黒柴スポーツ新聞

ニュース編集者が野球を中心に、心に残るシーンやプレーヤーから生きるヒントを探ります。

探究心と努力~代打本塁打27本の高井保弘と世界の盗塁王・福本豊

1年を振り返る時期。2019年になくなった一人の高井保弘氏(以下敬称略)について、澤宮優さんが追悼記事を書かれていた。タイトルは【追悼】「代打で世界一になった男」元阪急・高井保弘の勝負師人生。昭和の話ゆえに若い人からしたら遠い世界の話に聞こえるだろう。しかし、時代は変わっても努力の大切さは変わらない、ということを私は再認識した。

高井保弘といえばメモ。投手のクセを記録したメモについてはこの黒柴スポーツ新聞でも取り上げた。

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澤宮優さんによる追悼記事を読んだ後で、同じく阪急にいた福本豊の本「走らんかい!」(ベースボール・マガジン新書)を読んだ。そして高井と福本に共通点を見出だした。それは優れた探究心だ。高井は投手のピッチングフォームのわずかな違いからから球種を割り出しひと振りに懸けた。福本豊は投手それぞれのタイミングを熟知した上で盗塁を積み重ねた。いずれも投手を丸裸にすることが飯のタネになったわけだが、そういう努力をしない人はいくらでもいる。代打本塁打27本の世界記録と通算1065盗塁(元世界記録)はたゆまぬ努力の結晶なのだ。

走らんかい! (ベースボール・マガジン社新書 28)

走らんかい! (ベースボール・マガジン社新書 28)

 

 

厳しいプロの世界だから、やらなければ生き残れない。高井保弘にしてみれば代打で結果を出すことがレギュラー定着への道だった。福本豊にしてみれば走ることと守備で頭角を表すことができた。努力することは存在感を高めること。そう言い換えていいのかもしれない。

代打の神様: ただひと振りに生きる

代打の神様: ただひと振りに生きる

 

 

今年1年、自分はそういう努力をできただろうか。残念ながら、中途半端に終わった気がする。やるか、やらないか。何かを継続してやることがまず素晴らしいのだが、己の仕事に徹底的に向き合うこと。どうしたら壁を打開できるのか必死になって考えること。高井保弘福本豊もそこを妥協しなかったから世界記録を作れたのだと思う。今さら自分に世界記録など狙えるわけもないのだが、二人の姿勢は見習おうと思う。

エースの系譜を受け継げ千賀~20勝の斉藤和巳、18勝の杉内俊哉、17勝の攝津正

千賀の3億に対して、というよりも13勝に対して物足りないというコメントがヤフコメに多い印象を受けた。私は3億に全く驚かなかった。そして15勝やら18勝してこそエースという意見をもっともだと思う。また、それを法外なリクエストとも思わない。なぜなら千賀だから。千賀なら15や18行けるんだから、という考えからのヤフコメと見た。別に難癖つけてるとは思わなかった。

 

一つだけ付け加えるなら、4年連続2ケタだからよい評価を得ているということ。単年15勝も素晴らしいが、毎年2ケタは同じくらい、いや、それ以上に素晴らしいと思う。もはや千賀なら2ケタ勝つのは最低ラインの数字だ。

 

NPBのサイトにある千賀の年度別成績を見て気が付いた。2019年は227奪三振の一方で75与四球。前年が58だから際どいところに投げすぎなのではないか。球数も要するし、そこを改善することで180.1回だったのだが投球回数を200に近づけられるはずだ。

 

ヤフコメでなるほどなと思ったのは8敗への指摘。なるほどなと思った。千賀にしては負けている印象を持つ。先ほど4年連続2ケタ勝利に触れたが、この間の負けは3→4→7→8。エースになっていく過程でしんどい試合や重圧が掛かる局面での登板が増えていくから負け数が増えるのはやむを得ない。しかしやはりエースであるならば負けてはいけない。それがエースであり、そう見られるのはエースの宿命なのだ。

 

斉藤和巳杉内俊哉、攝津正。ホークスの歴代エースは背中で語る印象だ。エースは負けない。それを体現してくれている。斉藤和巳の20勝3敗、16勝1敗(!)、18勝5敗。杉内俊哉の18勝4敗、15勝6敗、15勝5敗。攝津正の17勝5敗。印象的な成績をピックアップするとまさにエースとうなってしまう。そしてカッコいい。そして思う。千賀にもこんな成績を残してもらいたいな、と。アメリカに行くのもよかろう。それが千賀の夢ならば。しかしその前に。千賀にはぶっちぎりの成績でパ・リーグ最多勝に輝いてもらいたい。強い、負けないエースの姿を、久しぶりに見てみたい。

 

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変えざるを得ないんだよ~王貞治がソフトバンク内川聖一にエール

「変えざるを得ないんだよ」
世界の王貞治はやはりすごいなと唸ってしまった。元ネタは西日本スポーツ記事、王会長「変えざるを得ないんだよ」名球会で正面に座った内川へのゲキ。内川を叱咤激励する内容だ。

 

もっと遠くへ (私の履歴書)

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発言を詳しく振り返る。
「打撃フォームも何年型、何年型とあっていい。当然体だって変わってくるし、相手だって変わってくる。変えざるを得ないんだよ」
内川聖一は2020年、38歳のシーズンだ。王さんは同じ年齢の時、打率3割、39本塁打だったそうだ。王貞治クラスだとそれは才能で打ったのだと思われがち。もちろん天性のものもあったに違いないが、やはり裏では相当の努力があるに決まっている。ここで注目したいのは努力の仕方。王さんと言えば一本足打法だから、それを追求していけばよさそうだが、発言から深読みすれば一本足打法にも何年型、何年型とマイナーチェンジを積み重ねていたとも受け止められる。確かに年齢だけ考えても毎年違うのだから、何歳なりの、というのがむしろ自然だ。

 

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  • 発売日: 2008/11/21
  • メディア: DVD
 

 

定番にこだわるのが職人と思いがちだが、型に固執してはむしろ可能性を狭めてしまう。また、年齢や環境に応じてやり方を変えていかないと結果は出せないし、出せても無理が重なるのではないか。2019年、内川聖一は不振に陥ったが本人的にはいつも通りのバッティングをしただけかもしれない。でもとらえられない。とらえきれない。とらえたと思ってもほんの少し芯からずれている。素人には分からないほどのズレだろうが、その誤差、狂いが命取りになった。そういうことだろうと思う。

そして内川はバットやタイミングの取り方を改善しようとしている。そのことは以前書いた。私は稀代のヒットメーカーの内川聖一がなお結果を求めて努力しようとしている姿に感動するのだが、今回王さんの「変えざるを得ない」を読んで、自分の甘さをあらためて感じた。私は変化を極度に恐れているな。だから成長しないのだ、と。変わらずにいられるならそれが一番楽。でも王さんが言うとおり、相手(環境)は変わるのだ。ならば順応していくしかない。適応力なきものは生き残れないのだ。すぐに変われるはずもないのだが、意識は変えられる。変わりたいとか変わりたくない、じゃなくて変えざるを得ない。今の自分の姿に迷う時は、王さんの言葉を噛みしめよう。

男気見せた川島慶三の新背番号は99~バレンティンとナインを橋渡し

見事だ。
見事すぎる。
川島慶三が背番号を変更した。ソフトバンクバレンティンを獲得。バレンティンはヤクルト時代に背番号4を背負っていたため、川島慶三自ら球団に、背番号4を譲ると申し出たのだという。どうやら4はバレンティンが付けるよね、とソフトバンクファンは分かっていたのだが私は仰天した。川島慶三が新しく付ける背番号が99だったからだ。

99はかつて中村紀洋が背負ったことがある。プロ入り初の番号66をひっくり返したと本人が語ったとの説明をWikipediaで見つけたが、中日で育成を経て背番号99を背負ったのを見ると崖っぷち感があった。松坂大輔も同じく中日で99を背負ったが、崖っぷち感と、足したら18になる両方の意味合いが感じられた。川島慶三の背番号99は自分で選んだのだろうか? コメントによれば球団は、背番号4を川島慶三に付けてほしいと話したという。それは川島がバレンティンに譲ったわけで、話の流れからしたら球団が提示しそうな番号ではない。となると川島慶三が選んだのかもしれない。だとしたらどんな思いを込めてのことなのか、詳しく聞いてみたい。左殺しで背番号4。必殺仕事人感が半端なかったので私は川島慶三の背番号4が大好きだったのだが、支配下登録で最も重い背番号99もなかなかのインパクトだ。99のグッズ買って!と川島はコメントしていたが、私も何かしら身に付けたい。バレンティンは緩慢なプレーをしたり私生活でお騒がせしたりと、チームに馴染めるか不安視しているファンもいる。ましてや年俸5億円。日本シリーズで巨人に圧勝し、もはや補強は要らんのじゃないの?と言いたくもなるが、念には念を入れての獲得なのだろう。2019年はデスパイネ、グラシアルが相次いで離脱した時期もある。リスク管理の範疇かもしれない。川島慶三はもろもろの事情は分かりつつ、しかしバレンティンのことはリスペクトしているとの姿勢を貫いている。そうやってバレンティンとチームの橋渡しをしている。たまたまヤクルト時代に同僚だっただけかもしれないが、川島は日本ハム→ヤクルト、ヤクルト→ソフトバンクと移籍を経験しているだけに、チームに溶け込む難しさやコツを知っていて、バレンティンのために一肌脱いだのだろう。川島慶三が背番号を譲るくらいの選手だ、となればイメージは変わってくる。もちろんバレンティンにはそれ相応のプレーが求められる訳だが。……からの川島慶三背番号99である。カッコよくないはずがない。背番号99が2ストライクから粘って四球を選ぶのかな。背番号99がライト前に打ってランナー1、3塁になるのかな。背番号99が左腕対策で1番バッターになるのかな。何かをやってくれる背番号99に期待しよう。

記憶に残る仕事をする~4打席連続本塁打の醍醐猛夫氏死去

元ロッテの醍醐猛夫氏(以下敬称略)が201912月11日、亡くなった。定期講読している新聞では、訃報記事の見出しが「4打席連続本塁打」となっていた。それはそのまま、プロ野球ファンが持っていた醍醐猛夫の記憶だった。私が、見出しを付ける整理記者であってもそうしたに違いない。訃報記事の見出しが故人のすべてを物語る訳ではないのだが、やはり一人の人間が人生で何かを成し遂げる、という意味では、見出しになるようなインパクトのある仕事を残したいものだ。

 

消えた球団 毎日オリオンズ1950~1957

消えた球団 毎日オリオンズ1950~1957

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: ビジネス社
  • 発売日: 2019/06/03
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 

醍醐の4打席連続本塁打は知られている話だが、今回訃報記事で気付いたことがある。醍醐は通算本塁打が81本だったのだ。18年の現役生活。単純計算で年間平均5本以下である。その男が4打席連続で本塁打を放つ。そこにしびれた。醍醐の4打席連続は2日にまたがっての記録だが、その2日に何があったのかが知りたい。広島の鈴木誠也は連日サヨナラホームランを放って緒方監督に「神ってる」と言われたのだが、醍醐もまたこの2日間は神がかっていた。

 

私が好きな本のタイトルで澤宮優さんの「燃焼の瞬間」がある。正確には「プロ野球・燃焼の瞬間―宮田征典・大友工・藤尾茂」。巨人の名選手の足跡、そして燃焼の瞬間を丁寧に綴った作品だ。人にはそれぞれ輝き時がある。早くから頭角を表す人がいれば、大器晩成の人もいる。醍醐の場合は早稲田実業時代に王貞治とバッテリーを組み、夏の甲子園に出場。プロ入り1年目から正捕手になっているから、早くから実績が積めていた。だが18年の現役生活の中では正捕手の座を奪われたこともある。4打席連続本塁打を記録したのは現役終盤と言える1971年。結果的には、まだまだやれるという良いアピールになったのではないか。まさに燃焼の瞬間で、気力体力が充実していたからこそ大記録が作れたのだと思う。

 

プロ野球・燃焼の瞬間―宮田征典・大友工・藤尾茂

プロ野球・燃焼の瞬間―宮田征典・大友工・藤尾茂

 

 

 

燃える男と言えば長嶋茂雄。だがみんながみんな長嶋さんのようにいつもいつも燃えられる訳ではない。むしろ燃えられない日の方が多いだろう。だからこそきょうは行けるぞと、何だか調子がいいぞという時には思いきって行動したいものだ。きょうなら結果が出せるかもしれないという日は貪欲に行動する。醍醐のようにとにかくバットを振ってみることで、ものすごい結果が残せるかもしれない。残念ながらその瞬間はいつやってくるかは分からない。裏返せば、だからこそ常に準備をしておかないといけない。自戒を込めて書いておこう。

 

記憶に残る仕事、と言えば醍醐猛夫は「連勝キラー」としても知られる。稲尾和久を20連勝(1957年)で、杉浦忠を12連勝(1959年)と13連勝(1964年)でストップさせる殊勲打を放っている。稲尾も杉浦も球史に残る大投手。しかも連勝中だ。4打席連続本塁打といい、やはりある程度の実力がなければ勝負強いバッティングはできまい。

 

神様、仏様、稲尾様―私の履歴書 (日経ビジネス人文庫)

神様、仏様、稲尾様―私の履歴書 (日経ビジネス人文庫)

 

 

 

どなたかが紹介していたが醍醐猛夫は選手や指導者として、毎日、大毎、東京、ロッテ「オリオンズ」と千葉ロッテマリーンズのユニホームに袖を通したそうだ。これを知っていた方はなかなかの野球通。また、醍醐猛夫がそれだけ球団に必要とされていたことを物語っている。現役生活の安打数は18年間で1132安打だった。プロ野球記録大鑑の名簿には醍醐猛夫の近くに醍醐俊光の名前があった。猛夫の弟だという。醍醐俊光の成績は実働2年で2打数0安打。兄はオリオンズとマリーンズの長きにわたってチームに関わり、弟はわずか2シーズン。兄弟でプロ野球の厳しさをリアルに教えてくれている。

忘れられない人~横浜Fマリノス松田直樹と阪急の西本幸雄監督

サッカーファンでもないのに感動した。15年ぶり優勝の横浜Fマリノス。今季限りで引退の栗原勇蔵がシャーレを掲げた。それだけでもいいなぁ、と思わされたのだが、今度は背番号3のユニホームを着ていた。故・松田直樹の背番号3。そこまで思われる松田直樹はカッコいいし、松田直樹を忘れない後輩たちやサポーターも素敵だな、と思った。感動した。

もうひとつ、ユニホームが披露されるシーン(写真)が心に残った。スポニチ記事、オリ「西本幸雄メモリアルゲーム」来年4・25西武戦で開催 生誕100年、阪急復刻ユニ&背番50、の写真には阪急ブレーブスのユニホームが写っていた。背番号50。故・西本幸雄監督のものだ。生誕100年にちなみ、みんなで同じユニホームを着用するそうだ。発案者は阪急・オリックスOB会長の山田久志西本幸雄を親父のような存在だと慕っていた。

 

阪急ブレーブス 勇者たちの記憶 (単行本)

阪急ブレーブス 勇者たちの記憶 (単行本)

 

 

死してなお忘れられない人に共通するものはなんだろう。まず思い浮かべるのは情熱。サッカーに詳しくはないのだが、愛着のあるFマリノスを戦力外になった松田が他チームに行ってまで現役にこだわったのはとにかくサッカーが好きだったから。「オレ、マジでサッカー好きなんすよ」は魂の叫びに聞こえた。

 

闘争人―松田直樹物語 (SAN-EI MOOK)

闘争人―松田直樹物語 (SAN-EI MOOK)

 

 

西本幸雄監督もまた激しかった。鉄拳制裁と言えば近鉄時代に羽田耕一が食らったエピソード(山口高志の高めの速球を見送れと円陣で言ったのに羽田が手を出して怒られる。しかし羽田は回の先頭打者でその指示は聞けていなかった)が知られている。暴力はよくないのだが、そこまでやるかと思わされるエピソードだ。近鉄監督を務める前の阪急時代はとにかく練習させた。猛練習に鉄拳制裁。そこに愛情がなければ慕われることはない。

 

パ・リーグを生きた男 悲運の闘将・西本幸雄

パ・リーグを生きた男 悲運の闘将・西本幸雄

  • 作者:西本 幸雄
  • 出版社/メーカー: ぴあ
  • 発売日: 2005/03
  • メディア: 単行本
 

 

西本監督のことを調べようと、家にあるベースボールマガジン社の刊行物を漁っていたら、発掘!プロ野球名勝負 激闘編が出てきた。その116~117ページにある1968年10月11日の阪急対東京戦を見つけてしびれた。西本阪急はシーズン最終戦であるこの試合にサヨナラ勝ち。同率首位の南海が8分後に敗れて2連覇を果たしたのだった。サヨナラホームランを打ったのは8年目の4番矢野清。実働7年間でわずか8本塁打の男が大ブレイク。27本目が優勝決定弾となった。117ページの写真には矢野清の肩を抱き杯を挙げる、笑顔の西本監督がいた。

その写真と同じ縦じまのブレーブスのユニホームが、2020年の西本監督生誕100年の記念試合で着用される。使われたのは1964~69年。メモリアルでの着用を発案した山田久志は1969年入団だから、最初に着たのがこのモデルだ。西本阪急の初優勝そして3連覇、のちにレジェンドとなる山田久志入団と、まさに栄光のユニホーム。歴史を大切にする意味でも復刻はいい企画だと思う。

 

阪急オリックス80年史―1936-2016 (B・B MOOK 1315)

阪急オリックス80年史―1936-2016 (B・B MOOK 1315)

 

 

マリノスの背番号3も阪急の背番号50も、チームが忘れてはならない番号であり、その主は忘れられない人だ。肉体はこの世になくとも残した情熱は人々に語り継がれる。二つのユニホームを見て、あらためてそう思った。

打つ方向を決めておく~ソフトバンク内川が阪神高山にアドバイス

バッターは打つ球種や打ち返す方向を決めているものなのだろうか。ピッチャーの手を離れてホームベースに到達するまでは一瞬。瞬時に意思決定できればいいのだが、筋肉に指令が伝わるまでの時間もあるし、ある程度の心構えは必要だと思う……なんて考えたのは、内川聖一阪神高山俊にこんなアドバイスを送ったという記事(サンスポ)を見たからだ。「最初から打つ方向を決めてると、それをやることに一生懸命になるんで、余分な意識が入らない」。内川聖一はある程度打つ方向を念頭に入れているようだ。

高山いわく、「(内川さんは)甘い簡単なボールを簡単に打つじゃないですか。(自分)来た! と思ってカッーってなっちゃう(力が入っちゃう)とこもある」。すごく分かる。ほとんどの人が高山のように「来た」、いや「キタ━(゚∀゚)━!」くらいに思ってしまうのではないか。私もそう。草野球でも仕事の上でも、願っていた状況になったら喜び勇んでとりあえず目一杯バットを振る。だから当たれば飛ぶのだが、打つ方向は決めてない。結局運任せというか出たとこ勝負だったのだ。もうちょっとゴールを明確に描かないといけない。

内川聖一の思考はシンプルだ。目標を決めておけば、とりあえずそれに向かって一生懸命やるのだから余計な意識は入り込まない。なるほど。今回は最低でも進塁打にすべく右打ちだ、とか、思いきってレフトへ引っ張ろうとか決めておく。まあ、内川聖一には2171安打を放った技術があるから結果が出せるとも言えるが、無駄な力や意識を入れないようにするための、一つのアドバイスにはなるなと思いながら記事を読んだ。

内川聖一がすごいと思うのはまだ打撃フォームをすり足打法に変えようとしたりバットを改良したりしている点だ。貪欲とも言えるが、実際は2019年に不振に陥ったゆえの危機感がある。ましてやバレンティンが加入したらソフトバンクの守備位置はシャッフル必至。内川聖一のスタメンとて安泰ではない。玉突きで中村晃が一塁に来る可能性もあるのだ。

試合に出るためでもあるが、まずは結果を出す、あるいは納得のいく打撃をするためのフォーム改造あるいはバット改良のように見受けられる。内川自身は「今年は右脚に体重を乗せようと思いすぎて、ためてからの始動が遅れたり、逆に早かったりとずれることがあった」(西スポ記事)と話しているが、私は今までならもっと打球のスピードがあって外野に抜けていたものが捕球されたり、打つタイミングがコンマ何秒遅れて芯でとらえきれなかった、つまり内川の眼や感覚の衰えを疑っている。ベテラン=衰えるという固定観念があるかもしれないが、そうとでも思わないと、あの内川聖一があんなにゲッツーを食らうのは消化できない。内川は内川なりに分析し、タイミングやバットコントロールを改善しようとしている。

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最高の技術を持つ内川聖一ですらあんなに苦労するのだ。だとしたら狙った球を出たとこ勝負で打つような私が、仕事でいい結果を得られるはずがない。内川が言うようにまずは打つ方向くらいは決めておいて、しっかりとらえることに集中してみよう。まだまだ未熟だから狙い通りの球が来たら「キタ━(゚∀゚)━!」と小躍りしそうだが、そこはぐっとこらえて。まずはやるべきことに集中しよう。

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バットは鋭さを増している~ソフトバンク長谷川勇也の闘志いまだ衰えず

「年をとって、体にガタは来ているが、バットはさびるどころか、鋭さを増してきている」(スポーツ報知記事より)。長谷川勇也の自己分析には恐れ入る。自己肯定感の薄い私にはうらやましい限りだ。長谷川は年俸が2億円だったが1億になり、今回は2000万円ダウンで8000万円となった。普通なら弱気になりそうだがあくまでも強気だ。

2019年の出場試合は25試合にとどまり、フル出場よりはここ一番の代打というのが長谷川の役割だ。かつて198安打を放ち首位打者になった男の立ち位置はすっかり変わった。それでもポストシーズンでは相変わらずの勝負強さを発揮。個人的には10月13日のCSファイナル第4戦、だめ押しのタイムリーがお気に入り。西武相手なら何点とっておいてもいいのだが、この1点は西武にダメージを与えた。今宮健太の3ホームランにかすんでしまいがちだが、まさに仕事人の活躍だった。

 

真骨頂は10月9日のCSファイナル第1戦、1点ビハインドの8回、二死1、3塁でバッター長谷川。台頭著しい西武の平良の球威に差し込まれながらもしぶとくレフト前へ。この執念の同点打がなければ対西武4タテはなかったわけで、長谷川の貢献は決して低くはない。

そんな長谷川だがシーズン中、登録抹消でいったんは心が折れたという。しかしfull-count記事には「自分のバッティングがそうさせてくれなかった」「技術に守られたと実感した」と書いてあった。そう、長谷川の心のバットはまだまだ折れてはいなかったし、技術の確かさが長谷川の支えになった。そこまで自分を支える技術ってすごい。バットを振り込んだ賜物だ。思えば長谷川は2019年キャンプで20000スイングを目標に掲げた。日刊スポーツ記事によると、金星根コーチがトスを上げ、「1000スイングでミスショットは1球か2球」と言わしめた。恐るべき集中力。いくつもの殊勲打はすさまじい努力がもたらしたものだったのだ。

 

長谷川とて何の手応えもなく強気の発言をするわけがない。バットは錆び付いていない。それどころか鋭さは増している。なかなか文学的な表現だ。重量打線になかなか割って入る隙間はないが、そこに割って入ろうとする限り長谷川のバットは錆び付かない。切れ味鋭いバッティングで、2020年もパ・リーグの投手を一刀両断してほしい。

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代わりのいない人に評価を~ソフトバンク高谷裕亮の年俸3400万円は妥当なのか

もっと評価してあげてよ、と思ってしまった。高谷裕亮の年俸3400万円。現状維持だ。出場が55試合にとどまったからなのか。数字には表れない、縁の下の力持ち的な部分をもっともっと評価してあげてほしい。

日刊スポーツ記事の見出しは「ソフトバンク高谷は現状維持、盛り上げ役など評価」。グラシアルがホームランを打った後、パンチを受ける高谷のパフォーマンスはすっかり名物に。外国人選手の見送りに空港に行く高谷の写真を見たこともある。高谷はチームのよき潤滑油になっている。若手や外国人選手とのコミュニケーションも評価してもらえた、と高谷は喜んでいたがもっと第2捕手として評価してもらいたいのだ。

 

所作がいい、と解説の和田一浩に誉められていた。試合終盤、まだまだ気が抜けない展開なら若手ピッチャーは不安定だ。それも高谷はがっちり受け止めてくれる。その安定感。まだまだ甲斐拓也には出せない味だ。年齢的な落ち着きや、蓄えてきた経験がなせるわざでもある。今や中継ぎ、抑えピッチャーでも億が稼げる時代。それは中継ぎや抑えの評価が高すぎるという意味ではない。第2の捕手の評価だって、億まではいかなくとももう少し弾んであげてほしいと思う。

ソフトバンクの圧勝に終わった2019年の日本シリーズ。第4戦の9回裏、守護神・森唯斗の球を受けたのは高谷裕亮だった。そう、高谷は2019年日本シリーズの「胴上げ捕手」なのだ。正捕手としての地位を甲斐が築きつつある一方で、日本一のウイニングボールは高谷が捕った。そして高谷がシーズンに55試合も出ていることはやっぱり高谷の力がチームに必要だという何よりの証拠だと思う。

そして高谷じゃなくて甲斐で終わろうと思われるようになることが、甲斐には求められる。高谷が壁になることで、甲斐は成長するのだ。楽天はベテランキャッチャーでチームの顔の嶋基宏を起用しなくなってしまった。そして嶋は居場所を求めてヤクルトに移籍した。対照的に、ベテランキャッチャーをうまく活かしているソフトバンクは素晴らしいと思う。だからこそ、繰り返したい。打撃の方は少々目をつぶって、高谷の評価をもうちょっとだけ高めてあげてほしい、と。高谷の代わりはいないのだから。

影響を与える人、与えられる人~ソフトバンク川島慶三とバレンティン

川島慶三ソフトバンクと複数年契約(年俸7000万円)を結んだ。これが何よりうれしかった。本人もそうではないか。必要な人材だとチームが認識している、何よりの証拠に思えるからだ。

川島的にはダウンも覚悟していたが、47試合で3割6分4厘、出塁率は4割8分8厘と、役割は十二分に果たしてくれた。追い込まれてからが川島の見せ場だ。際どい球は見逃す。あるいはファウルで粘る。そのうちスリーボールになり、根負けしたピッチャーが四球を献上……もはやエンターテインメントである。この辺りの粘りはぜひ牧原らに学んでもらいたい。

左キラーの異名を持っており、川島慶三がスタメンだと左ピッチャーなのかなと分かるくらいだ。誰でもいい、という使われ方ではない。川島が左に強い。その実績から起用されるのだから素晴らしい。また、控え選手だからこそなのかもしれないが、チームメイトに声がけする役割も期待されている。だから川島慶三はベンチにいても仕事をしているのだ。ゆえの複数年契約とも言える。

そんな川島慶三の背番号が変わりそうだ。ヤクルトが契約しなかったバレンティンソフトバンクが獲得する意向だが、バレンティンはヤクルトで背番号4を付けていた。これは川島慶三の背番号なのだ。左殺しで背番号4。死を連想させることから時に敬遠される番号でありながら、川島慶三が背負うと必殺仕事人にぴったりで、個人的には気に入っていた。小兵でありながら、チームの顔が付けることが多い一桁の背番号である点もよかったのだが、バレンティンが加入したら譲るらしい。

世の中には、影響を与える人間と影響を与えられる側の人間がいる。今回はバレンティンが与える側で、川島慶三は与えられる側だ。スポニチ記事にはこんなくだりがあった。「実直な川島も快く受け入れたもようで」。ほう。実直な人なら周りに合わせることをそもそも期待されてるんだ。結局世の中、我を押し通した者勝ちなのかな、と思わなくもない(背番号4についてはバレンティンが、何がなんでもと言っているかは分からないが)。バレンティンは288発の実績はあっても、ソフトバンクにまだ何ももたらしてはいない。川島慶三は日本一を決めたサヨナラ打などいぶし銀の活躍でチームに貢献してくれた。それでも背番号は持っていかれるんだな、と複雑な思いも芽生えた。

だがかつてヤクルトで同僚だったこともあり、川島慶三バレンティンと再びチームメイトになることを望んでいるようだ。スポーツ報知記事には「集中力、野球に対する情熱はすごい。野球を一緒にやりたい気持ちはある」との川島のコメントがあった。だからこそ川島はバレンティンに背番号を譲れるのかもしれない。

川島慶三はヤクルトからトレードで加入し、背番号35を背負った。ずっと4を付けていたわけでもないから、バレンティンだしいいかな、くらいの気持ちかもしれない。背番号が変わってもやることは変わらない。左ピッチャーから打つために現れて、試合に出なくてもチームを鼓舞する。おれはいつでも川島慶三なんだ。そんな心境なのかもしれない。どんな番号を付けても川島慶三のカッコよさは変わらない。私も変わらず川島に声援を送ろうと思う。

組織の評価と個人の思いは違う~ソフトバンク福田秀平がロッテ移籍決断

FA戦線の目玉だった福田秀平がついに移籍先を決断した。ロッテ。数日前、夜中にうたた寝から起きてスマートニュースのホークスのチャンネルを見て唖然としてしまった。ロッテ、ロッテという見出しが並んでいる。ずっと福田秀平のスタメン入りを応援していたから出番を求めての移籍はやむなし、と渋々納得していたのだが、よりによってロッテとは……

 

2019年シーズン、ソフトバンクは序盤からロッテには勝てなかった。一発のあるレアードの加入が大きかったが、ロッテにしてみたらソフトバンクには何とか勝てるという雰囲気が生まれ、逆にソフトバンクはロッテに苦手意識が芽生えてしまっていなかったか。結局対ロッテは8勝17敗。優勝するためには苦手チームを作ってはいけない。せっかく西武には13勝12敗と何とか勝ち越したのに、ロッテに9も負け越したことがペナントレースに大打撃だった。そこへ福田秀平が移籍する。そしてソフトバンク戦に限って粘投する(ように見えてしまう)美馬学もロッテに行く。2020年のロッテ戦が思いやられる。

 

それにしてもなぜ福田秀平はロッテに行くのか。片っ端から記事を読んだが、鳥越コーチの存在が大きかったという。プロ2年目、19歳で父を亡くした福田秀平にとって、一番辛い時期に支えになってくれたのが鳥越コーチ。それは美談なのだがまさか鳥越コーチのロッテ入りが今このタイミングでソフトバンクに打撃を与えるとは……しかし、一番辛い時に支えてくれる人は信用できる。逆にいい時だけ近寄って来る人は最低。最悪はピンチの時に逃げる人。そんな人もいるのだから、福田秀平が鳥越コーチの存在感を大切に思って移籍するのはよいことなのだと納得しないといけないのかもしれない。

 

また、ロッテには松本球団本部長という、高校時代から福田秀平を評価してくれた人もいるそうだ。鳥越コーチと松本本部長。支えになってくれた人、評価してくれた人。その人たちから一緒にやろう、力を貸してくれと言われたら、福田秀平もその気になったということだろう。年俸だけでも、出番争いだけでもなく、人が決め手になった福田秀平の移籍先。そこにソフトバンクファンは少し救われる。

 

「客観的に自分がプロ野球選手として、どのような位置にいて、どう評価されているのかを純粋に知った上で、自分を必要としてくださる球団で来シーズン以降プレーしたかったから」(福田秀平のブログ本文を紹介したベースボールキング記事より)の中の「自分を必要としてくださる球団で」というのが実はポイントだとも思う。じゃあソフトバンクは福田秀平を評価していなかったかというと、レギュラーに定着させなかったこと(福田にしてみたら「定着できなかった」)は事実だし、年俸が3600万円というのは評価が低かったのかもしれない。だがスタメン入りは選手層の厚いソフトバンクの選手全員がぶち当たる高い壁であり、福田秀平はレギュラーを常に補完することで存在感を高めた経緯がある。組織としては頼りになる福田秀平の起用方法は決して間違っていなかったと思うし、ファンもまたスーパーサブ福田秀平の存在を頼もしく感じていた。チームは福田秀平を軽んじていたわけではない。むしろ重宝した。

 

 

 

しかし、なのだ。福田秀平にしてみれば一度しかない野球人生。プロ野球選手だからこそレギュラー獲りして4打席バッターボックスに立ちたいと思うのは全然高望みではない。移籍するからといって定位置を確約されるほど甘い世界でもない。あくまでもチャレンジ。出番を求めて移籍する福田秀平をずるいとは思わない。むしろ厳しい道を選んだようにも見える。ソフトバンクに残ったら人気と再評価と見直された年俸は残るのだから。それでも福田秀平は自分の可能性に懸けた。その思いはソフトバンクファンとして受け止めねばならないなと思う。

 

スーパーサブとして福田秀平を使い倒したソフトバンク。それに応えながらもやはりレギュラーになりたかった福田秀平。組織としての評価と個人の思いは必ずしも一致しないということが、福田秀平の移籍話からもよく分かる。だが管理職でもない一兵卒の私はソフトバンクファンでありながら、また行き先が苦杯を舐めたロッテということに舌打ちしながらも、福田秀平が新天地で自分らしさをはっきりしてほしいと心の奥では願っている。そしてその活躍はどうかソフトバンク以外の試合で、特に西武戦あたりで光り輝いてほしいと都合よく考えている。ソフトバンク戦で福田秀平が出ていたらどんな気持ちになるだろうか。福田秀平はロッテのユニホームが似合うのだろうか。福田秀平の応援歌はどうなるのだろうか。気になることはいくつもあるが時間をかけながら割りきっていこうと思う。

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プロが選ぶ走塁1位は周東~その人らしさを生かして輝く

S-PARK恒例のプロ野球100人分の1位が発表中だ。11月24日放送分は走塁部門だったが、1位はもちろん周東佑京。その脚力で侍ジャパンにも選出された、今をときめくスピードスターである。

スタジオにいた立浪和義いわく「トップスピードにのるのが早い」。何だかスポーツカーのような表現だが、「塁間を走る姿が美しい」ともコメントしており、こちらの方がソフトバンクファン的にはうれしかった。

データ的には2019年シーズンの3塁到達最速タイムが10秒55(S-PARK調べ)。野間と金子が10秒66、源田が10秒68、近本が10秒69だから、このあたりが相場なのだが周東は0.1秒速い。最高の技術同士がぶつかり合い、ギリギリのタイミングで勝負するプロ野球だから、いかに周東に優位性があるかがうかがえる。

盗塁でも周東はすごいのだが、周東の魅力を高めているのが走塁。ヒット1本で二塁から生還する。高校野球かよとツッコミたくなるがそんなエキサイティングな走塁を見せてくれる。そしてチームに貢献してくれる。しかも試合の勝敗を左右する、終盤の大事な局面で。

機動破壊 健大高崎 勝つための走塁・盗塁93の秘策

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周東自身、一番の走塁に選んだのが7月21日の楽天戦。1点リードの9回表、一塁から二盗。代走で登場したら100%走ってくるとバッテリーが警戒する中で成功するのだから、まずそこが素晴らしい。そしてバッター甲斐の浅いレフト前ヒットで二塁から一気に本塁を陥れた。レフトが捕球する時点でまだ三塁に到達していない。それでもセーフになるのだからやはり速さが尋常じゃない。

とまあ、番組の組み立ては至極その通りなのだが、周東の魅力はプロ野球の常識を実力で覆している点だと思う。楽天戦のシーンでは普通突っ込まない(1点リードしていることもある)。侍ジャパンで話題になった源田のスクイズでは捕球したピッチャーがタッチに行くも、周東が速すぎてタッチできなかった。周東の登場で野球の走塁のレベルがまた一つ上がったのは間違いない。

鈴木尚広の走塁バイブル

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数字に表れにくいが周東は足が速いから守備でも貢献している。外野フェンスに行く前に何とか捕ろうという姿勢がうかがえる。単打で終わらすか、二塁打にするかはまったく違う。クッションボールの手際よい処理も外野手の見せ場だが、周東にはそもそもフェンスに届かせないというアグレッシブな守備を高めてもらいたい。そしてまた常識を覆してほしい。あの当たりで二塁打三塁打にならないのかよ、と。

基本と実践で差がつく! 外野手 最強バイブル (コツがわかる本!)

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周東が支配下登録されたのは2019年開幕直前。プロ入りはドラフト育成2位であり、学生時代から注目されていたわけでもない。それでも今光り輝いているのは一芸に秀でているからだ。突き抜ければこれだけ名前が売れ、評価される。打つ、守る、走るが野手に求められる三拍子だが、まず脚力をアピールして光の当たるところに行った。そうした周東も、そうさせたソフトバンクも素晴らしいと思う。甲斐の強肩、千賀の速球&お化けフォーク、周東の俊足。育成出身でも武器を磨けばトップ選手にのしあがれる。周東の活躍は育成出身選手にとっても希望であることだろう。おまえの代わりなんていくらでもいる、なんて悲しい言葉は言わせたくないし聞きたくもない。誰にだってその人だからこそできる仕事は一つくらいあるはずだ。その人らしさを生かして光り輝く。周東の活躍は個性を生かして活躍する素晴らしさをあらためて教えてくれている。

 

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やらされでは身に付かない~巨人鍬原のサイドスロー転向に斎藤雅樹が金言

やらされでは身に付かない。本当にその通りだと思う。巨人の鍬原がサイドスロー転向という記事(スポーツ報知【巨人】斎藤雅樹氏、鍬原のサイド転向に太鼓判「左の中川、右の鍬原になれる」)を見てつくづく思った。

斎藤雅樹と言えばサイドスロー転向で大成功した、巨人のエースだ。11試合連続完投勝利はプロ野球記録。2019年は完投数の少なさなどがネックとなり沢村賞が該当なしとなったが、候補の山口俊は完投ゼロ、有原航平は1だから、斎藤雅樹の記録はもはや破られそうにない。投手分業制がすっかり定着したという背景もあるが、先発は投げきってこそという観念はもうないのかもしれない。ともかく、斎藤雅樹サイドスローを自分の武器にしたことで殿堂入りまで果たした。

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鍬原は巨人の2017年ドラフト1位。しかし2シーズンでこれといった成績は残せなかった。記事に書いてあったが、サイドスロー転向は原監督のアイデアだという。鍬原は中学まで横手投げだったというから、あながち無理な指示でもない。そして思うように結果が出せていない鍬原に対して、何かしら新しいことをしてみたら、という親心があったのかもしれない。

斎藤雅樹もまた監督(藤田元司監督)の助言によりサイドスローに転向したと言われている。サイドスローは腰の回転が横だから、それに適しているかどうかも重要だ。斎藤の場合はドはまりしたのだが、腰の回転以上に大切な要素がある。それは自分の意思で変わろうとしているのか、である。「フォームを変えるのは勇気がいります。やらされているといった思いがあるとなかなか身につきません」と斎藤雅樹は言う。そう、変わるか変わらないかは結局、本人の気持ち一つで結果が異なるのだ。

「鍬原自身が新しいものを見つけようと積極的に取り組み、コーチと相談しながらやっていけばいいのではないでしょうか」。スポーツ報知の記事で斎藤雅樹はそう続けた。誰が助言しようとも、結局は鍬原自身が変わろうとするかが大事であり、積極的にならなければならない。その上で周りにアドバイスを求める。そうやっていけばいいのだと斎藤雅樹は鍬原にエールを送っている。

なお、スポーツ報知には関連記事があった(見出しは、球界の主なサイドスロー転向投手…巨人・角三男ら多彩な顔ぶれ)。この中では皆川睦雄に目が止まった。皆川については野村克也の著書に紹介があり、過去にブログに書いたことがある(下記参照)。

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やはり成長するかしないかという局面では、本人の気持ち、意思が重要なのだ。私自身、これは強く意識しないといけない。鍬原が変われるか、挑戦は始まったばかりだが、変わろうとする気持ちは伝わってくる。自分も鍬原にあやかって、変わるためにできることは、できる限りやっていこうと思う。

松坂大輔西武復帰の見出しに感じた違和感~大幅減俸も覚悟、なんて当たり前

松坂大輔が古巣・西武に復帰する方向だという。それもいいかな、松坂が引退するよりはいいかなと思ったのだが何か心にモヤモヤが残る。その理由が分かった。見出しだ。私が見た日刊スポーツ記事は「松坂大輔、14年ぶり西武復帰へ 大幅減俸も覚悟」。見出しは間違ってなどいない。私が違和感を感じたのは「大幅減俸も覚悟」だ。

プロ野球 復活の男たち (TJMOOK)

プロ野球 復活の男たち (TJMOOK)

 

 

これは私が松坂大輔を応援したい以前に、ソフトバンクファンであることに起因する。ご存知のように松坂大輔ソフトバンク入団をもって日本球界に復帰した。しかしまったく結果を残せなかった。結果論と分かってはいるが、年俸4億円の3年契約だからしめて12億円。もちろん松坂大輔というネームバリューも、過去の実績も加味されての年俸だから、ソフトバンク球団が納得していれば周りがとやかく言うものでもないかもしれない。しかし何かを言いたくなるというのがファン心理。期待の裏返しでもあり、私は松坂大輔にはソフトバンクでも年俸に見合う活躍をしてほしかった。戦力になってほしかった。けががあったから仕方なかったのだけれども。

そんなわけで、記事を読んで、中日ファンの気持ちになってしまった。引退のピンチに手を差し伸べたことに対しては、松坂はカムバック賞をもって報いたとは言える。しかし8000万円まで上げた年俸に対してこれまたけがの影響とはいえたったの2試合登板。残るにしても移籍するにしても、これで松坂が大幅減俸しなかったら他の選手はどう思うだろうか。大幅減俸も覚悟、なんて当たり前だ。そう思ったからこそ私は日刊スポーツの見出しに違和感を持ったのだった。ここは「中日ファンには感謝」という見出し、あるいはそういう趣旨のコメントがほしかった。中日ファンには同情する。

契約社会だからビッグネームに大金が投じられるのは当たり前だ。しかし大金を投じる裏ではその10分の1にも満たない年俸の選手たちが戦力外通告を受けている。もちろんその選手が力を発揮できなかったから戦力外になってしまうのだけれど、億単位の年俸の選手が極端に出場できなかった場合は何割か返上という流れはできないだろうか? 言ってみれば逆出来高的な。その原資があれば戦力外ボーダーラインの選手にもあと1シーズンの猶予が生まれる……というのは甘やかしだろうか。

俺たちの「戦力外通告」

俺たちの「戦力外通告」

 

 

別にお金の話ばかりしたいわけではないが、松坂大輔の西武復帰が既定路線ならば次は彼の年俸がどうなるか興味深い。グッズの売上、若手への影響など有形無形の指標から算出される松坂大輔の年俸とはいくらなのだろうか。それがいくらだったとしても、松坂大輔にはぜひ年俸以上の活躍をしてファンを納得させてもらいたい。

ライバルに評価された平石洋介~ソフトバンクが1軍打撃コーチに招聘

2019年シーズンに楽天を率いた平石洋介がソフトバンク1軍打撃コーチに招聘された(full-count記事、ソフトバンク楽天前監督の平石氏の招聘を発表 1軍打撃兼野手総合コーチに就任 より)。日本シリーズ3連覇を圧倒的な強さで成し遂げたソフトバンク。コーチ人事の面でも抜かりがない。この辺りが強さの秘訣である。

 

この人事を見る時、捨てる神あれば拾う神あり、というフレーズが頭に浮かぶ。捨てるなんて言葉は乱暴だが、実際、楽天は前年最下位から3位に浮上させた平石洋介を「切った」。三木肇を1軍監督に据えたのだが、三木とて1軍監督としては未知数だ。これって結局、石井一久GMがヤクルト時代の後輩の三木肇に監督をやらせようということじゃないのか?と勘ぐりたくもなる。社会人は結果がすべてであるのと同時に人脈がものを言う面もある、その典型的な例に見える。

ゆるキャラのすすめ。

ゆるキャラのすすめ。

 

 

もっとも、三木肇はコーチ経験が豊富で、現役時代は野村克也監督の指導も受け、山田哲人を育てた実績もあるからただの好き嫌いで選ばれた訳でもあるまい。だが繰り返すが平石洋介は決して厚みがあるとは言えない戦力をやりくりして西武やソフトバンクとつばぜり合いを演じた。皮肉にも楽天はそれを評価せず、苦しめられたソフトバンクが平石を評価した。

これでプロも変わった 守備・走塁の技術と極意

これでプロも変わった 守備・走塁の技術と極意

 

 

ここ最近の野球はだいぶスマートになり、因縁の対決といった煽り方は少ない印象だ。ゆえに2020年シーズンのソフトバンク楽天戦は見もの。平石洋介が重厚な戦力を使って、自分を切った楽天にリベンジを挑むのだ。楽天を叩くのに平石の自尊心と野球脳を使おうというソフトバンクが一番したたかではある。しかし平石にしてみたらこんなにうれしい評価はあるまい。自分なりに結果を出したのにはしごを外された。そこへ手を差し伸べたのがライバル球団なのだ。コーチ就任受諾を即答しなかったのは今まで支えてくれた楽天ファンへの気配りだったのかもしれない。PL学園時代からずっとユニフォームを着ていたわけで、監督退任を機に一度充電する選択肢もあったが、必要とされる場があるならば勝負してみたいと思うのが野球人。平石のソフトバンク入りは至極まっとうな選択に見える。

 

レギュラーシーズンは終盤に失速したソフトバンクだが、ポストシーズンは打撃絶好調。立花打撃コーチは留任だから平石洋介は育成や作戦面に期待されているのかもしれない。2019年シーズンはスクイズやら強攻策やらダブルスチールやら、ソフトバンク楽天に苦杯をなめた。その頭脳が仲間入りする。しかも古巣への対抗心を持って(表面的には見せないかもしれないが)。個人的には「松坂世代」を読んでから平石のことは気になっており、ソフトバンクファンの私は打撃コーチ就任を本当にうれしく思う。平石の加入はまさに鬼に金棒。慢心してはいけないが、平石がソフトバンクの戦力を使ってどんな野球を見せてくれるのか楽しみで仕方ない。2020年のソフトバンク楽天は白熱必至だ。

松坂世代 (河出文庫)

松坂世代 (河出文庫)

 

 


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