黒柴スポーツ新聞

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上林誠知の「倍返し」を願って~2019年打率.194から巻き返し中

半沢直樹の新シリーズが始まる。やられたらやり返す、倍返しだ、とはおなじみのフレーズだが、今のホークスには半沢直樹的にやり返しているキーマンがいる。ライトを守る上林誠知だ。打率はまだ.250ほどだがこのオリックス戦5試合では18打数8安打、本塁打3本と結果を残している。

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「みちのくのイチロー」などと称され、仙台育英時代から注目された上林も24歳。2020年は実働6年目のシーズンだ。2018年には本塁打22本をマーク。当時はまだ柳田悠岐のメジャー移籍もあり得たため、ギータがいなくなってしまうならばその穴を埋めるのは上林しかいないだろうと個人的には思っていた。2018年の三塁打14本は上林の長打力と快速ぶりを何より物語っており、まさに打って守って走れる三拍子そろった選手。日刊スポーツには「ソフトバンク上林1、2番定着&トリプルスリー誓う」(2018.12.6)なんて記事もあるが、それは決して上林が調子に乗って発した目標とも思わなかったし、そのくらいやってくれると期待したい選手だった。

ところが2019年、上林は絶不調に陥る。上林の持ち味はリストの強さなのだが、それが消えてしまうくらい、必要以上に前でさばいてしまっているように見えた。自分のポイントまで球を呼び込めない。ピッチャーの「言いなり」というか、術中にはまり態勢を崩されていた。手の甲への死球が決定的だったが、そもそも避けきれなかったこと自体が調子の悪さを物語っていた。トリプルスリーを描いたシーズン、打率はまさかの.194だった。奪ったかに見えたレギュラーの座もかすんでしまった。

こんなもんじゃないだろう。戦犯という言葉は嫌いだが、期待の裏返しであえて言いたい。上林が本来の力を発揮していたらホークスは2019年、西武にリーグ制覇を許していなかったのではないか。上林1人のせいではもちろんないけれど、わずかに獅子の後ろ髪をとらえきれなかった一つの要因は上林の不調と私は思った。上林自身、忸怩たる思いはあっただろう。

2020年、意識の上で何か変わったのだろうか。Full-Count記事にこんなくだりがあった。
「ボールに当てにいくようなことはしないです。長所を消しちゃいけないんで」。とにかく間を抜けるような力強い打球を常に目指す。その結果として二塁打三塁打本塁打があり、そして単打もある。それをひっくるめて“安打”をたくさん打つ、そういうイメージだ。(2020.3.15 期待され続け7年目 鷹・上林、覚醒へ胸中激白「バリバリやってなきゃおかしい」 筆者は福谷佑介さん)
そう、上林の打球のイメージはライナー。野手の間を抜け、その間に上林は素早く次の塁を陥れる。また三塁打を量産した頃のような、上林らしいハツラツとしたバッティングができれば……。やられたらやり返す。上林にもぜひパ・リーグの投手たちに「倍返し」をお願いしたい。


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