黒柴スポーツ新聞

ニュース編集者が野球を中心に、心に残るシーンやプレーヤーから生きるヒントを探ります。

リベンジの機会を逃さなかった武田翔太~無期限2軍調整から1軍昇格即3度目完封

ボロクソに言われたら、結果をもってそれを封じるに限る。ソフトバンク武田翔太の今季3勝目はまさにそれだった。

ちなみに7月29日の登板前までで2勝7敗。主力としては不甲斐ない限り。特にプロ最短の2回KOを喫した7敗目直後はファンから「2軍で出直してこい」くらいのことをネットで言われていた。もともと闘志を全面に出すタイプには見えないのだが、倉野コーチいわく「戦っているように見えない」(西日本スポーツ記事より)と厳しい評価を受け、無期限2軍調整とされていたようだ。オリックスからDeNAに移籍した伊藤光の記事でも書いたが、こうした降格処分は本人のためになるのだろうか? きちんと「これができるようになったら戻ってこい」というのが指導であって、とりあえず無期限な、というのは懲罰としか思えない。
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だが勝負強いのか何なのか、武田翔太は1軍に呼び戻された。登板予定の中田賢一が胃腸炎になったから代役に立てられたのだ。

実は武田翔太、呼び戻される前のTwitterでこんなことを書いていた。

「考え方も色々あれば、受け取り方も色々あって今までにない新たな発見もあります」「力不足でファンの方には申し訳ないという気持ちしかないですが、しっかり見直して頑張って行こうと思います」

この「受け取り方もいろいろ」とは武田自身の態度のことだろうか。別にやる気がないわけじゃない。だけど、それが伝わっていない。そんなモヤモヤのように読み取れた。それをTwitterでつぶやく。ともすると指導者への批判になるのでやり方としては非常に危ない。全文読めば反省モードだからぎりセーフか。まだまだ血気盛んな若者である。

こんなことをつぶやくくらいだから、恐らく、いや、確実に燃えるものがあったに違いない。ふたを開けてみれば3安打完封。やり返した感ありありだろう。まあ、先輩のけがなどアクシデントでフォローに回った後輩がそのまま1軍に定着するのは、プロ野球によくある話。武田翔太の場合はもともと主力だからパターンとしては少し違うのだが、ミスを取り返すチャンスをものにした。これはとても大事なことだ。取り返すチャンスは平等に与えられるわけではないからだ。そういう意味では武田翔太にはツキがあった。もしかしたらこの登板機会は選手生活の一つのターニングポイントになるかもしれない。いや、ぜひともそうしてほしい。まずは勝敗を五分に戻す。それからだ。それが首脳陣やファンからの信頼回復につながる。果たして武田翔太は3勝目についてどうつぶやくだろうか。いろいろな意味で武田翔太から目が離せない。

横浜DeNAで輝け伊藤光~オリックスまたも生え抜き放出

今、気になっている選手がいる。DeNAの捕手、伊藤光だ。今月オリックスから移籍したばかりだが、オールスター明けから即スタメン。最初の2試合は連敗したが3試合目にようやく勝ちに貢献した。

伊藤光メッセージBOOK クールに熱く

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春先から伊藤光が気になっていた。攻守に精彩を欠き、2軍に降格。懲罰交代とも報じられた。もし事実であるならば、このような措置はやっても短期であるべき。反省なり改善が見られたら戻さねばならない。罰だけでは人は成長しない。伊藤光はキャッチャーとして入団し、主力へと成長した。選手会長も経験した。プロ通算10年を超え、オリックスでは生え抜きとしての地位を固めたとみていた。それがDeNAにトレードだという。昨シーズン、捕手ではなくサードも経験。出場試合数が増えたとしても、捕手としてこの世界に入っただけにうまく消化できたかは疑問だ。こうした起用や2軍降格を経ての、トレードである。別にトレードを否定しない。むしろ適材適所の観点からもっとトレードが増えてもよいと思う。戦力外にする前に、環境を変えてもうひと勝負する、させる。そんな流れを定着させてほしい。その意味では伊藤光のトレードはどんな意味なのだろう。ちなみにDeNAからオリックスに行った1人は高城。伊藤光と同じくキャッチャーだ。同一ポジションだから弱点を補強し合う意味とは違うように見えてしまう。そう、もうオリックス伊藤光を必要と見なさなかったのではないか、と。このトレード、言い出しっぺがどちらかで意味合いは異なる。オリックスならば伊藤の「放出」。DeNAなら伊藤の「獲得」。DeNAは伊藤を即スタメンで起用しており、期待の高さがうかがえる。
横浜DeNAベイスターズオフィシャルイヤーマガジン 2018 ([テキスト])

横浜DeNAベイスターズオフィシャルイヤーマガジン 2018 ([テキスト])

なお、即起用された最初のカードのヤクルト戦ではもう「伊藤光」の文字入りの応援タオルをファンが掲げていた。この辺りの機動力が、DeNAの球団経営方針なのだろう。ファンが増えるのもうなずける。育ててくれたオリックスに恩義はあるだろうが、あえて伊藤光にはDeNAで活躍することでオリックスを見返してもらいたい。定期的に生え抜きを放出し、FAで大物を獲る。この辺りがオリックスにいつまでも伝統が生まれないゆえんと見ている。オリックスからトレードされた大引啓次自由契約となった坂口智隆選手会長経験者。こんなにリーダー格が他球団に行くチームは珍しい。オリックスは社会人野球から毎年のように好投手を獲得しながら上位に定着しない理由を今一度考えたらと思ってしまう。後ろ向きの話はよそう。伊藤光はこのチャンスをものにしなければならない。さい先よく移籍後初打席ではヒットを放った。一塁を守っていたヤクルトの坂口智隆伊藤光の気持ちが日本で一番分かる男かもしれない。記念の初安打のボールを回収し、DeNAのベンチに向かって放った。伊藤光とは何か言葉を交わしただろうか。交わさなくとも心は通じあっただろうけれど。組織に生きるものならば、必要とされることを意気に感じるものだ。「かっ飛ばせ~、ヒ、カ、ル!」の声援を聞く限りファンも受け入れてくれているようだ。もちろんオリックスに行った高城のファンは悲しんだだろうけれど、高城は高城でオリックスで頑張ってもらいたい。球団には球団なりの思惑があるだろうが、選手にも人生がある。トレードはそこまで見据えて行ってもらいたい。同じ捕手というポジションではあるものの、チームメイトはがらりと変わり、相方となる投手陣の特色を把握するのも一朝一夕にいかないだろう。ある意味ぶっつけ本番的な、暗中模索的な働き方になりそうだが、早く同僚たちと打ち解け、新天地で伊藤光がその名の通り光り輝くことを願わずにはいられない。2014年シーズン最終戦ソフトバンクに敗れ涙を見せた伊藤光。果たしてハマスタ歓喜の涙を流す日は来るのだろうか。

最小の傷で乗り切る男~日本ハム宮西尚生が最多タイ273ホールド

日本ハム宮西尚生が6月30日のオリックス戦で、山口鉄也(巨人)の持つプロ野球記録の273ホールドに並んだ。ちょうどこの日は600試合登板。これは現在プロ野球39位タイでもある。上には上がいるものだ。

とはいえ新聞記事によると宮西尚生は入団した2008年から2017年シーズンまで10年連続で50試合登板。タフである。中6日だ5日だと登板間隔のある先発とは違い連日出番があるのだから疲労もたまることだろう。けがしない点も素晴らしい。球団からしてもコスパのよい選手である。何より素晴らしいと思ったのは日本ハム吉井理人投手コーチによる宮西評。「どうしたら最小の傷で乗り切れるかを考え、その作戦を実行できるのがすごい」。そう、完璧な人間はいない。ミスなく過ごせればいいがそんな時ばかりではない。だとしたらどうやって最小の傷で乗り切るかを考えたらいい。

宮西尚生はそれを考えるだけでなく、その作戦を実行できるという。ホールドのタイ記録を作ったこの日も実はいきなり盗塁を許し、得点圏に走者を背負ってしまった。が、残り二つのアウトをセンターフライとサードゴロで取った。

ピンチになればついつい取り返そうという気持ちになる。責任感が強い人ほどそうだ。しかし、あるあるなのは深追いしてますます傷口が広くなるケース。社会人的には大概、ミスは帳消しにならないことを考えると、人が作ったピンチだろうが自分で招いたピンチだろうが、いかに最小の傷で乗り切るかを考える宮西的な考えの方が合理的である。思えば、仕事のできる人ってミスをしないのではなく、リカバリーできる人なんじゃないか。アクシデントがあったら、どうしたら相手方に迷惑をかけずに済むか。あるいは迷惑を最低限にとどめるかが想像できる。そして実行できる。もちろん、実行の前には「すみません」と言える…。

まだまだ現役を続けてほしいがリスク管理できる点ではそのまま日本ハムのコーチにもなれると思う。作戦面でも監督に助言できるだろうし、育成面なら中継ぎや抑えに対して危機管理のやり方を伝授できそうだからだ。

完璧に、ではなく最小の傷で。それこそが日本最多ホールド男たるゆえん。宮西尚生の思考は何かと面倒な仕事が多いアラフォー世代の参考になりそうだ。

真実は結果の中に~西野ジャパンはオレ竜の轍を踏むな

サッカーW杯の日本代表が、ポーランド戦での時間稼ぎ戦法で批判されている。チームというよりは西野朗監督が、かもしれないが。たった2カ月でチーム再建を託され、1次リーグ突破を果たした途端、勝ち上がり方を非難される。気の毒に思えてならない。

試合後すぐ西野監督は「本意ではない」と言っている。成長するために必要なプロセスなのだと、むしろ自らを納得させるようにも聞こえた。元々ズルなんてしない人なのだと、もう少し理解してあげられないものか。J1最多270勝の監督であり、アトランタ五輪指揮の経験者。結果を残すことの必要性を熟知しているからこその戦法に思える。
攻め切る―指揮官西野朗の覚悟

攻め切る―指揮官西野朗の覚悟

ともかく、選手も監督も「勝ちゃいいんだろ」的な態度じゃないのだから、その人らがなぜそうしたのか、思いをはせねばならない。一般社会でも、行動の背景を想像せず一方的に断罪する人、いるよなぁ…。例えばポーランドが無理に日本からボールを奪いにいかなかった理由を考えてみよう。ポーランドは日本戦を前に予選リーグ敗退が決まっていた。帰国したら結果を問われるに決まっている。だからなにがなんでも1勝しないといけない。日本が勝手に時間稼ぎしてるのだから仕方がない。実際、ポーランドのエース、レバンドフスキは「僕らにはどうしようもない」旨の発言をしている。そう、人にはそれぞれ立場があるのだ。ここからサッカーで言う「逆サイドに展開する」ばりに話を野球に振ってみる。2007年、落合博満監督が史上初の日本シリーズ完全試合の夢を断ち切り、9回に山井大介から岩瀬仁紀に継投したことがあった。正直に言うと山井の完全試合へのチャレンジを見てみたかった。何せ公式戦での完全試合は1994年の槙原寛己以来、達成されていない。それが日本シリーズで目前なのだ。そこを継投できるのはオレ流・落合博満しかいない。
完全試合―15人の試合と人生

完全試合―15人の試合と人生

落合は「日本一になるために必要だった」と言い切ればよかったのだが、どうも山井に原因があるかのような結論に至っている。落合クラスであれば「中日が日本一になったのは何年前だと思ってるんですか」(前回は2007年から53年も前の1954年)と、勝ちきる重要性を説けばよかった。落合ならばそれができた。だから山井が云々の話が出た時はがっかりした。だから西野監督には「あれがその時の最善策だった」と言い続けてほしい。
采配

采配

もう一つ書いておきたいのは長谷部誠の存在感。一歩間違えばチームが浮き足立つ状況で投入されたがしっかり「現状維持」と「イエローカードをもらってはいけない」の意思をしっかりチームに伝達。それができる長谷部誠がベンチスタートだったのは幸いだった。スポーツの世界でもビジネスでも、チームを制御できるのは素晴らしい人材である。本人に希望があるかは知らないが、いつか長谷部がどこかのチームで監督をしている姿が見たい。そんな長谷部誠が言った「真実は結果の中にしかない」とは、結果がすべての世界にいる人の言葉だからこそ重みがある。日本はグループリーグ突破を決め、それによって日本の多くの人がまだW杯を楽しめることになった。決勝トーナメントでは7月3日にベルギーと 戦う。そこで負けたとしても今回の西野ジャパンの頑張りが無駄になるわけではないのだが、少なくとも「善戦」という結果を残すことで、西野ジャパンの時間稼ぎは正解なのだったという真実が見たい。

巨人・和田恋5年目の初安打紙面に心がホカホカ

巨人5年目の和田恋(高知高校出身)が6月23日のヤクルト戦でプロ初安打を放った。当日にネットの記事をチェック済みではあったが、果たして地元紙の高知新聞がどのように扱うのか、興味津々であった。そして…

朝の黒柴社長(久々の登場)の散歩後、高知新聞朝刊を開く。いよいよスポーツ面。

バーン!
えっ、
おっ、
やったね!

さすが地元紙である。オトナの事情で紙面の画像は載せないので、気になる方は自力で確保願います。とにかくスポーツ面トップに和田恋のデカイ見出しと写真が鎮座していたのだった。

やはり地元紙はこれでなきゃ。デイリーが阪神タイガースをもり立てるように、地元紙は地域を応援せねば。きょうは和田恋の写真と記事をチェックできた時点で早々と本日分の新聞代の元が取れてしまった。

5年目で初スタメン。独立リーグとの交流戦で高知に来たことはあっても、それは一軍戦ではない。やはり一軍に帯同できていることに価値がある。最近のプロ野球は見切りが早い。しかも巨人。和田恋も今年が勝負の年かもしれない。巨人では同じように高卒の岡本和真が今年大ブレイクして四番を張っている。まだ初安打の和田恋と岡本和真を比較してはいけないのだろうが、和田恋も続いてほしい。ちなみに野球好きとしてはもう一つ、元が取れる記事を見つけた。高知出身の門田隆将氏の新作、敗れても 敗れても ――東大野球部「百年」の奮戦 の書評が読書面に載っているのだ。その中にはOBの岡村甫・元高知工科大学長も登場する。岡村氏はあの東大で17勝もしている。この数字、例えるならば決して強くはなかったヤクルトで名球会寸前の191勝を挙げた松岡弘くらいすごいと思う(分かる人だけ分かればいいです)。東大といえば、今の野球部監督は土佐高校出身の浜田一志氏が務めている。それでなくとも読んでみたいが、過去に読んだ門田隆将氏の「甲子園への遺言―伝説の打撃コーチ高畠導宏の生涯」も面白かったし、「神宮の奇跡」も面白かっただけに、東大野球部の本もいずれ楽しませてもらおうと思う。
神宮の奇跡 (講談社文庫)

神宮の奇跡 (講談社文庫)

まあ、こんな具合に何だかんだで毎日、新聞代の元が取れている。確かにネットの情報で事足りる人は多かろうが、地元紙に勤めるもののはしくれとしては、自分と同じように毎日、地元の新聞を楽しんでいただけるよう、やれることをやっていこうと思う。

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選択が正しかったかは自分次第~佐賀北がばい旋風から11年

広島の野村祐輔が久々の一軍マウンドに立っている。舞台は甲子園。きょう6月23日までに2勝。他球団の主力は8勝~10勝しているから、野村はだいぶ水をあけられている。

野村祐輔はあす6月24日が誕生日で29歳になる。野村祐輔は18歳の夏、甲子園の決勝で躍動しながらも一発のホームランに打ち砕かれた。あの有名な佐賀北の副島浩史による満塁ホームランだ。

佐賀北の夏 (集英社文庫)

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その副島浩史の記事を見つけた。西日本新聞の「新がばい旋風!甲子園V佐賀北OB指導者3人が火花 満弾男・副島は今…/夏の高校野球 佐賀大会」だ。懐かしみながら、楽しませてもらった。

書いておいてなんだが、野村祐輔にしろ副島浩史にしろ、何かとあのホームランに絡められてしまう。それはアスリートの宿命でもあるのだが、特に高校野球ファンは恐ろしいほどの記憶力なのでもはやあきらめてもらうしかない。

野村祐輔メッセージBOOK -未来を描く-

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しかし野村祐輔明治大学へと進学してカープに入り、主力へと成長したのであのホームランはきちんと糧にできたはず。となると俄然副島浩史が気になる。

副島浩史は佐賀北ではなく、同じ佐賀県内の唐津工の副部長になっていた。大学卒業後に佐賀銀行に就職。おそらく佐賀県内では有名人だから、いや、それでなくともまじめにコツコツ働けば、それなりに地元で幸せをつかめたに違いない。

しかし副島浩史は教員試験にチャレンジした。今は保健体育の先生だという。詳しくは前述の記事を読んでいただきたいが、新たな生き方を高校野球の現場で探すことにした。

言うは易く行うは難し。試験は一発でパスした訳でもない。その時の選択が正しかったかなんて、すぐには分からない。正解にできるかどうかは自分次第だし、結果を残すしかない。

果たして副島浩史の「2本目の逆転満塁ホームラン」は出るのだろうか。それは育てた唐津工ナインと甲子園に出場することなのか。別に地元企業にいたままでも劣勢な訳ではないから「逆転」ホームランでもないのだが、ぜひ教え子らと夢を叶えてほしいなあと思う。それはきっと「がばい旋風」の続きなのだ。あれから11年。副島浩史も、野村祐輔も、それぞれの現場で戦っている。

配置転換の意味が分かる人、分からない人~柳田悠岐がコンバート

ソフトバンク柳田悠岐がライトにコンバートされた。代わりに上林誠知がセンターに回った。ずっとかは分からないが、柳田悠岐は脚を傷めているため、その回復具合によるのだろう。
[asin:B07BJLZ956:detail]
ソフトバンクは3位に甘んじているが、主力の離脱、不調が続いているのでむしろ健闘しているように見える。頼りは柳田悠岐の打力なのだから、休ませたくてもそれができない。ちょっとでも負担を減らす試みがこのコンバートらしい。

柳田悠岐フォトブック byギータ女子マネ部

柳田悠岐フォトブック byギータ女子マネ部

黒柴スポーツ新聞編集局長は草野球で外野を守ったことがあるのだが、ライトやレフトは意識を自分の右側、あるいは左側に集中できる。しかしセンターは左右どちらに打球が飛んでくるか分からない。捕球するにも左右両方に応じた筋肉の動かし方なのだから、疲れたりけがするリスクも高そうだ。二刀流まではいかないが、いわゆるデキる人のつくポジションである。そんな人が、ちょっと楽なポジションに移れることになった。さあ、どう考えるか。普段頑張ってるんだからちょっと休んでもいいかなと思うのか、休めた分をどこかに振り替えるのか…このコンバートを取り上げた西日本スポーツの記事によると、柳田悠岐は「そういう使われ方をするってことは打たないといけない」と受け止めている。そう、柳田悠岐はきちんとコンバートの趣旨を理解している。それはチームから説明があったのか、主力としての自覚からなのか。自覚だとしたらカッコいい。頼れる内川聖一はけがで離脱。2桁勝利が見込める千賀滉大、東浜巨武田翔太はそろって不調あるいはコンディション不良。おれが頑張らねばと思わないはずがない。
内川家。

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  • 発売日: 2014/05/09
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ただし柳田悠岐はいつも全力プレーなので見ていてヒヤヒヤする。実際にけがしてそれがペナントレースに影響したことがある。柳田悠岐はそれだけの選手なのだ。デキる人は普段頼りになるが離脱するとものすごく痛い。穴がふさがらないのである。それでも今回のコンバートで気付いたのは、それができる若手=上林誠知が出てきたこと。ここは強調しておきたい。ソフトバンクは選手の平均年俸が高いとか巨大戦力だとか言われるが、きちんと自前で育てている。極端な例かもしれないが千賀滉大も甲斐拓也も石川柊太も育成出身だし、上林はドラフト。着々と戦力になっている。今回のコンバートは上林が着実に成長していることの証左でもある。デキる先輩のフォローができるようになると、後輩としても誇らしいものだ。これ以上柳田悠岐頼みになってもいけないが、一つでも多く勝たないと西武に独走を許してしまう。救援陣が磐石でない分、打線の奮起を求めたいが、そう簡単にはいかないだろう。ソフトバンクファンには我慢の時期が続きそうだ。

ポジションを守ることはなぜ大切なのか~西武多和田が痛恨の逆転被弾

6月9日の対巨人戦で、西武の多和田真三郎が坂本勇人に逆転3ランを喫し、まさに1球に泣いた。たった1球で結果が変わる。これぞ野球の醍醐味であり怖さでもある。

多和田は直前、代打田中俊太に四球を出した。その瞬間、膝に手を付いた。いったん切れた集中力、気力はすぐには戻らない。ましてや次打者は坂本勇人。ギアを上げねば大事故につながる可能性が高い。ド素人でも交代を思い付くが、辻発彦監督は動かず多和田続投。シュート回転のストレートを坂本勇人が見事にとらえると、打球はオレンジ色のスタンドに吸い込まれていった。ブルペン陣に不安があるだけに、代えきれなかったと思う」。この日のNHK解説、伊東勤はそう分析した。前日西武は巨人に競り勝ったが、終盤に4失点。ワグナーも、増田達至にも不安があったということだろう。そう、ポジションをまっとうできないということは同僚に影響する。多和田はこの試合までに7勝。菊池雄星と共にチームを引っ張っている。この日8勝目を挙げていれば今シーズンの2ケタ勝利はぐんと近づいていた。苦しい試合終盤を乗り越えてこそ投手は一人前になるとの論はあるが、菊池雄星がメジャーに行きそうなことを考えれば、多和田を柱に据えていかねばならない。そのためには結果を残させて、自信を付けることも必要だ。それができなかった。前日に救援陣がもたついたことで多和田を引っ張り、逆転負けという最悪の結果を招いた。記録上は多和田が負け投手なのだが、責めを負うべきは救援陣なのだ。多和田ら先発陣はリリーフ陣に助けてもらうことはあるのだからいちいち責めたりはしないだろうけれど。信頼感を失うと起用されなくなる。そのしわ寄せは同僚にいく。同僚が踏ん張れなかったら組織はダメージを受ける。野球がチームスポーツであることを再認識したと同時に、与えられたポジションを守ることがなぜ大切なのかがはっきり分かった。そんな後ろ向きの言い方はよそう。ポジションを守りきれたら同僚を守ることになるし、組織への貢献になるのだ。守護神がいるから逆算して中継ぎを投入でき、中継ぎがしっかりしているからこそ計算して先発を降板させることができる。計算ができる組織は強い。その一員であることはそこそこのスキルがあると思っていい。まあ、そんな台本通りの試合ばかりではプロ野球ファンは面白がれないのだが。多和田は多和田で、エースになるにはあのような局面を乗り越えていかねばならない。エースとは負けない人なのだから。オールスターまでに7勝しているだけでも立派。2ケタで満足せず、15勝以上を目指してほしい。

ポリバレントより職務分掌~西野ジャパンは大丈夫か?

ポリバレントという耳慣れない言葉に触れた。サッカーのワールドカップに向けたガーナ戦に臨む日本代表選出で、若手の有望株、中島翔哉が落選したのだが、理由が「ポリバレント性の低さ」だったという。

ポリバレントをサクッと検索してみたら、複数のポジションをこなせることらしく、以前オシム氏が使った言葉という。いわゆるユーティリティープレーヤーを意味する。中島翔哉への同情の意味もありつつ返す刀で西野朗監督の「無策」を象徴していると指摘する声がある。誰にどう動いてほしいか分かっていないから、いろいろなポジションをこなせる人を選んでいるのでは?というツッコミだ。確かに、何が求められているのか分からないのと、おまえにはこれを頼んだぞ!と言われるのでは、プレーヤーもモチベーションが違ってくる。仮にあやふやな指示でも結果が出た場合は、そのユーティリティープレーヤーが有能だったということだ。できる人は言われなくても、自分に何が求められているのかを把握できる。言われなくてもやっちゃうから、ますます評価は高まっていく。

まあ選手をじっくり選べない西野朗監督だって辛い。といってもまったくの第三者ではないから、サッカー通は見逃してはくれまいが。ただでさえ時間がない中で結果を出さねばならない西野監督だって必死である。無難に行こうとするのは当然だ。

が、時間がないなら、いや、ないからこそ、おまえにはこれを頼む、おまえにはこれを頼む、ということが必要に思う。あれもできる、これもできる人は大コケもしないが大爆発もない。それなりに終わる可能性は高い。

だいたい、目標が達成されない組織は職務分掌が明確ではない。責任のラインがあやふやで、誰も責任を取らない。誰かがやるだろう、で終わってしまう危険がある。できるマネージャーのいる部署はきちんとした職務分掌があるはずだ。「そのうちなんとかなるだろう」が許されるのは植木等だけで、日本代表はもがいている間に予選敗退…なんてことにならないか心配だ。
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ユーティリティープレーヤー自体を否定するわけではない。あくまでも、ユーティリティープレーヤーは目標に対して小回りがきく存在だということ。特にサッカーはポジションごとにきちんと役割があるのだから、長丁場のシーズンではなく短期決戦ならなおさら、役割分担が重要に思うのだがいかがだろうか。

経験する価値を知っている大谷翔平

「いくら払っても経験する価値がある」。何かと思えば、大谷翔平が2011年サイヤング賞投手のバーランダーと対戦後にそう話していた。そう、いくら払ってもやっておきたいことはある。

不可能を可能にする  大谷翔平120の思考

不可能を可能にする 大谷翔平120の思考

もちろん、片っ端からやっていてはお金が続かない。しかし人は、どうしてもやりたいことはどんな手を使ってもやる。だから、忙しいとか、お金がないとか、時間がないというのは、結局言い訳なのだ。

もちろん、遠距離恋愛みたいに距離的にも時間的にも制約がある場合はある。しかしやはりそこはどうにかしてしまうものだと思う。

先日、高知市の牧野植物園に行ってきた。草花を観賞するのはもちろん、日本が誇る植物学者、牧野富太郎博士の生涯について学ぶこともできる施設なのだが、そこに博士のある考えが紹介されていた。ざっくり言えば、学ぶ時はケチケチしてはいけないよ、と。書物も必要なら買えとか、そういうことらしい。

MAKINO―牧野富太郎生誕150年記念出版

MAKINO―牧野富太郎生誕150年記念出版

付随して、教えを請うには年齢の上下は関係ないともあった。いわく、学ぶ心さえあれば、するべき投資はするべきだし、年下に教わることも恥ずかしくないということだ。求道者はもろもろ合理的である。

大谷翔平はもう少し日本で過ごしてからメジャーに挑戦すれば、もっと高額の契約が見込めたがそうしなかった。いま行くことに価値があると踏んだのだ。このように考えられることは、大谷翔平の大きな才能と言える。自分を客観視できる点は素晴らしいとしか言いようがない。

大谷翔平 挑戦

大谷翔平 挑戦

野球と植物学はまったくリンクしないのだが、大谷翔平は道を極めた牧野富太郎博士の考えをまさに実践しているように見える。確かに、二人のようなけた違いの投資はなかなかできない。しかし、例えばこれは読みたい本だ!とビビビと来た時はすぐ買うとか借りるとか、また、この人に会いたい、話を聞いてみたいとか思ったら時間を取ってほしいと伝える。そのくらいはきっとできる。

道を極める人と凡人の差は、実は、すぐ動くか動かないかというちょっとした違いなのだが、多くの人はその運命の交差点を気付かずに通り過ぎている。気になったなら、とりあえず信じた方向に行ってみよう。

道徳「星野君の二塁打」の主人公は星野君じゃない

道徳教材「星野君の二塁打」について日テレの「シューイチ」で取り上げていた。野球好きとしては、面白そうな題材だなとマークしていたのでそのまま見続けた。

新版 星野くんの二塁打 (子ども図書館)

新版 星野くんの二塁打 (子ども図書館)

どうしてもテレビの1コーナーだからあらすじもぎゅっと圧縮せざるを得なかっただろう。とりあえず、同点の場面で一塁ランナーを送る作戦を監督が指示するも、打てる予感がした星野君はバットを振り、ヒットになってチャンスは拡大。結果、チームは勝つのだが…という流れと分かった。

尾木ママの解説では、規則の遵守がテーマではあるものの、いろんな考えがあっていい。なのに教科になると「答え」があるわけだからそこに子どもたちが「寄せていく」懸念があるという。確かに。

コーナー内でストーリーの感想を求められた中丸雄一は「小学生が自己判断でやったなら大したもん」と言っていた。これも同感。しかしネットで原作を探したらこれは1947年の作品がベースで、中学野球と表記されるも「甲子園」という単語が出てくることからいわゆる旧制中学の話ということになる。つまり生徒らは現在の高校生世代。小学生の対応と高校生の対応とではとらえ方が違ってくる。

ただし高校野球こそ監督は絶対。結局、ルールの尊重を求める題材になるのだ。

こう書くと原作は、1947年という戦後間もない混乱期ということもありまだまだ古い価値観だろと一刀両断したくなるが、意外と内容は深い。星野の一打が鍵となり無事甲子園切符を獲得するも、後日監督は星野の出場禁止を告げる。チームとして決めた作戦を独断で変えたからだ。

星野の一打はあくまでも結果論で、強攻策が裏目に出た可能性もある。負けたら星野は戦犯だった。学生野球は勝ち負けだけじゃないから、星野の行動は許されない。自己犠牲の心がない人は社会に出ても貢献できない。監督はそう説明し、星野もそれを受け入れる。

特筆すべきは監督が、星野を外すことで甲子園1回戦負けもやむなしと語っている点だ。ここは指導者として割りきっているなと感心してしまった。ちなみに星野は投手でもあり、しかも甲子園行きの試合で殊勲打を放っている。負けたら「なぜ星野を使わなかった?」と非難されるのは避けられない。それでも、敢えて。目先の1勝よりチームプレーを心掛けよと諭す監督は決してただ古いだけの人には思えない。

まあ、学生野球に教育的要素をどれだけ持ち込むのかは人それぞれ。だからいまだに明徳義塾による松井秀喜5敬遠は消化されていない。あれこそ見方によっては究極のチームプレーとも思うのだが。

甲子園が割れた日―松井秀喜5連続敬遠の真実 (新潮文庫)

甲子園が割れた日―松井秀喜5連続敬遠の真実 (新潮文庫)

野球界で星野と言えば星野仙一が圧倒的。奇しくも星野仙一は原作と同じ1947年生まれ。作中の星野を「投手」と設定した作者、吉田甲子太郎は1957年没だから投手・星野仙一の活躍を見ることはなかったわけでまさに偶然だ。もし「星野君の二塁打」に続編があり、星野君が監督になっていたら、一打逆転のチャンスに犠牲バントをせず独断で強攻した選手をどう評価しただろうか。監督の気持ちが痛いほど分かっただろうか。まさか鉄拳…これじゃあ道徳の教科書には載らないか。

結局、「星野君の二塁打」は星野君ベースで語るより監督ベースで噛みしめる方が味わいがあると思うのだがいかがだろうか(道徳の時間ではありませんので答えはありません)。

なお、この二塁打を打った選手が「柳田君」だったら多分問題にはならない。そう、打つ人にもよる、という解釈も書き添えておく。

衣笠祥雄のファインプレー~江夏の21球に見る立場の違い

鉄人・衣笠祥雄が亡くなってから、そのストイックな面や相手を追い詰めない態度、フルスイングの精神が称えられている。

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ニッポンハムのカードより。発行年不詳。
そこは一定支持しつつ、どこか違和感もあった。そんなに完璧な人はいないんじゃないかと。しかし、4月30日のNHK特集再放送を見てホッとした。スランプもあったし、審判にもの申したりもしていたからだ。

そして、どこかに談話が出ていたら読みたかったのだが、連続出場記録が途絶えかねなかった死球を与えた西本聖は訃報をどう受け止めたのだろうか。あの夜、衣笠祥雄は痛みで眠れなかったそうだが、西本聖こそ眠れなかったに違いない。

そして、偉いなと思ったのは翌日登板した江川卓。あの状況で三球三振にできるレベルの高さ。さまざまなプレッシャーから腕が縮こまりそうなものだが、VTRを見る限り美しいストレートだった。状況からして変化球はありえない。あの辺りの呼吸こそプロの芸当である。

さらに何かとクローズアップされるのが江夏の21球で、ブルペンを気にする江夏をなだめるシーン。古葉監督としては万一に備えてピッチャーを用意するのは管理職として当然なのだが、江夏は受け入れられなかった。

これについては生前、衣笠祥雄が語ってくれていた。どちらも正しいのだと。個人的にはこれこそが衣笠祥雄のファインプレーと思っている。あそこで怒らない人には守護神は務まらないし、情に流されてただ続投させるのは指揮官としては二流、三流。むしろあの局面でピッチャーに肩を作らせられる古葉監督は一流と思う。だってマウンドには江夏がいて、今なお大ピンチなのだ。入り込むなという方が無理。やはりプレーヤータイプは管理職に向かない。

そういう意味では衣笠祥雄は監督としてはいかがだったかな、とは思う。きっと選手目線が強かったのでは。奇しくも同じく鉄人と称される金本知憲監督と同じような展開になっていたのでは、というのが個人的な想像だ。やはり総合的に見たら山本浩二監督だったんだろうなと思う。もちろん一度くらいは衣笠監督を見てみたかったのだが。

とにかく、鉄人なのに早すぎる死、というよりはあれだけ体を酷使したのだから長寿でなくても全く驚きはない。また一人、骨太の野球人がこの世を去った。特に親しかった二人を相次いで失った山本浩二が少し心配である。傷心の彼を癒すのはカープ初の3連覇しかない。

不適切やじには厳罰を~ヤジ将軍は腕の見せ所

カープおよびカープファンに対し、原爆落ちろ云々のヤジが飛ばされた。言語道断である。

発言の主は「酒が入っていた」と釈明しているが、ご丁寧に発言の際の映像をネット上にアップしていた。酔っていたのは酒に、ではなく自らの品のないヤジに、ではないのか。

野球においてはヤジも観戦要素の一つ。今日(こんにち)ほど応援が統制されていない時代は場内アナウンスくらいしかなく、ヤジがよく聞こえたという。この辺りは永井良和氏と橋爪紳也氏の著書「南海ホークスがあったころ 野球ファンとパ・リーグの文化史」を読んでおさらいした。

本によれば鶴岡一人監督も、野村克也もうんざりさせられていた。昔は卑猥な言葉を発したり、選手の女性関係を語ったりもしていたそうだ。まあ女性関係については事実ならかばいようはないのだが。

気の毒なのは南海の阪田隆選手。坂田利夫と名字の読みが同じなのが災いし「アホの阪田」とヤジられたそうだ。(出典は南海ホークスがあったころ)

今回のヤジを報じる記事には「不適切やじ」という見出しが付いているが、じゃあ適切なヤジはあるのか。それは、思わず笑っちゃう、かつ、風刺がきいているものと思う。怒りに任せて乱暴な物言いにはなっては、場がしらけるだけだ。

差別的な言動についてはサッカー界の方が厳しい。チェックされたらスタジアムに入れなくなることもあるし、裁判所から観戦禁止処分が出た例もある。

プロ野球でも、ヤジがよほど悪質な場合は同様の措置をとってもよいと思う。スタジアムにはたくさんの少年少女も来る。やはりお手本にならないといけない。そう、今こそヤジ将軍の腕の見せ所なのだ。緩慢なプレーにはスパイシーなツッコミを入れ、素晴らしいプレーには賛辞を惜しまない。メリハリをきかせて一緒にプロ野球を支えましょう。

啐啄同時でないと部下はツラい~ちぐはぐな金本監督と藤浪晋太郎

ポテンシャルの高い部下が伸びないのは、上司にも原因がある。阪神金本知憲監督と藤浪晋太郎の組み合わせはその典型に思える。

開幕2戦目に藤浪晋太郎が起用されたのを知り、ああ、よかったなと思った。2017年シーズンは3勝に終わったから2018年は復活しないといけない。入団以来3年連続2桁勝利の輝きを取り戻さねばならない。藤浪晋太郎復活は阪神首脳陣も全員願っているだろう。

ならば、と言いたい。阪神ファンはすでに議論済みであろうが、4-2とリードしていた5回を終えて交代すべきではなかったか。日本テレビの中継で解説者の桑田真澄も「ボクなら代えます」と断言していた。いわく「シーズン初登板で勝つという結果が残ればいい」。

しかし金本知憲は違った。「今シーズンの軸」と期待するからこそ続投させた。だから代え時に藤浪晋太郎に打席が回ってきたがそのままバッターボックスに送った。梅野にバントさせたのなら藤浪晋太郎に代打→追加点、というシナリオは素人でも思い付くのだが。勝つための最善策を選ぶのが指揮官のはずだが?

覚悟のすすめ (角川oneテーマ21 A 87)

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そう、金本知憲監督が二つ上の結果を求めてしまっているのだ。二段階一気に伸びる逸材は確かにいる。しかし、藤浪晋太郎の成績を振り返ってほしい。勝利数は10→11→14→7→3と、伸びて、下がっているのだ。いま何が必要かと言えば結果だ。

名選手が名監督になるとは限らない。いや、よくいる。プレーヤー時代の感覚が抜けきれずマネージャーに徹することができない上司が。金本知憲のストイックな姿勢は、残した実績から誰も否定しない。が、部下が同じようにできるわけではない。

人生賭けて―苦しみの後には必ず成長があった

人生賭けて―苦しみの後には必ず成長があった

2018年シーズンは打線が充実しており、これは金本知憲監督が就任以来、我慢して若手にチャンスを与えてきた賜物だ。打つ方には結果が出ているのだが、喝を入れて伸びる人とそうでない人はいるのだ。

ちなみに桑田真澄は言っていた。藤浪晋太郎に足りないのは走り込みではなく、技術力だと。大阪桐蔭時代から素晴らしいパフォーマンスを披露してきたものの、やはり狙ったところに投げきれないとプロ野球では長く生き残れない。藤浪晋太郎の今後を考えるなら、いい感覚のまま降板させた方がいいと思うのだが、甘やかせすぎだろうか?

殻を破れないとエースになれない。そんな声があるのは百も承知。しかし部下のコンディションを理解せず期待だけするのは無責任だ。

啐啄同時という言葉がある。禅の教えらしいが、啐はひながかえる際に卵の殻を内側からつつくこと、啄とは親鳥が外から殻をつついてやることを意味する。弟子がまさに悟りを開こうというタイミングで師匠が教えを与えることで悟りの境地に行ける。啐啄同時とか啐啄の機という言葉で表現される。いかがだろうか。筆者には待ちきれない金本知憲監督が外から卵の殻をハンマーで叩いているように見えるのだが。

高校時代、双璧だった大谷翔平は海をわたりメジャーリーグ開幕戦スタメンで初ヒット。藤浪晋太郎も潜在能力は折り紙つきだ。きっかけさえあればまだまだ上を目指せるし、そうなってほしい。今日から新年度。上司が栗山英樹タイプになるか金本知憲タイプになるかで部下の人生は大きく変わる。


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野球は怖い。だけど面白い~センバツ9回ノーヒットノーランでも彦根東・増居敗れる

ノーヒットノーランです、とアナウンサーが言った途端に記録が途切れるのは野球あるある。そして途切れたら、負けるというのもよくある話。第90回選抜高校野球彦根東、増居翔太投手もそうなってしまった。


近年は打撃力の向上が目覚ましく、打ち合いの試合も珍しくない。そんな中、増居翔太投手と、対戦相手の花巻東・伊藤翼投手の投げ合いは久々に投手戦の面白さを思い出させてくれた。

試合開始から見ていなかったのでしばらく気付かなかったが、伊藤翼投手は1回ノーアウトからのリリーフで10回まで投げたから、実質完投、完封だ。被安打6ではあるが、野球の勝ち負けは安打数ではない。

それはそのまま増居翔太投手にも当てはまる。10回に初ヒットを許し、その後ヒットや四球で満塁となったが最後は犠牲フライ。わずか被安打2で敗れた。これが野球の怖さであり面白さでもある。

特にこの第90回選抜高校野球大会は劇的。3本のサヨナラホームランがあり、うち2本は逆転サヨナラ3点ホームラン(明徳義塾の谷合と日本航空石川の原田)。30日は1日に二度もサヨナラホームラン(前述の日本航空石川の原田と、創成館の松山)。1大会に3本のサヨナラホームランは史上初、1日に2本のサヨナラホームランも史上初だ。

明徳義塾に至っては初戦で谷合が9回ツーアウトから逆転サヨナラホームランを放ち、次の3回戦では逆に日本航空石川に逆転サヨナラホームランを食らう、しかも谷合の頭越しにというドラマ。野球の神様、甲子園の脚本家は天才だ。

明徳しかり彦根東しかりだが、やはりチャンスにきっちり得点しておくことが大事。結果がまったく違ってくる。そして逆の立場ならこうも言える。「次の1本」さえ打たれなければいいのだ、と。たとえノーアウト満塁でも3人続けてアウトにできたらいいのだ。

花巻東の伊藤投手も9回にツーアウト1、3塁とピンチになったがファウルフライでピンチを脱したし、8回もツーアウトからセンター前に落ちようかという当たりを打たれたが、菅野がダイビングキャッチ。花巻東がよくしのいだとも言えるのだ。その点、増居投手の最後の球は高くなり、犠牲フライにつながってしまった。たらればを言うときりがないが、あれだけ低めに制球できていても、一度でもミスをしたら命取りになる。だからこそ、野球から目が離せない。面白い。やっている方は大変だろうけど。

センバツの裏でプロ野球が開幕した。球児たちも懸命だが、プロ野球選手も人生をかけている。その一球でスターになり、その一球で2軍に落ち、下手したら引退することも…野球は恐ろしい。そして、だからこそ面白い。2018年も野球を存分に楽しみましょう。

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