黒柴スポーツ新聞

ニュース編集者が野球を中心に、心に残るシーンやプレーヤーから生きるヒントを探ります。

回り道に意味はあるのか~日本ハム上沢直之、膝に打球直撃で今季絶望的

人生に無意味なことはない。そう言うのは簡単だ。決して無駄なことはない。そう言い切れるのは勝者のみである。苦しいことに意味を見いだせることができる人は強い人だ、と私は思う。では上沢直之はどうだろうか。今季日本ハム開幕投手を務め、ここまで5勝を挙げながら、先日のDeNA戦で膝に打球が直撃。全治5カ月の重傷を負ってしまった。

 

日本ハム栗山英樹監督も沈痛。「何かメッセージがあると思っているけど、ナオに野球の神様は何を求めているのか……。ナオも苦しいし悔しいと思う。大きなメッセージがあると思ってやるしかない」(full-count記事より)というのは偽らざる気持ちだろう。

 

野球が教えてくれたこと

野球が教えてくれたこと

 

 

 

野球の神様は時に残酷なことをなさる。コツコツ頑張っている人にスポットライトを当てる役回りでもいいのに、わざわざ悲劇を演出したりする。野球の神様は相当のドラマ好きである。プロ野球ファンは野球の神様のさじ加減一つで右往左往する、哀れな生き物である。もちろん神様のおかげで死ぬほどハッピーになれたりもするが。

 

野球の神様がくれたもの

野球の神様がくれたもの

 

 

 

上沢直之に打球が直撃したことはペナントレースに影響必至だ。楽天ソフトバンク日本ハムが上位を争う展開で、楽天ソフトバンクは上沢とやるかやらないかでは全くハードルの高さが違ってくる。私はソフトバンクファンだから上沢が今季絶望的になったことは客観的に追い風なのだが、そういう悲劇で日本ハムを上回ったとしてもうれしくない。日本ハムファンだって柳田悠岐やグラシアル、中村晃が離脱したことでペナントを奪回してももろ手をあげては喜ばないだろう。もちろん優勝は喜ぶとしても。

 

日本ハムは有原航平がすでに8勝と絶好調。エース級の働きだが、上沢がけがしなければ有原と上沢がエースの座を争うシーズンになっていた。その意味でも上沢のけがの意味はとてつもなく大きい。栗山監督が野球の神様にけがの意味を問いたくなる気持ちはすごく分かる。上沢にこの試練をどう意味付けさせたいのか。

 

起きたことすべてに意味付けをする考えを、私は鬱陶しく思ったりもする。それは何らかの意味があるんだよ、と第三者に言われても素直に受け止められない。実際、上沢にしてみれば着実に力をつけてきて開幕投手の座をゲット。2019年に結果を残せばエースの称号を得られたかもしれない。それが今季絶望的。悔しくないはずがない。

 

長期離脱に意味を見いだせなんて、簡単に言えることだろうか。病と闘う水泳の池江璃花子、けがで代表から離れた体操の村上茉愛もそう。アスリートにとって時間は有限だから、追い込まれているのは間違いない。長期離脱をしなければ才能はますます花開いたはずだ。故障や心身の不調に意義付けをするのはさも優等生的な回答に思える。池江璃花子が耐えられているのは彼女に芯があり、周りが彼女を思いながら支えているからではなかろうか。誰もがアクシデントを受容できるわけではない。

 

結局、起きたことに意味があったか、なかったかを決めるのはその後の自分。傍目には不幸に見えても本人が納得できていれば周りがとやかく言う話でもない。上沢が将来、あの重傷に意味があったと思うかどうかは、けがからの回復具合や復帰後の成績、さらには引退後の環境にもよると思う。

 

さんざん悲観的なことを書いたが、もちろんリハビリがうまくいって、けがを糧にしてもらいたいに決まっている。無事復帰したあかつきにはソフトバンクとガチンコの勝負して、もちろんソフトバンク打線に上沢をノックアウトしてもらいたい。幸い、上沢の膝の手術はうまくいったようだ。上沢にはこの試練をどうにか乗り越えてもらいたい。きっと、この苦境に意味を見いだせるだけの力があるはずだから。

ミスは自分で取り返す~ソフトバンク松田宣浩2連発&松本裕樹今季初勝利

DeNA戦、おいしいサヨナラのチャンスで見逃し三振。ソフトバンクファンをがっかりさせた松田宣浩が6月18日のヤクルト戦で汚名返上の2打席連続ホームランを放った。先制弾に勝ち越し弾。試合展開からしても価値あるホームランだった。

 

松田宣浩メッセージBOOK-マッチアップ-

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いつも元気いっぱい。イケイケの熱男も守りに入ることがあるんだなとびっくりしたDeNA戦。しかし松田のことだ。次こそは、と燃えていたに違いない。環境もよかった。舞台は神宮球場亜細亜大学時代に汗を流した「庭」だ。気分転換にはもってこいだっただろう。

 

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見逃し三振から、2打席連続ホームランで挽回というのも松田らしい。radikoKBC実況を聴くと2発目は打球がグングン伸びてフェンスを越えた様子。松田の気迫が飛距離を伸ばしたに違いない。過去は戻らないのだから、次が大事。悪い記憶や記録はよい結果で上書きするに限る。

 

この日の先発は松本裕樹。いわゆるローテーションの谷間であり、松本にとってはまたとないアピールのチャンスだ。充実の救援陣に対して先発が手薄なソフトバンク。松本が結果を残すことはチームにとっても大きい。だから早く1勝する必要があった。

 

松本裕樹は試行錯誤していた。サイドスロー転向も模索した。変わらなきゃ。そんな姿勢が伝わってきた。結局サイドにはしなかったが、いろいろ試したことは自分を納得させるためにも必要なプロセスだったのではないか。結果的には球速も取り戻せた。肘を傷めた過去があるだけに、そのあたりのケアは十分してもらいたい。

 

まだまだ長いイニングは投げられず、何とか5回を投げきった。勝ち投手の権利が得られるか、という5回は不運な当たりとはいえ連打を浴び、1点差まで追い上げられた。ああ、また松本裕樹は勝てないのか。いや、ここで何とか踏ん張ってほしい。ここを乗りきることができれば、新しいステージに一歩進めるんじゃないか。私はほのかに松本裕樹と自分を重ねながら、実況を聴いていた。頑張れ松本裕樹、踏ん張れ松本裕樹。君がこのピンチを乗りきることができたならば、私自身も何とかなるんじゃないか。私は勝手に自分自身と松本裕樹を重ね合わせていたのだった。

 

松本は勝ち投手の権利を何とか守ったまま降板した。この日は打つ方でも貢献した。二塁打スクイズ。特にスクイズは、自らのミスで同点に追い付かれた後。松田がすでに勝ち越しホームランを打ってくれてはいたが、甲斐らがつくったチャンスにセーフティスクイズを敢行。2連続悪送球のミスを取り返した。

 

一旦radikoから離脱して、あらためて実況を聴き始めたのだが、スマートニュースのアプリを開いてしまった。「ソフトバンク甲斐野 『頭が真っ白』でプロ初S逃す」。日刊スポーツの見出しを見て、嫌な予感が。まさか、甲斐野が救援失敗?

 

ドキドキしながらradiko再開。甲斐野はアウトをとりつつも四球あり暴投あり押し出しあり。フォークボールは制御できない。2点差まで追い上げられ、アウトあと一つとしながらも嘉弥真に後を託して降板。嘉弥真がしのいで甲斐野の代わりにプロ初セーブを記録した。

 

ということで、打てないことも抑えられないこともあるプロ野球選手。だからこそいつまでも引きずれない。それはわれわれ社会人も同じだ。やられたらやり返す。それしかない。松田宣浩と松本裕樹はよい方向に行けたから次ぎは甲斐野だ。鉄腕・森唯斗のけがは思ったより重く、早期復帰はどうやら望めない。甲斐野が今後どんな役回りになるのか分からないが、任されたイニングはきっちり抑えてもらいたい。ミスは自分で取り返す。私もその心意気でやっていこう。

どんな形でもいいから勝つ~中日、悪夢の大逆転負け翌日に辛勝

5点リードを9回裏にひっくり返されたのは、セ・リーグでは20年ぶりだという。中日が6月16日、ロッテに大逆転負けを喫した。ちなみに20年前も中日が横浜にやられた。ドラゴンズファンはたまらない。だが次の日が大事だと、OBの鈴木孝政が解説で話していた。きれいな勝ち方じゃなくていい。とにかく勝つことなんだ、と。

 

もちろん中日ナインだって相当悔しかったに違いない。高校野球地方大会、引退を控えた3年生の異常な執念を彷彿させるロッテの粘りに屈しはしたものの、鈴木大地のライトに抜けるどん詰まりの当たりに対して、ビシエドも亀澤も必至のダイビング。惜しくも届かなかったが、まるで映画のワンシーンだった。

 

天国を見ることもある。地獄を見ることもある、と鈴木孝政。確かにそれはプロ野球選手の宿命だ。嫌でも次の試合はやってくる……と、私はこのくだりを、初めてradiko東海ラジオのドラゴンズ戦中継を聴いたのだが、こういう深みのある話ができる聴けるのはラジオの良さ。普段DAZNを重宝しているが、ラジオもなかなかオツである。

 

きれいな勝ち方じゃなくてもいい、と言われた中日ナインだったが試合はどうなったのか。NHKニュースウオッチ9のスポーツコーナーを見たら、VTRのふりが「終盤までもつれました」。あれ、またまたドラマが?

 

MIZUNO(ミズノ) 野球 中日ドラゴンズ レプリカキャップ 2019 ホーム サイズ:L 12JRBD06 L

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9回裏、同点のチャンスで岡大海がホームに突っ込んできた。セーフなら同点だ。際どいタイミング。アウトのジャッジに岡はセーフだとアピール。井口監督がリプレー検証を求めたが、判定は覆らず。そしてまたもや鈴木大地が打席に立った。乗りに乗った鈴木が2日連続でヒーローになるのか?  まさかまさかと思っていたが最後は空振り三振。中日が何とか逃げ切った。そう、きれいな勝ち方じゃなくてもよかったのだ。まあ、熱烈なドラゴンズファンからしたら、いい加減にせい!と思っているかもしれないけれど。

 

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何でもかんでも勝てばいい、というのは好きじゃないが、とにかく勝たなきゃいけない時もある。負けた時こそ次が大事。へこむ暇があったら努力しよう。明日はすぐにやってくるのだから。

バットを振らねば奇跡は起きない~ソフトバンク松田宣浩、熱男らしからぬ見逃し三振

ノーアウト満塁で松田宣浩。サヨナラはもらったも同然。と思いきやまさかの見逃し三振。どうした熱男と言いたくもなる。確かに山崎康晃インコース低めの球は絶品だった。打ってももしかしたら詰まらされてダブルプレーだったかもしれない。三振だったからアウト一つで済んだのかもしれない。だが松田宣浩に見逃し三振は似合わない。

 

結局ソフトバンクDeNAと引き分けた。モヤモヤしたまま、他球場のゲームを物色した。ロッテが中日を猛追していた。9回1死、3-7から見たのだが、中村や藤岡のタイムリーで6-7に。田村のヒットと荻野の四球で2死満塁。打席には鈴木大地が入った。直前2打席はホームランとノリノリだ。マリンの大歓声に背中を押された鈴木はバットを折りながらライト前に弾き返した。サヨナラ2点タイムリー。何と最終回に6点奪って逆転勝ちした。

 

ソフトバンクとあまりに対照的。食らいつく気持ちが奇跡を起こす。私はソフトバンクファンだが率直にロッテナインの諦めない気持ちは素晴らしいと思った。もちろんソフトバンクナインも懸命に勝ちを目指しただろうし、上林が併殺を逃れようとヘッドスライディングしたり高谷が山崎康晃の速球に食らいついたりするのも見たが、やはりポイントは松田宣浩の見逃し三振。気持ちで勝負するのが松田の真骨頂であるだけに、モヤモヤが消えない。

 

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やはり勝負はバットを振らないと始まらない。満塁なら押し出しやらパスボールという敵失で得点できることもあるが、やはり勝負にいかないと。結果的には満塁策をとったDeNAは正解だった。今季ノーヒットの塚田を歩かして松田宣浩勝負というのはなかなか大胆な作戦ではあったのだが……

 

前のカードの阪神戦といい、ソフトバンクはよく粘っている。対DeNAも負け越してもおかしくなかった。だが勝てた試合にも思える。救援陣が踏ん張っているだけに、打線の奮起を促したい。何でも精神論で片付けるのは好きじゃないが、食らいつく気持ちが勝敗を分けることはある。今季は楽天日本ハムと三つどもえの戦いになりそうな様相であるだけに、勝てる試合はきっちり拾っておきたい。執念。ロッテの大逆転勝ちに学ぶ意味は大きい。

イメージとのギャップをいかに埋めるか~ソフトバンク内川聖一、衰えとの戦い

内川聖一の勝ち越しホームランから優勢に試合を進めたソフトバンクDeNAを下した。前日、エース千賀で負けただけに「ムードを変えられた」と工藤公康監督も褒めた価値ある一発だった。

 

中継の解説は若菜嘉晴だったが、内川聖一の第一打席では打撃のイメージ論が出てきた。リポートによると、内川自身、日々変わるコンディションに戸惑っているという。そこは必ず年を取るゆえに誰もが逆らえない。特に内川聖一は2000安打達成者。数々のよいイメージが頭にこびりついている。今はそれと結果との間に相当のギャップがある。

 

「内川は打つ方向を決めて打席に立つタイプ」と若菜。それがイメージ通りにはできていない。「若いうちはイメージした球が来たらイメージ通りに打てていた。それが遅れたり詰まったりする」。実際、この試合の8回の打席では速球に対して振り遅れたり、とらえたかなというタイミングでもファウルになったりしていた。おかしいな。そう一番感じているのは内川聖一自身だろう。

 

内川聖一は36歳。「一番難しい年齢に入った」と若菜は解説した。衰えは受け入れなければならない。だが「ここを抜ければまだやれる」とも。かつてのような対応力がない前提で再び打撃を確立せよということなのか。内川聖一がどう対応していくのかは非常に興味深い。

 

若菜は、内川や松田に世代交代を促すような若手がいない、とも指摘。特に右バッターがいない、と。まったくいないわけではないが、後輩たちは内川にも松田にもまだまだ及ばない。守備も含めた総合力ではやはり内川聖一松田宣浩は一段上にいる。

 

松田はDeNAのエース今永から2打席連続ホームランを放つなどまだまだ元気いっぱい。内川聖一も率は低いが打席での目を見ると集中力が伝わってくる。世代間競争がある方がチームは活性化する。美間や真砂は物足りないが塚田あたりはそろそろ結果が出そうな予感も。左は周東、三森、川瀬、釜元とアピールが続いているので右打者の台頭を期待したい。アラフォーとしてはまだまだ内川聖一に頑張ってもらいたいのだけれど。内川聖一が若手を退けながら、衰えを一定受け入れながら、いかに次のステージに歩を進めるのか、2019年シーズンは非常に興味深い。

ミスを意味のあるものにする~ソフトバンク千賀がソトに満塁ホームラン喫する

150キロを超すストレート。そしてお化けフォーク。千賀滉大はもはや完成されたピッチャーだと思っていた。が、6月14日のDeNA戦でソトに打たれた満塁ホームランを見て、彼自身思っただろう。まだまだだ、と。チームにとっても大きな被弾であったが、千賀にとっても忘れられない一発になったに違いない。

 

ホームランがピッチャーを育てる、ということもある。1971年日本シリーズ王貞治山田久志に浴びせた起死回生の逆転3ランは有名だ。このシーズン22勝。飛ぶ鳥落とす勢いの山田久志に多くの学びを与えたことが通算284勝につながった、というのはいささかざっくりしすぎだが、示唆に富む一発だったことは間違いない。

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千賀もこの日の被弾を意味のあるものにしなければならない。いや、すでに多くを一瞬で悟ったからこそしばらくマウンドで膝に手をやっていたのだろう。あの一球はボール要求だったという(日刊スポーツ記事より)。しかもボール要求を見落とした。これはミスだ。外すつもりでなかったとしたらストライクを取りにいったのか。球速は十分出ていたが中途半端な1球に見え、非常に悔やまれる。結果論だが変化球で空振り狙いでもよかった。エースだから真っ向勝負は当然かもしれないが、ゴロでもフライでも、とにかくアウトに仕留めたかった。千賀はきれいに勝負しすぎた。それが千賀の魅力でもあるのだけれど。

 

球速と伝家の宝刀の威力は十分。であるから今回のソトのホームランは、千賀の課題がここ一番での制球力であることを浮き彫りにした。コントロールを高めることはすべての投手に共通するから千賀だけの課題ではないが、結果を出すのは狙った所に投げ込めた人。DeNAは8回二死からパットンが内角のストレートでグラシアルを空振り三振に仕留めたし、9回は二塁にランナーを背負いながら山崎康晃が甲斐拓也を見逃し三振に封じた。最後の外角いっぱいのストレートはこれぞプロという1球。救援で億単位の年俸をもらうだけのことはある。

 

先発と抑えは求められるものは違うが、ここ一番での制球力が問われるのは同じだ。2019年の千賀は前半戦途中ですでに3桁の奪三振であり、決してコントロールに難があるわけではない。しかし2018年、西武との天王山初戦で浅村にホームランを浴びて結果的にチームが3連敗しペナントを逃したことからも、ここ一番で被弾しないようにすることは依然として課題のはずだ。打たれたホームランをなしにはできないのだから、大事なのはこれから。終盤にランナーを貯めて苦しんだり、手痛い一発を浴びたりしないよう、ソトの満塁ホームランをよい教訓にしてほしい。今回の被弾は千賀がますますレベルアップするきっかけには十分なりうる。

攻撃的に○○する~ソフトバンクのグラシアル、勝負強さの秘訣とは

6月13日の阪神戦。先発高橋遥人の厳しい内角球を巧みにさばき、グラシアルがソフトバンクを勝利に導いた。先発大竹耕太郎の2安打ピッチングも素晴らしいのだが、今回は工藤公康監督が「技あり」と評したグラシアルの3点ホームランにフォーカスする。

 

 

ハイライトの映像でも見たが、内角のカットボールをとらえたグラシアルは、右手をバットから放した。左腕一本でスタンドまで運んだ。「それくらい厳しい球だった」と斉藤和巳は解説していた。高橋遥人は6回までソフトバンク打線をわずか被安打1としていたのだが、今宮健太内川聖一に連打を浴びた。それでもグラシアルを2ストライクと追い込み、内角の厳しい球で勝負を挑んだのだが……

もともと内角打ちは上手なグラシアル。交流戦で中日の大野雄大から放ったホームランも内角のスライダーだった。技術的なことは専門的な話ができる解説者に譲るとして、結果が出せるヒントをグラシアルはヒーローインタビューで話していた。

「攻撃的にバッティングをしようと思っていた」

気持ちさえあれば何でもできる、という考え方は好きではない。実際、どうにもならないことなんて山ほどある。だが、もしかしたらうまくいくかもしれない、という場面では気持ちの持ちようで結果が変わる可能性はある。グラシアルはヒーローインタビューでこんなことも言っている。

「内角に来たら攻撃的に打とうと思っていた」

つまり迎撃態勢が整っていたということだ。格は全く違うが同僚の真砂勇介は受け身のバッティングになってしまっている。グラシアルは能動的に打ちにいっている。意識してバットを振っているかどうか。グラシアルが厳しい内角の球を打ってもファウルにならない理由をそこに見る。

同じ動作をするにしても、グラシアルが言った「攻撃的に」を付け加えると何か成功する割合が増えそうな気がする。攻撃的に、なんて言うと無理矢理とかやたらめったらも含んで見えてしまうかもしれないが、そんな後ろ向きではない。あくまでも前向き。

攻撃的にプレゼンする。

攻撃的に準備する。

攻撃的に取り止める。

何か、マイナスの判断さえ戦略的に見えてしまうから不思議だ。字面だけ見ると物騒だが、攻撃的という言葉には非常に前向きなニュアンスが含まれているのだな、とグラシアルのインタビューを見て思った。

というわけで私も攻撃的にブログを書いていくことにしよう。攻撃的なブログ運営って何だろう。一つ思うのは積極的な交流だ。相変わらずソフトバンクネタはホークス仲間の皆さんを中心に評価をいただいているのだが、最近Twitterではスポーツ以外のブログを書いている方々にも「いいね」やらリツイートししていただいている。まだまだTwitterは攻撃的に使えていないのだが、炎上するなんて意味ではなく、多様な価値観を大事にしていくという意味でブログを攻撃的に書いていこうと考えている。応援よろしくお願いします!

持ち味を伸ばす~日本ハム吉田輝星、初登板初勝利よりも大事なもの

棋士は自分が持っているものをどれだけ伸ばせるかだと思う」

羽生善治がそう言っていた。

その前に見た、吉田輝星のデビュー登板を思い出した。吉田は初先発初勝利を飾ったが、持ち味の直球は十分アピールできたのではなかっただろうか。

 

低めにズバッと決まるストレート。甲子園で何度も見た。美しい軌跡。甘いマスク。擦れていない受け答え。人気が出たのは当然だろう。しかしプロで結果が出せるかはまた違う判断基準がある。単純に、プロのバッターに吉田輝星のストレートが通じるのか。興味があった。

 

にしても、さすが日本ハム。環境を整えてきた。地元の札幌ドーム。話題作りとファンサービスを兼ねた、観戦証明書発行。対戦相手はセ・リーグ首位、リーグ3連覇中の広島。完全に台本が出来上がっている。栗山英樹監督は優しいのかドSなのか分からない。

 

稚心を去る

稚心を去る

 

 

 

結果は5回84球、被安打4、失点1。奪三振は4だった。広島の強力打線相手に上々の内容ではなかろうか。三振がそこまで奪えなかったのは、今の吉田の力量の表れと見た。まだまだ力を伸ばしていかないと、プロの打者を抑えていけない。今回はあくまでも「片鱗を見せた」ということだ。

 

羽生善治が言うところの「自分が持っているもの」は、吉田にとってはストレート。だが上背があるわけでもないので、キレで立ち向かうことになる。ストライクに取ってもらえなかったが、低めにも外角にも、ズバッと決まった球はあった。吉田自身、少なからず手応えはあったと見た。

 

まだまだ発展途上の吉田輝星。後を引き継いだ先輩ピッチャーが反撃をしのぎ、吉田はプロ初登板初先発初勝利を収めた。勝ち星はもちろんうれしかっただろうが、大事なのは手応えを感じられたかどうか。これからプロでやっていけるかどうか。足りないものは何なのか。それをマウンドで感じられたかどうかだろう。逆に言えば、それを感じられさえすれば勝ち負けが付かなくても納得できたと思う。

 

大卒や社会人出身ピッチャーでもないので、早くも6月にデビューさせたところを見ると、栗山監督は吉田について、1軍でも十分通用すると見ているということか。それは5回までとは言え、大瀬良大地と投げ合えたことからも過大評価にも思えない。

 

デビュー戦でいきなりお立ち台に上がれる点からも、吉田はいわゆる「持ってる男」。日本ハムには同じドラフト1位入団の「持ってる男」と呼ばれていた男がいるのだが、彼は特別な成績を残せずにいる(今粘っている姿は嫌いじゃないけれど)。彼と吉田、最大の違いは代名詞の球があるかどうか。吉田にはあの低めのストレートがある。これがどこまで通用するかがそのまま生命線となる。

 

このまま即ローテーション入りとはいかないかもしれないが、2019年シーズン、もう何回か先発する姿は見てみたい。初年度でもあるし、結果も大事だが中身にこだわってほしい。私はソフトバンクファンだから日本ハムの柱に成長されたらすごく困るのだが、それを打ち砕いてみたい気もする。いかにもパ・リーグっぽい戦いを見てみたい。それにしてもパ・リーグにはいいピッチャーが毎年入ってくる。実力のあるピッチャーの中でもまれながら、吉田輝星には自分の持っているものを目一杯伸ばしてもらいたい。

意図を持って打席に立つ~ソフトバンク真砂勇介、目立つ受け身のバッティング

今宮健太の起死回生のタイムリーに心を躍らせた一方で、がっかりしたシーンがあった。真砂の打席だ。延長12回、ドリスの牽制悪送球やらワイルドピッチで無死3塁。サヨナラの準備は整った。

 

ランナー1塁で打席に立った真砂は送りバントを命じられたが、ドリスの一人相撲により打ってもよい状況となった。だが、である。カウント3ボール、ノーストライクから強振したのには驚いた。それが許されるのはグラシアルやデスパイネら主軸だけだ。残念ながら、出塁するよりアウトになる確率がまだまだ断然高い真砂。あと一つボールを選べたら四球でチャンスは広がったのだが、3ボール2ストライクからは低めの見逃せばボールという球を打ちに行き空振り。アウトを一つ献上してしまった。

 

延長12回、長いゲームの分岐点にする気はない。しかし妙に気になる三振だった。真砂はこのような行き当たりばったり(に見えてしまう)バッティングを続けていては、いつまでたっても次のステージには行けまい。解説の浜名千広も言っていた。このボールを見逃せるかどうかなのだ、と。

 

恐らく、だが、川島慶三なら見逃していた。そこが真砂と川島慶三の違いだ。いま何がチームのためになるのか。それが分かり、かつ、判断でき実行できる。だから川島慶三は意図的に起用される。これが3球団を渡り歩き今なお現役でいられる最大の要因だ。

真砂はどうか。来た球を振っていないか。プロ野球選手だからある程度は対処できるだろう。しかしまだまだ1軍での経験が足りない。身体能力がいかに優れていても、効果的に発揮しなければ宝の持ち腐れだ。あの場面、四球で歩けば2盗も狙えた。そこまでプレッシャーをかけられなくとも、アウトカウントは増やさずに済んだ。いやいや、バッターなのだから振らなきゃ、というのであれば、バットに当てなきゃいけない。

 

いま何をすることがチームのためになるのか。振ったけれど当たりませんでした、ではいつまでも確率論だ。打ちにいくならきっちり打つゾーン、打つ方向を意識してスイングしてほしい。2019年シーズンの真砂の打席を見ていると、いつも受け身の姿勢に思えてならない。

 

真砂の打席の最中、スタンドで応援するファンが映ったが、何人もが「真砂勇介」と書かれたタオルを掲げて応援していた。きっと2軍時代から、ひたむきに野球に取り組む姿を見ているのだろう。そんなファンのためにも、意識して打ちにいく真砂の姿を見たい。右バッターが手薄だから起用される、そんな消去法の理由ではなく、真砂勇介を試したい、起用したい、と思わせるバッターになってもらいたい。

ウチゲ、その衝撃~稀代のバットマン内川聖一はこのまま刀を置くのか

ウチゲという言葉を初めて見た。内川聖一のゲッツーの略。Twitterにはその単語がいくつもあった。確かに薄々感じていた。2019年シーズン、チャンスで内川聖一ダブルプレーに倒れるシーンが目につかないか、と。あの勝負強さはどこへいったのか、と思ってしまうが内川聖一とて人。イチローもそうだった。稀代のバットマンにも衰えは忍び寄る。なんと残酷なことだろう。

 

にしても、ウチゲとは衝撃だった。2000安打、名球会入りしても揶揄されるとは。プロ野球選手とは大変な職業だ。しかし、プロ野球選手が結果で語られるのは紛れもない事実。内川聖一は一切言い訳なんかしないだろう。

 

打てない理由は何なのか。体力的なことなのか。感覚と体の動きにズレがあるのか。ゲッツーだから、バットには当たっている。しかしとらえきれていないから、打球が内野手の餌食になっている。なまじバットに当てるのがうまいから、と分析している人がいた。確かにそうかもしれない。当てるのはできるけれど、今はヒットゾーンに打球が飛んでくれない。何度もチームに力を与えてきた内川聖一のバッティングはどこへいってしまったのか。

 

もちろん打ってもいる。交流戦に入り、広島との試合では決勝タイムリーを放っている。しかし何ゆえ人は成功より失敗を強く心に刻むのだろう。内川聖一の場合は結果を残し続けてきただけにそもそもの期待値が高く、うまくいかなかった場合とのギャップが激しいのかもしれない。このウチゲという、バッシングと言っていい状態は内川聖一ならではの面がある。

 

心配だ。内川聖一が打てない自分を受け入れられるはずがない。あまりにも不振が続けば決断を迫られるかもしれない。だが今のソフトバンクには内川聖一を追い越せる右バッターが見当たらない。実はそれが一番問題だ。

 

思い出す。あのホームランを。2017年、DeNAとの日本シリーズ。第6戦は1点ビハインドのまま9回1アウト。ピッチャーは守護神、山崎康晃。万事休す、と思ったら内川聖一が同点ホームランをスタンドに運んだ。何という勝負強さ。カーラジオを聞いていた私は運転しながら絶叫した。その1年で一番大きな声を出した。うれしかった。ここで打ってほしい。その願いに内川聖一は応えてくれた。本拠地で3連勝した後に横浜で2連敗。もしあのまま敗れていたら逆王手をかけられる崖っぷちだった。そこからの日本一。内川聖一の同点ホームランがいかに価値があるかが、よく分かるだろう。

 

って、そんな2年前のこと言われても今が大事だという人もいるだろう。確かに。今ソフトバンクを応援している人にとってみれば、今打ってもらわないと困るのだ。別に内川聖一をバッシングしているのではなく、応援しているからこそ「何だよ!」と思ってしまうことも分かる。ウチゲとワイワイ騒ぐ人の中にはそれ自体を楽しんでしまう人もいるけれど、打ってもらわないと困る人もたくさんいるのだ。

 

かつてあまりに負けるホークスに激怒したファンが、選手の乗るバスに生卵を投げつけたことがある。世界の王貞治率いるホークスが生卵を投げつけられたことは衝撃だった。

「屈辱ではありますけど、それだけ卵を投げてくれた人たちは、南海時代からのカチカチなホークスファン。その人たちが真剣に怒った結果が卵事件だと思うんですね」

王貞治は平成を振り返る講演でそう語った。そして、「それをまともに真正面から引き受けないといけない。我々はいい刺激になったと思います」「そういうことを積み重ねていくなかで、選手達は勝つ事の素晴らしさとか、勝ちに向かってやるにはどうやったらいいかということで、技術向上につながったと思います」とも。

 

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内川聖一が浴びているのはあの生卵と同じ意味合いがある一方で、ただ便乗して面白がっている向きもある。そこがやっかいなのだが、騒音を封じるにはやはり結果を残すしかない。バットを置くのはまだ早い。やはり内川聖一だ、さすが内川聖一だというところを見せてほしい。クライマックスシリーズで史上初の同一シリーズ4試合連続ホームランなんて神がかり的な打撃は無理かもしれないが、今一度勝負強い内川聖一のバッティングが見たい。頼れる助っ人グラシアルが代表活動のためチームを離れることが決まっているだけに、内川聖一の復調がチームの浮沈の鍵を握る。

「右に左に捌け コースを絞って 狙い澄まし 内川打て」

かっ飛ばせ、内川!

伝えるという強い意思~DAZN、がんから復帰の阪神原口サヨナラ打インタビュー込みハイライト

大腸がんから復帰の原口文仁がサヨナラヒット、という見出しをスマホで見つけて、ああ、よかったなと思った。私は阪神ファンではないけれど、ひたむきに頑張る人が大好き。サヨナラ勝ちはただでさえ興奮する状況だが、その主役は病からの復帰だから、甲子園は盛り上がったに違いない。

 

どんな試合だったのかな、とDAZNでハイライトを見てみた。すると「11:01」の表示が。それってハイライトなの?という長さ。いつもは3分とか5分程度だから倍以上の長さだ。薄々予想はついたが、やはり最後は原口文仁のヒーローインタビューが収容されていた。

 

阪神タイガース 選手フォトタオル (94原口)

阪神タイガース 選手フォトタオル (94原口)

 

 

 

そう、DAZNではゲーム前からヒーローインタビュー後まで流してくれるため、ファンにはたまらない。もちろん、ひいきのチームが負けたら敵チームのヒーローインタビューはイライラしてしまうので見ずに消すこともある。だが解説者が試合結果から今後の展望まで語ってくれるので、なるべく見るようにはしている。

 

 

 

きょうの阪神戦のハイライトに長々と原口のヒーローインタビューを入れたのはさすがだ。何が面白いのか、何が求められているのか、何を伝えたいのか。通常の倍以上の長さのハイライトになっても、DAZNとして伝えるべきものはこれなんだ、という編成だと感じられた。

 

BBM2016/2nd ■レギュラーカード■362/原口文仁/阪神

BBM2016/2nd ■レギュラーカード■362/原口文仁/阪神

 

 

 

私は紙媒体育ち。決められた分量の中で結果を出すことを求められてきたし、時間やスペースの制約がある中で結果を出すことに快感すら感じてきた。だが、ネットの世界はスペースの制約が紙より圧倒的に少ない。恐るべき自由度だ。そこを羨ましく思うのだけれど、じゃあ分量を自由に決められるから何でも面白くできるか、というとそれは違う気がする。

 

要は編集者としてきょうはこれを伝えるんだ、という意思だ。それがなければいくら環境がよくても力強いコンテンツにはならない。DAZNではゲームハイライトの長さを自由に決められるのかもしれないけれど、それでも定番の長さというのはある。そこを度外視してもきょうは原口なんだ、打った場面だけじゃなく、「僕の活躍がそういう力(病と向き合っている方々への力)になるとすれば、僕も生きて野球をやれる意味があると思うので、さらに頑張っていきたいと思います」という原口の生の言葉が一番のコンテンツなんだ、という意味合いが伝わるハイライトだった。

 

これだけ情報発信が簡単にできる時代なのだから、有力なメディアの編集者は違いを、個性を見せなければダメだ。コアなファンは一家言持っており、解説者顔負けの鋭い見立てをする方もいる。何をどう伝えるのか、勝負の分かれ目や審美眼がますます問われる時代になっていく。いつまでも「スペースがないから」「時間がないから」なんて理由でありきたりな編集をしていたらどんどん淘汰されていく。変にとがりすぎる必要はないが、何を伝えたいかが分かるコンテンツしか生き残らない。私はそこに不安を感じるのではなく、これを伝えたいんだというメッセージを込める、これを伝えたいんだという強い気持ちを持つことで編集者としての腕を磨いていきたいと考えている。

回数より質を意識する~ソフトバンク高橋礼、練習から球数を意識し肩を守る

量より質。これを意識しないと生産性は上がらない。もう一つ、質にこだわれば体にも優しい、という実例を知った。今やソフトバンク投手陣で千賀滉大との二枚看板を形成する高橋礼が、肩の負担を考え、キャッチボールやブルペンでの球数を極力減らそうとしているという。西日本スポーツ記事「ソフトB高橋礼 チームトップタイ6勝  11球3人斬り発進」に書いてあった。

 

高橋礼は6月8日の広島戦で6勝目を挙げた。これは千賀と同じ勝ち数。肩の疲労で一時期戦線離脱したことを考えると上出来だ。離脱してしまったことを踏まえ、練習でのキャッチボールや試合前のブルペンでの球数を極力減らそうと試みているという。

「極端に言えば、納得できたのなら1球で終わってもいい」(西日本スポーツ記事より)

この意識、なかなか素晴らしい。

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レーニングでは例えばダッシュ何本、素振り何回、筋トレ何セットなどなど、「数」がベースであることが多い。数は確かな実績であり、やたらめったら負荷をかけない意味でもきちんとカウントする意味はある。しかしただただ数をこなすだけでは意味がない。いわゆる投げ込みや打ち込みで基礎体力を付ける意味合いもあるけれど、それはあくまでも体力強化であって、技術力アップのための練習にはならない。キャッチボールでもブルペンでも、肩さえ出来上がれば、あとは狙ったところにピシッといけるかどうかだ。

 

高橋礼が言う「1球で終わってもいい」は究極の話だろうが、要は納得がいく球を投げられたかどうか。しっくりきているかどうかだ。特に高橋礼は先発ローテーション入りした初めてのシーズン。きっちりローテを守ることだけでも難しいだろう。同じ登板間隔でも勝ってからの調整と負けてからの調整とではメンタル面も違う。疲労を抜き、充電してまたマウンドに上がる。先発は中継ぎや抑えとはまた違う調整をしなければならない。

 

真面目な人ほど、もっとできるのでは、もっと精度を高められるのでは、とついつい数をこなしがちだ。ピッチャーの場合は肩を守らねばならない。だから離脱をきっかけに、高橋礼が肩の状態を考えながら、調整方法を工夫しだしたのはいい傾向だ。結局プロは自分で自分の体を守るしかない。それはわれわれサラリーマンにも言えるのだけれど。

 

同じチームトップの6勝でも、エースの座を確立する過程の千賀の6勝と、初めてローテーションの一角に入った高橋礼の6勝は意味が違う。チーム的には高橋礼の勝ち星は丸々貯金のような意味合いだ。それだけに、いかに高橋礼に活躍してもらうかが鍵になる。量より質。私も高橋礼ばりにしっかり意識して取り組もう。

複数の視点を持つ~ソフトバンクファンにも読んでほしい中日スポーツの敗因分析記事

大島洋平の幻のランニングホームランの翌日。さぞ中日スポーツはお怒りでは?と、ソフトバンクファンの私は気になって、スマートニュースを漁ってみた。すると渋谷真氏の署名記事「【龍の背に乗って】 一塁空いた 次打者は九鬼  なぜグラシアルと勝負したのか」を見つけた。

 

詳しくはぜひ記事をご覧いただきたいのだが、実に潔い。リプレー検証うんぬんではなく、勝ち越しタイムリーのグラシアルの打席で曖昧な勝負をしたことを問題視していた。もちろん敬遠策を取らなかったことも含め、である。

 

スマートニュースのアプリは使いやすく、それだけでも十分足りるのだが、記事製造元のサイトもちょこちょこ訪れるようにしている。曲がりなりにも元記者だから、どの記事でも作者への敬意は忘れないようにしたい。というわけで中日スポーツのサイトに遊びに行ったのだが、記事の下には熱烈な竜党のコメントがズラリ。一つのコミュニティが形成されており、これは紙のメディアには真似できない交流の仕方に思えた。純粋に野球やらドラゴンズの勉強にもなった。

 

大島洋平の本塁突入はセーフだったよ、という声ももちろんあった。一方で与田監督への不満も。満塁策をなぜとらないのかといぶかしがられていた。ソフトバンク戦では堂上直倫に代打・井領を送ったのだが、そこは堂上じゃないの?という意見もあった。チームが敗れたこともあり、采配に納得いかなかったのだろう。ソフトバンクファンの私としては、よその家庭の問題を見てしまった感覚だった。

 

ソフトバンクファンだから、スマートニュースで見ているチャンネルは「ホークス」「西日本スポーツ」などだ。スポニチやニッカン、サンスポ、東スポ、報知、デイリースポーツのチャンネルもざっと見る。なぜか堂上直倫は応援しているためドラゴンズと中日スポーツのチャンネルも付けている。これを考えるといかにスマホで情報を仕入れているかが分かる。

 

 

 

ひいきのチームがあればその与党系のメディアに行くのは王道だ。阪神タイガースとデイリースポーツの関係は最たるものだし、巨人と報知も同じだ。同じニュースを扱っても全く切り取り方が違う。上原浩治引退は地方紙でも1面で取り上げた社があるのに、デイリーは中面の5面に収容。ライバルチームの元エースゆえの措置か。1面は競馬記事だった。競馬をたしなまない私には重要度が分からないのだが、100勝100セーブ100ホールドやら世界一の実績の投手の引退はもう少し目立つように仕立てたらどうかなと思った。

 

新聞なんてどれも一緒だろ。そんな声もたまに耳に入る。だが本当だろうか。イメージで語られていないか。もちろん同じ共同通信配信記事は使われるからこれは別の新聞にも載っていた、なんてことはある。しかし見出しまで一言一句同じことはほぼない。それぞれのメディアにはそれぞれの立ち位置がある。そこを味わうのが併読の楽しみだ。

 

ひいきのチームの与党系メディアを見るのは純粋に楽しい。基本はチームを応援しているし、肩をもって書いているから「ウンウン、その通り」ということがほとんどだ。そんなベタベタ誉めてばかりは気持ち悪い、と思うのは健全だ。だがそこは心配ない。あのデイリーでさえきちんとダメ出しはする。愛するがゆえの叱咤激励。いいことばかりを書くなら誰でもできる。本質を突く。それが大事だ。一番最初にようやく戻るのだが、ソフトバンク戦の敗因をリプレー検証の明暗に求めなかった中日スポーツの渋谷真氏の記事はまさに勝負の分かれ目をきちんと語り、考えさせる素晴らしい内容だった。

 

中日ドラゴンズファンブック2019

中日ドラゴンズファンブック2019

 

 

 

フィルターバブルに陥る危険はあるものの、同じチームを応援する仲間同士のやりとりは楽しいものだ。TwitterFacebookを上手に活用すればさまざまな情報が手軽に楽しく入手できる。そこにあえてライバルチームや対戦相手の目線を入れてみる。すると思わぬ発見がある。ソフトバンクはいま広島との連戦中なのだが、カープ目線のデイリースポーツ記事によると、カープ交流戦の対ソフトバンクが通算57試合17勝36敗4分けだそうだ。こうやってまた試合を見る楽しみが広がっていく。情報収集のスキルアップも兼ねながら、今年も交流戦を楽しもう。マツダスタジアムでの広島対ソフトバンクはかなり面白いカードなのだが放映権の兼ね合いかDAZNでは見られない。それがただただ残念である。

グラシアル幻の敬遠と大島幻のランニング本塁打~勝負を分けたあの1球

やるか、やらないか。チームにおいて意思統一は重要だ。与田剛監督は敬遠を指示したのか。ロドリゲスは勝負に行ったのか。大島洋平の幻のランニングホームランが取り沙汰されているが、6月6日のソフトバンク対中日戦は、1球で局面ががらりと変わる野球の醍醐味を見せつけた。今回はその8回裏のグラシアルの「幻の敬遠」をクローズアップする。

 

 

 

2死一、二塁から好打者グラシアルを迎えた中日には敬遠という選択肢があった。満塁にするリスクはあるが次打者は実績が乏しい若手の九鬼。もともとデスパイネの打順だったのだが、代走の九鬼と入れ替わっていたのだった。が、中日はグラシアルとの勝負を選択した。

 

しかしソフトバンクは何を狙ったのか、ダブルスチールを敢行した。ランナーは二、三塁。これなら中日はグラシアルを歩かせてもよい場面だったがまたもや中日は勝負を選んだ。ところがカウントが整わない。3ボール1ストライクとなったところでキャッチャー武山はベンチを見た。一瞬手を前方に振ったようだ。敬遠するか聞いているのだろう。中継画面では与田監督が一塁方向にあごをしゃくったように見えた。

 

敬遠だ、と思った次の瞬間、アウトコース低めの球がストライクとコールされた。思わず体を揺らした与田監督。抑えられるなら抑えさせようか。そんな迷いが垣間見えた。ピッチャーのロドリゲスは、外すつもりがあったのか。それとも、最初から際どいコースであわよくば三振を狙っていたのか。

 

キャッチャーも外すつもりはあったのか。際どいコースだったから本能的にストライクにするキャッチングをしたのではなかったか。とにかく外すなら外せという明確な指示が必要だった。今は申告敬遠という制度があるのだ。作戦としてきっちり出塁させればよかった。もちろん、中日ベンチが勝負を選択した可能性も十分にあるのだが。

ピッチャーとキャッチャーの思いが違っていなければいいのだが、と解説者が言い終わらないうちに、グラシアルの打球はセンター前に抜けていった。二人目のランナー今宮健太まで帰ってきた。際どいタイミングでアウトになったがリプレー検証で覆りソフトバンクは2点勝ち越した。

 

収まらないのは中日ベンチ。この前の大島洋平の際どい本塁突入はキャッチャー高谷のタッチを間一髪かいくぐっているようにも見えたが結局アウト。中日はリプレー検証を求めて覆らなかった経緯があった。それだけに波留コーチは激昂。かなりの口調で抗議していたようだ。中日にしてみれば踏んだり蹴ったりだっただろう。

 

なお中日の球団代表が高谷のプレーを空タッチと言っているが、高谷は返球を上手にミットと右手で挟みながら大島にタッチしており空振りはしていない。問題は大島の左手が先にホームベースに触れているかどうか。この辺りはかなり長い間検証したので、アウトというならアウトだろう。私はソフトバンクファンなのでもちろんうれしいが、中日ファンは納得できないに違いない。

 

なお、今宮の本塁突入がうまくいったのは「飛んだから」だ。鋭角にホームベースに飛び込んでいるからロスがない。大島は滑り込んでいるから手のひらが数センチ浮いている可能性がある。ま、左手の左下部分はベースに触れている気もするが……。

 

一歩、前に。前に出る勇気のつくり方

一歩、前に。前に出る勇気のつくり方

 

 

 

さらにいうと高谷は捕球はうまくやったがタッチにいったのは正解だったのか。まだまだコリジョンルール導入前の、タッチに行くプレーが身に染みているようだ。かいくぐられるリスクを減らすためにも、あそこはホームベースの角に飛び込んでしまえば、ランナーはそこを目掛けて突っ込んで来るため、ホームインを封じ込められると思うのだがいかがだろうか。

 

……と何だかんだでやはり二つの本塁突入にクローズアップしてしまったが、勝負のあやという意味ではグラシアルの勝ち越しタイムリーの場面も負けないくらい面白かった。この一打は交流戦前の沈没ムードから交流戦3連勝に引き上げる、価値ある一打だった。ペナントレースにも相当影響がある。それがたった1球、外す思惑が違った形になったことで生まれた一打だったとしたら……やっぱり野球は最高に面白い。

デキる人はすぐ修正する~ソフトバンクのグラシアルが大野雄大から倍返し弾

やられたらやり返す。勝負の世界では大事なことだ。やられたのと同じシチュエーションでやり返せたら、なお気持ちがいい。ソフトバンクのグラシアルはそれをした。6月5日の中日戦。大野雄大から前の打席で三振を喫したスライダーを、次はスタンドに叩き込んだ。試合を決める価値ある一発だった。

 

デキる人はなぜ修正能力が高いのか。

まずは意識。やられたことをしっかり分析している。グラシアルは4回裏の打席、最後は内角に切れ込んでくるスライダーに空振りした。いわゆる、打ってもファウルになる、くらいの厳しいコース。大野の見事なピッチングの組み立てだった。が、グラシアルはしっかりその軌道を覚えていた。やられたことを忘れなかった。だから次に同じ球が来たら打とうと思っていた。そういう「意識」だ。

 

次に技術。グラシアルはもともと内角をさばくのに定評がある。内角の球をホームランにできるのは、上手に腕をたためるから。練習量もさることながら、この辺りはセンスが左右しそう。呼び込むタイミングの取り方が抜群なのだろう。打とうという意識がいくらあっても、打つ技術がなければ打てない。

 

レベルが違いすぎる話で恐縮なのだが、私はグラシアルの気持ちがちょっと分かる。小学生の時のクラブ活動でソフトボールを選んだ私は、とにかくインコースの球が打てなかった。別のクラスの子にもそれはバレバレだった。試合で私が打席に立った時、その内野手がピッチャーに耳打ちをしに行った。「アイツ内角打てないから」と言いに行っていることくらい私も承知していた。狙うは内角一本。「来た!」。私は小躍りしたい気持ちを抑えつつ思いっきり振り抜いた。ガツッ。手応え十分の打球は外野の間を抜けた。ツーベース。私は二塁塁上で思った。

「バカにするなよ」

 

……とグラシアルが思ったかどうかはさておき、やられたことを覚えておくこと、そしてすぐさま修正して同じ轍を踏まないことは大事だ。グラシアルは4回裏の打席で空振りした球を、8回裏の打席でホームランにできるのだから、修正能力は抜群だ。

 

この試合は内川聖一松田宣浩デスパイネも一発を放ち、それぞれ意味のあるホームランだったのだが、復讐劇が大好きな私としてはグラシアルの倍返し弾が最も心に残った。やられたらやり返す。次は同じ轍を踏まないように……そう意識することで結果は変わってくる。うまくいかなかったことを振り返るのは楽しい作業ではないが、成長のためには必要なプロセス。しっかり検証して次につなげよう。


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