黒柴スポーツ新聞

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忖度と業務命令は紙一重~三原脩監督の小芝居を知りつつ燃えた稲尾和久

忖度は2017年の流行語になると見た。忖度とパワハラは紙一重、という話をしたい。

稲尾和久の「神様、仏様、稲尾様 私の履歴書」から大好きなエピソードを引用する。

神様、仏様、稲尾様―私の履歴書 (日経ビジネス人文庫)

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完投した稲尾和久が翌日、グラウンドで体をほぐしていた。名将・三原脩監督が「お疲れ。今日はあがりだな」と声をかける。つまり、ベンチには入らないでいいよ、と。

説明ばかりだとただ写しているような引用になるので以下、今風のセリフで。

「どこで試合見んの?」
「記者席とか」
「じゃあベンチでも変わんなくね?」
「そうっすね」

勘のいい人はこの辺でエンディングが予想されると思うがまあしばしお付き合いを。

試合が進むと三原脩監督はわざわざ稲尾和久の近くに来て、考えごとをして、難しい顔をする。デキる稲尾和久はうすうす三原脩監督の演技を怪しんでいる。

西鉄の旗色が悪くなると三原脩監督はブルペンとやり取りして「ダメか、困ったな」なんて聞こえよがしにしゃべりだす。ハイハイハイ、とうなずくあなたも毎日お仕事お疲れさまです!

魔術師〈上〉―三原脩と西鉄ライオンズ (小学館文庫)

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デキる部下の稲尾和久は「ボク行きましょうか?」とキャッチボールをやり出す。ただし前の日完投しているから肩はバッキバキ。でもだんだんほぐれてきて川崎徳次コーチから声が掛かる。「行っちゃってくれる?」
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お客さんから「待ってました」と声援が飛ぶと稲尾和久のハートは「油紙のように燃え出した」という。

そう、稲尾和久はうまく三原脩監督に操縦された。それは手なずけられたという意味ではなく、気持ちはそう遠くなかったという意味だ。稲尾和久の燃える気持ちを三原脩監督がうまく引き出した。そういう意味ではパワハラではない。

しかしもともとは休息日だから優しくはない。実際、「あがりでもピッチャーは敵を見て勉強した方がいいよね」的な打診を稲尾和久にしていた。これを稲尾和久はズバリ「これはもう業務命令だ」と書いているし、この項目のタイトルが「三原監督の業務命令」になっている。

そう、上司の「やれるか?」は「やれ」なのだ。「Can you?」ではなく「do!」というか。

ただし言われる人がエースと2軍選手ではまったく意味合いが違う。やれるか?とエースが聞かれた場合はガチでの相談。なんなら全権委任されるから続投も降板も自分で決められる。一方、2軍選手は「やれるか?」と聞かれてもまったく心配されていない。むしろやれよ的な。むしろなぜキミはやらないの的な。

結局上司と部下に信頼関係があれば忖度なのだが、単なる主従関係なら業務命令、その最悪バージョンがパワハラなのだ。稲尾和久の気持ちは「油紙のように燃え出した」のだからどのような関係かは分かるというものだ。

あなたは上司が三原脩監督ばりに小芝居を始めたらどうするだろうか? 稲尾和久のように忖度して「行きましょうか?」と先回りするか、業務命令とあきらめるか。別に忖度は悪い言葉ではない。筆者は上司というだけでへーこらするつもりは毛頭ない。むしろ意気に感じたら居残りでも早出でもできるタイプ。右肩上がりの成長が難しい世の中だからこそ、稲尾和久のように意気に感じて油紙が燃えるように働きたいものだ。
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