黒柴スポーツ新聞

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影響を与える人、与えられる人~ソフトバンク川島慶三とバレンティン

川島慶三ソフトバンクと複数年契約(年俸7000万円)を結んだ。これが何よりうれしかった。本人もそうではないか。必要な人材だとチームが認識している、何よりの証拠に思えるからだ。

川島的にはダウンも覚悟していたが、47試合で3割6分4厘、出塁率は4割8分8厘と、役割は十二分に果たしてくれた。追い込まれてからが川島の見せ場だ。際どい球は見逃す。あるいはファウルで粘る。そのうちスリーボールになり、根負けしたピッチャーが四球を献上……もはやエンターテインメントである。この辺りの粘りはぜひ牧原らに学んでもらいたい。

左キラーの異名を持っており、川島慶三がスタメンだと左ピッチャーなのかなと分かるくらいだ。誰でもいい、という使われ方ではない。川島が左に強い。その実績から起用されるのだから素晴らしい。また、控え選手だからこそなのかもしれないが、チームメイトに声がけする役割も期待されている。だから川島慶三はベンチにいても仕事をしているのだ。ゆえの複数年契約とも言える。

そんな川島慶三の背番号が変わりそうだ。ヤクルトが契約しなかったバレンティンソフトバンクが獲得する意向だが、バレンティンはヤクルトで背番号4を付けていた。これは川島慶三の背番号なのだ。左殺しで背番号4。死を連想させることから時に敬遠される番号でありながら、川島慶三が背負うと必殺仕事人にぴったりで、個人的には気に入っていた。小兵でありながら、チームの顔が付けることが多い一桁の背番号である点もよかったのだが、バレンティンが加入したら譲るらしい。

世の中には、影響を与える人間と影響を与えられる側の人間がいる。今回はバレンティンが与える側で、川島慶三は与えられる側だ。スポニチ記事にはこんなくだりがあった。「実直な川島も快く受け入れたもようで」。ほう。実直な人なら周りに合わせることをそもそも期待されてるんだ。結局世の中、我を押し通した者勝ちなのかな、と思わなくもない(背番号4についてはバレンティンが、何がなんでもと言っているかは分からないが)。バレンティンは288発の実績はあっても、ソフトバンクにまだ何ももたらしてはいない。川島慶三は日本一を決めたサヨナラ打などいぶし銀の活躍でチームに貢献してくれた。それでも背番号は持っていかれるんだな、と複雑な思いも芽生えた。

だがかつてヤクルトで同僚だったこともあり、川島慶三バレンティンと再びチームメイトになることを望んでいるようだ。スポーツ報知記事には「集中力、野球に対する情熱はすごい。野球を一緒にやりたい気持ちはある」との川島のコメントがあった。だからこそ川島はバレンティンに背番号を譲れるのかもしれない。

川島慶三はヤクルトからトレードで加入し、背番号35を背負った。ずっと4を付けていたわけでもないから、バレンティンだしいいかな、くらいの気持ちかもしれない。背番号が変わってもやることは変わらない。左ピッチャーから打つために現れて、試合に出なくてもチームを鼓舞する。おれはいつでも川島慶三なんだ。そんな心境なのかもしれない。どんな番号を付けても川島慶三のカッコよさは変わらない。私も変わらず川島に声援を送ろうと思う。


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