黒柴スポーツ新聞

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米3000安打のイチローの原点となった一打とは~1991年愛工大名電vs中京

イチローが米3000安打を達成した。今回ばかりはアメリカでもすごいことと認識されていることだから誰もが祝福コメントをしていた。


一方で数字がすごすぎてもはやピンとこない。そしてこれは禁句なのだがイチローのヒットの中で記憶に残る1本を挙げられる人はいるのだろうかと疑問がわいてきた。安打本数という分母が大きすぎるのもあるだろうが。


黒柴スポーツ新聞編集局長は非エリートだからちょっと強がりを言ってみたい。ヒットが少なくても記憶に残る1本があればファンを喜ばせることはできる、と。だからイチローのことはみんなと同じように「すごいなあ」と驚きつつ、安打数が少なくても何年もプロでやる選手に注目していこうと思う。


というわけできょうは安打数ではない部分でイチローに注目する。文春文庫PLUS「日本野球25人 私のベストゲーム」という本がある。イチローはどの試合を選んでいたのか気になって見返してみた。

日本野球25人 私のベストゲーム (文春文庫PLUS)

日本野球25人 私のベストゲーム (文春文庫PLUS)

2008年に第1刷が発行されているからその時点でのベストゲームということになる。イチローが選んだのは1991年7月29日の全国高校野球選手権愛知大会準々決勝、愛工大名電対中京戦だった。この試合でイチローは大会屈指の好投手、木村高司から逆転ツーランを放っている。


イチローの概念ではベストゲームは存在しない。なぜこの試合を選んだかと言えば目標とするプロ入りに近付いた一戦となったからだ。イチローの目標は甲子園出場ではなくプロ入りだった。そのためには1打席でも多く立ってアピールしないといけない。このホームランで鈴木一朗が認識されるようになったという。


実はこの試合は前日の雨天ノーゲームによる再試合であった。しかもイチローがいた愛工大名電はリードを許していてのノーゲームだった。もしも試合が成立していたらイチローは注目されずに高校野球生活を終えていたことになる。すなわち、アメリカで3000本ヒットを打つことも無理だった。もっともイチローは中学生時代にメジャーの打席に立っていてもヒットは打てたかもしれないと述べている。どうにかこうにかプロには入っていたかもしれない。


このエピソードで思い出したのが長嶋茂雄。1953年8月1日、甲子園をかけた地区予選で公式戦唯一のホームランを放ったのだがこれが「長嶋、大本塁打放つ」と新聞の大見出しになり、「佐倉に長嶋あり」と認識されたのだという(「記憶のなかの長嶋茂雄」より)。長嶋さんといい、イチローといい、スターは勝負強い。運命をもコントロールしてしまうのか。

野球は人生そのものだ

野球は人生そのものだ

イチローのこの試合のことは石田雄太氏が書いているが、特に面白いと思ったのはイチローの思考を書いているくだり。イチローはチームメイトの方が練習していたといい、それを見下す意味ではないのだろうが苦しんだから報われるというのは大間違いで、苦しむなら考えて苦しまないといけないと説く。こんなに苦しんだんだからという所に逃げ込むといつまでたっても自分は変えられないという。プラスの自分を出現させるには考えて苦しまねばならないと書いてあった。


自分を成長させるには努力が必要だが例えば練習なり作業の量をこなすだけではだめで、「何のために」とか「どうやって」ということを意識するなど質を高めねばだめだよ、と黒柴スポーツ新聞編集局長は解釈した。毎日、毎週、毎月の仕事だってただこなすだけでは成長がない。前よりもいかに的確に正確に素早く仕上げられるか。その達成をちょっとしたゲーム感覚でやるくらいの余裕を持ちたいものだ。ただ終わらせるだけでは漫然と素振りをするのと変わらない。


イチローの考えにふむふむとうなずいた一方で、うーんと考えてしまうくだりもあった。イチローは愛知大会準決勝で5打数4安打と結果を残したところで目標を達成した感があった。だから決勝の東邦戦をノーヒットで終えたが思い残すことがなかったという。高校3年生=負ければ引退=しみじみ、というお決まりの構図を当てはめてはいけないのだろうがイチローは敗退後の気分を聞かれ「悲しみにうちひしがれる方がいいのか、満足していると言った方がいいのか」と記者に聞き返した。記者は得体の知れないものを見るような目をしていたと言うが同業者としてこの記者を気の毒に思う。さすがにこの高校生が25年後に米3000安打を記録するとは予想できなかっただろうなあ…。


きょうの1枚はイチロー。日本球界の記録のみだが、最優秀選手3回、首位打者7回、打点王1回、最多安打5回、盗塁王1回、最高出塁率5回、正力賞2回。サイクル安打がないのが不思議です。

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