黒柴スポーツ新聞

ニュース編集者が野球を中心に、心に残るシーンやプレーヤーから生きるヒントを探ります。

覆水盆に返らず。だからこそ~一球の大切さを学んだ石岡一ナインとエース岩本

取り返しのつかないことをしてしまうことは、ある。昨日、投稿寸前まで見出しにウンウンうなっているうちに日付が変わってしまった。あわてて投稿したものの、日付の上では年頭からの毎日更新がストップ。投稿時間を細工しかけたが、やめた。いつかそういうところからほころびが生まれる。


だが人生捨てたものではない。これをヒントにブログのネタが見つかったのだから。
投稿した堂上直倫の記事をちょこちょこ更新しながら見ていたニュースでセンバツ盛岡大付対石岡一の結果を見ていたのだが、石岡一はエース岩本大地が本塁に悪送球して試合に敗れたのだった。



延長戦まで力投していただけに、悔やんでも悔やみきれまい。私が毎日更新がストップして投稿の日付を1分巻き戻したくなったように、岩本も時計の針を強引につかんででも、送球前に戻りたくなったのではなかろうか。


さらに言えば岩本は9回2死二、三塁、あとストライク一つで勝てたところから同点打を浴びた。これまた時計の針を戻したいと思うところだ。一試合に2回も味わった一球の怖さ。これを糧にしなければもったいなさすぎる。


とはいえ、人生にそんなにコロコロ、チャンスは転がっていない。石岡一は甲子園で勝つチャンスを逃したのだ。甲子園での経験は格別。一人でも、1回でも多く打席に立ちたかった。


逆に盛岡大付は命拾い。また試合ができる。出場校はこうやって甲子園常連校になり、強豪校になっていくのだろう。
2018世代いわて高校野球ファイル

2018世代いわて高校野球ファイル



一球、ワンプレーの重さと言えば同じく9回2死から3アウト目を取り逃がした大阪桐蔭を思い出す。一球の怖さをよく知る強豪校になお試練を与えるとは、野球の神様は意地悪だ。だが、大阪桐蔭はスケールアップして戻ってきた。これがまた強豪校のすごさだ。

まだ夏がある、というのは負けたばかりのチームにかける言葉ではない。しかし、つらい記憶は歓喜で上書きするほかないのも事実。甲子園という大舞台で一球の大切さが学べた、という得難い経験は石岡一ナインの財産。経験を生かすも殺すも自分次第だ。

不本意なことがあった時こそ、その後どう過ごすのかでその人の真価が問われる気がする。かくいう私は失敗を引きずり後悔を後生大事に抱え込む悪い癖があるのだが、最近はだいぶ割り切って考えられるようになった。覆水盆に返らず、だからだ。


意味を確かめようと覆水盆に返らずを検索してみて発見があった。見つけた故事はざっくり言えば、呂尚という男がいたが、読書に熱をあげて生活を顧みず、妻の馬氏が愛想をつかして離縁に至った。その後、呂尚太公望になると馬氏は復縁を申し出た。その時呂尚は水をこぼして「椀に戻せたら復縁しよう」と言ったという。一度離縁した夫妻は元に戻らない、一度してしまったことは取り返しがつかない、という意味だという。


本ばっかり読んでいたのがそもそもわるいと思うのだが、復縁を申し出た妻も妻。さらに水をこぼしてすくってみなとは半沢直樹ばりのセリフである。ここで私が感動したのは妻の馬氏。あるサイトの説明では馬氏は水をすくおうとしたが泥しかすくえなかったと書いてあった。
すくったんかい!


いや、このガッツが大事だなと。ビジュアル的にも水が土に染み込むのを見たら無理だろう。でもやる。まさに執念。このガッツを見たら呂尚も考え直してやってもよさそうだが、まあ無理か。私は粘ってしまう人も大好き。覆水盆に返らずならばなかったことにしてしまう方法もアリ、なのかもしれない。


私は器用に、ミスをなかったことにはできないタチ。ゆえにまずは覆水盆に返らずにならないよう、日々の一球一球を大切にしようと思う。石岡一ナインにはぜひ貴重な経験を糧に成長してもらいたい。

堂上直倫、13年目で初の開幕スタメンが目前~意思が道を拓く

中日ファンでもないのに、なぜか胸が熱くなる。
堂上直倫が開幕スタメンに前進という記事を見た。中日スポーツでも、スポーツ報知でも、日刊スポーツでも。プロ13年目にして初の大役がすぐ目の前にある、かもしれない。



堂上のことは以前、下の記事で書いた。タイトルが示すように、スーパールーキーの根尾昴も、伸びしろいっぱいの京田陽太もいる。堂上のことを応援しつつも開幕スタメンの可能性は30%あるかないかくらいに思っていた。

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だがスポーツ紙の中でも中日スポーツが「プロ13年目で初めてとなる開幕スタメンはほぼ手中に収めた」と書いているのだ。俄然期待してしまう。


スポニチ記事「中日・堂上、開幕スタメンへ猛アピール 粘って適時二塁打」の併用写真はDONUEの下に背番号63が大きく見える。そう、この背番号で開幕スタメンをとることに意味がある。


愛工大名電スラッガーがドラフト1位で地元の中日ドラゴンズ入り。背番号は24だったがすぐに1を背負った。高木守道福留孝介も背負った背番号1。堂上直倫に対する期待の高さが伝わってくる。



しかし結論から言えば堂上直倫は大ブレイクあるいはスタメン定着とはいかなかった。やはり打力が物足りなかったか。そうこうするうちに2017年には京田陽太が入団。京田がショートを守ることになった。堂上直倫は2016年にようやくショートの定位置を確保し、初めて規定打席に到達したのだが、年下のライバルが現れるなんて、人生うまくばかりはいかないものだ。

2014年、背番号を変えた。1はルーキー友永に譲る形になったのだが、ある意味剥奪。ドラゴンズも非情だなと思う。背番号が変わると分かった時、堂上直倫が選んだのは同年戦力外通告された兄、堂上剛裕が付けていた63だった。まさに崖っぷちを思わせる、背水の陣を敷いたように見える。

それでもやっぱり人生そううまくはいかない。この2年、京田の牙城は崩せなかった。そこへ、根尾昴である。アライバ、京田、根尾。堂上直倫だけが苦労している、なんて言うつもりはないが、これほど難敵が多い野球人生もなかなかないのではないか。

そんな堂上直倫がなぜ一皮むけたのか。スポーツ報知「【中日】堂上が13年目で初めての開幕スタメンに前進『出してもらえるなら、どこでもいい』」
の見出しにヒントがある。そう、がむしゃらなのだ。


もはやショートでなくともいい。打順も何番でもいい。出してもらえるならば。その思いがスタメンを近付けている。そうやって結果を出したことが働き場所をつくることにつながった。


私もまずはがむしゃらに、そして結果を出すことを心がけてみよう。何かが変わる、かもしれないから。

熊本西は公立校らしさを発揮できるのか~34年前の甲子園初出場を熊本日日新聞がnoteに特集

センバツが開幕した。早くも履正社と横浜が敗れ、星稜は好発進。何だ、また私立ばかりかと思いきや、市和歌山は呉との公立校対決を制したし、熊本西も控えている。昨年夏の金足農業みたいに旋風を巻き起こしてもらいたいものだ。



その熊本西の甲子園初登場当時を扱った記事がある。熊本西の地元で発行している熊本日日新聞がnoteで展開した「センバツ21世紀枠の熊本西高 34年前の夏、ミラクル快進撃で甲子園へ  進学校球児に希望与えた『伸び伸び野球』」だ。
note.mu


熊本日日新聞のこの企画はこれまでに、川上哲治秋山幸二&伊東勤、野田幸司、前田智徳と名だたるプロ野球選手が登場してきた。今回は純然たる高校野球。なので、一つことわっておきたい。ズバリ高校野球ファン向けである。
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これまでの企画は有料、200円で販売されているが熊日は今回何と強気の300円設定。それだけ内容に自信があるということだな……だが、正直に書こう。私は購入するにあたり100円の壁を感じた。それは何なのか、自己分析してみた。


ズバリ、熊本西のことが分からなすぎる(笑)。そりゃそうだ。私は熊本県民ではないのだから。これまでも秋山&伊東や前田智徳の記事は読んだが彼らは全国区である。だから人物をイメージできたのだが、熊本西はまさに無名集団。それこそが実はこの記事の面白さなのだが、記事を購入する前はそれが分からない。よって私は100円の壁を感じたというわけだ。


ズバリこの記事は公立校フリーク、さらには下克上好きや柔よく剛を制す的な発想の持ち主が読むと楽しめる。ひょっとしたらスポーツではなくビジネスに役立つかもしれない。熊本西は大胆な練習法や姿勢であれよあれよという間に熊本大会を勝ち上がってしまったのだから。


そのあたりは記事に出てくる当時の紙面でじっくり堪能していただきたい。このnoteでの企画は熊日の過去の紙面が効果的に使われている。見出しを見るだけで、いかに熊本西が劇的に勝ち上がっていったのか、雰囲気がつかめるはずだ。



ネタバレになってしまうので詳しくは書けないのだが、やはり結果を出すにはその人の持ち味を伸ばすことが大事だなと再認識する。これまでは短所を補うことに重きを置く人が多かったように思うが、34年前の熊本西はすでに長所を伸ばすことを実行していた。新興校だからこそできたのかもしれない。前例にとらわれずに済むからだ。

ちなみに今回、熊本西は21世紀枠で選出された。センバツには高校野球の発展に寄与する役割もあるだろうから、公立校が脆弱な施設やら短い練習時間を有効活用して取り組む「姿勢」も加味して選ばれるのは理解する。ただし、21世紀枠の学校が評価されるのは強豪を倒してこそ、だ。善戦してこそ、だ。そうでなければお客さんになってしまう。


熊本西については、練習試合中の頭部死球で部員が亡くなる悲劇があった。また、選手は熊本地震を経験している。全員が地元中学出身で、さらに言えば軟式経験者。応援する要素がいろいろある。それがどこの学校にぶち当たるのかといえば……智弁和歌山。野球の神様は本当に演出好きである。
(智弁和歌山との対比について、智弁和歌山も寮無し&地元の子が頑張っています&軟式出身者が頑張っている旨のご指摘をいただきました。ありがとうございました。以上を踏まえ、熊本西は智弁和歌山という強豪校と激突する、と解釈願います!)

果たして熊本西ナインは前回甲子園に出た先輩のように伸び伸び野球を実践できるのか。もしそれがかなえば金星もあるかもしれない。先輩たちは甲子園で1勝している。熊本西は大会第6日第1試合(28日午前9時開始予定)に登場する。公立校フリークはぜひ熊本日日新聞のnote記事をお供に熊本西を応援してほしい。私もかつての熊本西ナインを見習って、工夫しながら強敵に勝つ方法を模索していきます! いいヒント、いただきました。

あわせて読みたい熊本日日新聞のnote関連記事はこちら。
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カバーし合えるチームは強い~自律神経失調症の中村晃の穴はみんなで埋めよう

イチローの「第一線を退く」速報にはアッと声が出たが、きょうのプッシュ通知にもエッ!と声が出た。中村晃自律神経失調症。療養に専念するという。脇腹を傷めたという記事は見ていたが、内面的なしんどさも抱えていたのか。

昨今、プロ野球選手の病がクローズアップされている。日本ハムオリックスでプレーした小谷野栄一パニック障害。打席に立つことさえ困難だった。ロッテの永野将司は広場恐怖症。新幹線や飛行機といった閉ざされた空間に長時間いると、心身に支障をきたすという。
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中村晃のニュースを見て、あらためて自律神経失調症はどんなしんどさがあるのか、調べてみた。日本臨床内科医会の資料を参考にさせてもらった。
【症状】
倦怠感、疲労感、熱っぽい、しびれ、息切れ、動悸、めまい、頭重・頭痛、眠れない、寝汗、食欲不振、胃痛、悪心、肩こり、背痛、腰痛、腹痛、下痢、便秘、腹部不快感

どの症状になってもつらそうだ。


直接的な原因は特定できないが、間接的にはストレスや生活習慣の乱れが影響するという。生活習慣の乱れ、なんていうと自堕落な生活をしてるんじゃないのかと思う人がいるかもしれない。だが、例えば夜勤やら休みが取れない働き方もある。不規則な生活をしたくてしている人も、いないだろう。


ストレスは特に気を付けたい。適度に緊張感がある生活はよいのだが、社会に出ればプレッシャーがかかる場面も多々ある。いや、今やSNSが生活に浸透しているから学生時代から人間関係には必要以上に敏感かもしれない。


説明が前後するが、自律神経は無意識の中でも何も、体をベストな状態に保とうとしてくれているという。それがうまく機能しない。だから上記のような症状が出てしまう。中村晃自律神経失調症だと診断されたのだから、専門的なフォローがすでに始まっていることと思う。まずは自分の体調最優先に過ごしてもらいたい。



中村晃と言えば思い出す。2017年10月20日楽天とのクライマックスシリーズ第3戦。中村晃は泣いていた。決勝ホームランを放ち、レフトの守備位置でファンからの大声援を浴びて、中村晃は泣いていた。


というのも、中村晃クライマックスシリーズのいいところで打てておらず、挙げ句の果てに前日はまさかの送りバント失敗。自分を追い込んだ中村晃は周りがみんな「敵」に思えていたという。


それを解きほぐしたあのヤフオクドームの大歓声。いま確認のためYouTubeで当時の映像を見て私も涙が出てきた。ホークスファンにはたまらない名場面である。


例のバント失敗の場面、ベンチにいた川島慶三はすぐネクストバッターの方を見て「カバーせい!」と思っていたという。それができるのがホークスで、だからこその強さなんだと。
いまホークスファンができるのは中村晃が元気になるのを待つことだと思う。ナインはカバーすることだと思う。ファンとしては1日でも早く復帰してほしいと願ってしまう。何せ中村晃はスタメン定着後コンスタントに結果を出してチームに貢献してきた人。内外野こなせて、日本シリーズなどここ一番で記憶に残るホームランを放ってきた勝負強さも光る。でも、まずは体が一番だ。

世の中の人も同じだ。体調を崩しても、責任感の強い人ほど我慢してしまう。自分を犠牲にしてしまう。それは美談になるかもしれないが、ずっと無理をしていたらいつかつぶれてしまう。結局、自分は自分で守るしかない。


またバリバリやってもらうためにも中村晃にはゆっくり休んでもらって、パワーを貯めておいてもらおう。中村晃の勝負強さを必要とする時は必ずくる。その時はまた大声援が送られるはずだ。結果を出してまた大歓声を浴びて、また守備位置で感涙にむせんでもらいたい。

中村晃の抜けた穴は相当大きいが、若手が台頭するのか長谷川や福田秀平らが埋めるのか。いずれにせよ中村の分まで奮起してもらいたい。川島慶三が言っていたように、みんなでカバーして勝てるのがホークスの強さなのだから。


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遠回りから出会う本当の自分~「読んでも」カッコいいイチロー引退会見より

「遠回りすることでしか、本当の自分に出会えないというか、そんな気がしている」
イチローがこんなことを言うとは意外だった。走攻守、何でもできるイチローは遠回りから最も縁遠く、目標やゴールに最短コースで到達する印象を持っていたからだ。

イチローの流儀 (新潮文庫)

イチローの流儀 (新潮文庫)



もしかしたら、引退会見だからこそ出てきた感慨かもしれない。そして、昨年事実上の戦力外扱いを受けた経験が言わせたのかもしれない。実際、近年のイチローを振り返ると遠回りという言葉がぴったりだ。

そうしてたどり着いたのがあの笑顔だったことにホッとする。


私は今でも遠回りが好きではない。人生にムダは「ある」と思うタイプだ。同じ成果を得られるなら、短期間で、コストも少ない方がいいと考えている。そして何より、遠回りすることが怖い。自分はどんどん後れをとってしまうのではないか、と。遠回りは余裕のある人がして、だからこそ消化できるのではないか、と。

「少しずつの積み重ねが、それでしか自分を越えていけないと思うんですよね。一気に高みに行こうとすると、今の自分の状態とギャップがありすぎて、それは続けられないと僕は考えているので、地道に進むしかない」


「進むだけではないですね。後退もしながら、ある時は後退しかしない時期もあると思うので。でも、自分がやると決めたことを信じてやっていく」


「でもそれは正解とは限らないですよね。間違ったことを続けてしまっていることもあるんですけど、でもそうやって遠回りすることでしか、本当の自分に出会えないというか、そんな気がしているので」
(イチローの発言はすべてfull-countイチロー会見ノーカット記事からの引用)



そうか、遠回りの中でも何もしないわけではないんだ。不遇で、思うように進めない時期だとしても、自分がやると決めたことを信じてやっていく。結局、そうやってもがくことで一皮むけるということではないかなと、今は受け止めている。

遠回りするのを恐れてしまうのは、変にプライドが邪魔しているのかもしれない。現状を受け入れたくないと頑なに思ってしまっている自覚もないわけではない。イチローが言うように今は後退しかしない時期なのかもしれないし、今している努力のベクトルがまったく意味をなしていないかもしれない。

それでもイチローみたいに本当の自分にたどり着くためには、自分がやると決めたことを信じてやっていくしかなさそうだ。このブログも本当の自分になるための大事なツール。毎日更新の目標や書き方が適切なのかは分からないけれど、やれる限り楽しみながらやっていこう。
これからもよろしくお願いいたします。

さらばイチロー。世界中が愛した稀代のバットマンついに引退

19時過ぎにスマホが振動した。何かのプッシュ通知だろうと放っておいたらまさかの「イチローが第一線を退く」知らせ。30分たって見つけて思わず「あっ」と声が出た。日テレのマリナーズ戦中継を見ていたから本当にまさかの知らせだった。

しかしファンたちからしたら寝耳に水ではない。あのイチローがヒットを打つのに苦労している姿を連日見せられているのだから。メジャーで3000本以上、日米通算で4000本以上ヒットを打ってきたあのイチローですらこんなになるんだ、とある種の驚きすらある。



本当にこれでイチローは見納めになるのだろうか? だとしたらよくぞ菊池雄星は間に合わせてくれた。メジャーデビュー戦がイチローにとっての大事な試合になるとは。あと一人で勝ち投手の権利を得たのだが、惜しくも交代になってしまった。とはいえ上々のデビュー戦だった。
メジャーをかなえた 雄星ノート

メジャーをかなえた 雄星ノート



ここを踏ん張れば、という瞬間は人生にたびたびある。菊池雄星はあと1球制御できていたら、メジャー初登板初勝利もあり得た。だが、デビュー戦であらためて1球の大切さを学んだという意味では価値ある初登板だった。
菊池雄星 原点

菊池雄星 原点



そしてイチロー。もし開幕戦で、もしくはオープン戦なり練習試合でヒットが出ていたらここまで事態が深刻化しなかったのではないか。イチローはヒットを量産してきたから、凡退が続くと大不振に見えるのは皮肉なものだ。

そして20時半、ついに日テレ中継の中でもイチローか試合後に会見を開くことが伝えられた。そんな気持ちの中でイチローはどう第3打席に立つのか。そして目の前にイチローがいるのにイチローの重大発表が予定されていることも知っている東京ドームのファンはどんな気持ちだろうかと想像してしまった。

第3打席は見逃し三振だった。最後の変化球を見送ったのも象徴的だったが、ツーストライク目の振り遅れというか、慌てて振っているようなスイングはイチローがまさかと思ってしまった。そう、もはやイチローはヒットを量産していた時のイチローではなくなっていた。

第4打席にいく前に日テレ地上波の中継は終了。遊ゴロに倒れたことは、スマホで確認した。この調子だと、イチローの会見をリアルタイムでキャッチするのは難しそうだ。寝るまで探しまくることになるのか。


試合は延長戦になってしまった。イチローは途中交代した。その際チームメイトと抱擁。菊池雄星は泣いていた。泣くと思っていた。まさか自分のメジャーデビュー戦がイチローの節目になろうとは……という感じではなかろうか。十数年この日のために準備してきたという菊池雄星には意味がありすぎる1日になってしまった。あまりにもドラマチック。


黒柴スポーツ新聞は毎日更新のため、そろそろ締め切り時刻が近づいてきた。イチローの会見を収容するのは難しいかもしれない。そして23時半過ぎ、マリナーズイチロー現役引退を発表とニュースzeroで伝えられた。日本でのラストゲーム、ではないようだ。一縷の望みが絶たれた。


そしてイチローが会見場に現れた。
「きょうのゲームを最後に、引退することと……」
ニュースzeroが終わってしまった。
続きは明日また……

打てないイチローを見て平成の終わりを実感する~日本開幕シリーズでヒットは放てるのか

マリナーズの監督は偉いな、と思う。日本開幕戦に帯同しているイチローを、2打席立たせた後で交代させた。日本のファンはイチローが目当てだ。それを承知していてなお、ベンチに引き揚げさせた。



困ったことにマリナーズの監督の名前はサービスだ。イチローを見せてくれないんじゃ、サービスではないよなとツッコミたくもなる。しかし、サービス監督はイチローを交代させることでシークレットメッセージを送ったように見えた。
「私たちは勝負にきているのです」と。

もちろん日本で開幕戦を行うこと自体が興行だ。それでもイチローを、イチローだからという理由では打席に立たせなかった。実はそのことがイチローを守ったように見えた。というのも、イチローはずっとヒットが出ていない。ただイチローを試合で使い続けるなら、本当に顔見せ興行になってしまう。

それではイチローにも失礼だ。イチローも本意ではあるまい。イチローは日本のファンのためにも自分のためにもヒットを打ちたかった。ファンはイチローのヒットが見たかった。今宵また一塁線に鋭い打球を放ち、ファンを一瞬喜ばせた。だがそこまでだった。イチローは一旦ライトの守備位置につき、ダグアウトに引き揚げた。

イチローはこんなに勝負に徹するメジャーリーグで何シーズンも生き抜いてきたんだ。3089本もヒットを打ってきたんだ。監督による交代は酷に見えたけれど、イチローをきちんと戦力として見ているよ、と示す行動だと思えば納得できた。
エンスカイ イチロー 2019年カレンダー

エンスカイ イチロー 2019年カレンダー


かつての日本開幕戦で4安打と抜群の勝負強さを発揮したイチローだが、開幕してなおヒットが出ないと年齢的な衰えを指摘する声は大きくなることだろう。イチローも人間であるという当たり前のことに気付く人は確実に増えている。

なぜ「年齢的な衰え」なのだろう。それは歴代の野球選手たちが遅くとも40歳前後で引退してきたからだ。そこにイチローを当てはめようとしている。練習試合ではライトから三塁へのストライク送球を披露したが、あれはレーザービームではなかった。だがメディアはこぞってレーザービーム健在だと取り上げた。しかしあれはレーザービームではなかった。イチローがよかれとやったことが「45歳にしては」という評価を受けつつある。
イチローの流儀 (新潮文庫)

イチローの流儀 (新潮文庫)



今回の東京入りはイチロー人間宣言だったのかもしれない。平成という時代に軽快にヒットを重ねたイチローにも衰えが感じられる。それもそのはず。平成は30年以上続き、イチローはもう45歳なのだ。平成と共に退場しても何らおかしくない……しかし、イチローならそれをまた覆すのではとまだまだ期待してしまう。たった一本のヒットで。その時またイチローのすごさを再認識することだろう。

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チェックが足りない時に限ってトラブルは起きる~ソフトバンクWE=KYUSHUユニホーム早くも改良

ソフトバンクのWE=KYUSHUユニホームが早くも改良されるという。背番号が見えにくいので縁取りを太めるらしい。


「見づらかった」というファンの声は知っていた。早速改良に着手するのはいいのだが、選手がグラウンドで着る前に、また、ファンが座席から見る前に、どう見えるかのチェックはしなかったのだろうか?

チェックと言えば昨日吹き出したことがある。大阪メトロの誤訳。公式サイトの外国語ページで堺筋を「サカイマッスル」とした件で、ニュースにもなった。自動翻訳ソフトの利用が原因。いかに技術が発達して自動でできることが増えても、チェックはいる。チェックしない時、チェックが足りない時に鍵ってトラブルは生まれる。私自身も手痛い失敗があるので見に染みて分かる。
大阪メトロ誕生 (かや鉄BOOK)

大阪メトロ誕生 (かや鉄BOOK)



ホークスもたくさん記念ユニホームを作ってきたから、まさか背番号が見えにくいなんて、関係者は考えなかっただろう。しかし凝ったことをしたときはなおさら、どんなふうに見えるかはしっかりチェックしておいた方がよかった。

果たしてWE=KYUSHUユニホームは縁起のよいユニホームになるのだろうか。背番号が見えにくいイコール影が薄いイコール成績不振だなんてなったらしゃれにならない。背番号の縁取りとともにますます存在感を高めていってもらいたい。

こだわりがなくなったらおしまい~イチローに日本開幕戦でヒットを打ってほしい理由

あのイチローの顔、見ましたか? 「いつ引退の判断をするのか?」という趣旨の辛辣な質問で、イチローの顔色が変わった(ように見えた)。7年ぶりの日本での試合を「ギフト」と表現したことからも分かるように、イチローは東京での試合を楽しみにしていた。そこへ、あの質問である。



イチローは引退云々を考えていない。もちろん客観的には試合に出られていないからバリバリの戦力だったころとは違うと分かっている。だが、イチロー自身はまだまだやれると分かっているから引退するという選択肢がない。

あのムッとした表情。これこそがイチロー最大の魅力と思ってしまった。華麗なテクニックやスター性はもちろんだが、負けん気というか自信というか。これこそがイチローイチローたらしめている要素に違いない。
エンスカイ イチロー 2019年カレンダー

エンスカイ イチロー 2019年カレンダー



逆に言えばムッとしなくなった時が潮時だ。正直なところ、20打席以上ヒットが出ていないという、イチローでは考えられない状態を見るとイチローが現役に執着しているように見えてしまう。本当はバットを置くタイミングにきているのではないのか、と。
だが、イチローは本番に強いタイプ。日本開幕戦ではきっとわれわれをときめかせてくれると信じている。それに、限界なんて人が決めるものじゃない。とやかく言われる筋合いはない。私がちょっとイチローの引退を想像してしまったのは、低迷し続けるイチローをあまり見たくないという勝手な願望からだ。イチローがギリギリまで粘るのなら、今まで以上にイチローはさすがだなと思うだろう。あれほど実績を残してなお引かない。それは執着ではなく執念だ。
イチローの流儀 (新潮文庫)

イチローの流儀 (新潮文庫)



同じように現役を続ける三浦知良も言っていた。試合に出られないのは悔しいと。イチローとカズ。レジェンドがグラウンドに、ピッチに立ち続ける原動力はこの悔しがる気持ちなのだ。
やめないよ (新潮新書)

やめないよ (新潮新書)



現役最終年にホームランを30本打ちながらも「王貞治のバッティングができなくなった」と引退した王さんもプロだし、自信があるうちは絶対にやめないイチロー三浦知良もまたプロフェッショナルだと思う。

こだわりがなくなったらおしまい。そうなるまではとことんやりたいことを追求したいものだ。私自身も文章を書くことをあきらめずにいたい。環境がなければつくるまでだ。イチローやカズを見習って、悔しい気持ちを糧に環境を整えていこうと思っている。

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よきリーダーは舞台を用意する~ポテンシャルを最大限発揮させようとする栗山英樹監督

同じ業務をふられるにしても、そこに意図があるかないかで結果は違ってくるのではないか。やはり人は気持ちで動くのだから。その意味で、最も意図をもって選手起用しているのは日本ハム栗山英樹監督だと思わされた。GOETHEの記事「栗山英樹監督に見るリーダー(上司)の仕事とは何なのか?<前編>」を読んだからだ。



事例として、清宮幸太郎を、彼の風貌に通じると思っているベーブ・ルース銅像がある草薙球場でプレーさせたり、低迷が続く斎藤佑樹を彼が最も輝いた甲子園で登板させたりしたことが紹介されていた。ほかの投手も出身地やゆかりの球場、対戦相手で登板させていた。

親心なのかもしれないが、栗山英樹監督は選手に奮起を促しているのではないか。意気に感じてほしいのではないか。栗山監督は著書「稚心を去る 一流とそれ以外の差はどこにあるのか」の中でこう書いている。
「どうせ使うなら、選手のポテンシャルを最大限に、あるいはプラスアルファまで引き出す可能性を秘めた舞台を用意するのも、こっちの仕事だと思っている。もちろん、その背景を理解したチームメイトが『勝たせてやりたい』と思ってくれる、その効果も見込んでのことだ」
稚心を去る

稚心を去る



チームの状態や日程などから全部が全部、選手優先で起用できるわけではない。しかし選手の力を最大限発揮させようとするのはまさにリーダーや指揮官の大事な仕事だと思う。
育てる力

育てる力



もちろん若手だって漫然と舞台を用意してもらうのを待ってはいけない。舞台を用意してやりたいなという実績は残さないといけない。そして人柄も大事。上は上で見ている。
「最高のチーム」の作り方

「最高のチーム」の作り方



選手は選手で、なぜ自分が今このタイミングで起用されているのかは感じたい。そこは間違えないようにしたい。やっかいなのは意図がない起用だ。人数合わせ。玉突き人事。若い時こそ餌食になる可能性が高いのだが……そこを脱出するためにも地力が必要だ。舞台を用意されてすぐ自分らしさを発揮できるよう、準備はしっかりしておこう。

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有能な人が集まると選択肢が生まれる~し烈なソフトバンク外国人枠争い

3番グラシアル、4番柳田悠岐、5番デスパイネ。なかなかの圧である。横浜DeNAベイスターズ戦はグラシアルの3ランが効いて勝利。ソフトバンクは外国人選手がひしめき合い、誰を落とすか首脳陣は頭を悩ませている。



1軍外国人枠は4。開幕2戦目先発の可能性があるというミランダ、復帰した守護神サファテ、実績十分のデスパイネ。これだけでおなかいっぱいなのにまだグラシアルとモイネロまでいる。

4人を投手2、野手2で行くのか、投手3、野手1で行くのか。風向きが変わったのは中村晃内川聖一の離脱。打力が落ちるのは避けたいからグラシアルでフォローするのが順当。守備的にもグラシアルは三塁も外野もいける。
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結論から言えば、黒柴スポーツ新聞は2人ずつの起用を推す。具体的にはモイネロがお休み……。というのも、冒頭の打線、3番グラシアル、4番柳田悠岐、5番デスパイネを見たらこれは効果的だ、強力だと思った次第。相手チームは嫌だろう。



ひとまず中村晃が復帰するまでは打力厚めでいかがだろうか? 投手陣は今年もフル回転だろうから、モイネロはバックアップ要員でシーズン中盤~後半でも十分活躍してくれるだろう。とにかく前半から打ち勝つ。かけれるだけ圧力をかけておきたい。

外国人の当たりはずれがすさまじい巨人や阪神からしたらうらやましがられる状態だが、ソフトバンクの外国人が素晴らしいのは役割分担がはっきりしていることだ。サファテ=抑え、モイネロ=中継ぎ、ミランダ=先発。デスパイネとグラシアルはそれぞれ長打も打点も見込めるからまったく違うわけではないが、デスパイネはDHでもよく、グラシアルは守れる。とにかくバランスがよいのだ。

これだけ見ても、組織は適材適所というか、効果的に人材を集めて配置することでうまく機能することが分かる。ただただ人数を集めればいいということではない。

また、グラシアルのようにいろんな打順で打てて内外野守れる人材は貴重だ。中村晃の離脱は痛すぎるがこれによりグラシアルありきの布陣を考えてはどうだろうか? また、それぞれの外国人の調子次第で入れ替えてもよい。ミランダやサファテはずっと1軍にいてほしいところだが。いや、それを言うならデスパイネもグラシアルもモイネロも外せない。有能な人が集まると選択肢が生まれる。それがあるのが強い組織だ。

適材適所をいかに実行するか。その観点だけでもソフトバンクの外国人枠は興味深い。工藤公康監督ら首脳陣がどう起用するか注目だ。

できる人は常に自分有利の状況をつくる~千賀滉大を刺激した菅野智之のピッチングとは

ソフトバンク開幕投手の千賀滉大が巨人のエース菅野智之と投げ合った。どちらもほぼ完璧。オープン戦とはいえ、ファンはしびれる試合を見られたのでないか。千賀も菅野もさすがだという記事が当然書かれるのだが、西日本スポーツ記事「ソフトB千賀7回2死まで完全 G菅野と圧巻バトル!!」は着眼点がさすがだった。



秀逸な分析だったのは菅野智之がストライク先行を徹底していたということ。実に打者20人中、18人の初球がストライク。千賀は打者21人のうち9人の初球がストライクだったから、半分でしかない。

これにより、少ない球数で試合を乗りきれるメリットがある。また、テンポがよくなることで打線にもリズムが出ることが期待できる。私は草野球の経験しかないが、それでも守りが余りにも長いと集中力が切れてしまうことは知っている。元々打てないバッターは余計にキツいのだ。

西日本スポーツ記事では、菅野が「徹底して投手有利の状況をつくった」と表現していたが、正にこれが仕事をスムーズに進める武器だ。鍵になる作業をなるべく初手で決める。そうすることで後々に余裕が生まれる。逆に初手で決まらず何とか綱渡りで進めると体力と時間の消耗が激しい。下手したら失敗してしまう。ずっと3ボール2ストライクが続くのもしんどすぎる。


いい加減、優しい人ほど周りに合わせてしまい予定が崩れるのだから、せめて中盤までは自分有利の状況で進めたい。予定が変わっても微調整で済ませたいところだ。ちゃぶ台返しを食らうとただただツラいだけなのだが、そうされないためには地力を付け、できればエースに上り詰める。そうなればちゃぶ台を腕力で押さえつけることができる、かもしれない。
千賀はぼちぼちそうなりつつある。打たれたとしてももう口やかましくは言われないだろう。だが記事を見るとまだまだ向上心があるから、菅野智之の投球はとてもよい刺激&教材になったようだ。ぜひ菅野のストライク先行型のピッチングを取り入れて、パ・リーグの球団を力でねじ伏せてもらいたい。力強く勝つのもエースの仕事なのだから。

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ギリギリの所で踏ん張ることは重要~武田翔太と藤浪晋太郎はポテンシャルを生かしきれるのか

オープン戦で絶不調だった武田翔太が名誉挽回の好投を見せた。東浜巨が本調子でないだけに、ローテーション入りの可能性も浮上。起用方法はともかく、自信を失わなくて何よりだ。


今やオープン戦でもきっちりネットで結果が共有される時代。調整ムードがない。あと半月あるのだから丁寧に仕上げてもらいたいのだが、ちょっとでも不安があると心配してしまう。それがファン心理かもしれないが。
その点、工藤公康監督はさすがだなと思った。結果が出なければ早々に見切られるこのご時世。工藤監督は見切るどころか直接指導に乗り出した。チームにとって必要な戦力だからかもしれないが、武田翔太にしてみればうれしかったと思う。工藤監督が来てくれたこと自体が、だ。

監督がピッチャー経験者というのは大きい。きっと武田のモヤモヤが理解できるのだろう。きっかけさえあれば、ちょっとしたコツさえつかめれば。そう感じていたからこそ直接指導に乗り出したのではないか。
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対照的なのが阪神藤浪晋太郎。素晴らしいポテンシャルの持ち主ながら、伸び悩んでいる。フォーム改造にも取り組んでいるが、結果が出ていない。ますます孤立していってはいないか。とうとう2軍調整が決まった。

金本知憲監督だったら投手経験者でもないし、そもそも自分で何とかしろというタイプに見えるから、直接指導もなさそう。代替わりして矢野燿大監督になったし、矢野監督はキャッチャー経験者だから直接指導があってもよさそうだしもう話し合ったりしているのかもしれない。
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ただ、細かいコツやら技術指導やら心理的なアドバイスとなったら、やはり工藤監督と武田のように、投手同士の方が直接指導の効果は見込める。そう、やはり経験者によるアドバイスは価値がある。

経験者以外のアドバイスが生きるとしたら、本人が袋小路に迷い混んだ時だ。その時は気分転換が必要だし、環境が変わることで、見えなかったものが見えたりする。門外漢によるアドバイスは切り替えの導入部にはなり得る。

藤浪晋太郎はすでに袋小路に入った感もあるが、投手経験者からアドバイスはもらっているのだろうか。あまりに上からこうしろとフォームをいじくられては、藤浪晋太郎の良さがかすんでしまう。二桁勝っていたころの自分の良さを思い出してもらいたい。

藤浪晋太郎は2軍行きを命じられてしまった。武田翔太は信頼を裏切る寸前で立ち止まった。武田は2018年、2軍降格を機に復調したし、2軍に行くこと自体が悪いわけではない。見離されない、ということが大事だ。

一旦視界から消えると目に留まるまでが大変になる。別に首脳陣の目の前でアピールせよということではない。プロ野球選手ならやはり何とか1軍にいる間に挽回する。信頼を回復する。そうしていかないと生き残れない。


その点、武田翔太は2018年、一旦は無期限2軍調整のピンチがあったのだが、先輩の体調不良で汚名返上のチャンスが巡ってきた。そして見事期待に応えた。この辺りはもう運でしかないのだが、それをものにできるかも含めてプロ野球選手だと思う。先輩が離脱している間に定位置を奪ってしまうこともあるが、定位置にハマることができるのは才能があるからにほかならない。
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武田翔太は不調→好調の繰り返しが多い。ゆえに熱心なファンほど「いい加減にしろ」と思っている。もちろんそれは期待の裏返し。今回もまた汚名返上できたのだが、あまりにこれが続くと信頼感はいつまでたっても持ってもらえない。そこは要注意だ。

ホークスファンとしては武田の復調でひと安心だが、他球団ながら藤浪晋太郎が気がかりだ。何とか踏ん張った武田との違いは余りにも大きい。2軍調整が決まったが、実は志願の2軍行きとも書かれていた。

「本当は上(1軍)にしがみつきたいですし、開幕も1軍で迎えたい。ローテにも入りたい。もう1回チャンスをくださいというのも手だったかもしれないですけど、それ以上にもっとやるべきことがある」(デイリースポーツより)
これを見ると意思があっての2軍調整だからちょっと安心だが、重症の証しにも見える。あまり自分を追い込みすぎてほしくはないが……

ギリギリの所で踏ん張った武田翔太と、踏ん張れなかった流れであえていばらの道を選んだ藤浪晋太郎。たぐいまれなポテンシャルを持ちつつもそれを生かすことはそう簡単じゃないんだなと実感しつつ、二人を応援しようと思う。


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仕事ができる人が休むと痛い~ソフトバンク中村晃が右脇腹痛で開幕絶望的

きょうは教訓もない。ただただ事実のみ。ソフトバンク中村晃が右脇腹を傷めて開幕絶望的という。開幕絶望「的」と、断定調ではないのがせめてもの救いだが、どんなけがだって無理しない方がいいに決まっている。工藤監督も、時間がかかりそうだと見ている。ひとまず中村晃抜きでオーダーを考えねばならない。



これは本当にイタい。中村晃ソフトバンクを常勝たらしめた立役者の一人。柳田悠岐内川聖一のような華々しいスターではないが、玄人受けするシブさがたまらない。安定感は抜群で、毎年チームに貢献してきた。

3番でも5番でも6番でも7番でも、任された仕事はきっちりやる。守備でも内外野を守れる。周りの状況に合わせて動ける、まさにユーティリティープレーヤー。中村晃がいたからこそ、内川聖一柳田悠岐今宮健太がそれぞれ抜けた穴を、それなりに埋められたのだ。

皮肉にも、中村晃が開けた穴はそう簡単には埋まらないのではなかろうか。そう、ユーティリティープレーヤーが開けた穴は埋めるのが大変なのだ。一人一役ではなく二役、下手したら三役くらい有能だと、まんま三人分の穴が開く。だから痛い。休んでも大丈夫な人と、そうじゃない人とがいるのだ。

中村晃は休んだらダメな人。だからソフトバンクファンはただただ沈痛なのだ。さて、どうしたものか。これでレフトにはグラシアルが固定され、グラシアルが入るポジションの一つのサードは松田宣浩で決まりか。DHにはデスパイネが入るか……などなど、善後策を考えねばならない。

本当に強いチームはこのようにさまざまな選択肢を行使するチームだ。次の戦力が用意されているチームだ。スタメンと控えの差が少ないのも特徴だ。不動のメンバーに控えが追い付くのは実際は無理なのだが、レギュラーの座を虎視眈々と狙う選手がいることも、強いチームの条件だ。

ソフトバンクは、ピッチャーは次々新しい戦力が出てくる印象だが、野手はスタメンの高齢化が危惧されている。上林、牧原、甲斐は上手にポジションを得たり得つつあるが、内川や松田はまだまだ若手に譲る気配はない。若手はさらに奮起しなければならない。

中村晃の穴は痛すぎるのだが、せめてそれを埋める過程で若手の台頭という副産物があってほしい。でなきゃ、ただただ痛いだけである。仕事ができる人が休むと痛い。当たり前すぎることを中村晃の離脱で再認識している。

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反応する力を鍛える~代打の神様・八木裕がすすめる打撃練習の工夫

打撃練習と言えば、投げてもらった球を打ち返すのだが、そのボールには直球も変化球もある。工夫して取り組むのが大切だ、と元阪神代打の神様八木裕がサンスポ記事で語っていた。

大前提として、実戦の打席では自分の理想のスイングができないそうだ。確かにピッチャーはちょっとでも打たせないよう投げてくる。打者の都合のよいところになんか投げるわけがない。



だからこそ、反応の練習が必要だという。打撃練習の終盤は直球と変化球を交互に投げてもらったり、ランダムに投げてもらったりするといいという。

まずは対応力だ。このようなコースに来たらこう打つとよい、と体に染み込ませる。それができるようになったら、次は反応する力を付けることだ。急に直球が来ても、変化球が来ても、それなりに反応して対処する。理想のスイングは無理でも、やれる中で最高の技術を出せばいい。

八木裕は、阪神の選手が打撃練習をしているのだろうが、その「反応」の練習は足りているのかと指摘していたのだった。これは仕事にも通じるなと思った。

割り当てられた作業をまずはやれるようになる。その精度やスピードを高めていく。うまくいくようになったら、仕事を急に振られても、あるいは文字通りの「変化球」=イレギュラーなことが発生しても対処できるようにしていく。それが「反応」の練習だ。
代打の神様: ただひと振りに生きる

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予定が変わることはよくある。正当な理由、不測の事態はまだいいが、理不尽なリクエストもある。あんまりきれいに対処し続けて「ムリがきくヤツ」と思われるのもなんだが、反応する力を付けておくことは結局自分を守ることにつながる。
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かくいう私は反応力がまだまだ乏しい。だからこそ、意図して直球、変化球をランダムに投げてもらって打ち返すようにしないといけない。練習あるのみだ。イレギュラーな案件はやっている最中は面倒なのだが、ゆくゆくは自分の成長につながると思ってやっていこう。


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