黒柴スポーツ新聞

ニュース編集者が野球を中心に、心に残るシーンやプレーヤーから生きるヒントを探ります。

戦力外乗り越え大松尚逸ヤクルトで「はじめまして弾」~禍福はあざなえる縄のごとし

23時台のスポーツニュースをぼーっと見ていた。

延長12回、バッター大松尚逸ときた。これはまさかの…

 

キターーーーーー!!

 大松尚逸がバットを振り抜くと打球は高々とライト上空へ。最前列にスタンドインした。今やヤクルトのお家芸となった、恩返し劇場の幕開けである。

 

森岡良介鵜久森淳志坂口智隆。前の球団で力を発揮できなかった、あるいは輝きを失った選手たちが次々に結果を出す不思議球団ヤクルトスワローズ大松尚逸もそこに加わる予感はしていたが本当に劇的弾を放った。

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黒柴スポーツ新聞はヤクルト与党メディアでも何でもないのだが、つい筆を執りたくなる。そう、それがヤクルトスワローズの魅力。それに取りつかれた方々が夜な夜な神宮に集結している。

 

かつてヤクルトスワローズには「野村再生工場」という言葉があった。代表格は田畑一也ダイエー時代に2勝だったがヤクルト移籍1年目に12勝と大ブレイク。翌年も16勝と柱になった。 小早川毅彦を開幕戦で起用し斎藤雅樹にホームラン3発をお見舞いしたのも語り草だ。

森岡良介鵜久森淳志坂口智隆、そして大松尚逸森岡良介は引退してしまったが、恩返し四天王とでも言いたくなる。彼らの生き方を見ると、人生捨てたもんじゃないな、と思う。

 

転職はもう珍しくない時代。だが一度入った組織で現役をまっとうするに越したことはないという考えもまた根強い。プロ野球でもそんなに移籍を繰り返す選手はいない。次々にスター予備軍が入団し、毎年激しい生存競争が繰り広げられる。森岡良介鵜久森淳志坂口智隆大松尚逸の4人は見切られたり、けがをしたりと辛酸をなめるも、現役続行に強い意思を示した。

 

中でも大松尚逸のけがは最も重傷だろう。アキレス腱を断裂し、車いす生活を余儀なくされた。今でも全力疾走ができないという。他球団と違い「つなぎの四番」が許されるとはいえ、ロッテの四番まで務めた大松尚逸にとって、戦力外通告は地獄への片道切符だったに違いない。

 

「はじめまして、ヤクルトスワローズの大松です」 

 

サヨナラホームランを放ち、温存していた自己紹介をお立ち台で披露。カッコいい。まさに名刺代わりの一発。右の鵜久森淳志、左の大松尚逸。起死回生の一発がほしい場面ではどちらかが代打に控えている。打率がべらぼうに高くはないかもしれないが、長打力があるから要警戒だ。一発逆転、一打同点、ここ一番でのダメ押しを信じるヤクルトファンは試合終盤まで楽しみがある。 

 禍福はあざなえる縄のごとし 、という言葉が浮かんできた。いいことと悪いことは代わる代わるやってくる。幸福だったことが不幸に転じるかもしれないし、不幸だと思っていたことが幸福になるかもしれない。大松尚逸はロッテ時代、大勢のファンの声援を受けて幸福感いっぱいだったことだろう。しかし戦力外の憂き目にあい、ヤクルトに「拾われ」、チームも自分も救う一発を放つ。この間失った物もたくさんあっただろうが、残りの現役時代や野球人生において生かされる経験もあるに違いない。

 

禍福はあざなえる縄のごとし。たとえ今が悪くても、大松尚逸のように自分の力をまずは信じてみよう。

 

なお、大松尚逸サヨナラホームランにより、近藤一樹オリックスからの移籍後初勝利となった。おめでとうございます。これにもまたドラマがあることだろう。だから野球は面白い。