黒柴スポーツ新聞

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野手転向の白村に送った栗山監督の魔法の言葉~人の評価軸は一つじゃない

ソフトバンクファンながら今夜も日本ハムネタ。禁断の3夜連続である。今夜は白村明弘。6年目にして投手から野手への転向が決まったという。



このキャンプまで投げているのだから、転向は思いもよらないことだっただろう。しかし、zakzak記事によれば「この2、3年はずっと思うようなボールが投げられなくて苦しかった。部屋に呼ばれたときは覚悟はしていたんです。『もしかしてトレードかな?』って気持ちもあった」とか。白村にしてみれば、霧の中で見いだした光明だったかもしれない。


と言っても投手というポジションは特別だ。誰もができる訳でもない。曲がりなりにもその才能でプロ野球入りしたのだから、未練があるのが普通である。

それを断ち切らせたのが栗山英樹監督。出ました、またもや栗山マジック。この人は人の心の操縦術に長けている。今回は白村にこんなことを言ったという。
「可能性を広げよう」
稚心を去る

稚心を去る



言葉の力はすごい。使い方ひとつで人を生かしもするし、殺しもする。だからこそ言葉遣いは普段から丁寧に、慎重にする方がよい。今回、あっさり言えば白村は投手としては見切られたのかもしれない。ここまでがどうやら精一杯だろう、と。ここで心ない上司はこう言う。
「おまえはもう、投手失格だ」


栗山英樹監督はその真逆。スポニチアネックス記事には栗山監督による説明がこう書いてあった。
「もともと(ドラフトで)獲るときから打つ方の可能性も言っていた。白村のために前へ進むということ。彼の能力を花開かせるには何が必要か。骨の髄まで野球をやって、花開かせる。どのタイミングがいいか(吉村)GMとずっと話していた。本人がどうしたら吹っ切ってやってくれるか。野球の神様がこのタイミングだと言っている」
育てる力

育てる力



もはや教育者。さすが教員免許を持つ人は発想が違うと言いたくなる(小中高の教員免許を持っているそうです)。とにかく白村のことを思っていることが伝わってくる。

冷静に、かつ、冷めた目で見たら吉田輝星や柿木蓮ら才能ある若手を獲得できたから白村を次のステップへ進ませることができたのかもしれないけれど。


いや、そんな言い方はよそう。栗山監督が言うようにきっと野球の神様が「このタイミングだよ」と言ったのだ。確かに白村は27歳。打者転向は簡単ではないからチャレンジする年齢としてはギリギリだろう。



ちなみに同じく投手から打者に転向し、4番を張るまでになったヤクルトの高井雄平は7年目でのチャレンジ。けがもあり順調にいかなかったが打者転向9年目にしてついに年俸1億円に達した。白村にしても年齢的に、チャレンジするなら今しかないのかもしれない。

きのうは吉田輝星の記事の中で「球運」という言葉を使ったが、それは白村にもあるように思う。もし監督が栗山英樹でなかったら、トレード、もしかしたら最悪戦力外の可能性も今後あったかもしれない。ただ、栗山監督とてチームを預かっている以上、戦力はシビアに見つめているに違いない。白村に打者転向を持ちかけたのは、キラリと光るものがあったからにほかならない。
tf-zan96baian-m-stones14.hatenablog.com

日本ハムで打者転向に大成功した人もいた。糸井嘉男。2年間で1軍登板は一度もなかったという。糸井の年俸は4億円。これもプロ野球のリアルである。



まあ、お金の話というよりは才能が花開いたらいいなという話。一つの評価軸でその人のすべてを測るのは危険だ。そして自分自身もいつまでも成長の可能性は追求したいものだ。白村の勇気ある挑戦、陰ながら応援するとしよう。


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