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黒柴スポーツ新聞

現役記者が野球を中心に、心に残るワンシーンやプレーヤーについて綴ります。

信じ続けないと夢の扉はこじ開けられない~二度の戦力外を乗り越えた山本和範

オールスターの名場面と言えば何だろう。江夏豊の9連続奪三振か。それはリアルタイムで見られなかったが、リアルタイムで見た素敵なシーンが忘れられない。山本和範の涙のホームランだ。


だいたい二度も戦力外になった人。福岡の戸畑商から近鉄に入るもピッチャーとしてはだめで打者に。しかし結果が出ず6年でクビになった。


この後バッティングセンターに住み込み、南海の穴吹義雄の誘いで南海入り。3割を打つなど着実に結果を出していった。


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ダイエー時代には年俸が2億円に。イチローがいなければ首位打者になったシーズンもあった。しかしけがをしてしまい、高額な年俸もあだになったのか二度目の戦力外通告を受けた。


マイストーリー・マイウェイ―べった野球人生 カズ山本自伝

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そこでまた近鉄のテストを受けるとこがすごい。一度クビになった企業を受けますかという話。でもそこは夢のあるプロ野球近鉄も粋なのか純粋に戦力と判断したのか山本を入団させた。これに山本は開幕戦ホームランで応えた。カッコいい。


さらにオールスターに38歳で初めてファン投票選出された。開催地は福岡。「小久保に代わりまして山本」。アナウンスに福岡ドームも大歓声。福岡のファンあったかすぎ。


ここで男・山本はホームランを放つ。もはやマンガの世界だ。もちろんMVP。山本も笑顔だったがお立ち台のアナウンサーの質問が山本の心を撃ち抜いてしまった。


「去年まではホームでした、ここ福岡で打てた、しかも出身地の福岡で打てたということも非常に大きいような気がするんですが」


そんな福岡福岡言ったら情の深い山本が反応しちゃうじゃないか。


「あぁ…、ま、あの、」


声を詰まらせる山本を励ます「やまもとー」の声援がまた山本のハートをわしづかみにする。山本は唇をなめた。


「まさか打てると思っていませんでしたし、まぐれですよ」


唇をワナワナさせてこう言うのが精一杯であったし、もう十分だった。もう十分カッコいいですから。



しかし「まぐれ」は続く。引退試合も因縁の福岡でのダイエー戦。しかも当時14勝無敗を誇る鷹の抑え、篠原貴行が相手。落ち目の山本がきっちり抑えられ、まさに時代の変わり目となる対戦に思われた。


ところが、なめるなよという気合を感じさせるひと振りが篠原の直球をとらえるとライトスタンドに一直線。これにはホークスファンも拍手喝采。というか篠原の球威だったからこそあそこまで飛んでいった気がする。山本は有終の美を飾った。


「夢を見つけていけば、あきらめずに信じていけば、必ず扉は開かれる」


ネットで見つけた動画で、山本はこのことを伝えていきたいと話していた。


BBH2008 NOSTALGIC山本 和範

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夢は必ず叶う論を信じない黒柴スポーツ新聞編集局長だが、山本がいうならこの気持ちは信じたくなる。裏を返せば山本くらい夢に食らいつかないと夢の扉はこじ開けられないということだろう。それにしても、山本はドラキュラみたいだからドラと呼ばれるらしいがドラマチックのドラの方がお似合いだ。果たして2016年のオールスターではどんなドラマが見られるだろうか。