黒柴スポーツ新聞

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何年でもチームに必要とされる人になる~パニック障害と付き合う小谷野栄一がオリックスで奮闘する理由とは

オリックスが2017年シーズン、好調だ。楽天、西武も頑張っている。まだ4月だけれど、きれいに2016年シーズンのAクラスとBクラスが入れ替わっている。たまにはこんなシーズンもなければ。

 

今朝、寝床でスマートニュースを見ていてうれしい記事を見つけた。オリックス小谷野栄一のグッズが売れているという。プロ野球カードの値段と個人選手のグッズの売り上げは活躍と人気のバロメーター。特に小谷野栄一の場合は日本ハムからの移籍組だから、ようやくファンにも認められたっぽくてこちらまでうれしくなったのだった。

 

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オリックス初年度の2015年度は56試合54安打、2016年度も50試合44安打と物足りない数字だった。でも2017年度は4月24日現在で17試合23安打。まだまだ序盤だが打率は3割3分8厘と順調だ。

 

日本ハムファンを中心に知られていると思うが小谷野栄一パニック障害と付き合いながらプレーをしている。厚生労働省のサイトで見たが、理由なく動悸やめまい、発汗、吐き気などが起こる。発作が起きたらどうしよう、という不安にも襲われ、狭い空間もつらいという。

心で勝つ 技で勝つ

心で勝つ 技で勝つ

 

 克服できるものなのか、だましだましやらざるをえないのかは、専門的な知識がないので分からない。だがこの事実を公表してプレーしているだけでもかっこいいし、応援したくなる。

 

なんて言ったって野球とは失敗の多いスポーツである。そして不確定要素が多い。天候一つでもそうだ。雨、風、日差し。吉井理人みたいに雷が苦手な人もいた。2017年シーズンからアメリカでは「投げずに敬遠」が導入され日本でも話題になったが必ず取り上げられる「ドラマがなくなる」論のエピソードに柏原純一のホームランやクロマティ新庄剛志のサヨナラヒットがあるように、野球では「やってみないと分からない」ことが本当に多いのだ。

 

職場の一つであるバッターボックスに立つのもやっとの小谷野栄一にとってスタジアムは不安要素の塊だろうと思う。じゃあなぜプレーし続けられるのかと言えば野球が好きだし野球が自己表現の一つだからと推測している。

 

打席で吐き気を催してしまうなんて、よっぽどと思う。小谷野栄一日本ハム2軍時代からこの症状を抱えている。だが、指導者や同僚の理解と支えがあって今がある。

 

小谷野栄一日本ハムを出る決断をした時、失礼ながらこうとらえた。今チームは若返りの時期だ。このまま日本ハムにいても試合に出続けられるかは分からない。ならば出場機会を外に求めるしかないと考えたのだろう、と。

 まったくの外れではないと思うが、小谷野栄一はインタビューでこんなことを言っていた。

「何年でもチームに必要とされる選手になりたい」

 

オリックス移籍を決めたのは35歳のシーズンを迎える前だった。世間的にはこれからでも、プロ野球選手の35歳は「高齢」だ。引退の2文字もちらつく。複数年契約を受け入れることは打算にも見えがちだが選手にとっては生活費を稼ぐ、というよりは自己表現の場を失わずに済む、ということなのだろう。

 小谷野栄一は「1年でも多く野球をやりたい」とは言わずに「何年でもチームに必要とされる選手になりたい」と言った。そこに打算なんて意味はない。普通に考えれば自分が発症したときに支えてくれた指導者や同僚、熱いファンがいるのだから日本ハムを離れたいはずがない。ただ、「何年でもチームに必要とされる人で居続ける」ための選択肢が移籍だったのだ。

 

必要とされる人。サラリーマン的にも見習いたい姿勢だ。

 

オリックスとしても低迷が続いており、小谷野栄一の加入時は中島宏之らと一緒で、再建を託す意味合いがあった。だが最初の2シーズン、小谷野栄一は期待に応えられなかった。それが2017年は好調な滑り出し。だからファンは素直にグッズを買い始めたのだ。

 

報知新聞記事によると、ユニホームの背中にアイロンで貼り付ける「ネーム&ナンバーシート」は好調の小谷野栄一宮崎祐樹の分が売り切れだそうだ。2人の名前入りタオル販売数も急上昇とか。2人のグッズを球場でたくさん見られる状態が続けば、今年のオリックスはいいところまで行くに違いない。

 オリックスの指揮官は福良淳一監督。イチローらとオリックス黄金期を支えたプレーヤーであり、かつ日本ハムでの指導経験がある。そう、小谷野栄一パニック障害を理解して、解きほぐしてくれるのに一役買った人だ。小谷野栄一オリックスに移籍した2015年シーズン当初は森脇浩司監督と福良淳一ヘッドコーチ体制だった。それが成績不振の責任を取る形で福良淳一が監督代行になった。サラリーマン的にいつどんな上司に仕えるかは人生の岐路である。小谷野栄一にはオリックスで頑張る理由がより濃くなった。

 広島に優勝され、12球団一優勝から遠ざかっているオリックスの覇権奪回のキーマンの一人、小谷野栄一オリックスファン、日本ハムファンならずとも注目したい。

 小谷野栄一も帽子をヒップホップかぶりするふしがある。

野球帽のヒップホップかぶり記事はこちら。

tf-zan96baian-m-stones14.hatenablog.com

 


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