黒柴スポーツ新聞

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デキる人はランナーを進めない~早慶戦で指摘された「防げた失点」

無駄な失点は防げる、という話をしたい。
 
5月28日の早慶戦、3回表の慶応の攻撃中だった。解説者の一人、應武篤良さん(元早稲田大学監督)が「深いですね」と早稲田大学の外野守備を指摘した。ノーアウト2、3塁。ワンヒットで2点入りかねない。
斎藤佑樹と歩んだ1406日

斎藤佑樹と歩んだ1406日

 

 「内野は前進守備です」。内外野で意思の疎通ができていないことを應武篤良さんは指摘した。確かに内野が「1点もやらないぞ」と前進守備を敷くのなら外野も前進して、3塁ランナーは無理でも2塁ランナーは返さない。それがチームワークだ。

 

バッターの慶応大学の清水翔はセンター前にタイムリーを放った。センターは前に出てきて捕球しバックホームするもセカンドランナーは刺せなかった。
 
それどころか打者走者に2塁を陥れられてしまった。すかさず應武篤良さんが「(深く守ってたのなら)セカンドに行かせちゃいけない」と苦言。そう、センターはセカンドランナーを刺さないならセカンドに返球することで、タイムリーを単打にしなければならない。
 
打者走者が2塁に行くと、もう一人の解説者の鬼嶋一司さん(元慶応大学監督)が「(慶応大学は)チャンスですよ」と色めき立った。棚からぼたもち的なチャンスをものにすることで、相手のダメージを増幅させることはできる。ボクシングで相手がバランスを崩した時にタイミングよくパンチを繰り出せば、一気にダウンを奪えるのと同じ理屈だ。
さすが鬼嶋一司さん。「流れ」を重視する解説はいつ聞いていても面白い。

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 結局このセカンドランナーは3塁に進み、犠牲フライでホームに帰ってきた。早稲田大学の内外野が意思の疎通を図って前進守備を敷いていたら、防げた失点だった。

 

この日の試合は早稲田大学がひっくり返し、目の前の胴上げは阻止した。だからこの三回の守備のミスは致命的とは言えないのかもしれない。だが前進守備でバッテリーがどこまで内野ゴロを打たせる配球をしたかも含め、レベルアップのために振り返ってほしいシーンだ。 
早稲田大学野球部 (B・Bムック)
 

 野球に限らず、周囲と意思の疎通を図らないと、こういうムダが生じる。

 
理想を言えば外野は内野に言われなくても守備陣形を整えたい。ここは1点もやりたくないから前進守備だろう、と。それが本当の意味での意思の疎通だ。
 
ピッチャーとキャッチャー。セカンドとショート。内野と外野。打者と走者。野球ではいろいろなコンビネーションが求められる。意思の疎通をはかっておけば、失点は防ぐことができ、得点はしやすくなる。

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 仕事も同じ。人がやることだからミスは防げない。だからこそ常に次善の策を考えるくせをつけたいもの。不利な時こそ、次の失点につながるランナー(ピンチ、不確定要素)を得点圏に進めさせてはいけない。仕事がうまくいかない人、あるいはうまくいかない時というのは常に得点圏にランナーを背負っているようなものだ。いつも焦ってばかり。そして手元が狂う。

 
そうならないためにも周囲と協力して、ランナーに進塁させない用心が必要だ。周りの「仕事ができる人」を見ていれば分かる。その人は決してランナーに無駄な進塁をさせない。そして円滑な人間関係を構築している。
 
失点しない生き方が一番いいが、何かにチャレンジする限りミスはつきもの。である
なら次なる失点を防ぐ守備陣形をとればいいだけだ。それは意識さえすればできる。
 
野球のよいところの一つは、相手から1点でも多く取りさえすれば勝つことだ。川崎徳次なんかホームランを8本も打たれながら完投勝利したのだ。完璧な人なんていない。ならば1点でも相手を上回るため、最善の策を取ろう。「防げる失点」は、ある。

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