黒柴スポーツ新聞

ニュース編集者が野球を中心に、心に残るシーンやプレーヤーから生きるヒントを探ります。

まずは履いてみる~第96回箱根駅伝でヴェイパーフライ旋風

ヴェイパーフライ。箱根駅伝で話題沸騰となり、初めて知った。高校駅伝でピンクのシューズがやたら多いなと思っていたが、箱根駅伝でもピンクのやらオレンジのやら。2020年の箱根駅伝往路は高速レースだったが、このナイキの厚底シューズがよい成果につながったのかもしれない。Amazonで探してみましたが、あっているだろうか?

シューズの詳しい機能は専門家や製造元におまかせするとして、ランナーでもない筆者は思う。シューズの機能は素晴らしいのだろうが、まずは履いてみようという姿勢がいい。1足3万円らしいが、相場が分からないので高いとも安いとも言えない。庶民の感覚では安くない。だが、これがトレンドならば、学生ランナーたちがこぞって履くのはあり。いや、むしろそうあるべきだと思う。かくいう筆者にはそういう執念が足りない反省があるからだ。昔から変なところで意固地。みんなが取り入れるならば取り入れない。本心はみんなと同じであることにものすごく心地よさを感じるくせに、だ。何でも試してみる。それで自分に合っていたら取り入れたらいいだけなのに。草野球をやっていた時もそうだ。ビヨンドマックスというカーボン素材を生かしたバットが登場した時は、チームで早速取り入れた。しかしそれに頼るのもね、と筆者は使わなかった。そういうところだ。打てない、飛ばない人だからこそ道具を上手に使えばよかったのに。箱根駅伝に出るくらいだから、出場するランナーはヴェイパーフライを履かなくても、自分の力を発揮することができればよい成績を残すと思う。だが道具を上手に使えばさらによい成果が出せるかもしれない。そう、ヴェイパーフライを履くという行為は勝つためにはどんなことも妥協しない、という意思の一つの表れに違いない。電子マネーもアプリも。話題になったものを敬遠してしまう傾向は依然として消えない筆者。ランナーではないからヴェイパーフライを買うことはなさそうだが、流行りに飛び付くという意味ではなく何かを成し遂げたい、そう欲する場面では妥協せず道具を求めていこうかなと切り替えてみよう。ナイキのシューズが大盛り上がりしているのを、アシックスやミズノ、アディダスなど他のメーカー担当者はどんな気分で見ていただろうか。モノ系で見るもう一つの箱根駅伝も非常に興味深い。

箱根駅伝、新興勢力と伝統校~青山学院大を追った東京国際大

第96回箱根駅伝が1月2日に行われ、青山学院大学が3年ぶり4度目の往路優勝に輝いた。青学の地力の強さを感じた大会だったが、黒柴スポーツ新聞的には2位の国学院大学にも、3位の東京国際大学にも注目した。この2校で箱根を走ろう、勝とう、という志が素晴らしいからだ。

 

筆者は伝統とか名門に力強さを感じるタイプ。歴史は一朝一夕では作れない。だからこその価値を感じる。もし幸運にもたぐいまれな脚力を授かっていたら、箱根駅伝の常連校に入ることで箱根駅伝を目指していたと思う。また実際そうしている人もたくさんいる。

箱根駅伝出場校や優勝校はひと昔前から様変わりした感がある。筆者が箱根駅伝にハマりだしたころは山梨学院やら早稲田、順天堂大学が強かったし、神奈川大学駒沢大学の時代もあった。近年は青山学院大学東洋大学などが牽引した。帝京大学上武大学なども定着した。しかしもはや毎年言われる気もするが戦国時代の様相で、山梨学院も上武大学も今回は出られなかった。名前だけで箱根駅伝には出られない。

箱根駅伝公式ガイドブック2020 2020年 01 月号 [雑誌]: 月刊陸上競技 増刊

箱根駅伝公式ガイドブック2020 2020年 01 月号 [雑誌]: 月刊陸上競技 増刊

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/12/20
  • メディア: 雑誌
 

 

とはいえ伝統校にはノウハウやら経験があるから新興大学よりは若干有利だと思う。その意味では東京国際大学が伝統校を抑えて一時首位を走ったことは本当に素晴らしい。そして筆者はあることを思い出した。そういえば東京国際大学の選手、前に見たなあ、と。2017年の関東学生連合で幻の区間賞だった照井明人選手(当時4年)だ。

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当時の記事でも書いたが学生連合の選手には貴重な経験を出身大学に持ち帰るという、もう一つの重要なミッションがある。規定により照井選手には区間賞が与えられなかったが、箱根駅伝の貴重な経験を後輩たちに託すことができた(東京国際大学箱根駅伝初出場自体は照井選手が3年の2016年)。あの「東京国際大」というユニホームの文字をアピールしながらゴールした場面は、これから歴史を作ってくれよという先輩からのエールに思えた。

東京国際大学 (2020年版大学入試シリーズ)

東京国際大学 (2020年版大学入試シリーズ)

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 教学社
  • 発売日: 2019/08/28
  • メディア: 単行本
 

 

そうした先輩たちの思いに後輩たちは見事に応え、2020年の大会は予選会トップ通過で参加決定。からの本戦3位だから関係者も学生たちも本当にうれしかっただろう。往路最終5区では一時4位に後退したが、4年の山瀬が驚異の粘り。ゴール前で東海大学を抜き返した。何という根性。正月からいいものを見せてもらった。 

あまりに細かすぎる箱根駅伝ガイド2020 (ぴあ MOOK)

あまりに細かすぎる箱根駅伝ガイド2020 (ぴあ MOOK)

  • 作者:EKIDENNEWS
  • 出版社/メーカー: ぴあ
  • 発売日: 2019/11/26
  • メディア: ムック
 

 

箱根駅伝のテレビ中継や東京国際大学のWebサイトによれば、部員3人からのスタート。箱根駅伝を目指すだなんて、笑う人さえいたかもしれない。箱根駅伝目指すなら実績ある大学だろう、と。しかし新興勢力には歴史を作るという楽しさがあったことだろう。伝統をつむぐにはつむぐなりのプレッシャーがあり、やりがいがあることだろう。どちらが優れているとかいいとは言わない。ただ、歴史は自分たちで作るんだという気概は見ていて気持ちのよいものだな、と思った。それは新興勢力がチャレンジャーである時期ならではの感動なのだけれども。

箱根駅伝ガイド決定版 2020 (YOMIURI SPECIAL 127)

箱根駅伝ガイド決定版 2020 (YOMIURI SPECIAL 127)

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 読売新聞社
  • 発売日: 2019/12/06
  • メディア: ムック
 

 

予選会で危うく出場権を失いかけた早稲田がきっちり10位以内に入ったのはさすが。こういう伝統校の粘りも素晴らしい。筆者の母校、法政大学は1区から最下位と苦しかったが山のスペシャリスト青木の踏ん張りで16位まで盛り返した。往路を制した青山学院大学の優勢は間違いないが東京国際大学がどこまで粘れるか。昨年覇者の東海大学はどこまで巻き返せるか。2位国学院大学、3位東京国際大学、4位東海大学まで往路新記録というスピードレースだったが、新興勢力も伝統校も復路で、日頃の練習の成果を十分発揮してもらいたい。

 

あわせて読みたい第95回箱根駅伝関連記事はこちら。

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続かない苦しい努力はしない~中日・山本昌「133キロ怪速球」を読んで

2020年は読書に力を入れよう、そう考えている。年末にいくつか読み、元日も続きを読んだ。読み終えたのはこれ、山本昌著「133キロ怪速球」(ベースボール・マガジン新書)。私はソフトバンクファンだから元日から山本昌じゃなくても、とも思ったが、なかなかためになるくだりがあった。読書イヤーとしては幸先いい。

133キロ怪速球 (ベースボール・マガジン社新書)

133キロ怪速球 (ベースボール・マガジン社新書)

 

本の中で山本昌は、自分は特別の才能の持ち主ではないと表現し続けていた。本の最後にもそう書いていた。名球会入りしているし、ノーヒットノーラン(しかも史上最年長)達成者でもある。最多勝3回、最優秀防御率沢村賞にも輝いた。特別な人でしょ、と今でも思う。しかし「133キロ怪速球」を読むと、数々の運や縁を大切にし、ひたむきに野球を続けてきたからこその成績だということが分かった。

レジェンドの軌跡 山本昌の32年

レジェンドの軌跡 山本昌の32年

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 中日新聞社
  • 発売日: 2015/11/20
  • メディア: 雑誌
 

また、山本昌は10.8の当事者でもあり(登板機会はなかったが)、その内幕にも触れている。その日は巨人が勝ったので巨人が優位だったと思いがちだが、巨人の投手のやりくりは厳しかったこと、そして中日は勝つムードがあったと書いてあった。10.8については鷲田康著「10・8 巨人VS.中日 史上最高の決戦」が詳しいが、今回山本昌の証言も興味深く読めた。

10・8 巨人vs.中日 史上最高の決戦 (文春文庫)

10・8 巨人vs.中日 史上最高の決戦 (文春文庫)

 

「133キロ怪速球」は七つの章から成っている。一番面白く読んだのは選手時代のエピソード以上に第7章の「正しい努力の方法」。本の帯に「小さな努力をコツコツと」と書かれていることに後から気が付いたが、そういうことが書いてある。中でも「続かない苦しい努力はしない」という小見出しが印象的だった。こういう考え方もあるんだな、と勉強になった。努力を続けるのにもコツがある。やるかやらないか、じゃなくて、続けてやるにはノルマを減らしてでもやる、でもそうする代わりに続けるのだ、と書いてあった。山本昌は人に誇れる才能があるとするなら「継続力」なのだそうだ。

継続する心

継続する心

  • 作者:山本 昌
  • 出版社/メーカー: 青志社
  • 発売日: 2019/03/22
  • メディア: 新書
 

第7章ではライバルの存在にも触れている。初登板ノーヒットノーランの近藤真一、エース今中慎二山本昌に刺激を与えた二人のピッチャーの存在は興味深かった。刺激を与える、与えられる。そんな関係の人がいるのは素晴らしいと思う。

悔いは、あります。

悔いは、あります。

 

というわけで、山本昌に興味がある方、努力について考えてみたい方にはおすすめです。どこかで見つけたら手に取ってみてください。それでは、2020年も黒柴スポーツ新聞をどうぞよろしくお願いいたします。

2019年ホークスコラムで一番シェアされた選手は?~意外、でも納得のあの人が1位

いろんなメディアが1年を振り返る企画をやっている。それにつられるわけでもないのだが、記録もかねてやっておこうかなと思った。果たしてこのブログ「黒柴スポーツ新聞」で2019年最もシェアされた記事は何なのか? そして読者のあなたがシェアしてくださった記事はランクインしているのか……

 

主にソフトバンクの選手や戦術、試合結果について2019年シーズン中に書いたブログ記事は110本だった。我ながらよく書いたなと思うが、その興奮や感動、落胆まで共有できたらとホークスファンの皆さんが集うコミュニティーにも記事を投稿させていただいている。その結果、たくさんシェアしていただけた。ブログはどうしても独善的になる懸念があるため、評価を今後に生かす狙いもある。では、いったいどんな記事が目の肥えたホークスファンに受けたのか。シェアの数をチェックしてみた。

【第5位】長谷川勇也の回、82シェア

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ベテラン長谷川勇也は2019年なかなか1軍に定着できなかった。しかし昇格の都度しっかり結果は残した印象。コアなファンはいるのでこの黒柴スポーツ新聞で取り上げると、たくさんのシェアを獲得している模様。2020年はバレンティンが加入し長谷川は若手とも助っ人たちとも競争しなければならないが、変わらずいぶし銀の活躍をしてもらいたい。

 

【第4位】平石洋介の回、85シェア

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2019年に楽天を率いた平石洋介が退団したのだが、ソフトバンクが手を差しのべた。最下位からクライマックスシリーズ進出を決めただけに監督として力を発揮するのはこれからという時。しかし楽天三木肇を1軍監督に据えた。だが捨てる神あれば拾う神あり。シーズンオフはFAなど選手の動向に目が行きがちだが平石に着目したソフトバンクはしたたかだ。この記事がシェアされたのはその辺りと、平石への同情票、そして応援票があると見た。

 

【第3位】高谷裕亮の回、90シェア

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高谷が日本一の胴上げキャッチャーたりえたのは抜群の安定感があるからこそ。高谷がいるからこそ、ここ一番では思いきって甲斐に代打が出せるメリットもある。頼れるキャッチャー高谷の評価はもっと高くていいんじゃない?と一石を投じてみた。このあと契約更改した甲斐は1億円を突破。高谷は3分の1だが出場試合数が違うから仕方ないか。それでもこのシェア数を獲得したのはひとえに高谷の人柄、存在感からくるものと思う。

 

【第2位】川島慶三の回、104シェア

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出ました、黒柴スポーツ新聞編集局長イチオシの川島慶三。スタメン起用されたらradikoにかじりついて聞きたくなる元気玉左キラーとして重宝され、しぶとく選ぶ四球はまさに芸術品。今何をやるべきかが分かっている選手。バレンティンの移籍に際しては背番号4を譲る男気も。2019年たった2つの3桁シェアの一人が川島慶三なのはコアな読者がホークスファンである何よりの証拠。

 

【第1位】牧原大成の回、118シェア

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何と1位が牧原。これは正直、筆者も予想せず。しかし声を大にして言いたい。2019年、けが人、離脱が相次いだホークスが優勝争いできたことに関して、牧原大成が内外野、献身的に頑張った功績は大きい。たぶんホークスファンはそれが分かっている。一番バッターとしては物足りない面があったが、西武戦で見せたあの外崎のライナーに食らいついた場面は本当にしびれた。果たして牧原は2020年、どういう形で試合に出るのか。さらなる活躍を期待したい。

 

というわけで第1位は牧原大成だったが、まあ松田宣浩はいないわ、内川聖一もいないわ、千賀もいないわで渋いメンバーがシェア数上位を独占した。筆者が好んで渋い選手にフォーカスしている面もあるが、スター選手ばかりでなく控えも含めて素晴らしい選手が持ち味を発揮しているからこそ、ホークスが日本シリーズ3連覇しているとも言える。2020年もホークスを応援しながら毎日楽しく過ごせたらと思う。2020年も黒柴スポーツ新聞への応援をどうぞよろしくお願いいたします。

伝統とファンサービス~ソフトバンク内川聖一がユニホームで持論

ソフトバンク内川が球団に提言 花盛り「特別ユニホーム」に一石、という西日本スポーツ記事を興味深く読んだ。ファンサービスの重要性は認識しつつ、年に1度クラスの地方球場ならばそこは普段のユニホームでやる方が子どもたちの心に焼き付くのでは?という持論だ。これを見て、今の黄色を生かしたユニホームも伝統の域に達したなという発見があった。

 

元野球カードコレクターとしては、「限定」とか「復刻」というキーワードにめちゃくちゃ弱い。希少価値に飛び付いてしまうのだ。それがコレクター心理、ファン心理というもの。別に強欲ではない。また、球団も記念ユニホームでしこたま稼ごうとも思ってはおるまい。実際球団が鷹ガールにピンク基調の記念ユニホームを配るなどしており、無料で記念ユニホームをゲットしてきたファンも多い。球団とファンが一体となり盛り上がれる。記念ユニホームは素晴らしいアイテムだと思う。

 

内川聖一とてそこは十分理解している。からの持論。内川自身、少年時代の巨人対ダイエーのオープン戦で見たユニホームが忘れられないという原体験がある。これが強いホークスのユニホームなのだ、と。そう思わせられるほどの自負がある。そういうことではなかろうか。先日見つけたFull-Countの記事の見出しは「強すぎるソフトバンク、優勝5度に勝率5割未満は1度もなし…10年代パ最強チ―ムは」。そう、ソフトバンクのユニホームに強さを感じても当然の成績なのだ。

 

ソフトバンクDeNA楽天と、IT系の親会社を持つ球団もぼつぼつ伝統を意識してもおかしくない年数になってきた。その中でもソフトバンクの成績には安定感がある。つまりファンサービスの一つである「勝利」はしっかり供給してきたのだ。なかなか生で見ることがかなわない地域のファンだからこそ、その目にしっかりと強いホークスのユニホームを焼き付けてほしい。内川聖一が言いたかったのはそういうことだと思う。ソフトバンクにはこれからも、期間限定などで記念ユニホームを上手に活用しながら、強いホークスを印象付けてもらいたい。

探究心と努力~代打本塁打27本の高井保弘と世界の盗塁王・福本豊

1年を振り返る時期。2019年になくなった一人の高井保弘氏(以下敬称略)について、澤宮優さんが追悼記事を書かれていた。タイトルは【追悼】「代打で世界一になった男」元阪急・高井保弘の勝負師人生。昭和の話ゆえに若い人からしたら遠い世界の話に聞こえるだろう。しかし、時代は変わっても努力の大切さは変わらない、ということを私は再認識した。

高井保弘といえばメモ。投手のクセを記録したメモについてはこの黒柴スポーツ新聞でも取り上げた。

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澤宮優さんによる追悼記事を読んだ後で、同じく阪急にいた福本豊の本「走らんかい!」(ベースボール・マガジン新書)を読んだ。そして高井と福本に共通点を見出だした。それは優れた探究心だ。高井は投手のピッチングフォームのわずかな違いからから球種を割り出しひと振りに懸けた。福本豊は投手それぞれのタイミングを熟知した上で盗塁を積み重ねた。いずれも投手を丸裸にすることが飯のタネになったわけだが、そういう努力をしない人はいくらでもいる。代打本塁打27本の世界記録と通算1065盗塁(元世界記録)はたゆまぬ努力の結晶なのだ。

走らんかい! (ベースボール・マガジン社新書 28)

走らんかい! (ベースボール・マガジン社新書 28)

 

 

厳しいプロの世界だから、やらなければ生き残れない。高井保弘にしてみれば代打で結果を出すことがレギュラー定着への道だった。福本豊にしてみれば走ることと守備で頭角を表すことができた。努力することは存在感を高めること。そう言い換えていいのかもしれない。

代打の神様: ただひと振りに生きる

代打の神様: ただひと振りに生きる

 

 

今年1年、自分はそういう努力をできただろうか。残念ながら、中途半端に終わった気がする。やるか、やらないか。何かを継続してやることがまず素晴らしいのだが、己の仕事に徹底的に向き合うこと。どうしたら壁を打開できるのか必死になって考えること。高井保弘福本豊もそこを妥協しなかったから世界記録を作れたのだと思う。今さら自分に世界記録など狙えるわけもないのだが、二人の姿勢は見習おうと思う。

エースの系譜を受け継げ千賀~20勝の斉藤和巳、18勝の杉内俊哉、17勝の攝津正

千賀の3億に対して、というよりも13勝に対して物足りないというコメントがヤフコメに多い印象を受けた。私は3億に全く驚かなかった。そして15勝やら18勝してこそエースという意見をもっともだと思う。また、それを法外なリクエストとも思わない。なぜなら千賀だから。千賀なら15や18行けるんだから、という考えからのヤフコメと見た。別に難癖つけてるとは思わなかった。

 

一つだけ付け加えるなら、4年連続2ケタだからよい評価を得ているということ。単年15勝も素晴らしいが、毎年2ケタは同じくらい、いや、それ以上に素晴らしいと思う。もはや千賀なら2ケタ勝つのは最低ラインの数字だ。

 

NPBのサイトにある千賀の年度別成績を見て気が付いた。2019年は227奪三振の一方で75与四球。前年が58だから際どいところに投げすぎなのではないか。球数も要するし、そこを改善することで180.1回だったのだが投球回数を200に近づけられるはずだ。

 

ヤフコメでなるほどなと思ったのは8敗への指摘。なるほどなと思った。千賀にしては負けている印象を持つ。先ほど4年連続2ケタ勝利に触れたが、この間の負けは3→4→7→8。エースになっていく過程でしんどい試合や重圧が掛かる局面での登板が増えていくから負け数が増えるのはやむを得ない。しかしやはりエースであるならば負けてはいけない。それがエースであり、そう見られるのはエースの宿命なのだ。

 

斉藤和巳杉内俊哉、攝津正。ホークスの歴代エースは背中で語る印象だ。エースは負けない。それを体現してくれている。斉藤和巳の20勝3敗、16勝1敗(!)、18勝5敗。杉内俊哉の18勝4敗、15勝6敗、15勝5敗。攝津正の17勝5敗。印象的な成績をピックアップするとまさにエースとうなってしまう。そしてカッコいい。そして思う。千賀にもこんな成績を残してもらいたいな、と。アメリカに行くのもよかろう。それが千賀の夢ならば。しかしその前に。千賀にはぶっちぎりの成績でパ・リーグ最多勝に輝いてもらいたい。強い、負けないエースの姿を、久しぶりに見てみたい。

 

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変えざるを得ないんだよ~王貞治がソフトバンク内川聖一にエール

「変えざるを得ないんだよ」
世界の王貞治はやはりすごいなと唸ってしまった。元ネタは西日本スポーツ記事、王会長「変えざるを得ないんだよ」名球会で正面に座った内川へのゲキ。内川を叱咤激励する内容だ。

 

もっと遠くへ (私の履歴書)

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発言を詳しく振り返る。
「打撃フォームも何年型、何年型とあっていい。当然体だって変わってくるし、相手だって変わってくる。変えざるを得ないんだよ」
内川聖一は2020年、38歳のシーズンだ。王さんは同じ年齢の時、打率3割、39本塁打だったそうだ。王貞治クラスだとそれは才能で打ったのだと思われがち。もちろん天性のものもあったに違いないが、やはり裏では相当の努力があるに決まっている。ここで注目したいのは努力の仕方。王さんと言えば一本足打法だから、それを追求していけばよさそうだが、発言から深読みすれば一本足打法にも何年型、何年型とマイナーチェンジを積み重ねていたとも受け止められる。確かに年齢だけ考えても毎年違うのだから、何歳なりの、というのがむしろ自然だ。

 

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  • 発売日: 2008/11/21
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定番にこだわるのが職人と思いがちだが、型に固執してはむしろ可能性を狭めてしまう。また、年齢や環境に応じてやり方を変えていかないと結果は出せないし、出せても無理が重なるのではないか。2019年、内川聖一は不振に陥ったが本人的にはいつも通りのバッティングをしただけかもしれない。でもとらえられない。とらえきれない。とらえたと思ってもほんの少し芯からずれている。素人には分からないほどのズレだろうが、その誤差、狂いが命取りになった。そういうことだろうと思う。

そして内川はバットやタイミングの取り方を改善しようとしている。そのことは以前書いた。私は稀代のヒットメーカーの内川聖一がなお結果を求めて努力しようとしている姿に感動するのだが、今回王さんの「変えざるを得ない」を読んで、自分の甘さをあらためて感じた。私は変化を極度に恐れているな。だから成長しないのだ、と。変わらずにいられるならそれが一番楽。でも王さんが言うとおり、相手(環境)は変わるのだ。ならば順応していくしかない。適応力なきものは生き残れないのだ。すぐに変われるはずもないのだが、意識は変えられる。変わりたいとか変わりたくない、じゃなくて変えざるを得ない。今の自分の姿に迷う時は、王さんの言葉を噛みしめよう。

男気見せた川島慶三の新背番号は99~バレンティンとナインを橋渡し

見事だ。
見事すぎる。
川島慶三が背番号を変更した。ソフトバンクバレンティンを獲得。バレンティンはヤクルト時代に背番号4を背負っていたため、川島慶三自ら球団に、背番号4を譲ると申し出たのだという。どうやら4はバレンティンが付けるよね、とソフトバンクファンは分かっていたのだが私は仰天した。川島慶三が新しく付ける背番号が99だったからだ。

99はかつて中村紀洋が背負ったことがある。プロ入り初の番号66をひっくり返したと本人が語ったとの説明をWikipediaで見つけたが、中日で育成を経て背番号99を背負ったのを見ると崖っぷち感があった。松坂大輔も同じく中日で99を背負ったが、崖っぷち感と、足したら18になる両方の意味合いが感じられた。川島慶三の背番号99は自分で選んだのだろうか? コメントによれば球団は、背番号4を川島慶三に付けてほしいと話したという。それは川島がバレンティンに譲ったわけで、話の流れからしたら球団が提示しそうな番号ではない。となると川島慶三が選んだのかもしれない。だとしたらどんな思いを込めてのことなのか、詳しく聞いてみたい。左殺しで背番号4。必殺仕事人感が半端なかったので私は川島慶三の背番号4が大好きだったのだが、支配下登録で最も重い背番号99もなかなかのインパクトだ。99のグッズ買って!と川島はコメントしていたが、私も何かしら身に付けたい。バレンティンは緩慢なプレーをしたり私生活でお騒がせしたりと、チームに馴染めるか不安視しているファンもいる。ましてや年俸5億円。日本シリーズで巨人に圧勝し、もはや補強は要らんのじゃないの?と言いたくもなるが、念には念を入れての獲得なのだろう。2019年はデスパイネ、グラシアルが相次いで離脱した時期もある。リスク管理の範疇かもしれない。川島慶三はもろもろの事情は分かりつつ、しかしバレンティンのことはリスペクトしているとの姿勢を貫いている。そうやってバレンティンとチームの橋渡しをしている。たまたまヤクルト時代に同僚だっただけかもしれないが、川島は日本ハム→ヤクルト、ヤクルト→ソフトバンクと移籍を経験しているだけに、チームに溶け込む難しさやコツを知っていて、バレンティンのために一肌脱いだのだろう。川島慶三が背番号を譲るくらいの選手だ、となればイメージは変わってくる。もちろんバレンティンにはそれ相応のプレーが求められる訳だが。……からの川島慶三背番号99である。カッコよくないはずがない。背番号99が2ストライクから粘って四球を選ぶのかな。背番号99がライト前に打ってランナー1、3塁になるのかな。背番号99が左腕対策で1番バッターになるのかな。何かをやってくれる背番号99に期待しよう。

記憶に残る仕事をする~4打席連続本塁打の醍醐猛夫氏死去

元ロッテの醍醐猛夫氏(以下敬称略)が201912月11日、亡くなった。定期講読している新聞では、訃報記事の見出しが「4打席連続本塁打」となっていた。それはそのまま、プロ野球ファンが持っていた醍醐猛夫の記憶だった。私が、見出しを付ける整理記者であってもそうしたに違いない。訃報記事の見出しが故人のすべてを物語る訳ではないのだが、やはり一人の人間が人生で何かを成し遂げる、という意味では、見出しになるようなインパクトのある仕事を残したいものだ。

 

消えた球団 毎日オリオンズ1950~1957

消えた球団 毎日オリオンズ1950~1957

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: ビジネス社
  • 発売日: 2019/06/03
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 

醍醐の4打席連続本塁打は知られている話だが、今回訃報記事で気付いたことがある。醍醐は通算本塁打が81本だったのだ。18年の現役生活。単純計算で年間平均5本以下である。その男が4打席連続で本塁打を放つ。そこにしびれた。醍醐の4打席連続は2日にまたがっての記録だが、その2日に何があったのかが知りたい。広島の鈴木誠也は連日サヨナラホームランを放って緒方監督に「神ってる」と言われたのだが、醍醐もまたこの2日間は神がかっていた。

 

私が好きな本のタイトルで澤宮優さんの「燃焼の瞬間」がある。正確には「プロ野球・燃焼の瞬間―宮田征典・大友工・藤尾茂」。巨人の名選手の足跡、そして燃焼の瞬間を丁寧に綴った作品だ。人にはそれぞれ輝き時がある。早くから頭角を表す人がいれば、大器晩成の人もいる。醍醐の場合は早稲田実業時代に王貞治とバッテリーを組み、夏の甲子園に出場。プロ入り1年目から正捕手になっているから、早くから実績が積めていた。だが18年の現役生活の中では正捕手の座を奪われたこともある。4打席連続本塁打を記録したのは現役終盤と言える1971年。結果的には、まだまだやれるという良いアピールになったのではないか。まさに燃焼の瞬間で、気力体力が充実していたからこそ大記録が作れたのだと思う。

 

プロ野球・燃焼の瞬間―宮田征典・大友工・藤尾茂

プロ野球・燃焼の瞬間―宮田征典・大友工・藤尾茂

 

 

 

燃える男と言えば長嶋茂雄。だがみんながみんな長嶋さんのようにいつもいつも燃えられる訳ではない。むしろ燃えられない日の方が多いだろう。だからこそきょうは行けるぞと、何だか調子がいいぞという時には思いきって行動したいものだ。きょうなら結果が出せるかもしれないという日は貪欲に行動する。醍醐のようにとにかくバットを振ってみることで、ものすごい結果が残せるかもしれない。残念ながらその瞬間はいつやってくるかは分からない。裏返せば、だからこそ常に準備をしておかないといけない。自戒を込めて書いておこう。

 

記憶に残る仕事、と言えば醍醐猛夫は「連勝キラー」としても知られる。稲尾和久を20連勝(1957年)で、杉浦忠を12連勝(1959年)と13連勝(1964年)でストップさせる殊勲打を放っている。稲尾も杉浦も球史に残る大投手。しかも連勝中だ。4打席連続本塁打といい、やはりある程度の実力がなければ勝負強いバッティングはできまい。

 

神様、仏様、稲尾様―私の履歴書 (日経ビジネス人文庫)

神様、仏様、稲尾様―私の履歴書 (日経ビジネス人文庫)

 

 

 

どなたかが紹介していたが醍醐猛夫は選手や指導者として、毎日、大毎、東京、ロッテ「オリオンズ」と千葉ロッテマリーンズのユニホームに袖を通したそうだ。これを知っていた方はなかなかの野球通。また、醍醐猛夫がそれだけ球団に必要とされていたことを物語っている。現役生活の安打数は18年間で1132安打だった。プロ野球記録大鑑の名簿には醍醐猛夫の近くに醍醐俊光の名前があった。猛夫の弟だという。醍醐俊光の成績は実働2年で2打数0安打。兄はオリオンズとマリーンズの長きにわたってチームに関わり、弟はわずか2シーズン。兄弟でプロ野球の厳しさをリアルに教えてくれている。

忘れられない人~横浜Fマリノス松田直樹と阪急の西本幸雄監督

サッカーファンでもないのに感動した。15年ぶり優勝の横浜Fマリノス。今季限りで引退の栗原勇蔵がシャーレを掲げた。それだけでもいいなぁ、と思わされたのだが、今度は背番号3のユニホームを着ていた。故・松田直樹の背番号3。そこまで思われる松田直樹はカッコいいし、松田直樹を忘れない後輩たちやサポーターも素敵だな、と思った。感動した。

もうひとつ、ユニホームが披露されるシーン(写真)が心に残った。スポニチ記事、オリ「西本幸雄メモリアルゲーム」来年4・25西武戦で開催 生誕100年、阪急復刻ユニ&背番50、の写真には阪急ブレーブスのユニホームが写っていた。背番号50。故・西本幸雄監督のものだ。生誕100年にちなみ、みんなで同じユニホームを着用するそうだ。発案者は阪急・オリックスOB会長の山田久志西本幸雄を親父のような存在だと慕っていた。

 

阪急ブレーブス 勇者たちの記憶 (単行本)

阪急ブレーブス 勇者たちの記憶 (単行本)

 

 

死してなお忘れられない人に共通するものはなんだろう。まず思い浮かべるのは情熱。サッカーに詳しくはないのだが、愛着のあるFマリノスを戦力外になった松田が他チームに行ってまで現役にこだわったのはとにかくサッカーが好きだったから。「オレ、マジでサッカー好きなんすよ」は魂の叫びに聞こえた。

 

闘争人―松田直樹物語 (SAN-EI MOOK)

闘争人―松田直樹物語 (SAN-EI MOOK)

 

 

西本幸雄監督もまた激しかった。鉄拳制裁と言えば近鉄時代に羽田耕一が食らったエピソード(山口高志の高めの速球を見送れと円陣で言ったのに羽田が手を出して怒られる。しかし羽田は回の先頭打者でその指示は聞けていなかった)が知られている。暴力はよくないのだが、そこまでやるかと思わされるエピソードだ。近鉄監督を務める前の阪急時代はとにかく練習させた。猛練習に鉄拳制裁。そこに愛情がなければ慕われることはない。

 

パ・リーグを生きた男 悲運の闘将・西本幸雄

パ・リーグを生きた男 悲運の闘将・西本幸雄

  • 作者:西本 幸雄
  • 出版社/メーカー: ぴあ
  • 発売日: 2005/03
  • メディア: 単行本
 

 

西本監督のことを調べようと、家にあるベースボールマガジン社の刊行物を漁っていたら、発掘!プロ野球名勝負 激闘編が出てきた。その116~117ページにある1968年10月11日の阪急対東京戦を見つけてしびれた。西本阪急はシーズン最終戦であるこの試合にサヨナラ勝ち。同率首位の南海が8分後に敗れて2連覇を果たしたのだった。サヨナラホームランを打ったのは8年目の4番矢野清。実働7年間でわずか8本塁打の男が大ブレイク。27本目が優勝決定弾となった。117ページの写真には矢野清の肩を抱き杯を挙げる、笑顔の西本監督がいた。

その写真と同じ縦じまのブレーブスのユニホームが、2020年の西本監督生誕100年の記念試合で着用される。使われたのは1964~69年。メモリアルでの着用を発案した山田久志は1969年入団だから、最初に着たのがこのモデルだ。西本阪急の初優勝そして3連覇、のちにレジェンドとなる山田久志入団と、まさに栄光のユニホーム。歴史を大切にする意味でも復刻はいい企画だと思う。

 

阪急オリックス80年史―1936-2016 (B・B MOOK 1315)

阪急オリックス80年史―1936-2016 (B・B MOOK 1315)

 

 

マリノスの背番号3も阪急の背番号50も、チームが忘れてはならない番号であり、その主は忘れられない人だ。肉体はこの世になくとも残した情熱は人々に語り継がれる。二つのユニホームを見て、あらためてそう思った。

打つ方向を決めておく~ソフトバンク内川が阪神高山にアドバイス

バッターは打つ球種や打ち返す方向を決めているものなのだろうか。ピッチャーの手を離れてホームベースに到達するまでは一瞬。瞬時に意思決定できればいいのだが、筋肉に指令が伝わるまでの時間もあるし、ある程度の心構えは必要だと思う……なんて考えたのは、内川聖一阪神高山俊にこんなアドバイスを送ったという記事(サンスポ)を見たからだ。「最初から打つ方向を決めてると、それをやることに一生懸命になるんで、余分な意識が入らない」。内川聖一はある程度打つ方向を念頭に入れているようだ。

高山いわく、「(内川さんは)甘い簡単なボールを簡単に打つじゃないですか。(自分)来た! と思ってカッーってなっちゃう(力が入っちゃう)とこもある」。すごく分かる。ほとんどの人が高山のように「来た」、いや「キタ━(゚∀゚)━!」くらいに思ってしまうのではないか。私もそう。草野球でも仕事の上でも、願っていた状況になったら喜び勇んでとりあえず目一杯バットを振る。だから当たれば飛ぶのだが、打つ方向は決めてない。結局運任せというか出たとこ勝負だったのだ。もうちょっとゴールを明確に描かないといけない。

内川聖一の思考はシンプルだ。目標を決めておけば、とりあえずそれに向かって一生懸命やるのだから余計な意識は入り込まない。なるほど。今回は最低でも進塁打にすべく右打ちだ、とか、思いきってレフトへ引っ張ろうとか決めておく。まあ、内川聖一には2171安打を放った技術があるから結果が出せるとも言えるが、無駄な力や意識を入れないようにするための、一つのアドバイスにはなるなと思いながら記事を読んだ。

内川聖一がすごいと思うのはまだ打撃フォームをすり足打法に変えようとしたりバットを改良したりしている点だ。貪欲とも言えるが、実際は2019年に不振に陥ったゆえの危機感がある。ましてやバレンティンが加入したらソフトバンクの守備位置はシャッフル必至。内川聖一のスタメンとて安泰ではない。玉突きで中村晃が一塁に来る可能性もあるのだ。

試合に出るためでもあるが、まずは結果を出す、あるいは納得のいく打撃をするためのフォーム改造あるいはバット改良のように見受けられる。内川自身は「今年は右脚に体重を乗せようと思いすぎて、ためてからの始動が遅れたり、逆に早かったりとずれることがあった」(西スポ記事)と話しているが、私は今までならもっと打球のスピードがあって外野に抜けていたものが捕球されたり、打つタイミングがコンマ何秒遅れて芯でとらえきれなかった、つまり内川の眼や感覚の衰えを疑っている。ベテラン=衰えるという固定観念があるかもしれないが、そうとでも思わないと、あの内川聖一があんなにゲッツーを食らうのは消化できない。内川は内川なりに分析し、タイミングやバットコントロールを改善しようとしている。

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最高の技術を持つ内川聖一ですらあんなに苦労するのだ。だとしたら狙った球を出たとこ勝負で打つような私が、仕事でいい結果を得られるはずがない。内川が言うようにまずは打つ方向くらいは決めておいて、しっかりとらえることに集中してみよう。まだまだ未熟だから狙い通りの球が来たら「キタ━(゚∀゚)━!」と小躍りしそうだが、そこはぐっとこらえて。まずはやるべきことに集中しよう。

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バットは鋭さを増している~ソフトバンク長谷川勇也の闘志いまだ衰えず

「年をとって、体にガタは来ているが、バットはさびるどころか、鋭さを増してきている」(スポーツ報知記事より)。長谷川勇也の自己分析には恐れ入る。自己肯定感の薄い私にはうらやましい限りだ。長谷川は年俸が2億円だったが1億になり、今回は2000万円ダウンで8000万円となった。普通なら弱気になりそうだがあくまでも強気だ。

2019年の出場試合は25試合にとどまり、フル出場よりはここ一番の代打というのが長谷川の役割だ。かつて198安打を放ち首位打者になった男の立ち位置はすっかり変わった。それでもポストシーズンでは相変わらずの勝負強さを発揮。個人的には10月13日のCSファイナル第4戦、だめ押しのタイムリーがお気に入り。西武相手なら何点とっておいてもいいのだが、この1点は西武にダメージを与えた。今宮健太の3ホームランにかすんでしまいがちだが、まさに仕事人の活躍だった。

 

真骨頂は10月9日のCSファイナル第1戦、1点ビハインドの8回、二死1、3塁でバッター長谷川。台頭著しい西武の平良の球威に差し込まれながらもしぶとくレフト前へ。この執念の同点打がなければ対西武4タテはなかったわけで、長谷川の貢献は決して低くはない。

そんな長谷川だがシーズン中、登録抹消でいったんは心が折れたという。しかしfull-count記事には「自分のバッティングがそうさせてくれなかった」「技術に守られたと実感した」と書いてあった。そう、長谷川の心のバットはまだまだ折れてはいなかったし、技術の確かさが長谷川の支えになった。そこまで自分を支える技術ってすごい。バットを振り込んだ賜物だ。思えば長谷川は2019年キャンプで20000スイングを目標に掲げた。日刊スポーツ記事によると、金星根コーチがトスを上げ、「1000スイングでミスショットは1球か2球」と言わしめた。恐るべき集中力。いくつもの殊勲打はすさまじい努力がもたらしたものだったのだ。

 

長谷川とて何の手応えもなく強気の発言をするわけがない。バットは錆び付いていない。それどころか鋭さは増している。なかなか文学的な表現だ。重量打線になかなか割って入る隙間はないが、そこに割って入ろうとする限り長谷川のバットは錆び付かない。切れ味鋭いバッティングで、2020年もパ・リーグの投手を一刀両断してほしい。

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代わりのいない人に評価を~ソフトバンク高谷裕亮の年俸3400万円は妥当なのか

もっと評価してあげてよ、と思ってしまった。高谷裕亮の年俸3400万円。現状維持だ。出場が55試合にとどまったからなのか。数字には表れない、縁の下の力持ち的な部分をもっともっと評価してあげてほしい。

日刊スポーツ記事の見出しは「ソフトバンク高谷は現状維持、盛り上げ役など評価」。グラシアルがホームランを打った後、パンチを受ける高谷のパフォーマンスはすっかり名物に。外国人選手の見送りに空港に行く高谷の写真を見たこともある。高谷はチームのよき潤滑油になっている。若手や外国人選手とのコミュニケーションも評価してもらえた、と高谷は喜んでいたがもっと第2捕手として評価してもらいたいのだ。

 

所作がいい、と解説の和田一浩に誉められていた。試合終盤、まだまだ気が抜けない展開なら若手ピッチャーは不安定だ。それも高谷はがっちり受け止めてくれる。その安定感。まだまだ甲斐拓也には出せない味だ。年齢的な落ち着きや、蓄えてきた経験がなせるわざでもある。今や中継ぎ、抑えピッチャーでも億が稼げる時代。それは中継ぎや抑えの評価が高すぎるという意味ではない。第2の捕手の評価だって、億まではいかなくとももう少し弾んであげてほしいと思う。

ソフトバンクの圧勝に終わった2019年の日本シリーズ。第4戦の9回裏、守護神・森唯斗の球を受けたのは高谷裕亮だった。そう、高谷は2019年日本シリーズの「胴上げ捕手」なのだ。正捕手としての地位を甲斐が築きつつある一方で、日本一のウイニングボールは高谷が捕った。そして高谷がシーズンに55試合も出ていることはやっぱり高谷の力がチームに必要だという何よりの証拠だと思う。

そして高谷じゃなくて甲斐で終わろうと思われるようになることが、甲斐には求められる。高谷が壁になることで、甲斐は成長するのだ。楽天はベテランキャッチャーでチームの顔の嶋基宏を起用しなくなってしまった。そして嶋は居場所を求めてヤクルトに移籍した。対照的に、ベテランキャッチャーをうまく活かしているソフトバンクは素晴らしいと思う。だからこそ、繰り返したい。打撃の方は少々目をつぶって、高谷の評価をもうちょっとだけ高めてあげてほしい、と。高谷の代わりはいないのだから。

影響を与える人、与えられる人~ソフトバンク川島慶三とバレンティン

川島慶三ソフトバンクと複数年契約(年俸7000万円)を結んだ。これが何よりうれしかった。本人もそうではないか。必要な人材だとチームが認識している、何よりの証拠に思えるからだ。

川島的にはダウンも覚悟していたが、47試合で3割6分4厘、出塁率は4割8分8厘と、役割は十二分に果たしてくれた。追い込まれてからが川島の見せ場だ。際どい球は見逃す。あるいはファウルで粘る。そのうちスリーボールになり、根負けしたピッチャーが四球を献上……もはやエンターテインメントである。この辺りの粘りはぜひ牧原らに学んでもらいたい。

左キラーの異名を持っており、川島慶三がスタメンだと左ピッチャーなのかなと分かるくらいだ。誰でもいい、という使われ方ではない。川島が左に強い。その実績から起用されるのだから素晴らしい。また、控え選手だからこそなのかもしれないが、チームメイトに声がけする役割も期待されている。だから川島慶三はベンチにいても仕事をしているのだ。ゆえの複数年契約とも言える。

そんな川島慶三の背番号が変わりそうだ。ヤクルトが契約しなかったバレンティンソフトバンクが獲得する意向だが、バレンティンはヤクルトで背番号4を付けていた。これは川島慶三の背番号なのだ。左殺しで背番号4。死を連想させることから時に敬遠される番号でありながら、川島慶三が背負うと必殺仕事人にぴったりで、個人的には気に入っていた。小兵でありながら、チームの顔が付けることが多い一桁の背番号である点もよかったのだが、バレンティンが加入したら譲るらしい。

世の中には、影響を与える人間と影響を与えられる側の人間がいる。今回はバレンティンが与える側で、川島慶三は与えられる側だ。スポニチ記事にはこんなくだりがあった。「実直な川島も快く受け入れたもようで」。ほう。実直な人なら周りに合わせることをそもそも期待されてるんだ。結局世の中、我を押し通した者勝ちなのかな、と思わなくもない(背番号4についてはバレンティンが、何がなんでもと言っているかは分からないが)。バレンティンは288発の実績はあっても、ソフトバンクにまだ何ももたらしてはいない。川島慶三は日本一を決めたサヨナラ打などいぶし銀の活躍でチームに貢献してくれた。それでも背番号は持っていかれるんだな、と複雑な思いも芽生えた。

だがかつてヤクルトで同僚だったこともあり、川島慶三バレンティンと再びチームメイトになることを望んでいるようだ。スポーツ報知記事には「集中力、野球に対する情熱はすごい。野球を一緒にやりたい気持ちはある」との川島のコメントがあった。だからこそ川島はバレンティンに背番号を譲れるのかもしれない。

川島慶三はヤクルトからトレードで加入し、背番号35を背負った。ずっと4を付けていたわけでもないから、バレンティンだしいいかな、くらいの気持ちかもしれない。背番号が変わってもやることは変わらない。左ピッチャーから打つために現れて、試合に出なくてもチームを鼓舞する。おれはいつでも川島慶三なんだ。そんな心境なのかもしれない。どんな番号を付けても川島慶三のカッコよさは変わらない。私も変わらず川島に声援を送ろうと思う。


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