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黒柴スポーツ新聞

ニュース編集者が野球を中心に、心に残るワンシーンやプレーヤーについて綴ります。

サラリーマン的にも見習いたい代打本塁打世界記録保持者・高井保弘

常時試合に出るレギュラー。安定感抜群のエース。職場にほしい人材である。誰もがまずはそこを目指すのだろう。代打本塁打27本の世界記録保持者・高井保弘も最初はレギュラーとして1日4打席に立つことを目標にしていたと、「一打席入魂 プロ野球代打物語」に書いてあった。ざっくり引用しながら高井のすごさを紹介したい。


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阪急は人材がそろっていた。高井はレギュラーになれない。そこで考えた。「遠くに飛ばすバッティングを見せつけよう」。ホームラン狙いへの切り替え。バットは少し長くし、芯の位置も先端側にずらし、重いものに変えた。置かれた状況に応じて目標を設定し直す。サラリーマン的にも心掛けたい自己改革だ。



同僚のスペンサーがやっていたメモ作りも取り入れた。相手投手の癖や傾向を研究し情報を蓄積しノートに記録した。もちろん球種を読んでもとらえる技術がなければ打てないが、打てる技術があっても毎回あたふた場当たり的なバッティングをしていては結果を伴わない。研究、分析、対策は仕事ができる人なら誰でもやっている。




準備も怠らなかった。球団旗を見て風向きを確認。打撃練習では有利な方向へ飛ばしておく。試合中はベンチの前の方に陣取り明るさに目を慣らす。ブルペンキャッチャーをやってスピード感をつかむ。そして例のノートに書き込みをする。準備は成功の一里塚だとよく分かる。



心理面も興味深い。ベンチから出るときは2本のバットをぶら下げてのっしのっしと歩く。ブンと一回素振りして威圧感を与える。俺は四番打者やと自己暗示をかける。野次られてそれは自分がすごい打者だからと思い込み、三振してもそれは相手投手が上手だっただけと開き直る。全部できたら営業畑のサラリーマンは連戦連勝であろう。




高井の代打本塁打で有名なのが1974年のオールスター。9回裏1-2とリードされていたパ・リーグは代打で高井登場。松岡弘から逆転サヨナラホームランを放った。ここで打ったら出来すぎという場面で打つのがプロ中のプロ。夢を売るのがプロ野球選手である。ちなみに高井は日本シリーズ対策としてセ・リーグの投手も研究していた。この一発もまぐれではなかったのだ。



いったんはDHとして結果も出したが再びレギュラーから外される。それならばと再び代打本塁打で記録を伸ばそうと切り替える。どんだけ柔軟な発想ができるんだとうなってしまう。結果的に27本まで積み上げた。「(試合を決めてくるから)バスにでも乗っとけや」。こんなセリフをはく先輩がいたらしびれる。



ちなみに高井は若かりしころ、ビールの中ジョッキ27杯飲んだことがあるという。ジョッキ27杯と代打本塁打世界記録27本。出来すぎのエピソードではあるがどこまでも豪快な人に思えた。とはいえこの本のおかげで高井が単に豪快な勝負師として世界記録を樹立したのではないことがよく分かった。自分を知った上で成長させる。高井のスタイルは社会人生活を送る上で示唆に富んでいる。


一打席入魂 プロ野球代打物語 (宝島SUGOI文庫)

一打席入魂 プロ野球代打物語 (宝島SUGOI文庫)