黒柴スポーツ新聞

ニュース編集者が野球を中心に、心に残るシーンやプレーヤーから生きるヒントを探ります。

パ・リーグ中継、アメリカに輸出~注目されると困る、ソフトバンク投打の柱

8月10日の日経新聞スポーツ面を見て驚いた。「パ・リーグ、米で生放送」「今月から200試合以上 普及へ英語で実況」という見出しがあった。コロナでアメリカでは野球の試合が激減、野球に飢えた視聴者を取り込みたい放送局の思惑と、米国進出を模索してきたパシフィックリーグマーケティング(PLM)の方向性が一致した、というのが記事の筋である。こんな素敵なニュース、なぜ一般紙を見ている私は気付かなかったのだろう。非常にワクワクする話題だ。

白いボールのファンタジー

白いボールのファンタジー

  • アーティスト:トランザム
  • 発売日: 2004/09/30
  • メディア: CD
 

 

それにしても時代は変わった。アラフォーの私は少年時代、パ・リーグのユニフォームが見たかった。しかし野球中継は巨人戦が定番。パ・リーグのユニフォームを見られるのはオールスターと日本シリーズ、あとは日々のプロ野球ニュースと決まっていた。とにかく日本ハムやロッテ、南海あたりには飢えていた。落合博満門田博光の打席を堪能したかったなと思う。

それが何とアメリカでパ・リーグを見られる時代になるとは! 野茂、イチローから大谷翔平まで、日本人選手の活躍で日本人選手の印象は悪くなかろうと思う。そのうち日本の球団の帽子やユニフォーム、Tシャツなんかで街を歩く人が増えたりして。楽しみが増える分には構わないのだが、一つ気になることがある。柳田悠岐を獲得したいという声が出やしないか、という懸念だ。

柳田悠岐は7年契約を結び事実上の生涯ホークス宣言。メジャー移籍を封印したのだが、2020年、規格外のホームランを連発。並のバッターならフライになりそうな角度の当たりでもなぜかスタンドイン。パワーが違うようだ。ホークスファンからしたら余計なこと書くんじゃねえよと言うかもしれないが、ギータのパワーがメジャーの中でどれくらい通用するのか、一度は見てみたいなと思ってしまう。明るいキャラクターだからすぐにチームにも溶け込んで面白いことをしてくれるに違いない。だがそうなればホークスにはとてつもなく大きな穴が開くのだが。

ソフトバンクにはもう1人、千賀というメジャー志向の人がいる。もちろん一番はチームのために投げてくれるはずだが、自分が投げる試合がアメリカで放送されるとなれば格好のアピール機会だ。もともと評価は高そうだから、千賀に触手が伸びないか、こちらもヒヤヒヤしてしまう。ムムム、もしやこうやってホークスの投打の柱を抜いてしまい、パ・リーグを面白くさせようという魂胆?なんて思わなくもないが、特に千賀についてはアメリカに行くならば日本で最多勝&リーグ優勝してからチャレンジしてもらいたいと思う。

日本のスモールベースボールアメリカの視聴者に受け入れられるのか疑問もわくが、緻密な継投、送りバントの技術力、そしてスリリングなペナントレースアメリカの野球ファンにも受け入れられるのではないかと期待している。

勝負は最後まで分からない~明徳義塾9回2死から鳥取城北下す、甲子園特別試合

見終わってからも鳥肌が引かなかった。甲子園特別試合の鳥取城北明徳義塾。無安打ながら7回まで2対1と明徳義塾がリード。もらった四死球を、盗塁や犠打を絡めて得点する。気付いたらリードしている。まさに明徳野球の定番だ。しかし、エース新地が捕まり8回に手痛い4失点で2-5。試合の大勢は決まったかに思われたが8回裏に2点を返して4-5と1点差に。最後は4番新澤のサヨナラ三塁打で劇的勝利を収めた。

9回の攻防は見応えあった。先頭の代打竹下は三振に倒れるも、続く奥野が死球で出塁。奥野には盗塁が期待されたがなかなかスタートが切れない。2死になることを覚悟で2番合田に送りバントをさせるか、奥野を信じて走らせるか……馬淵監督からはどんなサインが出ていたのだろう? ドキドキしている間に合田は四球を選んだ。これで1死一、二塁。ここから主軸に回るが3番のキャプテン鈴木はいい当たりのセンターライナー。明徳の粘りもここまでか……と私は正直なところ諦めていた。さらに鳥取城北はピッチャーを、一度降板させたエース阪上に交代。土壇場でエース対4番の対決となった。どちらもチームメイトの思いを背負っている。特別な夏。意地のぶつかり合い。結果は…………新澤が会心の当たりを放った。「行ったぁ!」。私はホームランかと思ってイスから立ち上がったのだが、打球は外野手の頭を越えてフェンスまで。一塁ランナーと帰って来られるのか?と思ったが、ボールはホームに返ってこなかった。一塁ランナーが頭からホームに突入し、仲間と抱き合った。

輝け甲子園の星 2020年 08 月号

輝け甲子園の星 2020年 08 月号

  • 発売日: 2020/08/04
  • メディア: 雑誌
 

 

ダグアウトから駆け寄る選手の中に背番号1の新地の姿を見つけた。ここ一番で踏ん張れなかった新地。それは高知県での特別大会決勝でもそうだった。9回に決勝打を浴びて明徳義塾は優勝を逃した。優勝して甲子園での特別試合に出るという目標は果たせなかった。コントロールのよい新地が生きるのはバックの堅い守りがあってこそ。それが県決勝では3失策。足を引っ張ってしまった野手陣だったが甲子園では堅守を発揮した。そして最後の最後は4番がチームを救った。

 

特別試合が始まる前、NHKの番組で桑田真澄が言っていた。甲子園は卒業式なのだと。ほとんどの学校は負けて終わり、勝って終わるのは一校だけ。負けから何を学ぶか、優勝校は勝ちから何を学ぶかだと。2020年の夏は変則で、春に力を発揮できなかった学校の選手が卒業式をやりに来た。それぞれ1試合限定だ。その2時間半ほどの濃密な時間の中で、選手は様々なことを学ぶのだろう。サヨナラ打を放った新澤は、サヨナラ打を打たれた阪上は、それぞれ何を学んだのだろう。私は1ファンだから感想を持つだけなのだが、やはり勝負は最後まで分からない(だからこそ最後まで諦めてはいけない)ということ、そして勝利や敗北を分かち合える仲間の存在は財産だなとあらためて教わった気がする。1試合限定の特別なゲーム。時間の都合がつく限り、見届けようと思う。

ピンチはどうにかして切り抜ける~ソフトバンク板東またも好投で2勝目

またもや板東湧梧がナイスピッチングだ。8月9日は先発笠谷が3回を無安打、0点で抑えたが工藤監督は継投に入り4回から登板。ランナーを背負う場面はあったが見事4イニングを投げきり1点もやらなかった。ソフトバンクは敵のワイルドピッチで先制し、柳田悠岐が特大の一発、最終回には甲斐がだめ押し3ランをお見舞いして同率首位に返り咲いた。もし負けていたら楽天とは2ゲーム差になるところだったので、この連敗ストップは大きい。

中継ぎに白星が付くのは登板後にチームが勝ち越した場合などだが、板東は複数イニング投げて勝ちが付いている点を評価してあげたい。引き継いだばかりの4回は三者凡退に封じてリズムを作った。5回にはランナーを1、3塁に背負いながら、最後は売り出し中の小深田に対して低めいっぱいに直球を決めて見逃し三振に。私は愛犬の散歩をしながらradikoでハラハラしながら聴いていたのだが、アナウンサーがストライク!と実況した瞬間、よっしゃ!とガッツポーズしてしまった(一応、周りは無人です)。

板東はランナーを背負うことはあっても何とか切り抜けている。そこが素晴らしい。そう、敵を完璧に封じられたらそれが一番。でも毎回そんなにうまくはいかない。であればどうにかしてピンチを切り抜けるまでだ。もちろん周りだって協力してくれる。5回に出したらランナーはまず三塁への強い当たりを放ったのだが、サード松田宣浩が横っ飛び。グラブに当てて何とか単打にした。そのランナーは盗塁して二塁に進み、板東はセンターに抜けようかという当たりを打たれたのだが、今度はセカンド周東が何とかつかみ、タイムリーになるのは防いだ。板東はそこから二者連続三振に切ってとり、無失点でしのいだのだった。ピンチを背負いながらも全員で何とかする。一番いい連敗の止め方だった。またもや大事な試合で踏ん張ったソフトバンク。笠谷と板東、一本立ちしてくれたら申し分ないが、そうなるまではひとまず与えられた場面で好投してもらいたい。二人とも、今年のソフトバンクには欠かせない戦力になってきた。

甲子園のない夏に山際淳司「八月のカクテル光線」を読んで

甲子園のない夏である。それもずいぶん前に決まっていて、予定通りであるため騒ぎにもなっていない。ただぽっかりと、高校野球のファンの日常に穴をあけている。私はとりあえず、山際淳司氏の文庫本「スローカーブを、もう一球」から「八月のカクテル光線」を選んで読んだ。あの延長18回までもつれた、星稜対箕島の名勝負(1979=昭和54年)を描いた作品だ。

スローカーブを、もう一球 (角川文庫)

スローカーブを、もう一球 (角川文庫)

 

 

この作品には二つの落球が出てくる。有名なのは星稜の一塁手加藤直樹が落としたファウルフライ。だが本人も作中で述べている通り、グラブに当てて落としたわけではない。加藤は転倒してしまい、捕れなかったのだ。そういうシーンは野球ではあることなのだが、加藤が有名になってしまったのはそれが勝利まであと1アウトの延長16回裏2死で起きた出来事だったからだ。しかし加藤は「しこりは残っていない」とも言っていた。周りからは冗談めかして「お前の作戦通りや」なんて言われたりもしたけれど、陰でこそこそ言われるよりはずっといいのだ、と。それでも加藤は「スッキリできない部分がある」という。一生ついてまわる、フライを捕れなかった、優勝を逃したという事実。それが甲子園や高校野球のリアリティーであり、だからこそ観る人の心を打つのだと思う。やり直したくてもやり直すことはできない。再生不可能な状況だからこそ、人々は固唾を飲んでその一瞬一瞬を胸に刻もうと必至になっているのだ。

甲子園 2020 [雑誌] (週刊朝日増刊)

甲子園 2020 [雑誌] (週刊朝日増刊)

  • 発売日: 2020/08/04
  • メディア: 雑誌
 

 

この名勝負の主審を務めたのは永野元玄さん。土佐高校準優勝時(1953=昭和28年)のキャッチャーで、甲子園の時季には会社を休んで審判をしていた。先ほど、「八月のカクテル光線」には二つの落球が出てくると書いたが、永野さんも優勝目前で落球をしていた。松山商業との決勝、9回に追い付かれてしまったのだが、その直前だった。もしチップした3ストライク目を永野さんが捕球していたら土佐高校は優勝だった。しかしおさまりかけたボールを永野さんは落としてしまった。その後同点打を浴び、延長13回に逆転されてしまった。星稜の加藤も「落球」後に同点ホームランが生まれているため、状況がよく似ていた。そしてご存じの方もいらっしゃる話だが、試合後に永野さんは、負けた側の星稜の堅田投手に、試合で使ったボールを渡す。こうしたエピソードの数々もまた甲子園ファン、高校野球ファンの心を温める。

8月10日からはセンバツの代替大会がある。1試合限定の特別なゲーム。これもまた胸を熱くするに違いない。一瞬、一瞬を大切にテレビ観戦しよう。
山際淳司氏の「スローカーブを、もう一球」に収録されている「八月のカクテル光線」もぜひお楽しみください。

ソフトバンク7回の男は誰が適任?~鬼門作らず勝ちパターン確立を

ソフトバンクが8月7日の楽天戦で逆転負けした。4対2だったのに7回だけで5失点。先発東浜が四球で崩れ、売り出し中の小深田に逆転三塁打を喫した。嘉弥真は死球で傷口を広げ、高橋礼はロメロに3ランを浴びてしまった。翌日の西日本新聞の紙面には「また鬼門の七回」の大見出し。記事によると、負け試合では117失点。そのうち22失点が7回で、これはイニング別最多だという。

であれば、ここをしっかりしのげば優位にペナントレースを戦えるということだ。2019年なら甲斐野がいたが、故障で離脱したままだ。2020年は先発から高橋礼をここに持ってきたが安定感があるかというと磐石ではない。高橋礼は長いイニングを投げられるのだから、再び先発に戻し、ローテーションを守らせた方がいいように思う。ソフトバンクが継投必至であるなら、7回は1イニング限定でいいので、四球が少なく三振が取れるピッチャーがいい。甲斐野はランナーを出すことがあっても三振が取れた。高橋礼に三振が取れるイメージがあるかと言えば、そこまで相手チームに印象付けられていないのではないか。

じゃあ7回の男は誰なのか? 私は板東を推す。板東は先発志向があるが、落ちる球を生かして三振が取れるピッチャーと見た。初勝利を挙げた楽天戦でも勝負どころで浅村と対戦し、併殺打に仕留めた。低めに集めさえすれば、よい結果が出るのではないか。先発と中継ぎは調整方法が違うので、どちらにせよ、先発か中継ぎかを決めてあげてほしい。

津森の起用も面白いのではないか。初登板でいきなり満塁ホームランを浴びて話題になったが、なかなかいい面構えで、球威もある。四球さえ減れば勝ちパターンで使ってみてほしいピッチャーだ。津森は右だが、左なら川原はどうか。球の速さは魅力的だ。同じ左には嘉弥真がいるが、できれば対左バッターのとっておきにしたい。川原には嘉弥真にはない力強さがある。嘉弥真には川原にはない緻密さがある。同じ左でも使われ方が変わってくるはずだ。

7回の男が誰になるにせよ、とにかく四死球は命取り。「四球から生まれるものは何もない」とまたまた工藤監督が発言した。先発が7回まで踏ん張れば一番いいが、先発でも中継ぎでも、鬼門の7回はとにかく丁寧に投げてもらいたい。そうすればソフトバンクの勝率は上がるのだから。同率首位の楽天は打撃ベストテンに3割が4人(鈴木大地、ロメロ、茂木、浅村)いるのにソフトバンク柳田悠岐1人(途中合流の中村晃は入っていない)。それで同率首位なのは投手陣の頑張りがあってこそだ。鬼門を作らず、勝ちパターンを確立して、厳しいペナントレースを乗り切ってもらいたい。

悪い流れを引きずらない~好救援のソフトバンク板東湧梧がプロ初勝利

今年のホークスはズルズル負けない気がする。楽天との首位攻防(なんて書くのはまだ早いのだが)ラウンドでは初戦8回裏、天敵浅村に2ランを浴びて逆転負け。2戦目は涌井に9回1死まで無安打に抑えられ、完封負け。前のカード、西武戦では調子よかったのだが、コロナ対策で試合中止になってから妙に歯車が噛み合っていなかった気がする。何となく元気がないというか……だからこそ、ノーヒットノーランを阻止した川島慶三の1打は価値があったし、2戦目の板東湧梧の好救援&初勝利は明るい話題だった。そう、悪い流れは断ち切ればいいのだ。

少し前だが日本ハムとの連戦でも、サヨナラ負けを喫した翌日は勝った。悔しい思いをしたなら、なるべく早くよい結果で上書きするに限る。連敗はドツボにはまると大変なことになる。ホークスで言えば、終盤の要の岩嵜が再三痛打を浴びた頃が一番しんどかったのではないか。一時は借金3だったのだ。岩嵜の復調が待ち遠しいが、それまでは泉や津森、板東ら若手で中継ぎ陣を支えねばならない。その意味では板東に勝ち星が付いたのはよかった。谷間の木曜日は笠谷が再三投げたが、また板東にも先発のチャンスが与えられるのではないか。中継ぎ陣一人一人にとっても「連敗」は許されない。 

今年のホークスは選手のメンタルをかなり意識しているように感じる。松田宣浩の1番起用は驚いた。スタメンから外したと思ったら次は1番。思いきっていけという意外、意味がわからない起用だ。おまけに2番はバレンティン。とりあえずバット振ってこい的な? そのうちバレンティンが1番になったりして……。 一時、栗原の調子が落ちた時は1番から外して5番に起用。もうホークスファンでもびっくりなのだが、この時も「とりあえずランナー返してこう!」というメッセージが込められていたと見た。そう、ズルズル悪い方に行かないようにしようぜと、そんな意味合いがあるのではなかろうか?

松田宣浩メッセージBOOK-マッチアップ-

松田宣浩メッセージBOOK-マッチアップ-

  • 作者:松田 宣浩
  • 発売日: 2013/09/18
  • メディア: 単行本
 

 

とにかく、ホークスが大型連敗しないおかげで私は楽しい毎日を過ごせている。通勤時間の長さは減ることはないのだが、radikoを活用して、帰宅時はほぼナイターを聴いて楽しんでいる。コロナ対策で、帰宅後は風呂直行だがその間も別室から音量を上げてradikoを聴いている。そして夕食時も続きを聴き、いい場面になったらDAZNに切り替えて動画を見る。その頃にモイネロや森唯斗が投げていればいい試合ということだ。自分の日々の生活でも、悪い流れは必ずある。でも、それを長引かせないようにしたい。せめて悪い流れは細切れにしたいものだ。毎日楽しくホークス戦を聴くためにも、やるべきことを少しずつでも進めよう。

最高と最低を考える~ソフトバンク石川柊太がプロ初完投初完封

ソフトバンクホークスの石川柊太が無傷の4連勝だ。8月1日の西武戦で1安打完封。これはプロ入り初完投でもあるそうだ。ホークスは継投がすっかり定着しているが、先発がある程度試合を組み立ててくれると後が楽だ。リリーフ陣もひといきつけたことだろう。私は試合の翌日、勝利の余韻に浸るべく西日本新聞のスポーツ面をチェックしたのだが、石川のサイド記事(筆者は鎌田真一郎さん)に面白い表現を見つけた。石川は常に「最高」と「最低」を意識するというのだ。

物事を始めるにあたり、あなたは最高の結果を想像するだろうか。それとも最低の結果を想像するだろうか。私は基本的に悲観主義者だから、うまくいかなかったときのことを考える。これはマイナス思考という意味ではなく、いざというときに慌てずに済むよう、リスク管理ができるメリットがある。「これくらいはできる」と思ってしまうと、脇が甘くなる自覚もあるのだ。では石川は、というと、マウンドに上がる際は「常に完全試合は狙っている」という。じゃあ、自信過剰かというとそうではない。なんと「常にホームランを打たれるイメージをしてから、逆算している」という。高い理想は掲げつつも、リスク回避には取り組んでいるのだ。私は事前の考え方は楽観主義と悲観主義のどちらかだと思っていたから、これは面白い思考法だなと大変参考になった。

記事にも書いてあったが確かに石川の前回登板の際は伏兵の宇佐美や杉谷(と書いたら伏兵言うな!と言いそうだが)に手痛い一発を浴びてしまった。そういうリスクは常にあるのだから気を付けよう。その意識を持ちつつ最高の結果を求める。これなら天狗にならずに前向きに取り組めそうだ。石川柊太はももクロファンとして知られており、この1安打完封の日は何やらライブ関連行事があったらしい。わずか2時間21分での山賊退治。さぞや気分よくももクロの世界に浸ったに違いない。最低の結果を恐れず、そうはならないようリスク管理をしながら最高の結果を目指す。私も石川を見習い、やるべきことをきっちり済ませて、自分の好きなことにどっぷり浸ろうと思う。

前もって負荷をかけてみる~ソフトバンク4番中村晃が好調な要因とは

ソフトバンクが好調だ。柳田悠岐の打率は3割8分台に突入したが、もう一人、勝負強さを発揮している人がいる。中村晃だ。いわゆる「つなぎの四番」だが、要所要所でタイムリーを放っており、だんだん4番の風格が漂い出してきている気がする。

7月28日の試合は圧巻だった。五回に同点タイムリー。六回には勝ち越しタイムリー。六回2死満塁、フルカウントで西武の平井と対決する様子をradikoで聴いていた。「ランナー全員還らないかなあ」と期待したら本当に走者一掃。さすがわれらが4番である。

29日の日経新聞スポーツ面に中村晃の記事が載っていた(筆者は馬場到さん)。あの満塁の場面。「ヒットだけではなく、四球もある。そのことを頭に入れ、難しい球はファウルにすることも意識した」そうだ。これはサラリーマンの日常でも役立ちそう。ついつい来た球(案件)は全力で打ち返そうと思うもの。しかし厳しい条件であればひとまずファウルにして態勢を整えることも必要だ。そして必ずしもヒットでなければいけないわけでもない。四球を選べば押し出しで点が入るのだ。とにかく得点できればよい。私もそういう臨機応変な対応ができたらなと思う。ちょっと意識してみよう。

もう一つ見習いたいのが、中村晃がやっている負荷のかけ方。何と打撃練習の間から「追い込まれているとか、シチュエーションを意識しながら」やっているそうだ。私はどうしても、練習(準備)は練習、本番(実践)は本番と分けて考えてしまう。だから練習は気楽に行えるが、本番で緊張してしまったりする。緊張するのは本番だけで十分だ、なんて考えているのだが、練習の時にプレッシャーを意識してやれば本番の擬似体験になる。つまり本番は2回目だから、いくぶん楽だし、体もスムーズに動くということだろう。中村晃の好調の要因は平常心だ、と記事に書いてあった。いざというときに平常心になるために、前もって負荷をかけてみる。毎回はできないかもしれないが、心身とも元気で余裕があるときはちょっと試してみよう。

まずは与えられた仕事をやりきる~ソフトバンク板東湧梧、好投続けて先発候補へ

日本ハムとは1点を争う、しのぎ合う、しんどい試合をしてしまうホークス。そんな時頼りになるのがリリーフ陣なのだが、7月23日の試合では板東湧梧が躍動した。4イニング1安打無失点。投手分業制が定着した今、ロングリリーフは珍しいのだが、板東は投げるイニングが少しずつ増えている。ひょっとして……と思うに決まっている。実際、すぐに日刊スポーツに「ソフトバンク板東4回0封 次戦は先発起用も」という記事が出た。

板東の良さって何だろう? 低めへのコントロール。ブレーキの効いたカーブ(を含めた緩急)。顔? 度胸? 全部正解かも。しかし私はこのコメントにしびれた。
「今日も先発したい気持ちはあった。いずれつかむために、与えられたポジションでしっかり投げたい」(日刊スポーツ記事より)
そう、目標をとらえるために大切なのは「今」。まずは与えられたポジションを全うすることで、板東はそれを理解し実践している。それが一番素晴らしいと思う。

コメントにもある通り、板東には先発志向があるようだ。バンデンハークが離脱して、23日の先発は板東という報道もあった。しかし先発したのは笠谷だった。笠谷もよく踏ん張ったが宇佐美に手痛い3ランを浴びてしまった。板東が登板したのは4~7回だった。無失点で切り抜けたので試合は締まった。最終的にホークスは競り負けたのだが、板東の好投はホークスファンにとって光明に見えた。板東の防御率は3試合で0.93となった。三振を奪えるのも魅力的。工藤監督ならずとも、先発で投げる姿を見たくなるのはうなずける。まだ完投は難しくとも、試合は十分作れそうだ。やりたいことに挑戦するためにも、まずは与えられた仕事をやる。当たり前のことではあるけれど、実践してステージを上がろうとしている板東は素晴らしいと思う。

レギュラーは逃げられない~ソフトバンク栗原陵矢が迎える勝負の夏

栗原陵矢が不振に喘いでいる。7月23日の日本ハム戦では犠牲フライを放つも無安打。終盤には代打を送られ御役御免となった。これで5試合続けて無安打。開幕直後がうまくいきすぎたのか、疲れがたまってしまっているのか。この日のサンスポに、ソフトバンク平石コーチは栗原について「逃げさせない」、という記事を見つけた。栗原陵矢、まさに今が踏ん張りどころだ。

「この現状から絶対に逃げさせないです。レギュラーを奪う、張るというのはそういうこと。(これからの)ホークスのことを考えたらクリ(栗原)はそれだけの能力を持っている。レギュラーを張るのはそれくらい、重圧もあるし大変なこと。この現状から逃げていたらね」(サンスポ記事より、平石コーチの言葉)
そう、レギュラーでいるということは重圧との戦いでもある。上り調子の時は回りが見えなくても、とにかく突っ走ればいい。結果は後からついてくる、といった具合か。逆に、結果が出ない時は相当プレッシャーがあるだろう。プレッシャーならまだいい。初めてレギュラーをつかんだ選手であれば、その座を手放してしまう不安も感じてしまうのではないか。しかしそこから逃げることは許さない、と平石コーチは言う。そこを踏ん張らないと、本当の意味でレギュラーの座は守れないと言いたいのだろう。

レギュラーは逃げることを許されない。苦しくても乗り越えて結果を出さないといけない。それでも栗原が幸せなのは、このくだり。「クリはそれだけの能力を持っている」。今後のホークスのことを考えたら、壁を乗り越えてもらわねば困ると言われているのだ。年齢的にも、栗原がスタメンに定着すれば当面打線の軸になりうる。やってもらわねば困る選手なのだ。

今まで出たりでなかったりの選手が常時出る選手になれば、疲労の蓄積は未体験ゾーンに突入して、本人もどうしたらよいのか分からなくなるかもしれない。オリックス戦で解説の亀山努が、スタメン定着1カ月目でドンと疲労の波が来ると話していた。試合に出続けながら疲労と付き合うのは難しいと思うが、栗原はそこも乗り切らないといけない。

一塁を守ってきた栗原だが、この日の日本ハム戦ではレフトに回った。来月になればデスパイネとグラシアルが合流するかもしれない。この助っ人たちはレフトを守る可能性がある。一塁は中村晃も守る。指名打者バレンティンなのかデスパイネなのか。その頃、栗原は好調を取り戻せているのだろうか。選手層の厚いソフトバンクで、しかも2000本安打の内川聖一を差し置いてレギュラーをつかんだ栗原。まさに勝負の夏を迎えようとしている。

劣勢の中でも踏ん張る~ソフトバンク椎野が好救援で今季初勝利

7月22日の日本ハム戦。完封負けするかと思われたが7回裏、松田宣浩の逆転タイムリーでホークスが試合をひっくり返した。だからお立ち台に松田宣浩が立つのは順当なのだが、黒柴スポーツ新聞的には、ビハインドだった6回、7回に投げた椎野新の頑張りにフォーカスしたい。

いわゆる勝ちパターンのピッチャーはリードしている状態でマウンドに上がる。そしてリードを守りきればチームは勝つ。では負けている時は? そう、それ以上点を取られないことで反撃ムードを作る。だから、ビハインドの時こそテンポ良く、例えば三者凡退に封じられたら最高だ。椎野は開幕後、少し間をおいてからチームに合流したものの、力強い球を投げ込んでいた。それが評価されたのだろう。この日も2点負けている状況で登板し、6回は三者凡退。7回はランナーを背負ったが最後は中田翔から三振を奪って切り抜けた。ホークスが逆転したのはその裏の攻撃だった。

1年前の7月、私は京セラドームで椎野の登板を見た。好投していた先発の松本が終盤捕まり、嘉弥真や椎野が救援したのだが、オリックスに逆転された。椎野はマレーロに走者一掃のタイムリーを浴びた。抑えピッチャーは酷な商売だ。抑えて当たり前、打たれたら戦犯扱い。それから逃げていては仕事にならないのだが、責任重大な大変なポジションだと思う。それに比べたら負けている状況での登板はいくらか気が楽かもしれないが、この日の椎野は196センチの長身からバンバン直球を投げ込んでいた。それで無失点だったのだから、この試合まだまだ分からないぞと、チームが前向きになれたのではないか。

松田宣浩の逆転タイムリーのおかげで椎野が勝ち投手になった。登板した後に逆転してもらったらリリーフに勝ちが付く仕組みではあるのだが、特に今回は、負けている状況でも自分に課せられた仕事をやりきった椎野に対する報いだったなぁと思わずうれしくなった。8回モイネロ、9回森唯斗というリレーは堅いから、あとはその前の7回が鍵になりそう。先発が7回を投げきれたら楽なのだが、毎回そういう訳にもいくまい。岩嵜が離脱してしまったから、左なら川原や嘉弥真、右なら泉や板東あたりか。椎野はそこに加わりそうだ。リードしたまま椎野につながればなおよいが、負けていてもあのように力強い球を投げ込めるなら諦めムードも出なそうだ。劣勢の中でも全力を尽くす。その先にチームの勝ちがある。椎野の力投に、中継ぎピッチャーの価値をあらためて感じた。

上林誠知の「倍返し」を願って~2019年打率.194から巻き返し中

半沢直樹の新シリーズが始まる。やられたらやり返す、倍返しだ、とはおなじみのフレーズだが、今のホークスには半沢直樹的にやり返しているキーマンがいる。ライトを守る上林誠知だ。打率はまだ.250ほどだがこのオリックス戦5試合では18打数8安打、本塁打3本と結果を残している。

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「みちのくのイチロー」などと称され、仙台育英時代から注目された上林も24歳。2020年は実働6年目のシーズンだ。2018年には本塁打22本をマーク。当時はまだ柳田悠岐のメジャー移籍もあり得たため、ギータがいなくなってしまうならばその穴を埋めるのは上林しかいないだろうと個人的には思っていた。2018年の三塁打14本は上林の長打力と快速ぶりを何より物語っており、まさに打って守って走れる三拍子そろった選手。日刊スポーツには「ソフトバンク上林1、2番定着&トリプルスリー誓う」(2018.12.6)なんて記事もあるが、それは決して上林が調子に乗って発した目標とも思わなかったし、そのくらいやってくれると期待したい選手だった。

ところが2019年、上林は絶不調に陥る。上林の持ち味はリストの強さなのだが、それが消えてしまうくらい、必要以上に前でさばいてしまっているように見えた。自分のポイントまで球を呼び込めない。ピッチャーの「言いなり」というか、術中にはまり態勢を崩されていた。手の甲への死球が決定的だったが、そもそも避けきれなかったこと自体が調子の悪さを物語っていた。トリプルスリーを描いたシーズン、打率はまさかの.194だった。奪ったかに見えたレギュラーの座もかすんでしまった。

こんなもんじゃないだろう。戦犯という言葉は嫌いだが、期待の裏返しであえて言いたい。上林が本来の力を発揮していたらホークスは2019年、西武にリーグ制覇を許していなかったのではないか。上林1人のせいではもちろんないけれど、わずかに獅子の後ろ髪をとらえきれなかった一つの要因は上林の不調と私は思った。上林自身、忸怩たる思いはあっただろう。

2020年、意識の上で何か変わったのだろうか。Full-Count記事にこんなくだりがあった。
「ボールに当てにいくようなことはしないです。長所を消しちゃいけないんで」。とにかく間を抜けるような力強い打球を常に目指す。その結果として二塁打三塁打本塁打があり、そして単打もある。それをひっくるめて“安打”をたくさん打つ、そういうイメージだ。(2020.3.15 期待され続け7年目 鷹・上林、覚醒へ胸中激白「バリバリやってなきゃおかしい」 筆者は福谷佑介さん)
そう、上林の打球のイメージはライナー。野手の間を抜け、その間に上林は素早く次の塁を陥れる。また三塁打を量産した頃のような、上林らしいハツラツとしたバッティングができれば……。やられたらやり返す。上林にもぜひパ・リーグの投手たちに「倍返し」をお願いしたい。

敗戦の中にも収穫あり~板東、川原、泉。踏ん張った鷹の中継ぎ陣

7月16日のオリックス戦。ソフトバンクは惜敗した。いつもなら負けが決まるとものすごく悔しい。だけど、何だろうこのスッキリ感は。よくやったじゃないか。確かにバレンティンが好機に併殺打に倒れなければ違った展開だとは思った。しかしよくやったじゃないかと、妙に納得しながら眠りについたのだが、翌日その理由がはっきりと分かった。西スポ記事、ソフトバンク連勝止まっても「収穫ある1敗」になった理由(石田泰隆さん)に書いてあった。そう、中継ぎ陣の好投である。

まずは売り出し中の板東。イケメンなのはファンの間で知られていたらしいが、ついに14日のオリックス戦でプロ初登板。吉田正にホームランこそ浴びたが、2回1失点。内野ゴロの打球がお腹に当たるアクシデントもあったが女性ファンをメロメロにさせるような笑顔の場面も。早速パ・リーグTVが動画を配信して話題になったそうだ。もちろん話題先行ではなくきっちり結果を出したことから16日の試合でも起用され、3回3分の2のロングリリーフ。バンデンハークが4失点しながらソフトバンクが善戦できたのは板東の頑張りが大きい。

そして川原と泉も。川原は育成に落ちた時期もありながら再び支配下登録された苦労人。しかしプロは結果がすべて。川原は力強い球を投げ込んでいた。そうだ、この強気のピッチングがなかったんだ、チーム全体で四球連発の時期は。工藤監督も「四球からは何も生まれない」と言っているではないか。泉も今季はサヨナラヒットを打たれた日もあったが、戦力になっている。岩嵜が本調子ではないだけに、7回、8回という勝負どころでは結果を出し続けてもらいたい。

「負け展開で出てきてはグッと踏ん張り、突き放されることを食い止める。時には負け試合を勝ち試合へと転化させる貴重な存在。スポットライトを浴びる機会はめったにないが、大事な大事な投手たちだ」(西スポ、石田泰隆さんの記事より)
そうそう。抑えて当たり前、打たれたら責められる中継ぎは大変なポジションだけれども、チームになくてはならない存在だ。特に今季は6連戦が組まれ、ピッチャーのやりくりは大変だ。だがファンだからこそ彼らの頑張りに敬意を表したい。そして密かに地味に頑張る自分の姿とも重ねてみる。中継ぎの踏ん張りに勇気をもらっている自分がいる。負けたのは悔しいけれど、嫌な気持ちにならなかった理由はこのあたりなのだった。

今宮健太、300犠打が「嬉しくない」理由とは~理想とイメージの間で

少し前のことだが、今宮健太が通算300犠打を記録した(7月3日)。史上7人目だが、20代での到達は史上初という。今宮がいかに若い頃から犠打を積み重ねたかが分かるというものだ。だが私はあることに引っ掛かった。その節目の今宮健太Twitter(7月3日)にはこう書かれていた。
「今日、300犠打決めてきました❗️
嬉しいようで嬉しくないよく分からない気持ちです😂
なにか1つでもチームに貢献できるよう頑張ります❗️
シーズンも始まったばかりこれから
頑張ります❗️」

長いプロ野球の歴史でたった7人しかやっていない300犠打。それをなぜ「嬉しくない」なんて書くのか。謙遜か。成果をひけらかさない控えめな態度ならよいのだが、何か引っ掛かるものを感じていた。その答えがFull-Count記事に書かれていた。

「ただ、本人の胸の内には別の思いがあった。高校時代は通算62本塁打を誇るスラッガー。心のどこかには打ちたい思いがあった」(7月4日、筆者=福谷佑介さん)

打ちたい。そんな単純なわがままではないと思う。得点が期待される長打力があれば送りバントを命じられない。今宮健太はそう考えているのではないか。だからそうなれるよう、バッティングを努力しているのだと思う。ゆえに今宮イコール犠打がうまい、やらせておけ、という単純な流れが嫌なのであって、チームプレーを放棄しているのではない。私はそう想像している。世の中には本人の意思とかけ離れたところで役割を決められる局面がある。当事者すぎて、本人が気が付いていない良さを第三者が客観的に評価するなら意味がある。しかし得てしてこの人はこういうキャラだ、こういう仕事が向いている、などなど周りが勝手に決めつけることもある。枠にはめられた本人は、そういうもんかなと枠に合わせているうちに本来の良さを失う。それは最悪だ。今宮がもしつなぎ専門の2番なり犠打を増やすことが自分の理想ではないのなら、やはり力強い打撃で結果を残す。それしかない。

「理想は打って、走者を進められる打者。記念すべきこの300犠打も、期待される川相氏超えの犠打記録も、今宮自身にとっては目指すべきところではないのだ」

先に紹介した福谷佑介さんの記事はそう締めくくられている。300犠打なんてそうそうできるものではないし、それこそ川相昌弘の世界記録533犠打も夢じゃないと思うのだが、それって結局周りが勝手に今宮の将来を決めつけていることなんだろう。私は今宮が世界記録を目指すなら応援するし、やっぱり自分の理想とする打撃を追求したいから長打力を磨くというならそれを応援する。最近は栗原陵矢という長打力ある若手も台頭してきたし、その栗原が1番に定着したらますます今宮に送りバントを……という展開が増える可能性もある。しかし人に迷惑さえ掛けなければ、人は死ぬまで自分の理想を追ってよいと私は思う。今宮の野球人生の主人公はもちろん今宮自身。引退はまだまだまだまだ先だけれど、今宮らしさを生かしながらチームに貢献し続けてもらいたい。

川島慶三、使われる限り結果を出す男~バレンティン2発にも負けない輝き

川島慶三のプレーを見てジーンときた。
ノーヒットノーラン継続中だったバンデンハークが8回、ついにセンター前に抜けそうな当たりを打たれた。その瞬間、頭から突っ込んだセカンド川島慶三。そこから体を無理やりひねって一塁に送球。残念ながら一瞬早く打者走者の山川穂高が駆け抜けた。内野安打。しかし、踏ん張る仲間のためにあそこまで身を投げ出せる川島慶三は素晴らしい。最後までアウトにすることを諦めない。これぞプロというプレーだった。

川島慶三、ことし37歳。この西武との3戦目こそスタメンだったが、普段はベンチスタートが多い。左殺しの異名を持ついぶし銀だが、この日は右の本田が先発の中で2番セカンドで起用された。今宮健太の状態が本調子じゃないゆえのラインナップなのかもしれないが、そんなことは関係ない。使われた時は全力で結果を出す。それが川島慶三の流儀である。そして今夜も。バレンティンが移籍初を含むホームラン2発を放ち試合を優位に進めるも、リードは2点しかない。そんな中、川島慶三は中押しのソロホームランを放った。3ボールから四球を嫌うバッテリーの意図を読み、ストライクを取りに来た球をひと振りで仕留めるあたりはさすが。3ボールからが川島慶三劇場である。

四球を連発し、はじめの4戦で3敗と元気のなかったソフトバンクだが、西武戦では2戦目に今宮健太が逆転3ラン、3戦目はバレンティン2発とようやくファンが盛り上がれる話題が出始めた。最後に捕まったがバンデンハークの2安打ピッチングも上々。他のピッチャーもバンデンハークを見習ってもっと向かっていく姿勢を見せてほしい。

そういえばバレンティン、バンデンハークともにオランダ勢。ソフトバンクといえばモイネロ、デスパイネ、グラシアルという優秀なキューバ勢がいるが、オランダパワーも今季は注目だ。個人的にはバンデンハーク対スパンジェンバークという長い名前対決はプロ野球史上最長ではないかと気になっている。しかしそれは暇な人向けのトピックであり、新聞業界的には「バレ2発」的な見出しが並びそうと予想する。だがわが黒柴スポーツ新聞的には川島慶三推し。使われる限りは全力で結果を出す。やっぱり川島慶三は最高だ。


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