黒柴スポーツ新聞

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38人の同僚捕手を蹴落とした野村克也〜甲斐と渡辺陸の起用方法に注目

ソフトバンクで久しぶりに捕手の生存競争を垣間見た。絶対的な甲斐拓也への挑戦権を得たのは育成出身の渡辺陸。28日の広島戦で初スタメンにも関わらず、第1、第2打席でホームランを連発。第3打席もタイムリーで計5打点の大暴れだった。肝心の守りも大関を7回1失点と良さを引き出した。終盤は甲斐の出番となったが、渡辺は100点の出だしだと思う。

ついに甲斐も追われる立場になったんだ、と感慨深いものがあるが、プロ野球選手にとってレギュラー争いは日常茶飯事である。ソフトバンクは有力選手の栗原陵矢や上林誠知が離脱してしまったが、その2枠を目指して若手のアピール合戦が続いている。

ふと思い出した。ホークスのキャッチャーだった野村克也はひたすら同僚を蹴落とした、という事実が宇佐美徹也氏の「プロ野球記録大鑑」に書いてあったっけ、と。久しぶりにページをめくってみて仰天。何と野村は在籍22シーズンで38人のキャッチャーを蹴落としていた。

このうち16人はキャッチャーとして出場経験があるが、22人は1試合も出られなかった。相手がレジェンド野村克也だから仕方ない、それが分かって入団するのだろうと言われたらそれまでなのだが、まさか1試合も出られないとは考えなかっただろう。また、試合に出られた16人の中でも、100試合以上出られたのはたったの2人だけだとか。

正捕手がしっかりしていたら控えキャッチャーはそうなる運命なのだ。ライバルを蹴落とすことは、例えば巨人V 9時代の巨人の森昌彦、横浜や中日でプレーした谷繁元信もやったはず。ひたすら結果を出して地位を不動のものにする。毎年その繰り返し。球団は定期的に新しいキャッチャーを獲得するから、その度に正捕手争いが繰り広げられる。

ネット記事では渡辺陸の記事があふれている一方、甲斐の記事は見当たらない。今こそ甲斐がどんなことを考えているのか聞きたいが、記者たちはあえて聞いていないのか。甲斐がしゃべらないのか。ただ、渡辺陸衝撃のスタメンデビュー翌日は甲斐が先発。無失点に抑えた。解説の若菜嘉晴も言っていたがやはり捕手の本分は守りだから、零封は甲斐の意地のようにも見える。それでも代打で出てきた渡辺陸がまたヒット…。まだまだ甲斐の牙城は崩れそうにないが、これからチームが渡辺をどう育て、甲斐とどう競わせるのか。ますます楽しみになってきた。


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