黒柴スポーツ新聞

ニュース編集者が野球を中心に、心に残るシーンやプレーヤーから生きるヒントを探ります。

頭の中がアップデートされていない人は悲しい~筒香嘉智が「古い」指導者を一刀両断

「多くの指導者は自分が経験したことばかりを言っていると思う。頭の中がアップデートされていない」。DeNAの主砲、筒香嘉智が講演で持論を炸裂させた。


日刊スポーツで筒香の発言を読み、「ツーレツ!」と甲子園実況のNHK小野塚アナウンサーみたいに言いたくなった。同時にこれは自分にも当てはまっていないかなあとうっすら反省している。



自分自身はそこまで機会はないのだが、人にものを教える、伝えるときは経験に基づく。それ自体は間違いではない。だが、大切なのは筒香の言うように「アップデートする」ことなのだ。

あえてステレオタイプで言う。私の知る限り、仕事ができる人は本を読む。新しい知識を得て、恐らくそれを実践している。 
その逆の人は同じ話しかしない。経験談としては面白い話もある。昔はそんなことがあったんだ、と発見にもなる。だが大抵それでおしまい。おしまいならまだいい。往々にしてその話はゾンビのように復活して、また話題にのぼる。たちが悪い。

ちなみに筒香は打撃の「上からの叩け」理論に意義を唱えていた。そうじゃない部分もありますよね?と。プロで活躍する人ほどバットを平行に入れている。何なら、ちょっと下から入れる人さえいるという。これはまったく知らなかった。

トレンドという言葉があるように、時代は常にうごいているのだ。常に考えてアップデートしていないと、実はベルトコンベアーの上で一生懸命走っているだけで、位置的にはすこしも前に進めていない。それはあまりにも悲しい。気を付けねば。

ちなみにあなたはどんなメディアを使って自分をアップデートしているだろうか? 私はカーラジオ(手堅くNHKもちろんAM)、スマートニュース、そして新聞である。

新聞なんてオワコンだよねと思われるだろうか。だが実際、私は日々新聞を読んで自分をアップデートしている。確かにネットに出ているものが載っていることもある。だがスローライフ的なもの、自己啓発に役立つものは新聞でもよく目にする気がする。私は毎朝10分、ざーっと見出しを見ながら読むべき記事を選んで読む。一日一個はアップデートするきっかけがある。それこそ筒香が言うように平行にバットを入れる感覚で打ち返せている。 
もちろん、自分の感性に合わなくて空振りの日もある。それは当たり前じゃないですか。毎回編集者と読者が感性合いまくりなんて、できすぎだしありえない。 
言うまでもなく、黒柴スポーツ新聞は「上から叩け」なんて押しつけたりしませんので、気が向いた時に読んでいただけたらうれしいなと。工夫しながら、アップデートのきっかけになりうる話題を提供していくので、応援よろしくお願いいたします。

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自分のアップデートにおすすめの本はこちら。興味があったらぜひ手に取ってみてください。
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漫然と続けるより、思いきって変えてみる~ソフトバンク松本裕樹がサイドスロー転向

新年からの連続執筆が早くも終わりかねない大ピンチ。ゆえになりふり構わず書くことにした。ソフトバンクの松本裕樹がオーバーハンドからサイドスローに変えるという。



変わらねば、という決意からだろう。確かに2015年ドラフト1位の逸材ながら4年間で計3勝。そろそろ結果がほしいに違いない。ここでサイドスローに転向して大ブレイクした人を思い出した。斎藤雅樹である。2年連続の20勝投手。後に野球殿堂入りしたことを思えば、転向は大正解だった。

斎藤雅樹サイドスロー転向は藤田元司監督の指導だったらしい。素人目には上からの方が力強い球が投げられそうに思うが、腰の回転がスムーズに横回転できるなど、その人に合っているかがポイントだろう。

藤田前監督 巨人軍を語る

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松本裕樹はどうだろうか? 転向の決断に至ったのはとにかく結果がほしいからに違いない。その姿勢は買いたい。変わるのは本当に勇気がいる。曲がりなりにもそのスタイルでプロ野球に入ったのだ。それを一旦捨てるのは勇気がいることだろう。

転向の結果をすぐに求めてはいけないが、この挑戦をまずは評価したい。変わると決めたら行けるとこまで頑張ってもらいたい。漫然と今のままでいようとする人よりも、ジタバタする人の方が応援のしがいがあるというものだ。もちろん、松本裕樹がプロ入り後、漫然と過ごしてきたという意味ではない。彼なりに戦ってきたからの決断だろう。

というわけで、黒柴スポーツ新聞も連続執筆維持へジタバタしてみた。ちょこちょこ加筆しながら通常スタイルに更新する予定。松本裕樹を見習って、柔軟にやっていきますので応援よろしくお願いいたします。

松本裕樹の先輩たちも日々進化しています。あわせてどうぞ。
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自分の評価を変えられるのは自分~5位指名の柿木蓮はドラフト1位吉田輝星に追い付けるのか

糸を引くような直球。甘いマスク。シャキーン!と効果音が聞こえてきそうな侍ポーズ。秋田県代表、金足農業のエースとして2018年夏の甲子園を沸かせた吉田輝星には、アラフォーの野球バカも胸を踊らせた。甲子園準優勝の人気選手を獲得したのはドラフト巧者の日本ハムだった。



日本ハムのドラフト1位指名は見ていて気持ちいい。当然重複必至だが、良いと思った選手はガンガン取りに行く。あれこれ考えずシンプルに行動しているように見える。ダルビッシュ有中田翔大谷翔平清宮幸太郎。話題の選手はみんな日本ハムが獲得した。はずれ1位ではあったが吉田輝星もその系譜に名を連ねた。
不可能を可能にする 大谷翔平120の思考

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だが、2018年ドラフトの指名順位を見て、日本ハムはしたたかだなとうならされた。5位で甲子園優勝投手の柿木蓮を指名したのだ。春夏連覇を成し遂げた大阪桐蔭の中心選手。額面だけで見れば吉田輝星より高い評価がもらえるはずだが、柿木蓮は吉田輝星に差を付けられている。

ドラフト1位の吉田輝星は契約金1億円、年俸1000万円で仮契約。
ドラフト5位の柿木蓮は契約金3500万円、年俸520万円で仮契約。
各球団で10人足らずのドラフト指名者の中でもきっちり差を付けている。これを、吉田輝星はともかく柿木蓮はどうとらえているだろうか。ものすごく気になる。

背番号だってそうだ。吉田輝星は18。球界ではエースナンバーとされている。先日もロッテの涌井秀章が16から18に変更。中日の松坂大輔も2018年に付けていた99から18に変わる。

日本ハムでは同じように鳴り物入りで一員になった斎藤佑樹が最初に背番号18を付けた。吉田輝星とて、斎藤佑樹のように伸び悩む可能性はある。あくまでもプロ野球に入っただけで、入団時の評価がずっと続くわけではない。
甲子園の奇跡 斎藤佑樹と早実百年物語 (講談社文庫)

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その意味では柿木蓮がどうなっていくかがすごく気になるのだ。柿木蓮の背番号は37。いかにもドラフト5位的な、シブい番号である。はっきり言えばパッとしない。スター選手が若い時に付けてました的な、修業時代の匂いがプンプンする番号である。日本ハムは徹底的に、吉田輝星と柿木蓮に差を付けているように見える。吉田輝星には開幕投手の可能性まで浮上している(策士の栗山英樹監督だから十分ありえる話)。
「最高のチーム」の作り方

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だが、柿木蓮にしてみれば大阪桐蔭時代にも同じような経験をしているのではないか。そう、打ってよし、投げてよし、守ってよしの根尾昂がいたのだ。ピッチャーの柿木蓮にしてみれば、根尾に負けられないという思いがあったに違いない。大阪桐蔭の場合は高いレベルの選手がそろっていたためバランスが取れたが、変なライバル意識だけ残ってしまっていたら、大阪桐蔭とて崩壊していたかもしれない。ライバルとはあくまでも切磋琢磨できる存在であってほしいものだ。

だがプロ野球高校野球よりはるかに個人の能力と人気が問われる。日本ハムは吉田輝星と柿木蓮の間に、2位で野村佑希(花咲徳栄高)、4位で万波中正(横浜高)を指名した。この二人は野手故に単純な比較はできないが、総合的な評価で柿木蓮は下位なのだ。吉田輝星は柿木蓮が思う以上に遠くにいるのかもしれない。
スタンダード青森・秋田 2019年1-2月号 Vol.16

スタンダード青森・秋田 2019年1-2月号 Vol.16



繰り返すが入団時の評価がずっと続くわけではない。あの西鉄ライオンズの鉄腕・稲尾和久だって最初は無名だった。契約金は50万円。同期入団の畑隆幸は16倍の800万円だった。契約金の話になった時、稲尾は「あんまり変わらんのう」とごまかすのがやっとだったという(出典は稲尾和久著「神様、仏様、稲尾様」日経ビジネス文庫)。
神様、仏様、稲尾様―私の履歴書 (日経ビジネス人文庫)

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そこからどうなったか。稲尾和久は初年度の昭和31年に21勝6敗で新人王と最優秀防御率(1.06)。通算では276勝137敗。シーズン42勝、連続20勝以上8シーズンなどまさに西鉄黄金期の大エースだった。一方の畑隆幸は通算56勝50敗。畑がどうこうというよりは稲尾和久がすごすぎた。

県立高校出身で、地元の仲間と甲子園で躍動した吉田輝星を応援するのは当然。私はソフトバンクファンだから、支障のないように西武戦とかで好投してもらいたいが、柿木蓮にも密かに注目したい。結局、自分の評価は自分で変えるしかないのだが、人間がはい上がる姿には心打たれるものだ。それを見越して日本ハムが柿木を5位指名していたとしたら、本当にニクい球団である。

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ソフトバンク王貞治会長の平成を振り返る会見をメディアはどう伝えたか~切り取り方は人それぞれ

ソフトバンクホークス王貞治会長が1月18日、日本記者クラブで会見した。タイトルは「平成とは何だったのか」。各メディアは工夫しながら報じたのだが、スマートニュースで比べてみたら、見出しがバラバラで面白かった。



まずはベースボールキング。
王貞治氏、“生卵事件”は「ファンが真剣に怒った結果」
今では考えられないくらい弱かったホークス(ダイエーホークス)を率いていた王貞治監督。怒ったファンがバスに生卵を投げつける事件まで起きた。私も覚えているが「世界の王」がこんなことされるのかと衝撃的だった。だが王さんはさすが。「真正面から引き受けないといけない」と屈辱を糧にしている。私は強くなってからのホークスを応援しているが、ダイエー、さらには南海時代からのファンは本当に偉いなあと思っている。

続いて時事通信
王貞治氏が持論「大谷は打者で」=平成のプロ野球を回顧
一体、王さんは大谷翔平の二刀流のどちらがよいと思っているのか。「長く選手をやるのなら、けがの少ない打者の方がいい」そうだ。王さんだって甲子園準優勝投手。そこから世界のホームラン王になったわけで、さすが説得力がある。どちらにしても、自分で決めることだとも述べていた。
エンスカイ 大谷翔平 2019年卓上カレンダー

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次はスポーツ報知。
ソフトバンク王貞治会長が会見 もし今現役だったらメジャーに挑戦していた?
今とは違ってメジャーへの道が整備されていなかった。それでも「チャレンジはしてたと思いますよ」。そして、速い球が得意だったから「やれる感覚だった」とも。やれたでしょうね。どこのユニフォームが似合うだろうか。ヤンキースドジャースハンク・アーロンがいたからブレーブスはなしか。

次は産経新聞
王貞治氏が平成をテーマに会見「長嶋さんと戦えたのは特別だった」
ONシリーズと呼ばれた、長嶋茂雄監督との日本シリーズは2000年。ONの現役時代を知るオトーサンたちはさぞ感慨深かったことだろう。あそこはやはり長嶋さんが勝つシステムになっていたのか。王監督が古巣巨人と相まみえるのは、西鉄ライオンズを率いて巨人に挑んだ三原脩監督を思い起こさせた。「自分にとっても、長嶋さんと一緒に戦えたのは特別な年だった」と力を込めた王会長。元気なうちにもう一度巨人との日本シリーズが見たい。

続いて共同通信
ソフトBの王会長、平成振り返る WBCは「選手が頼もしかった」
世界の王は世界一が似合う。2006年、WBCの歴史に燦然と輝く初代チャンピオンになった日本。イチローがいて、松坂大輔もいた。監督が王貞治。まさにドリームチームだった。「米国で戦っているうちに自信をつけてくれた。日の丸を着けるとパワーをもらう」と述べた王会長。プレッシャーも相当だったことだろう。余談だが、私はソフトBという見出しが大嫌い。藤子不二雄のウルトラBじゃないんだから。
ウルトラB(1)

ウルトラB(1)

デイリースポーツは記事が2つ。
王会長、生卵事件が常勝ソフトバンクの礎「屈辱ではありましたが…」
王貞治会長が“投手・大谷”の体を心配「バッターに専念してくれたら」
見出しは一番工夫を感じる。さすがスポーツ紙。同じ会見をネタに、切り口を変えながら複数の記事を配信する。確かにネタが王会長ならばやれる。やろうとする姿勢が素晴らしい。「やっぱり、マウンドでバッターを打ち取った気分は最高なんです。バッターが『参った』という感じを見せてくれる、こんなうれしいことはない」と投手の面白さを語ったくだりを入れてくれたのはよかった。ただしこの大谷に関する記事はボキャブラリーの乏しさが否めない。いつまでも新聞記事が一番読みやすい分かりやすいなんて偉そうなことは言わないが、その一線を守れなければ新聞はますます厳しい。



元新聞記者ゆえについつい熱くなってしまったが、王会長くらいのキャリアであれば、メディアを経て、ではなく素材の味を、まんま楽しみたい気もする。私はヘビーユーザーではないがログミーなどで今回の王会長会見をまるごと読んでみたい気がした。
王貞治 壮絶なる闘い

王貞治 壮絶なる闘い



あらためて読み比べをしてみるといろいろな発見がある。黒柴スポーツ新聞も切り口を工夫しながら、選ばれる存在を目指します。これからも応援よろしくお願いします。

サファテは250セーブで名球会入りできるのか~モチベーションの源は人それぞれ

サファテがTwitterで、ファンから質問を公募したという。Full-Countの記事で読んだ。さぁ、一つだけ答えてもらえるならば、あなたは何を聞くだろうか?

私はモチベーションの源を聞きたい。サファテが守るのはチームの勝利。それだけでも気合は入るだろうが、何せサファテは登板数が多い。どうやって1年間、モチベーションを保っているのか非常に気になる。



活躍する場面が多いのはやりがいがあるだろうが、怖いのはマンネリ化だ。こうやれば勝てるという必勝法、必殺技があるのは素晴らしいが、実は上っていく時の方がワクワクしないか。仕事を覚えていく、できることが増えていく過程が楽しかったりする。

サファテが頑張れるのは、1年間頑張った先に高額な年俸が待っているから? それもやりがいの一つに違いないが、サファテは熱い男だからお金は2番手以降と見た。

個人的にはあと16に迫った日本球界通算250セーブ。サファテが名球会入りするのは楽しみだ(外国人でも入れましたよね?)。これを達成するためにも早期の復帰を期待したい。



サファテが復帰したら森唯斗のポジションはどうなるだろうか。一度クローザーの味を知ったからには森だって簡単に譲りたくないかもしれない。ただしサファテの中継ぎはぜいたくすぎる。

サファテはTwitter岩嵜翔や嘉弥真新也との写真や動画をアップしていた。二人はサファテの自宅があるアリゾナでトレーニングしているのだった。サファテにとっては仲間もモチベーションの一つかもしれない。
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私のモチベーションの一つはソフトバンクホークスだ。2018年シーズン終盤、所沢での西武との天王山3連戦にまさかの3連敗を喫した翌日は胸に穴が空いていた。やる気が起きなかった。ああ、私はこんなにソフトバンクが好きになっていたんだなあと少し驚いた。ソフトバンクが奮起してクライマックスシリーズを勝ち上がり、日本シリーズを制したからよかったものの、もし広島に負けていたら夜、眠れなかったに違いない。



さて、黒柴スポーツ新聞は久々に読者を獲得した。ものすごくうれしい。おかげさまで2019年は記事をシェアされることがすごく増えた。これが正直、相当励みになっている。モチベーションの源だ。やはり読んでもらえることはうれしいものだ。最後に、いつもスターをくれる皆さんにも「ありがとうございます」。これからもどうぞよろしくお願いします。

無理を悲劇にしないためには~野球殿堂入り立浪和義10.8決死のヘッドスライディング

立浪和義野球殿堂入りが決まった。黒柴スポーツ新聞的には権藤博で書きたいところだが、以前書いたことがあるのできょうは立浪和義で。ミスター二塁打ミスタードラゴンズなのだが、私にはあの名シーンしか浮かばない。そう、立浪和義のヘッドスライディングだ。

1994年10月8日、そう、巨人と中日が最終戦の130試合目で同率首位決戦をした、あの10.8で立浪和義はヘッドスライディングをしたのだった。普段そんなことをしない人がヘッドスライディングをしてしまう、それくらい熱い試合だったのだ。



久しぶりに動画を漁ってみたら吉村功アナウンサーの実況だった。立浪和義がヘッドスライディングをしたのは巨人が3点リードの8回裏。立浪和義は先頭バッターだった。

「切り込み隊長の役割もできます立浪です」。吉村アナウンサーの実況は滑らかだ。「どうですか達川さん、この回一つ大きなヤマ場でしょうね」「ヤマ場ですね、それも立浪次第ですね」
長打力を高める極意 (MASTERS METHOD)

長打力を高める極意 (MASTERS METHOD)



立ちはだかるのは桑田真澄。しびれる場面でPL学園対決である。大先輩に対して立浪は成績を残していた。17打数の7安打、打率は4割以上だ。「どういうわけか、いつも桑田は立浪にムキになりますよね」と解説の鈴木孝政。野球センスの塊同士だから燃えるのは当然だ。桑田が燃えないはずがない。
初球、桑田はインコース低め、ここしかないというところでストライクを取る。すさまじいコントロールだ。「桑田も気合が入ってますねぇ」と吉村アナ。

1球ボールを挟んでツーストライク目もインコースの変化球。まさに卓越したコントロールだ。そして運命の4球目。立浪が叩きつけた打球は高いバウンドでサードへ。岡崎郁がうまくすくい上げて一塁へ。だが立浪が気合のヘッドスライディングで一歩上回った。

立浪和義公式写真集

立浪和義公式写真集



「どうだ、セーフだ!」。吉村功アナウンサーは声を張ったが、立浪はしゃがみこんでいる。「立浪もどこか痛めたか?」。巨人も落合博満が負傷。ギリギリの勝負をしていたのだ。
決断=実行

決断=実行



「今のプレーでお客さん泣いてましたね」「ああ、そうですか」「これは気合と気合のぶつかり合いですね」「もう執念のヒットですね」。見るものを熱くする名場面であった。結局、立浪和義は左肩を傷めてダグアウトに引っ込んでしまった。

この傷は立浪和義に深いダメージを残してしまった。翌シーズンさらには引退まで痛みを持ち越してしまったという。一説には、一塁は駆け抜けた方が速いとか。野球経験者に聞いてみたら、駆け抜けるよりヘッドスライディングの方が速い場合もあるそうだ。映像を見る限り立浪和義の脚の方が速く、タイミング的にはヘッドスライディングをしなくても大丈夫そうだ。だがこれも結果論。恐らく本能的に立浪和義はヘッドスライディングしていたのだろう。

物事を精神論で片付けるのは好きじゃない。だが、この立浪和義のヘッドスライディングにものすごく惹かれた。イチローには否定されてしまうだろうがこれもプロフェッショナルだと思った。やはり勝負をかける時は全身全霊でやる方が好きだ。立浪和義はけがをしたわけだからやらない方がよかったのだが、時には熱くなることも必要だと思う。

それで言うと、引退した稀勢の里が、けがをおして出た場所はどう評価したらよかったのか。武蔵川親方はズバリ、「横綱の責任は出場ではない。勝つことだ」と指摘した。無理をしてもいい人と、自重した方がいい人がいるということか。

そして、無理してよかったのかどうかは、その後の結果にもよるのだろう。立浪和義は22年間で2480本もヒットを打った。けがをした後も二塁手三塁手としてゴールデングラブ賞を取っている。もしもあのヘッドスライディング後に再起不能だったら、やはりやらなきゃよかったのになぁとなったのだ。だから過去の無理を悲劇にしないためには、その後そこそこハッピーにならねばならない。果たして稀勢の里は挽回することができるだろうか。

それで結局、権藤博にも触れてしまうが1年目に35勝、2年目も30勝とすさまじい投げ方だったことで、権藤博は指導者としてのスタイルが決まったわけだ。そして、80歳にして野球殿堂入りを果たしたのだ。無理したことが後々どんな意味合いを持つのか、結果が分かるのは何十年も後になることもあるのだ。そこは稀勢の里には救いになるだろう。
もっと投げたくはないか 権藤博からのメッセージ

もっと投げたくはないか 権藤博からのメッセージ



それにしても立浪和義はなかなか監督にならない。未来のミスタードラゴンズ候補の根尾がいるうちには中日の監督になるだろうか。指導者になったらぜひ、熱い気持ちを体現できる選手を育ててもらいたい。

必要とされることは幸せ~握寿司洋砲レアードがロッテに移籍

働く、ということを例年になく考えている。どんな意味があるかは人それぞれ。1月14日付の日経新聞秋元康のインタビュー記事が載っていた。タイトルは人生100年時代の備え。示唆に富む内容だった。


秋元康は働く意味をこう説いた。「金銭的、経済的なこと以上に、自分が必要とされているか、されていないかということの確認事項だと思います」。特にプロの世界なら、契約してもらえなければ無職にもなる。必要だから契約される。シンプルだ。

秋元康の仕事学  

秋元康の仕事学  

この記事を書く直前に、ロッテが元日本ハムのレアードを獲得したという見出しをスマホで見つけた。私はソフトバンクファンなのに、レアードが無職になるんじゃないかと気になっていた。

ソフトバンクファンだから日本ハムからレアードがいなくなれば、心配事は減る。レアードは2018年こそ本塁打26、打点65にとどまったが2015年からの3シーズンはいずれも本塁打30以上かつ打点90以上。助っ人としては優秀な部類に入る。契約が更改されなかったのは、日本ハムがレアードに見切りを付けたのかもしれないし、年俸で折り合いがつかなかったのかもしれない。

でも、このまま日本球界を去るのは何だか惜しいなあと思っていた。だから他人事だがレアードに働き場所が見つかってよかった。職場はロッテ。レアードは日本ハムでは三塁手。ロッテにはチームの中心選手である鈴木大地がいる。ロッテは二人をどうやりくりするのだろうか。興味深い。

サンスポ記事で見たが、ロッテは2018年の本塁打数が78。これは12球団ワーストだそうだ。つまりレアードを獲得したのは本塁打への期待。長打力だ。

鈴木は長打力ではレアードに太刀打ちできないがキャプテン経験者である。キャプテンは誰でも彼でもできるものではない。鈴木とレアード、どちらも必要だとしたら、どちらかはコンバートされるかもしれない。

だとしてもそれはロッテが必要な人材を持っているということだ。あらためて秋元康のインタビュー記事を見ると、レアードは必要とされてロッテと契約を結んだのだなぁと思う。必要とされた場所で働ける。それはモチベーションにつながるに決まっている。

そういう意味では人的補償で移籍した内海哲也長野久義も喜んでよい。必要とされたから呼ばれたのだ。このほかにも2018~2019年のオフシーズンは金子や浅村、西勇輝が新天地に移っており、移籍初年度にどんな成績になるのか興味が尽きない。プロの評価基準の一つは年俸だが、「必要とされる」ことそのものが素晴らしい。
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必要と思われるためには結果を残さねばならない。そう思って、まずは目の前の仕事を一つずつやっていこう。


なお、本日の見出しの握寿司洋砲は台湾メディアの作品。滝沢カレンも真っ青である。

平成の終わりに平成元年のプロ野球を振り返る~新元号初年度のペナントレースを制するのは?

2019年はいよいよ元号が変わる。平成を振り返る企画があちこちで進行中だが、黒柴スポーツ新聞は特に、30年前の平成元年をフォーカスして、プロ野球を楽しく振り返ってみたい。テキストは久々、宇佐美徹也先生のプロ野球記録大鑑。

プロ野球記録大鑑〈昭和11年‐平成4年〉

プロ野球記録大鑑〈昭和11年‐平成4年〉



いきなりだが平成元年のパ・リーグはどこが制したか。


そう、近鉄バファローズだ。昭和63(1988)年の10・19の悲劇を乗り越え、2年越しの優勝を果たした。

近鉄のエースは誰だったか?そう、阿波野秀幸。29登板で19勝8敗。さすがエースである。

もちろんMVPも阿波野秀幸かと思いきや違う。誰だったか?


答えはブライアント。19勝の阿波野とホームラン49本のブライアント。どちらもすごいのだがやはりブライアントはシーズン最終盤の4打数連続ホームランの印象が強かったのだろう。MVP選考ではブライアントが818点。次点の阿波野は657点だった。
阿波野の成績で度肝を抜かれたのが21完投。先日ソフトバンク東浜巨が2019年シーズンの目標の一つを10完投とした記事を見たが、平成元年の阿波野は29登板で21完投。投球回数は235回3分の2だった。

21完投なんて見間違いかと思ってセ・リーグを調べた。最多完投は斎藤雅樹が21。さすが巨人のエース。斎藤雅樹は30登板で20勝7敗。投球回数は245回、防御率は何と1.62でもちろんリーグ1位だった。

だが当時のセ・リーグはハイレベル。斎藤雅樹最多勝西本聖と分け合った。西本は20勝6敗で、勝率1位(.769)。

最多投球回数は桑田真澄の249回。巨人にはこの年200回以上投げたピッチャーが2人もいたのだ。
Number PLUS 桑田真澄 完全復刻版 (Sports graphic Number plus)

Number PLUS 桑田真澄 完全復刻版 (Sports graphic Number plus)

ちなみに平成元年の8月にはナゴヤ球場でこんなドラマもありました。
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平成元年のパ・リーグ打撃部門はブライアントが総なめかと思いきや実は違う。打点王は誰だったか?


答えはブーマー(打点124)。ブーマーは打率.322で首位打者にも輝いた。なおブーマーあるあるだが、ブーマーは登録名。「ブームを呼ぶ男」の意味からだが、本名はGregory DeWayne Wellsらしい。



さて、パ・リーグを制した近鉄だが4番打者は誰だったか? プロ野球記録大鑑がすごいのは打線も記録してあるところだ。

1大石
2新井
3ブライアント
4リベラ
5淡口
6鈴木
7金村
8山下
9真喜志(村上)

そう、4番はブライアントではなくリベラだった。ブライアントの活躍がまぶしすぎてあまり評価されていないが、リベラは25本塁打、79打点。ブライアントが4本塁打した西武とのダブルヘッダーでもダメ押しのホームランを放っている。

リベラは熱い男だ。その西武戦では併殺崩しを狙って二塁にすさまじいスライディングを行った。食らったのは辻だったか、田辺だったか? ガチンコの天王山、助っ人も一丸となって容赦ないスライディングをする。危険なスライディングは決してほめられないが、近鉄の団結力を感じられる名場面である。



リベラは熱い男だ。平成元年のリーグ優勝を決めた、ダイエーホークスとのゲームの最終回。山本和範の大飛球をライトの鈴木貴久がフェンスに激突しながらナイスキャッチ。だが鈴木は立ち上がれない。そこに駆け寄ってきたのがリベラ。何と、一塁を守っていたリベラがフェンスまで移動していたのだ。
近鉄バファローズの時代 (知的発見! BOOKS)

近鉄バファローズの時代 (知的発見! BOOKS)



残念ながらリベラはこの1シーズンだけで日本球界を去った。助っ人としては確かに若干物足りなさも感じるが、リベラなくして平成元年の近鉄の優勝はなかったと思っている。

プロ野球を振り返るつもりが近鉄を厚めに振り返ってしまった。まあ、いい。日本シリーズで巨人に3連勝からまさかの4連敗という大逆転負けを喫しはしたが、リーグ上位3チームがゲーム差わずか0.5の中にひしめく大混戦を制した近鉄は確かに輝いていたのだ。

2019年早々、近鉄のOB会が解散するという記事を見つけた。オリックスと合併して球団は消滅。バファローズの名前のみ残ったが、新たな入会者が現れる見込みはないという。一応、坂口智隆や近藤和樹、岩隈久志近鉄在籍歴はあるのだが。平成元年に優勝した近鉄は、平成と共にOB会に幕を引く。それも潔い決断だと思う。さすがに鈴木啓示OB会長も「投げたらアカん」とは言わなかったか。
投げたらアカン!―わが友・わが人生訓

投げたらアカン!―わが友・わが人生訓



さぁ、果たして新元号の初年度、ペナントレースを制するのはどの球団か。新しい元号になっても、ファンをワクワクさせるプロ野球であり続けてもらいたい。

巨人軍はSNSでも紳士たれ~原監督のSNS禁止令が波紋

原監督がSNS禁止令を出したという。アエラの記事で見た。これに堀江貴文が異論をとなえた。そう、別にSNSという手段が悪いわけではない。運用の問題である。

 ジャイアンツ卓上カレンダー2019 2019年 カレンダー 16×20cm プロ野球

 

ジャイアンツ卓上カレンダー2019 2019年 カレンダー 16×20cm プロ野球

 

 

確かに巨人は2018年にくだらない事件が複数起きた。その中にSNSがらみのものもある。球団や首脳陣としては性悪説に立たざるをえないということか。原監督は「言いたいことがあれば俺ら(首脳陣)、あるいは新聞記者に言え」という考えらしい。

 

原点―勝ち続ける組織作り

原点―勝ち続ける組織作り

 

 

 

今や選手自ら情報発信するのは当たり前だ。アエラの記事でも触れているが、ダルビッシュ有を筆頭にSNSで自分の考えを伝える選手がいる。2018年には西岡剛がインスタグラムの中で「阪神タイガースのユニフォームを脱ぐことになった」と戦力外通告を公表した。

 

全力疾走

全力疾走

 

 

 

これを知った時、時代は変わっているなと実感した。戦力外通告なんて、記者にしてみれば絶対逃してはいけないネタだ。それがあっさりと世に出ていく。選手にしてみれば、自分の言葉でファンに思いを伝えられる。SNSを使おうとする気持ちは分からなくもない。

 

俺たちの「戦力外通告」

俺たちの「戦力外通告」

 

 

 

例えば口数が少なそうな印象の野茂英雄。恐らく本当の野茂はもっとニコニコしていたり、語る言葉を持っていたりするのだろう。だが特に大リーグ挑戦のころは、わがままを押し通した印象になってしまった。もしこの時野茂がTwitterなどで胸の内を率直に、自分の言葉で発信していたら、少しは風向きが変わったのではなかろうか。

 

完全保存版野茂英雄1990-2008

完全保存版野茂英雄1990-2008

 

 

 

となると、記者の存在意義が問われてくる。選手が直でファンに動向を伝えるならば、記者はいなくてもよい。選手にしてみたら言葉を誤って解釈されるリスクもない。言葉は切り取り方次第でずいぶん印象が変わる。そのことを伝え手は相当意識しないといけない。

 

トラ番記者が見た! 阪神タイガース事件の真相

トラ番記者が見た! 阪神タイガース事件の真相

 

 

 

というと記者がいかにもテキトーなようだが、もちろん現場の記者は読者にいかに楽しんでもらえるかに頭を悩ませている。特にスポーツ新聞は、戸配のものもあるが駅やコンビニで「選ばれて」買われるものだ。同じ現場に居合わせても、いかにネタを料理するかで売上が変わると言っても過言ではない。

 

デイリースポーツ「9.19広島東洋カープ優勝特集号」

デイリースポーツ「9.19広島東洋カープ優勝特集号」

 

 

 

その意味では西岡剛の一件は、デイリースポーツには脅威ではなかったか。そして今回の原監督によるSNS禁止令でほくそえんでいるのは報知新聞ではないのか?なんて想像してしまった。

 

報知ジャイアンツカレンダー2019 2019年 カレンダー B2

報知ジャイアンツカレンダー2019 2019年 カレンダー B2

 

 

 

SNSは楽しく交流ができる。黒柴スポーツ新聞も「部数増」(シェア)を目指して上手に使えないかと模索中だ。先日の茨城県部長の不適切投稿など、何だかなぁという運用も確かにある。だが、一律禁止とするのはいかにも選手を信用できていないように見える。

 

ヤングジャイアンツカレンダー2019 2019年 カレンダー A2

ヤングジャイアンツカレンダー2019 2019年 カレンダー A2

 

 

 

どんな手段であっても、自分の言葉で伝えられない選手は一流ではない。巨人軍は紳士たれというのであれば、きちんとSNSでも紳士らしさを発揮したらよいと思うが、いかがだろうか。

頼れるのは精神ではなく技術~ソフトバンク武田翔太が平均台やギプスで自主トレ

心、技、体。あなたはどれを最重要視しているだろうか。私は心派なのだが、ソフトバンク武田翔太は技だという。あのイチローもそういう思考だそうだ。その辺りを書いた1月11日付の西日本スポーツ記事が大変面白かった。


イチローはこう言っていたという。「頼れるのは精神ではなく技術」。テクニシャンのイチローの自負が伝わってくる。だがこれは理にかなっている。例えば体調も天気も変わるものだが、結果をいちいちコンディションのせいにはできない。



その代わり、己に技術があれば、好不調の波は幅を狭められる。プロフェッショナルの定義はさまざまだが、常に一定のレベルを保つのもまたプロならではと思う。

思えば武田翔太は高いポテンシャルがありながら成績にムラがある。過去7シーズンで通算52勝だが2年連続2桁勝利もあるし、4勝のシーズンもある。その2018年の4勝のうち3勝は完封なのに、負け越し5の9敗した。武田翔太ソフトバンクファンのファンはとても歯がゆい思いをしたのだ。

ただし武田翔太は後半戦、長いイニングが投げられる能力を生かして中継ぎ(第2先発)として活躍。ポストシーズン日本シリーズで勝ちパターンの一角になった。だいぶ投球が安定した印象だ。
先日公開した自主トレでは「三種の神器」というトレーニング機器が登場した。自作の平均台や踏み台、固定装具(ギプス)だ。自作というのが面白いし、三つともパット見、野球とは関係なさそう。だが踏み込み方やら下半身の使い方など、独自のチェック項目があるようだ。トレーニングも漫然としていてはいけない。

また、武田翔太がパートナーに大竹耕太郎を指名したのも面白い。大竹は年下なのだが、先輩後輩の関係なくコーチングし合うようにしたそうだ。そう、向上心がある人はいちいち先生が年上か年下かなんて気にしないのだ。自分を高めてくれる人はみんな大切な存在だからだ。

西日本スポーツ記事で武田翔太はこんなことを言っている。
「駄目なときはメンタルが弱いと言われるけど、結局は技術がないから(スランプに)陥る。技術をつくり上げて使えないと、体を鍛えても(意味がない)。心で勝てるというのなら、誰だって勝てる。技術で勝たないと」



確かにプロ野球に入ってくる人はみんな、子どものころからエースで四番、みたいな人ばかり。そこでしのぎを削るのだから、勝敗を分けるのは気持ちの部分なのではないかと見てきた。でも、そこも大事だけれど確かに武田が言うように気持ちで勝ち負けがつくならある意味、楽。気持ちでどうにかすればいいのだから。でも現実は違う。技術で追い付かない限り、ライバルにはどんどん差を付けられ、やがて姿は見えなくなる。そして追い付こうとさえ思わなくなる。恐ろしい。

というわけで、今年は心技体のうちの技を特に意識して、やれることを増やしていく。武田翔太はいつもいろいろな気付きを与えてくれる。ぜひ2019年は自主トレの成果を発揮してまた2桁勝利をおさめてもらいたい。

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人的補償の長野久義、広島移籍騒動に垣間見られる終身雇用制度至上主義

丸佳浩人的補償で広島に移籍した長野久義の背番号が5に決まった。これがニュースになったことで確信した。やはりまだまだ日本では終身雇用制度が崩壊してはいないのだな、と。

長野久義メッセージBOOK 信じる力

長野久義メッセージBOOK 信じる力



私が持っている野球カードに、ノーラン・ライアンのセットがある。若き日のライアンのカードはメッツのユニフォーム。エンゼルスのものは記憶がないのだが、アストロズやレンジャーズのユニフォーム姿は覚えている。ノーラン・ライアンほどの人が移籍したらさぞ話題になったと思うが、ライアンは4球団に所属したので、そこまでの悲壮感はなかったのではと推測する。
ノーラン・ライアンのピッチャーズ・バイブル

ノーラン・ライアンのピッチャーズ・バイブル



そう、悲壮感。長野は球団を通じて「3連覇中のカープに選んでもらって、選手冥利に尽きる」と優等生的なコメントを発したが、世間の目はどうか。プロ野球ファンなら長野が2度のドラフト指名を拒否して巨人入りしたことは知っている。プロテクトしないなんて巨人は何と冷たいのだ、という反応は当たり前だと思う。

だがもっとアメリカのように移籍が日常茶飯事ならば、あるいは日本社会で転職や他社への就職や独立が当たり前であれば、ここまで長野久義人的補償移籍がクローズアップされなかったのではないだろうか。

長野の背番号については、丸の移籍に伴い空いた9も選ぶことができた。が、長野は将来が期待される野間がいずれ付けたらいいと、譲った形だ。これを男気と見る向きもあるがどうだろう。これこそが外様の悲哀ではなかろうか? 広島がどれだけ温かく迎えてくれようとも、長野は遠慮するだろう。だって少し前まで生え抜きの人気選手が付けていて、生え抜きの若手でそれを付けてもいい選手がいるのだ。

ファンの目も気になるだろう。特にカープファンは地元びいきなのだから。そう、これが広島東洋カープに移籍するということなのだ。
広島東洋カープ 2019年 カレンダー

広島東洋カープ 2019年 カレンダー



という状況を見ると、奇しくも選んだ背番号5はぴったりかもしれない。国貞泰汎や高代延博といった移籍選手、もしくはギャレットやバークレオ、ルナら助っ人がよく付けていた番号なのだ。それを長野が知っていたかは定かではないが。

そしてカープの背番号5は、町田公二郎栗原健太といったパンチ力のあるバッターも付けていた。長野はそれに巧さを加えた打者だ。勝負強さもある。逆転のカープにはぴったりかもしれない。

長年の功労者を大切にしないことと、人材の有効活用はイコールではない。もちろん巨人がどんなに意図で長野をプロテクトしなかったかは重要だ。若返りを図りたかったならそう言えばいいのだが、「申し訳ない」みたいに言うから余計に長野がかわいそうだ。中島宏之を獲得しているから説得力もない。一体巨人は何がしたいのか。

巨人を出るというのは特に注目され、波風を立ててきた。反骨心を見せた代表格は西本聖だろう。中尾孝義とのトレードで中日に移籍したが初年度の1989年に20勝で最多勝に輝いた(前年は4勝)。今よりもはるかに終身雇用制度かつ生え抜きを重要視する時代だったから、西本の「倍返し」は鮮烈な印象を残した。



では、30年たった現代の長野久義はどうだろう。やはり巨人戦では燃えるのだろうか。長野はさほど意識しなくとも周りは煽ってしまうのか。だとしたらやっぱりまだまだ、一つの組織で勤めあげるのがよい、という風潮に感じられる。

その意味では2018年~2019年にかけて西武や広島が行った、遠慮なき「生え抜き」の獲得は慣習にとらわれない補強として評価されるものだった。頻繁にチームを移られても困るけれど、能力のある人が、必要とされる所に呼ばれ、結果を残すという流れがもう少しあっても構わなくないか。

近年はベテランが戦力外からそのまま引退を迎えるケースが多いように感じる。選手によっては愛着のあるユニフォームで引退したい人もいるだろうが、1年でも長く現役でいたい選手ならば積極的にトレードの舞台に上がってほしい。若手も戦力外にする前にトレードを検討してもらいたい。たまたまそこで輝けなかっただけかもしれないのだから。そう、輝けるならば別に終身雇用じゃなくてもまったく問題はない。

ちなみに私の知り合いに、所属先が変わっても着実にスキルアップ、ステップアップしている人がいる。大事なのは受け身で生きることよりも、能動的に生きることではないだろうか。私は半沢直樹が大好きだからきっと巨人戦で長野久義が活躍したらほくそえんでしまうだろう。だがまずは長野が生き生きと背番号5を背負っているかを確認しようと思う。

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力を抜く。貪欲に進化する~西武・源田壮亮がテニスボール練習&バット変更

年が明け、プロ野球選手の自主トレが始まった。10日の新聞で、西武の源田壮亮の練習内容に目が止まった。テニスボールを使っていたからだ。「余計な力を抜いた捕球を体にしみこませた」と書いてあった。



先日ブログに書いたが源田壮亮の守備は高い評価を得ている。だが本人は2018年シーズンで11失策だったことを反省している。テニスボールを使った練習は社会人時代にやっていたそうだ。源田壮亮の特徴として、バウンドに合わせるのがうまい印象だが、その秘訣にテニスボールを使った練習があったと知って納得した。テニスボールはよく弾むから、リズミカルに飛んでくるだろう。そして軽いから、優しく包むのだろうか。余計な力は必要なさそうだ。

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私は力を抜くというのが下手くそだ。よくも悪くも目一杯やるのがよいと思ってきたからだ。取材は粘るのがよいと思っていたし、執筆も、推敲を含めて時間をかければよいものが生まれると思ってやってきた。



だがそれは同時に甘えでもある。時間対効果、コストパフォーマンスは極めて悪い。それに今や時間の奪い合いで、文章を最後まで読んでもらえると思ってはいけない。つまらなかったらすぐ離脱。読者は次から次へ面白いものを探すのだ。要はそれに応えられるかどうかだ。だからこそ、見ず知らずの方々に記事をシェアされるのが一番うれしい。ブログの主目的が文章修業と「共感」なのだから。

源田壮亮がゴロをリズミカルにさばくように、黒柴スポーツ新聞も軽やかにネタを形にしたいものだ。なお、源田壮亮の自主トレ記事では打撃の話も書いてあった。2018年シーズンで引退した松井稼頭央と同形のバットで打つことにチャレンジしているそうだ。このバットは重心が先端にあるらしい。操作性より力強さを求めているのだろうか。自分を貪欲に変えようという意識が伝わってくる。

振り子打法で結果を残したイチローでさえ、初期と今ではバッティングフォームは違う。一度結果を出せたならその形でやり続けそうなものだが、上を目指すからこそ変えるのだろう。やはり現状に満足していては変わろうとなんて思わない。

初心を忘れない。でも進化は目指す。源田壮亮は史上初の新人から2年連続フルイニング出場達成者だが、その背景にはしっかり野球に取り組む姿勢が透けて見える。

「~したい」と「~する」の間には深い川が流れている~西武・山川穂高が必ず本塁打王になる宣言

ラジオで山川穂高の2019年シーズンの目標を聞いた。ホームラン50本、そしてホームラン王を「必ず」取るのだという。「必ず」に心が反応した。自分に足りないのはこの辺りだ。



有言実行という言葉がある。発言したことを、責任をもってやるという意味だ。西武は浅村栄斗がFAで楽天に移籍。浅村は打点を稼げるため、抜けた穴は秋山、山川、森あたりでカバーしないといけないだろう。浅村が抜けて山川へのマークは当然厳しくなる。その中で山川が本塁打王を目指すのは素晴らしい。

目標設定時において、「~したい」と「~する」の間には深い川が流れている。確かにやると言っておいてできなかったら「何なんだ」となる可能性はある。だが「~したい」はあくまでも願望であり、実は目標としては弱い。

例えば不祥事が起きた時のコメント。「再発防止に努めたい」もあるし「再発防止に努める」もある。本来なら再発を防止すると言ってもらいたいが、言いきりが怖いのならせめて再発防止に努める、と言えないかといつも思う。

要はやりきる覚悟があるかが問われている。自分に足りないと思うのはそのあたりだ。傷つきもしないが成長もしない。そのつけを今更ながら感じている。だから、山川が必ず本塁打王になる、と言った姿勢に好感を持った。私はソフトバンクファンだからぜひ日本ハム戦あたりで打ってもらうとありがたい。
というわけで4年目を迎えた黒柴スポーツ新聞は今年こそ毎日更新する。うわ、すでにプレッシャーが……(誰にも影響ないのに)。堂々とタイトル獲得宣言した山川穂高はやっぱりエラい。

引退・活動休止特盛日、ただただ攝津正の話がしたい~吉田沙保里より西野カナより

夕方になって、レスリングの吉田沙保里引退のニュースが入ってきた。さらには西野カナ活動中止の一報も。サッカーの中澤佑二楢崎正剛も。きょうは編集者泣かせの日だ。だが今夜はただただ攝津正の話がしたい。きょう2019年1月8日、攝津は引退会見を開いた。私の中の鷹のエースは間違いなく攝津正だ。


何せソフトバンクファンになったのが2011年から。攝津はこの年から5年連続2ケタ勝利。これは今どきなかなかできまい。計算できる戦力としてぐんぐん年俸が上がっていった。



ゆえに、攝津は10年という決して長くないプロ野球人生ながら最高年俸は4億円である。10年のうち、7度も億の年俸だ。選手生活晩年は勤続疲労が否めず、期待された数字が伴わなかった感はあるが、攝津は確かにチームの屋台骨を支えていた。

攝津が優れていたのは中継ぎと先発の両方で結果を残せた点。2018年は加治屋蓮が72登板だったが、攝津は新人から2年連続で70試合超え。タフだった。岩嵜翔のように翌年ほとんど投げられなくなることだってある。

攝津正はリタイアどころか3年目から先発へ。2018年は、先発ができる石川柊太や武田翔太が中継ぎ(第2先発)を務めたが、これがよくあるパターン。攝津は逆だったのだが、立派に先発をやりきった。
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特に2012年は17勝。沢村勝にも輝いた。ウィキペディアで見つけたが、最優秀中継ぎと沢村賞をとったことがあるピッチャーは史上初だったそうだ。デキる人はいろんなことができるのだ。やることが変わった上でまたもや結果を出す人はカッコいい。

攝津は2011年日本シリーズの胴上げ投手だ。最後のバッター、和田一浩を空振り三振にしたシーンを覚えているだろうか? 日本一になったら、しかも、三振が取れたらピッチャーは喜びを爆発させるものだ。攝津はガッツポーズこそ取ったが、三歩、四歩とマウンドをゆっくり降りた。史上稀に見る鉄仮面胴上げ投手であった。私もあまり表情が豊かではないから妙に親近感がわく。私には分かる。決してうれしくないわけではない。むしろウハウハ。だが表に出すのが下手なのである。



いま私の手元には、きりっとした表情の攝津の写真をプリントしたクリアファイルがある。実は攝津がピークを過ぎてから買ったものだ。ヤフオクドームのショップ「ダグアウト」で攝津のクリアファイル3枚セットを見つけたが、複雑な気持ちもあった。割引商品だったからだ。たまたまセールだったのか、商品の入れ替え時期だったのか。お気に入りの攝津のグッズが安く手に入るのだからよさそうなものだが、すごく寂しい気持ちになったのを覚えている。

だから、攝津のクリアファイルはビニールに入ったまま、未開封だ。使うに使えなかった。そして攝津正の引退会見の日を迎えた。ソフトバンクが2年連続の日本一になって喜びを爆発させた翌日、攝津が戦力外になった。実力の世界だから仕方がないと分かってはいるが、またクリアファイルを見つけた時のような気持ちになった。 

攝津が好きだから、どこか他球団で現役続行にならないかと淡い期待を抱いたが、それは強い願望だった。今となってはホークスのユニフォームのまま引退してくれてありがとうと言うしかない。やっぱり私にとって鷹のエースは攝津正だから。わざと予告先発見ないでチケット取って、ヤフオクでもマツダでも京セラでも攝津の登板日を引き当てたのは幸運としか言いようがない。
いわゆる引退試合がなかったのは残念だが、最後まで現役の道を模索した結果と受け止めよう。和田毅も望んだように、いつか必ずホークスに戻ってきてほしい。その日を楽しみに待っています。

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必要とされるうちが華~内海に続き長野久義が人的補償、広島移籍の衝撃

2018年~2019年のシーズンオフはFA史に残る年となった。巨人に目玉選手が行くのは相変わらずだが、生え抜きのスター選手が人的補償として移籍したからだ。内海哲也も話題になったが、広島移籍の長野久義も各紙一斉に驚きをもって報じられていた。



これまでは脂の乗りきったスター選手が巨人を目指し、人的補償で「これから」の若手が他球団へ巣立っていった。内海や長野は明らかに経験や実績が買われている。

本人たちにしてみれば巨人で引退したかったかもしれないが、その前にまだ現役なのだ。必要とされることは素晴らしいことだ。特に広島が長野を選んだことは、4連覇さらには1984年以来の日本一を本気で狙っている証拠と見た。広島は伸び盛りではあるが、ベテランの強打者がもう一人いたらあれほどズルズル日本シリーズソフトバンクにやられることはなかったのではないか。
長野久義メッセージBOOK 信じる力

長野久義メッセージBOOK 信じる力


また、長野久義のポジションも注目したい。センターやレフトで実績があるが、センターでは丸佳浩の代役として期待される野間への刺激になるし、レフトでは鈴木誠也に不測の事態が起きてもバックアップできる。まあ、補完するための年俸としては安くないのだが。

長野には代打要員としての役割も期待されるが、9年連続で100安打という実績からしてスタメン起用も十分ありえる。その場合は長野にどこを守らせるか注目だ。

一方の巨人。何年もV逸でチームの変革期ではあるが、内海哲也長野久義をプロテクトしなかったのはこれまた出血覚悟でチームを変えようという意気込みとも取れる。内海や長野の移籍を若手はチャンスととらえねばならない。

野球通の中には早速、和田恋に注目する人がいた。2018年は岡本和真が大ブレイクしたが、和田もそろそろ大爆発しないとチャンスは減る一方だ。岡本に続いてもう1枚くらい若手が台頭しないと巨人は優勝できないだろう。少なくとも広島とは互角に打ち合えない。ベイスターズにも打ち負けてしまう。この長野の移籍で巨人の特に右打者はチャンスと思わねばなるまい。

そして、長野。日本ハム、ロッテと2度の指名拒否を経て巨人に入ったが、広島に行くとは夢にも思わなかっただろう。だがここで長野の人間力が問われるはずだ。石井琢朗の例もある。ちょうど新井貴浩が引退し、松山竜平のスタメン起用が増えた今、長野が代打の切り札になる可能性は十分ある。何より、3連覇中のカープが指名してきたのだ。ここは素直に意気に感じてよいのではないか。人間、必要とされるうちが華なのだから。
心の伸びしろ

心の伸びしろ



内海哲也同様、長野久義クラスなら巨人がコーチとして呼び戻す可能性も大。その時、カープの熱さを知っていることはアドバンテージになるに違いない。実は内海も長野も、そこまで好きな選手ではなかった。だが私は社内異動が多かったこともあり、彼らの動向がすごく気になっている。そして応援したい気持ちもある。希望の球団に行くために誰かの人生が変わる今の人的補償制度はものすごく暴力的にも思うが、ぜひとも内海も長野ももうひと花咲かせてもらいたい。内海も長野もFA権を行使して移籍先を飛び出す可能性はあるが、そのためにも彼らには結果を出すことが求められる。

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