古巣で引退しなかった多村仁志と栗原健太~実績を残した場所に留まるか、プレーヤーとしての可能性を求めるか
多村仁志が引退表明した。ベイスターズ時代の印象が強いがホークスファンとしても感慨深い。日本一メンバーの一人でもあり、お疲れさまでしたと言いたい。最後の所属は中日。育成での契約だった。
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きょうの1枚はもちろんホークス時代の多村。思い出のシーンはブログ後半をご覧ください。
多村は横浜高校出身。斉藤宜之、紀田彰一とクリンナップを組んだ。1994年には甲子園に出ている。黒柴スポーツ新聞編集局長の母校はこの横浜高校と1993年に神奈川県予選で対戦。編集局長も見に行った。横浜の打順は覚えていないが初回に3番、4番に連続ホームランを打たれたのははっきり覚えている。この打者は上記3人のだれかだったのだろうか?
さて、チームの看板選手が移籍する場合は近年だとFAでもう一旗あげようというパターンと、戦力外通告を受けるも現役続行を模索するパターンが主だ。
球団も功労者には報いたい気持ちがある。同じく2016年をもって引退する福原忍に対しては来季の構想外だけれどもポストが用意されそうだとの一報であった。まだまだ若手に負けない投球が素人目にもできそうだから、本人も現役に未練はあったことだろう。しかし阪神一筋を貫ききることにも意味がある。結局、福原はタイガースでの引退を選んだ。
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多村より前にはベイスターズが石井琢朗を戦力外にしたが石井は現役続行を選び広島に移籍。安打数をさらに伸ばした。そればかりか引退後はコーチになり打撃力向上に貢献。これが2016年のカープ25年ぶり優勝につながるのだから広島にはお得な投資だった。
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ここまでうまくいくのは稀。プロ野球の世界はそこまで甘くもない。新聞の片隅で報じられたがかつての広島の4番、栗原健太も今季でユニフォームを脱ぐ。長打力は魅力的でけがさえなければと思ってしまう。恐らくカープで引退表明していたら引退試合もしくは引退セレモニーができただろう。
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それは栗原だって分かっている。もう長くやれないと分かっていてもなお新天地で出場機会が得られたらと楽天に行った。人にどうこう言われてもプロ野球選手であることを選んだわけで、結果的に楽天でも戦力にはなれなかったが最後は納得できたのではなかろうか。
きっと多村も同じ心境だっただろう。ベイスターズでは球団で日本人初の40本塁打を記録。あの田代富雄を超えた。寺原隼人とのトレードでホークスに行ってからも長打力で貢献してくれた。
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2011年のCSではボテボテのサードゴロながら一塁に魂のヘッドスライディング。得点につなげた。ベテランの闘魂にベンチから選手が飛び出してガッツポーズするほどだった。
同じCSで黒柴スポーツ新聞編集局長は初めて福岡での野球観戦を果たした。あの杉内俊哉と涌井秀章の涙の投げ合いだ。一歩も譲らぬ投手戦だったが序盤に杉内があわやタイムリーとなるヒットを浴びるも多村が完璧なバックホームでタッチアウトとなった。
結果的にホークスは9回裏にようやく長谷川勇也がタイムリーを打って同点となる苦しい展開だったから、多村の好返球は大きかった。その試合は再び長谷川がタイムリーを放ちサヨナラ&リーグ優勝となった。美しいバックホームを生で見られてよかった。
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ホークスに留まれば貴重な代打になっただろうがベイスターズも泣かず飛ばずだったわけで復帰してチームを立て直すのもいいプランだったと思う。そのベイスターズでも戦力外となって中日の育成契約に活路を見出だそうとしたが1軍には上がれなかった。まさかの背番号215での引退となったが本人的には充実感があったことだろう。
実際に職を変えるわけではないが職場を変えるという意味で、プロ野球選手の移籍は社会人の転職に似ている。職場で実績を残しても、後輩が育ったり、自分自身がかつてほどの調子は維持できなくなったとする。だんだん居場所がなくなったり、あの人は終わったなんてささやかれたりする。
その時どうするか。自分はこんなはずじゃない。まだまだできるぞと自分を鼓舞して状況を打破するか。全く違う環境になってもやりたいことを貫くか。衰えを受け入れてやめるか。一線を引いて指導役として後輩を育てるか。
特にどれが正解ということもない。ただ、どの道を選んだとしても一旦は「お疲れさまでした」と一旦は言ってもらえるような人になっておきたい。
メジャーに行った人のように上昇志向の移籍は見ていて気持ちいい。環境を変える動機はさなぎが羽化するがごとく、今の環境が窮屈だから、なんて言えたらカッコいい。
図らずも多村がいなくなった年にベイスターズは初のCS出場を決め、栗原がいなくなった広島は25年ぶりの優勝。巡り合わせとはいえ残酷にも思えるが、編集局長は最後まで選手としての可能性を求めて地を這った多村と栗原に心から拍手を送りたい。きっとベイスターズとホークスファンも、カープファンも、二人の勇姿を忘れない。