30年以上破られない夏の甲子園1大会個人最多安打19~松山商業・水口栄二の原風景
夏の甲子園、1大会個人最多安打19を記録したのは誰かご存じだろうか。松山商業の水口栄二。元近鉄バファローズ選手だ。
1大会で決勝まで6試合。そのすべてで3安打放ってもまだ1本足りない。19本というのはそれほどすごい数字。水口栄二が記録したのは1986年夏。もう31年も前のことだがそのくらい破るのが難しい記録ということだろう。
気になる記録だったがある雑誌のおかげで水口栄二の記録の源泉にたどりついた。日刊スポーツ出版社「思い出甲子園 豪打を刻んだアーチストたち」。古本屋で偶然見つけたのだが、表紙に飾られた「強打者たち」の写真に水口栄二が混じっていたのだ。水口栄二は強打者ではないがまさに大会個人最多安打のおかげでこの雑誌に記事が載っている。迷わず買った。きょうはこれをテキストに進めていく。
表紙に写っている人…清原和博(PL学園)、原辰徳(東海大相模)、江上光治(池田)、藤井進(宇部商業)、元木大介(上宮)、松井秀喜(星稜)、水口栄二(松山商業)、林裕也(駒大苫小牧)、原島正光(日大三)
この雑誌の記事で知ったが水口栄二を含む松山商業ナインは1986年夏の甲子園、準決勝の浦和学院戦で11人連続安打を記録している。なぜそんなに打てたのだろうか?
1.竹バットでのバッティング
書物でしか知らないが竹バットは芯を外して打ってしまうとものすごく手がしびれて痛いらしい。当時の松山商業ではこれが導入されていた。確実にミートする力が養われたというわけだ。また、バント練習では失敗したらグラウンドを1周させられたという。確実性と集中力が鍛えられたことがうかがえる。
2.徹底した右打ち
走者を進めるために右打ちを磨いた。技術が発展途上の高校野球においてスコアリングポジションにランナーを進めるのは正攻法の一つ。ワンヒット、ワンエラー、ワイルドピッチなどなど得点できたりランナーを進められる可能性が高まるからだ。松山商業もこのフォア・ザ・チームが徹底されていた。
特にこの右打ちが奏功したのが例の浦和学院戦。浦和学院の谷口投手の持ち球にスクリューボールがあり、この餌食になる可能性があった。そこで松山商業の窪田欣也監督は「一塁にファウルを打つつもりで」とアドバイスし、試合前にはゆるいボールを体に引き付けて打つ練習をさせたそうだ。日ごろから右打ちを鍛えてきたのだからその応用。見事に谷口対策が生きて11人連続安打を含む1イニング12安打を記録した。
水口栄二はこの強力打線の1番バッターだった。1回戦の清水市商戦では6打数5安打の大爆発。2回戦の土浦日大戦、3回戦の明野戦、準々決勝の沖縄水産戦と3試合連続のマルチヒット。準決勝の浦和学院戦と決勝の天理戦はともに4安打で19安打を記録した。
結局29打数19安打、打率6割5分5厘。甲子園あるあるで序盤戦までの打率が高いバッターは山ほどいるが水口栄二は決勝まで戦っての成績だから6割5分超えは尋常ではない。
ちなみに決勝の天理戦では徹底的に鍛えたはずのバントや盗塁、守備にほころびが出て2-3で敗れている。ミスして勝てるほど甲子園は甘くない。それでもこの雑誌の取材に水口栄二は「これが野球というものじゃないですか」とさらりと答えている。死ぬほど練習したとしてもミスは出る。野球は不確実性の要素満載のスポーツなのだ。練習また練習でプレーの精度を高めているにすぎないのだ。
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だからなぜ松山商業が11人連続安打ができたり水口栄二が6試合で19安打もできたかというとやはり基本の徹底を怠らなかったから、という結論にたどりつく。30年も破られなかった記録の裏側としては地味なのだろうがそこは王道だっただけなのだ。
やっぱり何事も基本が大事である。
雑誌の取材があった時点では水口栄二はまだオリックスバファローズの現役選手であった。甲子園があったからその後早稲田大学に進めてプロへの道が開け、プロで長年やれているのは高校時代の練習があったからこそだという。水口栄二は日本プロ野球歴代12位の279犠打を記録している。そのルーツが松山商業時代のバント練習、というところまで見に行くとこの279犠打が一段と味わい深く見える。
2017年は清宮幸太郎が甲子園に出れば話題をさらうに違いない。だが個人的には水口栄二のようなヒットメーカーの登場を毎年期待したい。果たして夏の甲子園1大会個人最多安打19はいつ、だれが破るのだろうか。
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