黒柴スポーツ新聞

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セパ同日優勝の1958年、日本シリーズ第7戦紙面が面白い~西日本スポーツ復刻版を堪能

新聞業界のセミナーに参加してきた。新聞のいいところもあるんだがなあ、生かしきれてないなとモヤモヤ……気分転換にスポーツニュースでも見るか、とニュースウォッチ9のスポーツコーナーをチェックした。するとセ・パ両リーグの「同日優勝」の可能性に言及していた。1958年の巨人と西鉄以来だという。


新聞制作者にとって優勝紙面は一大イベントだ。特に筆者は野球狂だから担当させてもらえるなら鼻血が出そうな勤務だが、ナイターともなれば実際は時間的にタイト。鼻血ブーというよりはわき汗びっしりの展開なのだ。ともにマジック1で迎えたきょう9月16日、ソフトバンクも広島も阪神戦もデーゲームなのでだいぶ楽だ。


仮に同日優勝なら恐らく各紙見開きの展開。両面カラーを確保できるのか、片面はモノクロにせざるをえないのか。だとしたら広島とソフトバンク、どちらをカラーにするのか。気になる話だ。筆者は単にソフトバンクファンゆえ無条件で(しかもセ・リーグでは30年間巨人ファンだから)こちらをカラーにしてもらいたい。カープは去年も優勝しているし、逆にソフトバンクは2年ぶりだからこちらに花を持たせてもらいたいものだ。


同日優勝でも西日本新聞はもちろんソフトバンク中心、中国新聞ならもちろん広島中心なのは間違いない。気になるのはスポーツ紙だがまあ広島連覇が多く扱われるのではと見ている。


このうちデイリーは大阪並びに全国的には阪神目線で広島連覇を報じ、広島近辺ではカープ寄りの展開だろう。デイリーみたいに分かりやすい立ち位置というのはエッジが利いている。コンテンツ乱立のネット時代にも耐えうる立ち位置である。


じゃあ黒柴スポーツ新聞はというと前回同日優勝だった1958年にフォーカスする。実は宝物があるのだ。1958(昭和33)年10月22日付の西日本スポーツ復刻版。西日本新聞が出した「鉄腕伝説 稲尾和久 西鉄ライオンズと昭和」の付録である。

鉄腕伝説 稲尾和久―西鉄ライオンズと昭和

鉄腕伝説 稲尾和久―西鉄ライオンズと昭和

復刻版というか実際はコピーなのだが、本物の新聞と同じ大きさだ。前日の10月21日は巨人と西鉄日本シリーズ第7戦。そう、なぜ10月22日付紙面が復刻されたかというと稲尾和久が燦然と輝いた「3連敗4連勝」の歴史的なシリーズだったからだ。稲尾和久は7試合中6試合登板、サヨナラホームランまで打つ活躍で大逆転優勝に貢献。あの「神様、仏様、稲尾様」の名文句が作られた。この本は稲尾和久追悼で作られたのだった。

神様、仏様、稲尾様―私の履歴書 (日経ビジネス人文庫)

神様、仏様、稲尾様―私の履歴書 (日経ビジネス人文庫)

10月22日付の西日本スポーツは6ページ。復刻版はうち裏表一枚だ。1面題字下の一番でかい見出しが「西鉄三連敗 奇跡の逆転優勝」。何と赤い「カラー見出し」である。1958年当時としては大胆な手法だろうし、いかにビッグニュースだったかがうかがい知れる。


ものすごく細かい所に気がついた。1958年の両リーグ順位表(紙面上では勝敗表)が面白い。パ・リーグは10月8日現在 全日程終了となっているがセ・リーグは10月19日現在 第28節と書いてあり、巨人と広島の残り試合数が共に「2」になっている。1958年の巨人成績は77勝。この勝敗表では75勝だからあと2つ白星を積んだようだ。裏をとりきれていないが、おそらくシリーズに公式戦終了が間に合わず、後で2試合行ったようだ。(このあたりご存じの方はぜひ教えてください)


もうひとつ、面白かったのが新聞の値段。月決め200円。1部は何と7円! 今のスポーツ紙のおよそ20分の1だ。ちなみに1955年の稲尾和久の契約金は50万円、月給3万5千円。初年度はうち2万円を実家に仕送りしていた。親孝行である。ちなみに同期入団の畑隆幸の契約金は400万円だった。稲尾和久は努力して畑を凌駕する。そう、今だって入学時や入社時の評価がすべてではない。努力して化ければいいだけだ。

見出しでもうひとつ気がついた。白黒写真に「球史空前の偉業成る」と白い明朝体の見出しが焼き込まれている。繰り返すが1958年である。素晴らしい。スポーツ紙と一般紙の違いはあれど、一般紙でも1958年に負けているようではいけない。見せ方も日々進化していかないと読者は飽きてしまう。


読み物は稲尾和久にフォーカスしたもの、三原脩監督の手記(もしくはインタビュー)、第7戦の振り返り、試合終了直前から表彰式までの描写、表彰選手一覧、シリーズ戦績と記録性が高い構成。野球マニアにはたまらない。

魔術師〈上〉―三原脩と西鉄ライオンズ (小学館文庫)

魔術師〈上〉―三原脩と西鉄ライオンズ (小学館文庫)

なんでもかんでも古い紙面が売り物になるとも思えないが、節目の紙面は十分商品になるなあとあらためて感じた。当時の紙面が付録になっているのは記憶にない。興味がある方はぜひこの「鉄腕伝説 稲尾和久 西鉄ライオンズと昭和」をどうにか入手して復刻紙面をお楽しみください。


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