配置転換の意味が分かる人、分からない人~柳田悠岐がコンバート
ソフトバンクの柳田悠岐がライトにコンバートされた。代わりに上林誠知がセンターに回った。ずっとかは分からないが、柳田悠岐は脚を傷めているため、その回復具合によるのだろう。
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ソフトバンクは3位に甘んじているが、主力の離脱、不調が続いているのでむしろ健闘しているように見える。頼りは柳田悠岐の打力なのだから、休ませたくてもそれができない。ちょっとでも負担を減らす試みがこのコンバートらしい。
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ポジションを守ることはなぜ大切なのか~西武多和田が痛恨の逆転被弾
6月9日の対巨人戦で、西武の多和田真三郎が坂本勇人に逆転3ランを喫し、まさに1球に泣いた。たった1球で結果が変わる。これぞ野球の醍醐味であり怖さでもある。
多和田は直前、代打田中俊太に四球を出した。その瞬間、膝に手を付いた。いったん切れた集中力、気力はすぐには戻らない。ましてや次打者は坂本勇人。ギアを上げねば大事故につながる可能性が高い。- 出版社/メーカー: 報知新聞社
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ポリバレントより職務分掌~西野ジャパンは大丈夫か?
ポリバレントという耳慣れない言葉に触れた。サッカーのワールドカップに向けたガーナ戦に臨む日本代表選出で、若手の有望株、中島翔哉が落選したのだが、理由が「ポリバレント性の低さ」だったという。
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まあ選手をじっくり選べない西野朗監督だって辛い。といってもまったくの第三者ではないから、サッカー通は見逃してはくれまいが。ただでさえ時間がない中で結果を出さねばならない西野監督だって必死である。無難に行こうとするのは当然だ。
が、時間がないなら、いや、ないからこそ、おまえにはこれを頼む、おまえにはこれを頼む、ということが必要に思う。あれもできる、これもできる人は大コケもしないが大爆発もない。それなりに終わる可能性は高い。
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経験する価値を知っている大谷翔平
「いくら払っても経験する価値がある」。何かと思えば、大谷翔平が2011年サイヤング賞投手のバーランダーと対戦後にそう話していた。そう、いくら払ってもやっておきたいことはある。
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もちろん、遠距離恋愛みたいに距離的にも時間的にも制約がある場合はある。しかしやはりそこはどうにかしてしまうものだと思う。
先日、高知市の牧野植物園に行ってきた。草花を観賞するのはもちろん、日本が誇る植物学者、牧野富太郎博士の生涯について学ぶこともできる施設なのだが、そこに博士のある考えが紹介されていた。ざっくり言えば、学ぶ時はケチケチしてはいけないよ、と。書物も必要なら買えとか、そういうことらしい。
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大谷翔平はもう少し日本で過ごしてからメジャーに挑戦すれば、もっと高額の契約が見込めたがそうしなかった。いま行くことに価値があると踏んだのだ。このように考えられることは、大谷翔平の大きな才能と言える。自分を客観視できる点は素晴らしいとしか言いようがない。
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道を極める人と凡人の差は、実は、すぐ動くか動かないかというちょっとした違いなのだが、多くの人はその運命の交差点を気付かずに通り過ぎている。気になったなら、とりあえず信じた方向に行ってみよう。
道徳「星野君の二塁打」の主人公は星野君じゃない
道徳教材「星野君の二塁打」について日テレの「シューイチ」で取り上げていた。野球好きとしては、面白そうな題材だなとマークしていたのでそのまま見続けた。
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尾木ママの解説では、規則の遵守がテーマではあるものの、いろんな考えがあっていい。なのに教科になると「答え」があるわけだからそこに子どもたちが「寄せていく」懸念があるという。確かに。
コーナー内でストーリーの感想を求められた中丸雄一は「小学生が自己判断でやったなら大したもん」と言っていた。これも同感。しかしネットで原作を探したらこれは1947年の作品がベースで、中学野球と表記されるも「甲子園」という単語が出てくることからいわゆる旧制中学の話ということになる。つまり生徒らは現在の高校生世代。小学生の対応と高校生の対応とではとらえ方が違ってくる。
ただし高校野球こそ監督は絶対。結局、ルールの尊重を求める題材になるのだ。
こう書くと原作は、1947年という戦後間もない混乱期ということもありまだまだ古い価値観だろと一刀両断したくなるが、意外と内容は深い。星野の一打が鍵となり無事甲子園切符を獲得するも、後日監督は星野の出場禁止を告げる。チームとして決めた作戦を独断で変えたからだ。
星野の一打はあくまでも結果論で、強攻策が裏目に出た可能性もある。負けたら星野は戦犯だった。学生野球は勝ち負けだけじゃないから、星野の行動は許されない。自己犠牲の心がない人は社会に出ても貢献できない。監督はそう説明し、星野もそれを受け入れる。
特筆すべきは監督が、星野を外すことで甲子園1回戦負けもやむなしと語っている点だ。ここは指導者として割りきっているなと感心してしまった。ちなみに星野は投手でもあり、しかも甲子園行きの試合で殊勲打を放っている。負けたら「なぜ星野を使わなかった?」と非難されるのは避けられない。それでも、敢えて。目先の1勝よりチームプレーを心掛けよと諭す監督は決してただ古いだけの人には思えない。
まあ、学生野球に教育的要素をどれだけ持ち込むのかは人それぞれ。だからいまだに明徳義塾による松井秀喜5敬遠は消化されていない。あれこそ見方によっては究極のチームプレーとも思うのだが。
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結局、「星野君の二塁打」は星野君ベースで語るより監督ベースで噛みしめる方が味わいがあると思うのだがいかがだろうか(道徳の時間ではありませんので答えはありません)。
なお、この二塁打を打った選手が「柳田君」だったら多分問題にはならない。そう、打つ人にもよる、という解釈も書き添えておく。
衣笠祥雄のファインプレー~江夏の21球に見る立場の違い
鉄人・衣笠祥雄が亡くなってから、そのストイックな面や相手を追い詰めない態度、フルスイングの精神が称えられている。そこは一定支持しつつ、どこか違和感もあった。そんなに完璧な人はいないんじゃないかと。しかし、4月30日のNHK特集再放送を見てホッとした。スランプもあったし、審判にもの申したりもしていたからだ。
そして、どこかに談話が出ていたら読みたかったのだが、連続出場記録が途絶えかねなかった死球を与えた西本聖は訃報をどう受け止めたのだろうか。あの夜、衣笠祥雄は痛みで眠れなかったそうだが、西本聖こそ眠れなかったに違いない。
そして、偉いなと思ったのは翌日登板した江川卓。あの状況で三球三振にできるレベルの高さ。さまざまなプレッシャーから腕が縮こまりそうなものだが、VTRを見る限り美しいストレートだった。状況からして変化球はありえない。あの辺りの呼吸こそプロの芸当である。
さらに何かとクローズアップされるのが江夏の21球で、ブルペンを気にする江夏をなだめるシーン。古葉監督としては万一に備えてピッチャーを用意するのは管理職として当然なのだが、江夏は受け入れられなかった。
これについては生前、衣笠祥雄が語ってくれていた。どちらも正しいのだと。個人的にはこれこそが衣笠祥雄のファインプレーと思っている。あそこで怒らない人には守護神は務まらないし、情に流されてただ続投させるのは指揮官としては二流、三流。むしろあの局面でピッチャーに肩を作らせられる古葉監督は一流と思う。だってマウンドには江夏がいて、今なお大ピンチなのだ。入り込むなという方が無理。やはりプレーヤータイプは管理職に向かない。
そういう意味では衣笠祥雄は監督としてはいかがだったかな、とは思う。きっと選手目線が強かったのでは。奇しくも同じく鉄人と称される金本知憲監督と同じような展開になっていたのでは、というのが個人的な想像だ。やはり総合的に見たら山本浩二監督だったんだろうなと思う。もちろん一度くらいは衣笠監督を見てみたかったのだが。
とにかく、鉄人なのに早すぎる死、というよりはあれだけ体を酷使したのだから長寿でなくても全く驚きはない。また一人、骨太の野球人がこの世を去った。特に親しかった二人を相次いで失った山本浩二が少し心配である。傷心の彼を癒すのはカープ初の3連覇しかない。
不適切やじには厳罰を~ヤジ将軍は腕の見せ所
カープおよびカープファンに対し、原爆落ちろ云々のヤジが飛ばされた。言語道断である。
発言の主は「酒が入っていた」と釈明しているが、ご丁寧に発言の際の映像をネット上にアップしていた。酔っていたのは酒に、ではなく自らの品のないヤジに、ではないのか。
野球においてはヤジも観戦要素の一つ。今日(こんにち)ほど応援が統制されていない時代は場内アナウンスくらいしかなく、ヤジがよく聞こえたという。この辺りは永井良和氏と橋爪紳也氏の著書「南海ホークスがあったころ 野球ファンとパ・リーグの文化史」を読んでおさらいした。
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本によれば鶴岡一人監督も、野村克也もうんざりさせられていた。昔は卑猥な言葉を発したり、選手の女性関係を語ったりもしていたそうだ。まあ女性関係については事実ならかばいようはないのだが。
気の毒なのは南海の阪田隆選手。坂田利夫と名字の読みが同じなのが災いし「アホの阪田」とヤジられたそうだ。(出典は南海ホークスがあったころ)
今回のヤジを報じる記事には「不適切やじ」という見出しが付いているが、じゃあ適切なヤジはあるのか。それは、思わず笑っちゃう、かつ、風刺がきいているものと思う。怒りに任せて乱暴な物言いにはなっては、場がしらけるだけだ。
差別的な言動についてはサッカー界の方が厳しい。チェックされたらスタジアムに入れなくなることもあるし、裁判所から観戦禁止処分が出た例もある。
プロ野球でも、ヤジがよほど悪質な場合は同様の措置をとってもよいと思う。スタジアムにはたくさんの少年少女も来る。やはりお手本にならないといけない。そう、今こそヤジ将軍の腕の見せ所なのだ。緩慢なプレーにはスパイシーなツッコミを入れ、素晴らしいプレーには賛辞を惜しまない。メリハリをきかせて一緒にプロ野球を支えましょう。
啐啄同時でないと部下はツラい~ちぐはぐな金本監督と藤浪晋太郎
ポテンシャルの高い部下が伸びないのは、上司にも原因がある。阪神の金本知憲監督と藤浪晋太郎の組み合わせはその典型に思える。
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開幕2戦目に藤浪晋太郎が起用されたのを知り、ああ、よかったなと思った。2017年シーズンは3勝に終わったから2018年は復活しないといけない。入団以来3年連続2桁勝利の輝きを取り戻さねばならない。藤浪晋太郎復活は阪神首脳陣も全員願っているだろう。
ならば、と言いたい。阪神ファンはすでに議論済みであろうが、4-2とリードしていた5回を終えて交代すべきではなかったか。日本テレビの中継で解説者の桑田真澄も「ボクなら代えます」と断言していた。いわく「シーズン初登板で勝つという結果が残ればいい」。
しかし金本知憲は違った。「今シーズンの軸」と期待するからこそ続投させた。だから代え時に藤浪晋太郎に打席が回ってきたがそのままバッターボックスに送った。梅野にバントさせたのなら藤浪晋太郎に代打→追加点、というシナリオは素人でも思い付くのだが。勝つための最善策を選ぶのが指揮官のはずだが?
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そう、金本知憲監督が二つ上の結果を求めてしまっているのだ。二段階一気に伸びる逸材は確かにいる。しかし、藤浪晋太郎の成績を振り返ってほしい。勝利数は10→11→14→7→3と、伸びて、下がっているのだ。いま何が必要かと言えば結果だ。
名選手が名監督になるとは限らない。いや、よくいる。プレーヤー時代の感覚が抜けきれずマネージャーに徹することができない上司が。金本知憲のストイックな姿勢は、残した実績から誰も否定しない。が、部下が同じようにできるわけではない。
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2018年シーズンは打線が充実しており、これは金本知憲監督が就任以来、我慢して若手にチャンスを与えてきた賜物だ。打つ方には結果が出ているのだが、喝を入れて伸びる人とそうでない人はいるのだ。
ちなみに桑田真澄は言っていた。藤浪晋太郎に足りないのは走り込みではなく、技術力だと。大阪桐蔭時代から素晴らしいパフォーマンスを披露してきたものの、やはり狙ったところに投げきれないとプロ野球では長く生き残れない。藤浪晋太郎の今後を考えるなら、いい感覚のまま降板させた方がいいと思うのだが、甘やかせすぎだろうか?
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殻を破れないとエースになれない。そんな声があるのは百も承知。しかし部下のコンディションを理解せず期待だけするのは無責任だ。
啐啄同時という言葉がある。禅の教えらしいが、啐はひながかえる際に卵の殻を内側からつつくこと、啄とは親鳥が外から殻をつついてやることを意味する。弟子がまさに悟りを開こうというタイミングで師匠が教えを与えることで悟りの境地に行ける。啐啄同時とか啐啄の機という言葉で表現される。いかがだろうか。筆者には待ちきれない金本知憲監督が外から卵の殻をハンマーで叩いているように見えるのだが。
高校時代、双璧だった大谷翔平は海をわたりメジャーリーグ開幕戦スタメンで初ヒット。藤浪晋太郎も潜在能力は折り紙つきだ。きっかけさえあればまだまだ上を目指せるし、そうなってほしい。今日から新年度。上司が栗山英樹タイプになるか金本知憲タイプになるかで部下の人生は大きく変わる。
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野球は怖い。だけど面白い~センバツ9回ノーヒットノーランでも彦根東・増居敗れる
ノーヒットノーランです、とアナウンサーが言った途端に記録が途切れるのは野球あるある。そして途切れたら、負けるというのもよくある話。第90回選抜高校野球の彦根東、増居翔太投手もそうなってしまった。
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近年は打撃力の向上が目覚ましく、打ち合いの試合も珍しくない。そんな中、増居翔太投手と、対戦相手の花巻東・伊藤翼投手の投げ合いは久々に投手戦の面白さを思い出させてくれた。
試合開始から見ていなかったのでしばらく気付かなかったが、伊藤翼投手は1回ノーアウトからのリリーフで10回まで投げたから、実質完投、完封だ。被安打6ではあるが、野球の勝ち負けは安打数ではない。
それはそのまま増居翔太投手にも当てはまる。10回に初ヒットを許し、その後ヒットや四球で満塁となったが最後は犠牲フライ。わずか被安打2で敗れた。これが野球の怖さであり面白さでもある。
特にこの第90回選抜高校野球大会は劇的。3本のサヨナラホームランがあり、うち2本は逆転サヨナラ3点ホームラン(明徳義塾の谷合と日本航空石川の原田)。30日は1日に二度もサヨナラホームラン(前述の日本航空石川の原田と、創成館の松山)。1大会に3本のサヨナラホームランは史上初、1日に2本のサヨナラホームランも史上初だ。
明徳義塾に至っては初戦で谷合が9回ツーアウトから逆転サヨナラホームランを放ち、次の3回戦では逆に日本航空石川に逆転サヨナラホームランを食らう、しかも谷合の頭越しにというドラマ。野球の神様、甲子園の脚本家は天才だ。
明徳しかり彦根東しかりだが、やはりチャンスにきっちり得点しておくことが大事。結果がまったく違ってくる。そして逆の立場ならこうも言える。「次の1本」さえ打たれなければいいのだ、と。たとえノーアウト満塁でも3人続けてアウトにできたらいいのだ。
花巻東の伊藤投手も9回にツーアウト1、3塁とピンチになったがファウルフライでピンチを脱したし、8回もツーアウトからセンター前に落ちようかという当たりを打たれたが、菅野がダイビングキャッチ。花巻東がよくしのいだとも言えるのだ。その点、増居投手の最後の球は高くなり、犠牲フライにつながってしまった。たらればを言うときりがないが、あれだけ低めに制球できていても、一度でもミスをしたら命取りになる。だからこそ、野球から目が離せない。面白い。やっている方は大変だろうけど。
センバツの裏でプロ野球が開幕した。球児たちも懸命だが、プロ野球選手も人生をかけている。その一球でスターになり、その一球で2軍に落ち、下手したら引退することも…野球は恐ろしい。そして、だからこそ面白い。2018年も野球を存分に楽しみましょう。
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劣勢の中でも最善を尽くす~第90回センバツ明徳谷合逆転サヨナラ弾への布石
片平晋作で清原和博を描いた山際淳司~「ルーキー」を堪能
ただ片平晋作を「読む」ためだけに買った。山際淳司の「ルーキー」。
ルーキーとは清原和博のことだ。清原和博が日の出の勢いならば、当時すでにベテランの片平晋作は夕陽と言って差し支えない。この対比は素人でも思い付くのだが、さすがに山際淳司。片平晋作を単なる夕陽には描かない。
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文庫本(平成8年のもの)では206ページに出てくる片平晋作のくだりは「トレード」というタイトルが付けられている。南海から西武へ。西武から横浜大洋へ。二度目のトレードの頃の話だ。
同じトレードではあるが片平晋作は一度目と二度目は違うととらえている。この辺りが味がある。それを書けるのが山際淳司でもある。また、片平晋作を通じて初期の西武ライオンズの本質を描いている辺りも秀逸。
今や競うように速報が出されていて、勝った負けたは誰でも発信ができる時代。であるからこそ余計に、心模様だとか独り言を映像化できる書き手は貴重だ。そこは目指していきたいと思う。
書き切る力と、感度が必要だ。
片平晋作は清原和博の才能をさらさらと話していた。リアルタイムで清原和博を見た人ならそうそうと言うような話。打撃指導みたいな、決してテクニカルな話ではないのだが、清原和博のすごさがうかがえる。この辺りが山際淳司の真骨頂に思える。
それにしてもパラパラと本をめくっただけでも、山田久志、西川佳明、石田文樹、藤原安弘、藤本修二、松山秀明などなと、黒柴スポーツ新聞の読者にはたまらない名前がわんさか出てくる。清原和博が強烈な光を放つから周りが影になってしまうのだろうが、影をもって清原和博というまばゆい光の輪郭を描く手法にはうならされる。ウイスキーをなめるように、もしくは和菓子を上品に食べるように、少しずつ「ルーキー」を楽しもうと思う。この本の中の清原和博であれば、受け入れられるから。
あらためて、好打者・片平晋作さんのご冥福をお祈りします。
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成長を妨げるのはあの技~栃ノ心初優勝の陰で鶴竜大失速
初場所は栃ノ心が優勝した。その頑張りは認めつつ、あえて注目したい。横綱鶴竜の大失速だ。
引き技は鶴竜の悪い癖。自他共に認める悪い癖だ。これが何とも、自分の弱い心とダブる。
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スキルが足りない。時間がない。人手が足りない。相手方の都合が悪くなった…仕事がうまくいかない理由はいろいろある(あえて口にするかは別として)。
しかし社会人は結果がすべてだから、最低限の成果は残さねばならない。そこで繰り出されるのが「間に合わせ」の成果。可もなく不可もなく。怒られるほどではないが褒められることはない。
NHKラジオで舞の海秀平氏が言っていた。鶴竜は関脇時代など横綱になるまでに、土俵際の逆転で勝ち星を拾ってきたのだと。数字上、結果は残してきたのだから横綱にはなることができた。しかし圧倒的な力が示せているかと言えば違う。優勝は通算3回しかない。
間に合わせは確かにピンチをしのげる。一方で間に合わせでしのいでしまったツケは必ず来る。その時はダメージが少ないが成長の妨げになる。
そう感じているからこそ今回の鶴竜の失速は、自分の弱い心とダブってしまったという訳だ。
対照的に栃ノ心は持ち前の怪力で初場所を制した。よく「自分の相撲をとる」と言うが、それができる人はやっぱり強いなとあらためて思った。相撲は力だけでは勝てないだろうから、栃ノ心は駆け引きなり柔軟さが加わればさらに上を目指せるのではと期待している。
とまあ偉そうに言う前に自分もスキルアップを心がけよう。
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インフルエンザ明けで区間賞!都道府県対抗駅伝の鍋島莉奈に学ぶ
都道府県対抗女子駅伝で、高知の鍋島莉奈選手(土佐山田高校出、日本郵政グループ)が1区の区間賞に輝いた。序盤から先頭集団の前方にいて、勝機をうかがっていた。そして満を持してのスパート。やはり勝つのは、脚が速いのはもちろん、クレバーなランナーである。
応援していただけに、区間賞になってうれしかったのだが、その後、思わず得した気分になった。
それは走り終わってからのインタビューの時のこと。
「きょうのベストを出そうと思った」
鍋島莉奈選手は、走るにあたっての気持ちをそう表現した。
何とインフルエンザ明けだったとか。それであの走り! 断続的に駅伝中継をチェックしていたから聞き間違えたかと思ったが、間違いではなかった。
体調が十分ではなかったからこその言葉であり、だからこその発想だったのだろうけれど、この言葉は深いなと思った。
そう、やみくもにベストを狙うというよりも、「きょうの」ベストを出せばいいのだ。
忘れていた。1日1日は違うことを。体調。心境。作業の難易度。仕事をする場所、相手やライバルの有無…。職人のように、決まった場所で作業する人もいるが、気温や湿度、天気などによりやり方を変えているはずだ。そう、自分も周りも同じ日なんてない。
とはいえ、上級者なり、プロだからこそ一定の成果を上げることが求められる。毎回ベストが出せるにこしたことはないが、伸び盛りでもない限り、それは難しい。だからこそ「きょうの」ベストを出せば、狙えばいい。なかなかいい発想に思えた。
不安定な毎日ではあってもその中でのベストを出す。デキる人なら仕事を連続性のある「線」でやる。だがやはり線も1日1日の点のつながりがあってこそ、線に見えるというものだ。
「きょうの」ベストを出し続けることで安定感が出る。安定感を出す。まずはそこから意識しよう。鍋島選手が作った流れを受け継ぎ、高知は過去最高の16位。年頭からいいものを見せてもらった。
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俺が潰した…野村克也元監督の伊藤智仁氏への酷使謝罪を語る
野村克也氏が、俺が潰した、とか、謝罪、とかいう話になればあの人しかいない。伝説のスライダーを投げていた元ヤクルトの伊藤智仁氏(両氏とも以下敬称略)だ。正月の番組「消えた天才~一流アスリートが勝てなかった人大追跡SP」(TBS系)の話だが、録画しておいたものを見た。
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いよいよ身辺整理
25年の時を経て野村克也が謝罪、という筋書きだがプロ野球ファンは、そしてヤクルトスワローズのファンはどう見たであろうか。黒柴スポーツ新聞編集局長は、野村克也がいよいよ身辺整理を始めた、と受け止めた。鎧を脱ぎ、一人の老人になったんだなと。
それに付き合わされた伊藤智仁も気の毒だが、酷使により選手生命が短命に終わったことを謝罪された伊藤智仁が「そんなこと思ってほしくない」と言ったのは、どんな意味だったかなと考えしまった。
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そんなこと思ってほしくない、とはどんな意味?
普通に考えたら「気にしてませんよ」という意味だ。実際、「けがしたのは自分が悪い」とまで言っていたし、投手はマウンドに上がったら投げきるものだとも言っていた。だから悔しさはあっても後悔はしてなさそうに見えた。
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しかし、「そんなこと思ってほしくない」は見方を変えれば、過去を否定することにつながるからこそ今さら謝罪はしてくれるな、とも見えはしないか。
宝くじを買う球団
何が言いたいか。そう、謝るくらいならやるな、という話。プロ野球は美談だけでは成り立たない。プロ入りは球団からしたら、選手の人生に大金を投じて「買う」行為だ。スターになれば球場が賑わいチームも強くなり「おつり」が来る。一方でモノにならない場合もある。前評判通りに活躍する選手もいるが実際は宝くじ=夢を買うような感覚ではなかろうか。選手自身も夢をかなえる立場だから、「おれの人生を金で買いやがって」とは思わないだろう。
選手は打ったら生き残れるし、打たねば価値を見出だしてもらえない。投手は抑えたら評価されるし、抑えられなかったら必要とはされない。分かりやすい弱肉強食の世界だ。
謝罪しなくてよかった?
だから、ヤクルトの野村克也監督が「チームを勝たせる」職務を全うすべく惜しげもなく伊藤智仁をつぎ込み続けたのは、ある意味必要なことだった。ならばノムさんも今さら謝罪はしなくてもよいのでは。黒柴スポーツ新聞編集局長はそう考えたのだった。番組でも再現されていたがそもそも伊藤智仁の獲得は野村克也の主張で実現したという。2017年の清宮幸太郎と同様、伊藤智仁が指名されたドラフトでは松井秀喜が目玉だった。そこで伊藤智仁を欲しいというのだから、やはり野村克也はよほど伊藤智仁を買っていた、ということになる。
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プロ野球選手にとって、細く長く生きるのが幸せなのか、短くとも太く、鮮烈な印象を残すのが幸せなのか。当人にしか分かり得ないが、本人が納得してさえいたら周りがとやかく言うものではないと思う。
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稲尾も酷使がなかったら…
野村克也も「稲尾和久か伊藤智仁か」と言っていたが、稲尾和久は名将・三原脩が自身を起用しまくったことについては酷使とはとらえていなかったようだ。稲尾和久の体を優先に起用していたら少なくとも300勝はしていたと想像する。
稲尾和久は1958年の日本シリーズで西鉄が3連敗から4連勝した時の立役者で、7戦中6登板4完投、5連投ありの4勝とまさに獅子奮迅の活躍。今ならこれを酷使と言うのだろうが、稲尾は結果を残しただけに「神様仏様稲尾様」と評された。結果が出たからかもしれないが、三原脩監督が「酷使した」という批判は見たことがない。ましてや三原監督が稲尾に謝罪した話なんて…。
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もし謝罪していたら西鉄ファンはどう思っただろうか。1958年に感動しまくっただけに、きっと興ざめしたに違いない。
皆さんのご感想は?
だから、やっぱり野村克也氏は今さら伊藤智仁に謝罪などしなくてもよかった、との結論に達したが読者諸氏はいかがだろうか。どうしても引っ掛かるものがあり、一言すまんな、と言いたかったのならカメラ抜きで謝ればいいのになと思う。もしかしたら番組の企画があればこその謝罪実現だったかもしれないが。
結論
カメラが回っていて、野村克也が隣にいて、伊藤智仁がどれだけ本音を語ったか分からないが、酷使を謝罪した野村克也に「そんなこと思ってほしくない」と、現役時代のスライダーばりのキレで潔く言い切った伊藤智仁はカッコよかった。それだけは間違いない。
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青山学院大学に箱根駅伝5連覇の可能性を見た~楽しむ人と削り出す人
第94回箱根駅伝は青山学院大学が総合4連覇を果たした。往路は東洋大学に優勝を譲ったが、6区の山下りと、以降の7区、8区も磐石。選手層の厚みを感じさせた。
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学年もポイント
視聴者なりに強さを分析したが、やはり黄金時代を作るには「学年」もポイントと見た。単純に、主力が4年生など上級生だけではその年か翌年に卒業してしまい、戦力ダウンは避けられない。この辺りは高校野球にも通じる。
青山学院大は3年前は神野大地という山の神がいたし、去年も一色恭志というエースがいた。今年は下田裕太が8区に起用され勝利へダメ押し。毎年のように柱がいる。
エースは両刃の剣
東洋大学は青山学院大学の独走に唯一、太刀打ちできそうな地力があるがやはり往路までだったとの印象は否めない。その東洋大学はかつて柏原竜二という山の神がいたが、このような絶対的エースの存在は頼りになる半面、代わりがいない点で両刃の剣と言える。だから4年以上の黄金時代を築くには一人の主流だけでは無理なのだ。
その点、青山学院大学は6区山下りの小野田、8区で区間新の林がまだ3年。来年がある。この点だけでも青山学院大学5連覇は可能性がある。
悲壮感がない、楽しんでいる
そして勝因をもう一つ。
解説の渡辺康幸氏が放送中に言っていた。
「青学の選手は、悲壮感がない。楽しんでいる」
確かに箱根駅伝は歴史と伝統を脈々と受け継いでいる。母校の誇りもかけているわけで、プレッシャーも相当あろう。さらには失敗した場合、次回は予選会からのチャレンジになる場合もある。他にもお世話になった方や、出られなかった控え選手への思いも背負っていたら硬くなるなという方が無理だ。
しかし。青山学院大学は今回ディフェンディング・チャンピオンとして追われる立場にも関わらず、焦りが感じられなかった。勝利を確信できる貯金があったからかもしれないが、下田裕太はキツさの中にも笑みさえうかがえた。
それは原晋監督の授けた前向きな発想の賜物なのだろうか。
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アメリカでは…
一つの単語を思い浮かべた。
「game」
日本では試合、という仰々しい単語だがアメリカではゲームという。単にイメージの問題かもしれないが、そこには「楽しむ」というニュアンスを感じることができる。
どちらかというと挑戦者
他の大学はまだまだ青山学院大学を必死で追わねばならないから、gameなんて雰囲気ではなかろう。東洋大学の「1秒を削り出せ」もチームの絆を感じさせて好感が持てるが、王者のフレーズというよりは挑戦者が使いそうに思える言葉にも聞こえる。
東洋大にも伸びしろ
楽しんで走れている青山学院大学は死角がなさそうに見える。青山学院大学に入って箱根駅伝を走りたい。そう思って有望な選手が入る流れが出来上がってしまっているのかもしれない。しかし、東洋大学のエントリーメンバーを見ると来年への楽しみも感じられた。下級生が多かったのだ。
楽しんで走る、勝ち方を知っている王者・青山学院大学と、1秒を削り出す東洋大学。早くも来年が待ち遠しい。
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