の歓喜の輪の中にいた。一方の楽天はBクラスに転落し、三木監督は2軍監督に降格。まさに倍返しである。平石コーチが常勝ソフトバンクという勝ち馬に乗ったと見られなくもないが、平石コーチは川島慶三の4番起用を進言してくれたので、川島慶三フリークとしては満足している。きっと陰でいろんな策を講じてくれていたに違いない。

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次に、松本裕樹。日本シリーズ第4戦では先発和田の後を受けてリードを保ったまま最強中継ぎ陣につないだ。松本にとっても悔しい開幕となった。先発ローテに入ったのは二保旭で、松本ではなかった。2軍生活を経て8月に昇格するも、直後のロッテ戦で1イニングに2発のホームランを浴びてマウンドにしゃがみこんでしまった。チームは2点リードを守れず、ロッテが勝利。この頃はマリンで呪われたように勝てず、一番苦しい時期だったが松本裕樹も同じだっただろう。その男がシーズン終盤には中継ぎで安定感を得て、見事日本シリーズの戦力に。力強いストレートで巨人をねじ伏せた。さっき気が付いたが第4戦の勝ち投手は松本裕樹だった。一時期サイドスローまで模索した松本は見事に結果を出した。

最後に岩嵜翔日本シリーズ第4戦の中継で、マウンドの岩嵜を見て池田親興が感慨にふけっていた。開幕当初は逆転満塁ホームランなど手痛い一発を何度も浴びて、先の見えない2軍調整を余儀なくされた。その投手が日本シリーズの勝ちパターンで登場するなんて……。そう、終盤の12連勝で、ぶっちぎりのイメージを持たれるが2020年のソフトバンクはめちゃくちゃ苦しい時期があった。その一因は岩嵜の不調であり、7回を任せられるピッチャーの不在であった。岩嵜は何とか終盤にチームに合流し、球速もコントロールも戻ってきた。またもや満塁ホームランを打たれて13連勝を逃したこともあったが、優勝できた今となってはドラマの一つと消化できよう。からの、日本シリーズだけに池田親興は感慨にふけっていたというわけだ。

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それぞれ歩みは異なるも、結局は自分の力で這い上がった平石洋介コーチと松本裕樹と岩嵜翔。そう、結局頼れるのは己れの力である。MVPや優秀選手賞には選ばれなかった3人ではあるが、努力賞には十分過ぎるくらい値する。ソフトバンクは選手層の厚さをやっかまれるが、その層一枚一枚は彼らのように努力と屈辱が練り込まれている。日本一、おめでとうございます。第4戦はまさに3人のリベンジマッチと呼ぶにふさわしかった。

勝つための最善手~感情むき出しで悔しがった長谷川とムーアを交代させた工藤監督

いいもの見たな、と思った。日本シリーズ第3戦、2点リードのソフトバンクはさらに6回も満塁とチャンスを広げ、代打長谷川勇也が登場。鋭い当たりを飛ばしたが、セカンド吉川がダイビングキャッチ。素早く一塁に投げて、ヘッドスライディングの長谷川は惜しくもアウトになった。その時だった。長谷川が手のひらをグラウンドに叩きつけて悔しがったのだった。しかもそのまま額を上げなかった。ここで1点取っておけば巨人には相当のダメージを与えられる。長谷川はそれが分かっていたからこそ、何としてもセーフになる必要があったのだった。

が、繰り返すがソフトバンクは2点リードしていた。あの悔しがり方。勝負への飽くなき執念。これこそがソフトバンクの強さの源である。長谷川のヘッドスライディング&悔しがり方はまさにそれを体現していた。悪いが巨人はそれが乏しい。例えば最終回。岡本和真が三塁後方にゴロを放った。待って捕らざるを得なかった松田宣浩が急ぎ送球したが、微妙なタイミングとなった。ヘッドスライディングは必ずしもコンマ何秒を生み出せるとは限らないが、必死さや姿勢は伝わってくる。だが岡本は頭から突っ込まない。あそこで頭から行くことにはたとえアウトになったとしても意味がある。負けるにしてもファイティングポーズをとっていたかどうか。そこをファンは見ている。

2点で終わらず、と工藤監督もそこを評価していた。3点目、中村晃イムリー。4点目、グラシアルタイムリー。まだだ、もっと、もっと……その気持ちが得点につながっている。必ず勝つ。それを目指している。先発ムーアがノーヒットノーランを狙えるくらい好調だったとしても、そこは代える。かつて物議をかもした山井大介から岩瀬への完全試合リレーを思わせる展開で、ホークスファンの中にもムーア続投でよかったのでは?という声もあろう。しかし、勝つための最善手はムーアよりはモイネロだった。ただそれだけのことだろう。

勝つための最善手をめぐり、ある人は大和田常務かと思うくらい感情むき出しに悔しがり、ある人はドライに好投のピッチャーを交代させる。一見正反対ではあるけれど、目指すはチームの勝利、そして4年連続の日本一。常に全力。主力のユニフォームに毎日泥がつく。私はそんなソフトバンクホークスが大好きだ。

いま何をすべきか理解する~川島慶三の四球を起点にソフトバンク打線が爆発

日本シリーズ期間中、試合がなかった11月23日は第1戦、第2戦を報じるスポーツニュースを見て試合結果を咀嚼していた。そこで気付いた。第2戦、川島慶三は意図した走塁をしていたんだな、と。

 

巨人の先発は左腕の今村。左殺し川島慶三が2番に起用された意味は十分理解できたが、川島自身、己れが何を期待されているのか、何をしなければならないのか分かっていた。先頭の周東が倒れるも川島慶三は四球を選んだ。この時点で川島慶三フリークはもうご飯がおかわりできる態勢だ。そこへ柳田悠岐がセンター丸佳浩を越える力強いライナー。遠慮がちにセカンド手前まで進んでいた川島は丸が打球に追いつけないと見るや、明らかに生還する意思を持って二塁を蹴ったように見えた。丸から内野手経由でバックホームされたが、川島は難なくホームを陥れた。その瞬間、川島は伸び上がるように、跳ねるように立ち上がった。そう、川島がやりたかったのは先制点を取ることだったのだ。

 

ソフトバンクがやりたかったのは先制点を取り主導権を握ること。逆に巨人は初戦を落としているわけで、絶対に先取点を与えてはいけなかった。別に巨人の中継プレーが乱れたわけではないが、かといって、何が何でもアウトにするぞという気合も感じられなかった。川島慶三は先制点を取る意味を理解しているからこそ丁寧に四球を選び、かつアグレッシブな走塁をし、ホームインを伸び上がって喜んだ。私にはそう見えた。まさにチャッカマン川島。その後ソフトバンク打線が火を吹き、終わってみれば13得点。その起点はベテランの選んだ四球なのだから、もう川島慶三フリークはお腹いっぱいなのだった。

 

巨人との差は何なのか。別に巨人のプレーが雑だとは思わない。しかし、意識の高さはソフトバンクが数段上に見える。例えばグラシアルの走塁。ライト前ヒットで一塁から一気に三塁に行く。この姿勢は堀内恒夫若松勉も誉めていた。グラシアルは平気でヘッドスライディングするが、過去ここまで献身的な走塁をした外国人選手は少なかろう。クライマックスシリーズでロッテ守備陣のミスにつけこみヘッドスライディングで同点とした果敢な走塁は、あなたツーランスクイズした時の金足農業の選手ですか?と言いたくなるほどカッコよかった。また、守備面では第2戦で坂本勇人二塁打になりそうな当たりを飛ばすも素早い返球をされて自重し単打に封じられた。返球したのは柳田悠岐だったか。目立ちはしないが、強いチームはこうした攻守のそつのなさが特徴だ。今それぞれが何をすべきか理解しているからこそ、チームが機能している。川島慶三の四球&果敢な走塁はまさにその象徴に思えた。

日本シリーズで周東に走りまくってもらいたい理由

プロ野球選手はチーム内だけでなく、チーム外からも影響を受けるのだな、と改めて思った。日刊ゲンダイDIGITALに「ソフトはヤクルト山田残留に歯噛み…周東に“追い風”の理由」という記事が紹介された。二塁を守る周東にとっては、山田哲人のような強力なライバルがやってきたら代走要員に戻る可能性があったが、ひとまずそれはなくなったウンヌンカンヌンというものだ。プロ野球は九つしかポジションがないから、生存競争は過酷である。

周東は外野も守れるが、柳田悠岐、グラシアル、栗原がいたら誰も割り込めない。仮に山田哲人が入っていたら周東はショートに回るのか。だとしたら今宮健太が復帰後はライバル関係になる。周東の脚力か、今宮の堅守か。ぜいたくな悩みである。が、ひとまず山田哲人ソフトバンクに来ないので、周東は今のうちにセカンドで不動の地位を築いておきたいところだ。

もしも浅村がソフトバンクに入っていたら……。もしも山田哲人が早くFAの権利を得ていてソフトバンクに入っていたら……。2020年の周東の大ブレイクはなかったに違いない。運も実力のうち、という言葉が浮かんできた。実力があってもさらに力のある人が現れたら道を譲らねばならないプロ野球の世界。実力以外に運もなければ生き残ることはできない。まだまだ周東はその運に左右されやすい立場にあると思う。その地位を不動の物にするには活躍あるのみだ。

周東の2020年はまだ終わっていない。脚を生かし頭脳プレーで、日本シリーズの流れを決めた人がいた。1998年の石井琢朗だ。先頭バッターで2球目をセーフティバント。盗塁も決め、先制点につなげた。2020年の日本シリーズも、初回から周東が躍動したら菅野も焦るだろう。先の日刊ゲンダイDIGITAL記事は締めくくりに「これで心置きなく、日本シリーズで走りまくれるに違いない」と書いたがまさにその通り。他人に左右されないくらいの存在になるためにも、周東には走りまくってもらいたい。

チャンスを与えられなかった内川聖一~ヤクルト入りなら相乗効果がありそう

内川聖一のヤクルト入りが濃厚な雰囲気だ。密かに応援しているアラフォーとしては内川の就職先が決まったことにひと安心。何より、必要と思われて移籍することが素晴らしい。稀代の名バッターが1年間の2軍暮らし。そのまま引退だなんて寂しすぎる。そう思っていた。

デイリー新潮に「退団の内川聖一、球団との確執が原因か 王会長の恩情にも応えず」という記事が出された。内川がそんな言動をするだろうかと思うような内容だ。真偽は分からないし、私は内川の人間性を信じるのだが、そんな心境にもなるよなと肩を持ちたい。何せ貴重な1年を棒に振ったのだ。1軍に上げないのなら、せめて早めに通告すべきだった。生殺与奪の権利を組織に握られる。個人には恐怖でしかない。内川は相当辛かったに違いない。だから最終出場の日のあいさつで思いの丈を言ったのだろう。
「今年1打席も一軍でチャンスをもらえなかったということが、自分の中では“野球を辞める”という決心がつかなかった」
これは言わせた側に責任があると思う。

ヤクルトに行ったら杉村コーチとの師弟コンビが復活するとコメントしている人がいたが、お目が高い。そう、横浜時代の再現だ。ヤクルトは山田哲人が大型契約で残留。元近鉄戦士のベテラン坂口ももう少しやれそうだ。内川とファーストを併用するのか。若き大砲の村上宗隆にもいい影響を与えるに違いない。まだ入団が正式決定したわけではないが、ソフトバンクから弾かれた内川聖一というパズルのピースが、高津ヤクルトにどうはまるか注目しよう。

人生は選択の連続~ホークス退団の内川聖一にエール

ホークス3年ぶりリーグ優勝の余韻に浸りながら床についたが、翌朝、内川聖一退団への一報で喜びが減ってしまった。その中で、即引退という選択ではなかったことに安堵した。もちろん、獲得されなければ引退せざるを得ないのだが。

優勝翌日は気が抜けない。というのも、かつて熱烈に応援していた攝津正が日本一翌日に戦力外通告されたことがあったから。
「2年連続日本一に輝いたソフトバンクは、日本一決定から一夜明けた4日、福岡市内の球団事務所などで攝津正投手、五十嵐亮太投手、寺原隼人投手、笠原大芽投手、張本優大捕手、茶谷健太内野手吉村裕基外野手、城所龍磨外野手に来季の契約を結ばない旨を通告した」(2018年11月4日、Full-Count記事より)
吉村も城所もいい選手と思っていたから、このオフはきつかったな……。やはり応援していた選手がいなくなるのは寂しい。

内川聖一はホークスの功労者である。その前に、一人の選手であり、一度も1軍に上げない判断は妥当だったかを考えてみた。結論は、「◯」。応援してたんじゃないの?と突っ込まれそうだが、これはあくまでも優勝するための組織の判断として、だ。今年の優勝のポイントは「内川抜きで」できたことだ。内川がいなくても打力と守備のバランスが保たれていた。仮に内川を上げていたら同じく一塁を守れる中村晃は外野に回る、あるいは指名打者か。今年は選手の負担軽減のため4番や指名打者は何人もが座った。内川がいたらその1枠が減り、1人試合に出せなくなる。「休ませ過ぎ」になる可能性はあったと思う。内川を1軍に上げるなら、起用法は「取って置きの代打」。これが効果的だったと思う。

しかし、内川は代打ですら出番はなかった。今季は1軍に上げないと決まったり、上げられそうにないと判断されたのはいつだったのか。もし早々に決まっていたのなら、それは内川に通告するなりして、できれば2020年シーズン中に移籍の道を作ってあげてほしかった。さすがにライバル球団で活躍されては困る、というのであればセ・リーグ行きでよかった。特に今年は交流戦もなかったから。しかし、いつかいつかといううちにホークスは優勝してしまった。内川にしてみたら、自分の居場所がないことをまざまざと見せつけられた格好になった。事実上の戦力外通告ではあるが、功労者に球団がそれをできるはずもない。内川とて、自ら退団を希望することで現役続行の可能性を確保したことにはなった。若手でもベテランでも1年という期間は貴重だが、ベテランの方が切実だ。だからこそ、どうせ移籍なら2020年シーズン中に他球団に行けるようにしてあげてほしかった。だが、もしかしたら故障者が続出して内川の出番があるかもしれない。そんな「お守り」的「保険」的な使われ方になってしまったのだろうと思う。組織のリスク管理とはそんなものだろう。分かってはいるが、私はまだ組織より選手=内川の立場に肩入れしてしまう。2020年、内川が透明人間的に過ごさざるを得なかったのは残念だ。

ふと、「人生は選択の連続」というフレーズが浮かんだ。どこの学校・会社に入ろうという進路選択、この人と付き合う・結婚するというパートナー選び、どんな車に乗りどんな服を着てどこへ行くのか何を食べるのかなどなど。今このブログを書くことも「書く・書かない」を決めてやっている。そう、自分の意思を示せることは幸せなことだ。事実上の戦力外通告とはいえ、内川が現役続行を自らの意思で模索できていることはうれしく思う。「置かれた場所で咲く」という表現がある。自分の意思でどうにもならないことに抗うなと諭されたことがあったが、私は受け入れられなかった。人に迷惑をかけなければ、やりたいことは追求したらいいと思っている。咲く場所を選べなかったとしても、私はタンポポの綿毛のようになって目的地を目指したいと思う。もちろん風任せだから根付けず終わる可能性もある。しかし、不発に終わっても自分の意思を貫けたこと自体には後悔がない気がする。だから、内川にも納得いくまで現役にこだわり、燃え尽きてほしいと思う。ロッテ、西武、オリックス、横浜、巨人、広島……それなりに内川がはまったら面白そうな気はする。まずは、現役続行を模索してくれて「ありがとう」。そして次のステップに進めるようエールを送りたい。

意図して、やる~ソフトバンク甲斐が指摘されたキャッチングの甘さ

久々に解説に唸った。岸川勝也氏 首位攻防戦の勝負を分けたのは「捕手」 甲斐のキャッチングの甘さと田村の丁寧さ(スポニチ)。キャッチングと捕球は違うんだなと、初めて意識した。岸川勝也の指摘をざっくり言うと、甲斐は捕球時にミットが流れてしまった。その分辛めの判定、つまりボールと見なされた。田村はその辺りをきっちり丁寧にやっていた、という話。このところ、あれ、この球ボールかよと思うことが頻繁していたのだが、甲斐のキャッチングが影響していたのかもしれない。

え、キャッチングと捕球、何が違うのと思わなくもない。あえて区別するなら「意図して」捕るかどうか。もちろん甲斐も意図してキャッチングしていよう。ここで別のキーワード「フレーミング」を持ち出す。ストライクゾーンギリギリ、何ならギリギリボールの球をストライクと見せるアレだ。もちろんやり過ぎるとアンパイアには逆効果なのでそこはキャッチャーの腕の見せ所なのだが、甲斐の場合はストライクにとってほしい気持ちが出すぎなのかもしれない。素直さは甲斐の持ち味ではあるのだが。

それよりもまずは岸川勝也の言うように、ミットが流れないようグッと肩を入れてキャッチングする。フレーミングするより、ほら、ズバッと決まりましたよとしっかりキャッチングすることでアンパイアにはよいアピールできるはずだ。特にロッテのバッターは四球を選ぶのが上手。そこに対抗するには、今の球はしっかりコースに決まったとミットを止めることだ。そのためには意図して捕らねばならない。

甲斐ももう気が遠くなるくらい球を受けてきたはずだが、それでもなおキャッチング技術を指摘される。もうシーズンは終盤。甲斐はすぐに改善できるのか?と心配になったが、プロ野球のキャッチャーであるならば、逆に意識一つで変わりそうな気もする。かくいうわれわれサラリーマンも胸に手をやらねばならない。毎日の作業を漫然と、右から左へ作業に終わらせていないか。その作業が何のためのものなのか意識することで成果は変わる。ちょっと疲れたから、面倒だから、全部終わってないけどまぁやったってことで……とフレーミングしちゃったりして(!)。それではいけない。さて、話を甲斐に戻す。ソフトバンクとロッテは10月9日のゲームが終わった時点でゲーム差なし、勝率はソフトバンクがわずか1厘上回るだけ。試合でも今まで以上にストライク、ボールの判定の重みが増してくる。それがシーズンの結果を決めかねない。甲斐には意図したキャッチングをすることで、踏ん張る投手陣をしっかり支えてもらいたい。

周東のファンブルは「できない人」の典型~一つ一つのプレーを確実に

バットで返せた。10月6日の西武戦でエラーした周東に対して、前向きな評価が記事になっていた。「ソフトバンク周東、痛恨失策のち…工藤監督は評価」(西日本スポーツ)。工藤監督が言わんとすることは分かるが、私はあえて反対する。このエラー、看過できない。

いわゆるタイムリーエラーではない。が、この時ダブルプレーが取れていたら森友哉による犠牲フライはない。森にはだめ押しタイムリーも打たれたが、高橋光成を打ち崩せない中で先制点をやったことが敗因と言える。周東がきっちり捕球して二塁に投げていたらダブルプレーは何とか取れたと思う。最悪でも一つアウトが取れていたらやっぱり犠牲フライは生まれていない。この日ロッテが敗れたから、もしソフトバンクが勝っていたら3ゲーム差。それでなくともロッテはコロナ禍に見舞われてしまったのだから、ここでソフトバンクと差が付くと決定的だったと考える。その可能性をなくしたのだから、周東のエラーはただのエラーとは見なせない。

プレーヤーでもないのに周東のエラーを論じられるのかと言われそうだが、素人目にも分かることがある。以前も周東は致命的なファンブルをしたことがあるのだが、周東は送球に意識がいって捕球がおろそかになった。今回もそうだ。捕る。そして投げる。コンマ何秒を争うプロ野球でそんなくっきりと一つ一つのプレーを意識してやれるかと言われるかもしれない。だが、周東は捕れてもいないのに意識の上ではもう送球してしまう。だから捕球がおろそかになるのだ。これは一般人、特に仕事が遅い人にありがちなパターンに思える。そう、私はその自覚があるので周東の動きに反応してしまうのだ。

逆に、仕事ができる人は一つ一つを確実に履行する。だから後から心配になって見返す手間も時間もかからない。私は7割8割うまくいったら、並行して次の作業に進む悪い癖がある。一見、いやぁ、並行して作業するなんておれってアグレッシブ、スピード感あるよなとポジティブにとらえそうだが、両方とも詰めが甘くてなかなかゴールできないパターンも。あれ、周東と同じく1個もアウト取れてないじゃないか……。

 

周東の持ち味は脚力。最近はそれに加えて打力も付いてきた。だが、地道さが求められる守備において、時々致命的なミスをするのはいただけない。まぁまぁ、周東は事実上初めてレギュラーとして優勝争いをするんだから少々のミスは……というのも分からなくない。挽回しよう、とエラー後に取り返す気持ちも評価する。しかし周東が守備において一つ一つのプレーを確実にこなす意識にならない限り、あのようなファンブルは繰り返される気がする。取り返すよりもまず、一つ一つのプレーを確実に終わらせる。周東に必要なのはその意識改革である。

炎はいまだ燃え尽きず~内川聖一が10月に2軍戦でホームラン

もう10月である。早い時には9月にリーグ優勝が決まることもある。2020年は開幕がずれ込んだから、ここから約30試合、ようやく終盤戦にさしかかったところだ。私は内川聖一のことが気になっていた。内川はいまだに1軍に上がらない。このまま引退してしまうのか。そんなことを考えていたら内川が2軍戦で打ったホームランの映像を見つけた。

 

かつて、2000本安打達成者が10月に2軍戦でホームランを打ったことがあるのだろうか。私は内川がダイヤモンドを一周してダグアウトに戻る様子を見て、ああ、内川はまだ諦めていないのだとほっとした。このホームランは工藤監督の耳にも入るのだろうかと考えた。同じように2軍で調整していたバレンティンが1軍に戻ったが、9月の打率は内川の方がよかったはずだ。しかしバレンティンが選ばれた。外野を守れるからという理由もあるらしい。しかしバレンティンの守備力は彼を1軍に上げる理由にふさわしいと思えない。

内川が他人と自分を比べているかは分からないが、なぜおれじゃないんだとは思っているような気がする。なかなか1軍に上がらない選手がそのまま秋を迎えれば、シーズン終了後どんなことになるか想像するのはたやすい。内川がそんな若手と違うのは、圧倒的な実績があり、やめ時を自分で決められるということだ。ただし、戦力外通告をされなければ、だが。

さすがの内川も、9月が終わり先にバレンティンが1軍に上がった時点でもはやこれまでと思ったのではと想像する。だからこそ私は内川がもう昇格を諦めたのではないかと心配だったのだが、あのホームランを見た時、まだ炎は消えていないと思えた。ホークスの歴史に残るクライマックスシリーズ4戦連発、そして日本シリーズ山崎康晃から放った起死回生の同点ホームラン。私は数々の内川のホームランに勇気づけられてきた。10月3日の2軍戦でのホームランは生涯記録には含まれないのだが、心に残る一発だった。逆に何か吹っ切れてしまって、踏ん切りがついたりしなければいいなとさえ思う。一本ホームランが出たから何?という意見もあろう。しかし汲んでもらいたいのは内川の諦めない姿勢。名球会入りしたバッターがいまだファームの試合に出て、野球と向き合っている姿勢である。

同じ日のナイターで、セカンドにヘッドスライディングした中村晃が脚を傷めた。大事をとって代走が送られたが中村晃が守るポジションの一つが一塁。そう、内川が守っていた所だ。中村晃は外野も守れるから内川が上がっても中村晃の代役にはなれない。しかしまるまる1試合でなければ、一塁を中村、内川の併用で乗り切る手もあるのではないか。そう、内川を試合終盤の代打で使うのだ。

私はまだまだ内川の打席が見たいが、このままあやふやな立ち位置なら、1軍に上げることはない、と内川に告げるべきだと思う。それで内川が引退するのか、現役続行を模索して移籍先を探すのか、内川に選ばせたらよい。これは2019年の鳥谷敬を思い起こさせる。私は阪神ファンでもないのに、鳥谷の貢献度を考えたらタイガースのユニフォームのまま引退してもいいかなと思えた。が、鳥谷は現役続行を選んだ。そして鳥谷が素晴らしいのはマリーンズのユニフォームを着て1軍の試合に出ていることだ。内川が望むなら、私は他球団のユニフォームを着るのもありな気になっている。もちろんホークスのユニフォームのまま現役を続けるのが一番だが。神がかり的に勝負強かった内川のバッティングはもう見られないのか。まだシーズンは約30試合ある。内川が1軍に上がる機会があることを、私は切に願っている。

ミスターユーティリティー川島慶三~初の4番で先制打、バレンティン意味深投稿もフォロー

2017年日本シリーズソフトバンク日本一を決めたのは川島慶三だった。その試合もブログで触れたのだが、「川島の引退が延びただけ」的な反応があった。ああ、そうですともそうですとも。川島慶三は別に億単位の年俸をもらう選手ではないし、そもそも日本ハム、ヤクルトと渡り歩いた外様。生え抜きのスターでも、元ドラ1でもない。だから川島慶三は毎年記憶に残る活躍をしなければ生き残れない。でもそうやっていま川島は15年目のシーズンを戦っている。

それどころか15年目で初の4番。radikoで「4番の川島」と聞こえて「?」と思いつつも先発が日本ハム上原だったから納得した。川島はなぜか上原には通算打率約5割と滅法強いのだ。にしても4番とは……どうやら平石コーチのアイデアらしい。これがズバリ的中。初回川島が先制タイムリーを放ったのだ。もしもこの日川島が不振で敗れ、ロッテが勝っていたら「川島慶三4番とは、工藤監督ご乱心」と間違いなくバッシングされただろう。しかしソフトバンクは鮮やかに日本ハムに逆転勝ち。しかもロッテが西武に競り負けたためゲーム差が2に広がった。工藤監督としてはウハウハだ。勝率わずか1厘差まで詰め寄ったロッテとしては、この2ゲーム差はカウンターパンチのように感じているに違いない。川島慶三はその後も四球やヒットで出塁。4番起用は大当たりであった。

川島慶三はサイコーだなと思ったのにはもう一つ理由がある。試合前の声出しは、昇格ホヤホヤのバレンティンだったのだが、川島慶三が機転を利かせて奇跡の同時通訳(詳しくは球団公式Twitterを参照)。バレンティンのインスタグラム意味深投稿を突き放したり断罪するのは簡単。だが川島流の激励の方がバレンティンの更正につながると思う。川島慶三はオトナである。

 

明日も4番、あるかなぁとヒーローインタビューでおどけた川島慶三だったが、われわれ川島慶三フリークとしては本当に心に残る試合だった。守備固めや左キラーなど、ユーティリティープレーヤーとして重宝される川島慶三が2020年シーズンはしょっちゅう試合に出てくれてうれしい限りだ。そして彼のような移籍選手がまるで生え抜き選手のようにチームの中心にいること、若手のフォロー役もしてくれていることも素敵だと思う。4番を経験し、これで3番を打てば全打順制覇の川島慶三。内野も外野も守れ、チームメイトのフォローもこなす。川島慶三はミスターユーティリティーと呼ぶにふさわしい。

状況判断力と実行力も高い柳田悠岐~果敢なタッチアップで首位固めに貢献

この男、能力が高いなと思った。柳田悠岐。打率が高い? ホームランが打てる? どちらも当てはまるが今回はその話ではない。状況判断。ロッテとの首位攻防第2戦3回表、セカンドランナー柳田悠岐がレフトへの大飛球を見て果敢にタッチアップ。この好判断がイニング3得点につながった。

 

ここをポイントに挙げたのはロッテOBの有藤通世氏。スポニチ記事「有藤通世氏 ロッテ、ソフトBとの直接対決残り10試合 自分たちの野球やればいい」ではこう解説していた。
柳田はフェンス際まで飛ぶと判断してハーフウエーから二塁へ戻ってタッチアップ。去年まで同僚だった福田秀の肩の力を頭に入れての判断だった
あ、タッチアップできそう。と思ったら瞬時にセカンドに帰塁。福田が捕ったらサードへGo。素早い判断、そして実行力。柳田悠岐は怪力で度肝を抜くだけではないのだ。

こんなこともあった。7月19日のオリックス戦8回裏、センターを守っていた柳田悠岐はフライを捕ると、タッチアップでサードを狙った安達をノーバン返球で刺した。もともと三塁にいたランナーは生還したのだが次の失点の芽は摘んだ。そしてソフトバンクは1点差で逃げ切ったのだった。映像を見返すと柳田悠岐はフライを捕る前にもう、サードへ投げるべく捕球地点と三塁が一直線になるよう移動していた。まあ、プロ野球の外野手だからそこまでは機転が利くとして、そこからの実行力。ノーバン返球だから安達もたまったものではない。刺されて思わず大の字になってしまった。

超人ギータ。擦ったような当たりがホームランになったりしてとかくパワーに目を奪われがちだが状況判断能力もピカイチ。そしてイメージ通りに成し遂げる実行力も。これ、仕事ができる人の典型である。若い野手を育てているソフトバンクにあって、柳田悠岐は格好のお手本になっている。

ミスと挽回を繰り返して成長する~4打点の周東、ソフトバンク優勝のキーマン

天王山と言うにはまだ早いかもしれないが、ペナントレースを占う上ではめちゃくちゃ比重の大きい9月25日からのロッテーソフトバンク3連戦。その初戦の序盤にセカンド周東が痛恨のエラーを犯した。先発ムーアが1イニング5失点したのが大きかったがその起点になってしまった。これで2ゲーム差が1に。2020年もソフトバンクはロッテに分が悪く、もういつ首位を奪われてもおかしくない状況になってしまった。周東のエラーはただのエラーではなかった。

周東は初の盗塁王を狙うほどの俊足。しかし9月だけで5失策。捕球、送球とも守備が課題である。ロッテ戦でのエラーはゲッツーコースだったがセカンドへの送球を意識するあまり捕球が疎かになっていた。弾いてセカンドに投げられなかった上に、ファーストも間に合わず。ムーア炎上の火種になってしまった。

しかし周東は第2戦で2打席連続タイムリー、4打点と大活躍。最初の二塁打を放った後、塁上でよっしゃ!と明るい表情をしていたのが印象的だった。そう、その気持ちが大事だ。打撃が乗ってきたら守備にもいい影響が。5回にはセンター前に抜けようかというゴロを好捕。セカンドゴロとした。持ち味の俊足でよく追い付いた。残念ながらミスを取り返すのは容易ではない。だがやるしかないのだ。時計の針を戻せないのなら、別の機会に頑張るしかない。ミスと挽回の間隔なり時間差が大きいと乗っていけないのだが、周東はよく翌日にやり返した。自信になったことだろう。

周東の守備は急にはよくならないだろうから、しばらくはミス、挽回、ミス、挽回の繰り返しだろう。だが人はそうやって成長していく。痛恨のミスをした昨夜は寝られなかったと、ヒーローインタビューで話していた。自分の映像を繰り返し見ていた、とも。悔しくて寝られない。そんな思いは一晩でたくさんだ。早く挽回したらゆっくり眠れるというものだ。今晩あたり、周東は心地よい疲労感と共に眠りにつけるのではなかろうか。ヒーローインタビューで「チームの力になれるように」という発言があった。大袈裟ではなく、周東はソフトバンクが優勝するためのキーマンだ。活躍することがチームを優勝に近付ける。ロッテとの第2戦に勝ってゲーム差は再び2に広がった。負けていたら今季最悪を更新する6連敗、ゲーム差なしでロッテに並ばれるところだった。ヒーローインタビューで「きょう1日でやり返せたと思います」と話したが、まだまだリベンジしてもらわなくては。本家・半沢直樹はあすが最終回だが、周東の「倍返し」をこれからも期待したい。


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