黒柴スポーツ新聞

ニュース編集者が野球を中心に、心に残るシーンやプレーヤーから生きるヒントを探ります。

セレンディピティーの機会はだれにもある~ノーベル賞吉野彰さんに学ぶ

ある偶然をきっかけに幸運を手に入れる能力や才能。セレンディピティーという言葉を、日経新聞1月16日付で見つけた。旭化成名誉フェローの吉野彰さんのノーベル賞受賞記念座談会を、ジャーナリストの池上彰さん、島津製作所シニアフェローの田中耕一さんとの3人で行った記事だった。

 

 

セレンディピティーが出てきたのは、吉野さんが「セレンディピティーの機会はだれにも均等にあると思います」と言ったくだりだった。スマホが一人1台と言ってもよいくらいの今日、世の中は情報にあふれている。目にする情報の量が同じだったとしても、それを有効に活用できるかは本人次第。吉野さんはこう続けた。「問題意識を持っている人が検知できる」。

リチウムイオン電池が未来を拓く (エレクトロニクス)

リチウムイオン電池が未来を拓く (エレクトロニクス)

  • 作者:吉野 彰
  • 出版社/メーカー: シーエムシー
  • 発売日: 2016/10/05
  • メディア: 単行本
 

 

 

2016年からスポーツブログを書き続けてきて、何度目かの壁にぶち当たっている。ネタが思い付かない。もともとプロ野球中心の構成だから、シーズンオフにネタに困るのは当たり前ではある。しかし、それ以前。明らかに情報への感度が鈍っている。インプットの量も足りていない。そして感動する場面が減っている。悪い傾向だ。

 

だからこそ、吉野さんが言われた言葉が身にしみた。セレンディピティーの機会はだれにも均等にある。もっと物を見る目を、感動する心を高めないとじり貧だ。きょうは20日だから16日付の日経新聞を見てうわぁと感激するのもどうかなとは思う。しかし綴じているのをめくってみたからこそ、吉野さんの一言にたどり着けた。やはり、めくらねばならない。それは義務でも何でもない。ただ「しびれたい」から、感動、感激したいから。自分をアップデートしたいから。昨日の自分を超えるきっかけは新聞に限らずいろんな記事に埋もれている。まずは根気よくセレンディピティーを生かす機会を探るようにしよう。

野球殿堂入り田淵幸一を支えた順応力~ホームランアーティストの美学と力学を読んで

2020年に野球殿堂入りする方々が発表された。元慶大監督の故前田祐吉氏、元早大監督の故石井連蔵氏、そしてホームランアーティストの田淵幸一氏(以下敬称略)だ。慶応、早稲田、そして法政。六大学野球ファンにとっては伝統と実力を誇りたくなる表彰となった。

若き日の誇り ~法政大学野球部黄金時代~ 松永怜一、田淵幸一、山本浩二、山中正竹

若き日の誇り ~法政大学野球部黄金時代~ 松永怜一、田淵幸一、山本浩二、山中正竹

 

 

タイミングよく、田淵幸一の本を読んでいた。12月に買った「ホームランアーティストの美学と力学」(ベースボール・マガジン新書)だ。タイトル通り、思い出のホームランを中心に田淵の足跡をたどることができる。

田淵が放ったホームランは実に474本。2019年シーズン終了時で歴代11位。現役では中村剛也の415本(同16位)が最高だ。400本以上となると、それなりにこだわらなければ到達しない数字である。

そんな田淵だから最初からガンガン打てたのかと思っていたが、プロ初打席は何とすべて見逃しの3球三振。相手は平松政次だった。学生時代とは球速が違う。ここで田淵がしたことは「グリップを下げる」。そのまま振りだせる位置にしたのだそうだ。

田淵は法政大学時代、長嶋茂雄広野功の持っていた通算ホームラン記録(8本)を塗り替えた。大幅更新して22本まで伸ばした。それはやがて高橋由伸に抜かれるのだが、学生時代に結果を残したバッティングフォームというものはあったはずだ。

それをプロ入り後すぐ変えることに躊躇しなかったのがすごい。いや、平松のストレートを見て変えねばと思うしかなかったのか。だとしても即断即決即実行をしたことがプロでの結果をもたらした。まさに英断。早くもプロ4打席目で初ホームランを放ち、1年目は結局22本。新人王にも輝いた。

田淵の順応力は西武に移籍してからも感じられた。あの有名な深夜のトレード通告。自宅を出てホテルに向かったのは午前1時過ぎだったと本に書いてあった。阪神生え抜きのスター選手が深夜にトレードを通告される。今なら、いや、当時としてもとんでもない話だ。これで腐るなという方が無理。気持ちを入れ換え西武に合流したものの、初年度は指名打者が多かったことも影響し「27本塁打に終わった」(何という贅沢な言葉遣い……)。その後もケガあり、合わない広岡達朗監督の登場ありと、田淵には我慢の場面が続いた。田淵を支えたのは優勝の味だった。

ついに田淵はホームランを捨てるという境地にすら立った。1982年、日本ハムとの後期プレーオフ。かつて黄金バッテリーを組んだ盟友・江夏豊がマウンドに立つ中、西武の田淵は1点ビハインドの8回の打席でつなぎのバッティングに徹してヒットを放った。一塁にランナーがいたため三塁に返球される間に田淵は二塁を陥れる。そして満塁からは大田のタイムリーで二塁から逆転のホームイン。ホームランに関する描写はないのだが、この本で一番こころに残るくだりだった。

中年・田淵くんの逆襲

中年・田淵くんの逆襲

 

 

ミスタータイガースとも言われた田淵幸一阪神を出たことは不幸だなとずっと思っていた。もちろん阪神一筋で現役を終えることができたならばそれはそれで幸せだったかもしれない。しかし西武で苦労しながらも新しい打撃の型や活躍の場を手に入れられたのも事実。西武で打倒巨人を果たしたからこそ正力松太郎賞にも輝けた。「西武に来て本当によかった」。本に書いた言葉は素直な気持ちだろう。西武で結果を残すためには……田淵は田淵なりに必死で西武ライオンズという新しい環境に順応していった。それが好結果につながったのではなかろうか。

言うは易し、行うは難し。やらなきゃいけないな、と思うことをすぐやっていたら、結果は変わっていたのだろうか。今さらながら胸に手を当ててみる。変化するのは苦手だから、田淵のように瞬時にフォームを変えるのは躊躇してしまう。順応力があればな、といつも思う。それだけに今回田淵の本を読んで、うまくいかない時はそこでやれる限りのことをやるしかないのだな、とあらためて思った。そういう環境をまず受け入れるしかないのだな、と。田淵は代打要員でいいから巨人行きてぇなぁ的な心境の時もあったそうだが、そのモヤモヤを吹き飛ばしたのはやっぱりホームランだった(南海戦での代打逆転ツーラン)。「ホームランアーティストの美学と力学」、今何となくモヤモヤしている方にはおすすめです。ぜひご一読ください!

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貪欲に教えを請う~ソフトバンク甲斐拓也がヤクルト嶋基宏と合同トレーニング

ソフトバンク】甲斐、9日からヤクルト嶋と合同自主トレ「1日中ずっといる」、というスポーツ報知記事を読んだ。他チームのキャッチャーと一緒のトレーニング。ひと昔前なら考えられないことではないか。まあ、嶋も楽天からヤクルト、つまりパ・リーグからセ・リーグに移ったからできたことだよなと思ったら何と2回目だった。前回はまだ「楽天の嶋」だった。同一リーグのキャッチャー同士が一緒にトレーニングをする。いちいち目くじらを立てる行為は古いのかもしれない。

筆者は是非を聞かれたら「あり」だ。合同トレーニングとはいえ実質、甲斐が嶋に弟子入りしているようなものだ。球場入りから食事、野球談義まで、学びたい人の側にずっといる。それができるのはものすごく恵まれている。甲斐は代名詞でもある強肩が売りだが、2019年は打撃が向上。それでついに1億円プレーヤーになれたのだが、もう一皮むけるとしたらリードやリーダーシップだろう。嶋は経験豊富であり、楽天の顔でもあった。甲斐が弟子入りを望むのもうなずける。他チームのキャッチャーに学ぶ是非はあろうが、私は貪欲に教えを請う甲斐の姿勢には好感を持った。

嶋は嶋で、悪い気もしないだろう。甲斐からのラブコールは自分の存在意義を再認識させてくれたのではないか。自分を慕うキャッチャーに果たしてどのくらい、どのように教えるのか。手取り足取りは教えず見て学ばせるのか。もちろんまだまだ現役だから手の内を全て明かす訳にもいくまい。嶋がどんな塩梅で甲斐に接するのかは興味深い。

また、嶋にもメリットはあると思う。伸び盛りのキャッチャーがすぐ側にいるのだ。すごくいい刺激になるのではないか。甲斐は甲斐で。嶋は嶋で。二人のキャッチャーの合同トレーニングは2020年シーズンにどう影響するのか。楽しみにしていよう。

我が道を行き結果を出す~箱根駅伝、創価大の嶋津ミズノ履きヴェイパーフライ封じ

創価大9位初シード 嶋津、ヴェイパー無双阻止!ミズノ社製シューズで区間新」というデイリースポーツ記事の見出しについ指が伸びた。箱根駅伝を席巻したヴェイパーフライに注目が集まる中で、それではない靴で結果を出した創価大学の嶋津雄大、何てカッコいいんだキミは。

創価大学駅伝部 箱根への道2020

創価大学駅伝部 箱根への道2020

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 潮出版社
  • 発売日: 2019/12/05
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

高校駅伝ニューイヤー駅伝、そして箱根駅伝。ピンクやらオレンジのシューズが目立った駅伝シーズン。ナイキのヴェイパーフライが大注目だ。天候に恵まれたとはいえ、これだけ好記録が続出したらシューズ効果と見るのは当然。そんな中で創価大学の嶋津はミズノ製シューズで区間新。最終10区の記録更新は13年ぶりとか。いかに嶋津の記録がすごいかが分かる。

デイリーの記事が面白かったのは嶋津がライトノベル小説を書いていることに注目した点。つい先日、陸上競技異世界をテーマにした作品を書き上げたと紹介していた。何それ!面白そう……。何せ現役ランナーだからなぁ。記事によれば、目標設定用紙に「自分がシード圏内でゴールテープを切る瞬間までを物語に仕立てて」提出。嶋津は実際、9位でゴールしたので記事にある通り「ノンフィクション」になった。面白いエピソードだ。

箱根駅伝 ナイン・ストーリーズ (文春文庫)

箱根駅伝 ナイン・ストーリーズ (文春文庫)

 

 

嶋津は網膜色素変性症だという。初めて聞いたが「暗いと見えづらい」ため、練習に支障をきたしてしまう。それで嶋津はどうしたのか。何と高校時代には電気のついた廊下を走ったのだという。しかも何十往復も。単調な練習をしたこともすごいなと思うが、それをやろうという執念に胸を打たれる。

あまりに細かすぎる箱根駅伝ガイド2020 (ぴあ MOOK)

あまりに細かすぎる箱根駅伝ガイド2020 (ぴあ MOOK)

  • 作者:EKIDENNEWS
  • 出版社/メーカー: ぴあ
  • 発売日: 2019/11/26
  • メディア: ムック
 

 

病と言えば5区を走った日体大の藤本珠輝は全身脱毛症という。初めて見た時は今時ハチマキなんて古風だなと思ったが、これはウィッグを止める工夫だった。実況のアナウンサーがそれを披露した時は、とんでもない個人情報の暴露と思ってしまったが、暴露も何も藤本は病を公表していた。自分が頑張ることで勇気を与える。その思いは箱根駅伝での力走で十分伝わったことだろう。

少しでもタイムや勝利にこだわろうと道具を積極的に求める姿勢は素晴らしいと先日記事を書いたが、嶋津のように我が道を行き結果を出すのもカッコいい。ヴェイパーフライ旋風が吹き荒れた第96回箱根駅伝だったが、ミズノのシューズで区間新。厚底シューズの記事が目立つ中で嶋津に注目したデイリーのファインプレーもよかった。わが黒柴スポーツ新聞も、アクセスをいただく工夫は世間並みにこだわりつつ、個性を大切に書いていこう。

回数に縛られない~ライオンズの生き証人、東尾修「ケンカ投法」を読んで

練習でも何でも、何回やろうと目標を作るタイプだ。しかし回数じゃないんだ、とバッサリやられた。東尾修著「ケンカ投法」(ベースボール・マガジン新書)に書いてあった。何球投げるかということが大事ではない。肝心なのは中身だ、という。

ケンカ投法 (ベースボール・マガジン社新書)

ケンカ投法 (ベースボール・マガジン社新書)

 

 

投げる下半身は傾斜のあるマウンドでつくるのが持論だという。走れ走れという論は金田正一鈴木啓示が知られているが、東尾修いわく、ランニングはあくまでも準備。いくら走っても、投げる下半身はできないのだそうだ。仕事に置き換えたら、OJTと言えようか。基礎体力と実技込みの体力は違う。そこは何となく分かる気がする。

投げたらアカン!―わが友・わが人生訓

投げたらアカン!―わが友・わが人生訓

  • 作者:鈴木 啓示
  • 出版社/メーカー: 恒文社
  • 発売日: 1985/04
  • メディア: 新書
 

 

東尾修は毎日ブルペン入りした。でもガンガン投げてばかりではない。そこは体調、コンディションを見た上で。調子がよければどんどん投げる。その結果投げ込みができて、結果的に何球投げたというのであれば回数に意味があるというものだ。なるほど。先日読んだ山本昌著「133キロ怪速球」(ベースボール・マガジン新書)の回でも書いたが、立てた目標の消化の仕方や、回数に縛られないといった考え方はこの正月新しい発見だった。継続することや柔軟な思考の大切さを意識しよう。

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「ケンカ投法」でもう1カ所、印象的に残ったのは「配球」について。配球を云々できるのはそこに投げきれる人。投げられない人は投げたい球を投げればいい、という直球の論にはギャフンと言わされた。超一流にも配球は関係がない。きっちり四隅に投げれば打たれないから、という理由にも唸った。やっぱり一流はすごい。

私の真実―わが悔いなき野球人生

私の真実―わが悔いなき野球人生

 

 

コントロールに自信があった東尾修をして通算成績は251勝247敗。勝ち越しはわずか4だ。本にも書いてあるが、東尾の在籍した西鉄ライオンズは栄光からどん底に落ちた頃。黒い霧事件の余波で東尾はまさにOJT、投げながら打たれながら育った。「ケンカ投法」の巻末に年度別成績が掲載されているが、リーグ最多被安打が7回。リーグ最多失点6回。リーグ最多敗戦が5回。その多くは西鉄、太平洋、クラウン時代だ。西武ライオンズで200勝に到達した時点では214敗していた。引退の年でさえ5完投していたのはびっくり。時代が違うとはいえ、実戦で鍛えられた東尾修はすごいなとあらためて思わされた。マニアはこの見開き2ページだけでも楽しめる。

しのぎを削った門田博光落合博満、デービス事件の背景、広岡達朗監督との確執や引退の引き金……箕島高校時代から面白いエピソードが満載。ちょうど今年はライオンズ命名70年だ。西鉄ライオンズから西武ライオンズ黄金期までを知る生き証人の東尾修を通じて、ライオンズの歴史もなぞれるお得な一冊だった。ライオンズファン、コアなプロ野球ファンにもおすすめ。機会があればぜひ手に取ってみてください。

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まずは履いてみる~第96回箱根駅伝でヴェイパーフライ旋風

ヴェイパーフライ。箱根駅伝で話題沸騰となり、初めて知った。高校駅伝でピンクのシューズがやたら多いなと思っていたが、箱根駅伝でもピンクのやらオレンジのやら。2020年の箱根駅伝往路は高速レースだったが、このナイキの厚底シューズがよい成果につながったのかもしれない。Amazonで探してみましたが、あっているだろうか?

シューズの詳しい機能は専門家や製造元におまかせするとして、ランナーでもない筆者は思う。シューズの機能は素晴らしいのだろうが、まずは履いてみようという姿勢がいい。1足3万円らしいが、相場が分からないので高いとも安いとも言えない。庶民の感覚では安くない。だが、これがトレンドならば、学生ランナーたちがこぞって履くのはあり。いや、むしろそうあるべきだと思う。かくいう筆者にはそういう執念が足りない反省があるからだ。昔から変なところで意固地。みんなが取り入れるならば取り入れない。本心はみんなと同じであることにものすごく心地よさを感じるくせに、だ。何でも試してみる。それで自分に合っていたら取り入れたらいいだけなのに。草野球をやっていた時もそうだ。ビヨンドマックスというカーボン素材を生かしたバットが登場した時は、チームで早速取り入れた。しかしそれに頼るのもね、と筆者は使わなかった。そういうところだ。打てない、飛ばない人だからこそ道具を上手に使えばよかったのに。箱根駅伝に出るくらいだから、出場するランナーはヴェイパーフライを履かなくても、自分の力を発揮することができればよい成績を残すと思う。だが道具を上手に使えばさらによい成果が出せるかもしれない。そう、ヴェイパーフライを履くという行為は勝つためにはどんなことも妥協しない、という意思の一つの表れに違いない。電子マネーもアプリも。話題になったものを敬遠してしまう傾向は依然として消えない筆者。ランナーではないからヴェイパーフライを買うことはなさそうだが、流行りに飛び付くという意味ではなく何かを成し遂げたい、そう欲する場面では妥協せず道具を求めていこうかなと切り替えてみよう。ナイキのシューズが大盛り上がりしているのを、アシックスやミズノ、アディダスなど他のメーカー担当者はどんな気分で見ていただろうか。モノ系で見るもう一つの箱根駅伝も非常に興味深い。

箱根駅伝、新興勢力と伝統校~青山学院大を追った東京国際大

第96回箱根駅伝が1月2日に行われ、青山学院大学が3年ぶり4度目の往路優勝に輝いた。青学の地力の強さを感じた大会だったが、黒柴スポーツ新聞的には2位の国学院大学にも、3位の東京国際大学にも注目した。この2校で箱根を走ろう、勝とう、という志が素晴らしいからだ。

 

筆者は伝統とか名門に力強さを感じるタイプ。歴史は一朝一夕では作れない。だからこその価値を感じる。もし幸運にもたぐいまれな脚力を授かっていたら、箱根駅伝の常連校に入ることで箱根駅伝を目指していたと思う。また実際そうしている人もたくさんいる。

箱根駅伝出場校や優勝校はひと昔前から様変わりした感がある。筆者が箱根駅伝にハマりだしたころは山梨学院やら早稲田、順天堂大学が強かったし、神奈川大学駒沢大学の時代もあった。近年は青山学院大学東洋大学などが牽引した。帝京大学上武大学なども定着した。しかしもはや毎年言われる気もするが戦国時代の様相で、山梨学院も上武大学も今回は出られなかった。名前だけで箱根駅伝には出られない。

箱根駅伝公式ガイドブック2020 2020年 01 月号 [雑誌]: 月刊陸上競技 増刊

箱根駅伝公式ガイドブック2020 2020年 01 月号 [雑誌]: 月刊陸上競技 増刊

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/12/20
  • メディア: 雑誌
 

 

とはいえ伝統校にはノウハウやら経験があるから新興大学よりは若干有利だと思う。その意味では東京国際大学が伝統校を抑えて一時首位を走ったことは本当に素晴らしい。そして筆者はあることを思い出した。そういえば東京国際大学の選手、前に見たなあ、と。2017年の関東学生連合で幻の区間賞だった照井明人選手(当時4年)だ。

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当時の記事でも書いたが学生連合の選手には貴重な経験を出身大学に持ち帰るという、もう一つの重要なミッションがある。規定により照井選手には区間賞が与えられなかったが、箱根駅伝の貴重な経験を後輩たちに託すことができた(東京国際大学箱根駅伝初出場自体は照井選手が3年の2016年)。あの「東京国際大」というユニホームの文字をアピールしながらゴールした場面は、これから歴史を作ってくれよという先輩からのエールに思えた。

東京国際大学 (2020年版大学入試シリーズ)

東京国際大学 (2020年版大学入試シリーズ)

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 教学社
  • 発売日: 2019/08/28
  • メディア: 単行本
 

 

そうした先輩たちの思いに後輩たちは見事に応え、2020年の大会は予選会トップ通過で参加決定。からの本戦3位だから関係者も学生たちも本当にうれしかっただろう。往路最終5区では一時4位に後退したが、4年の山瀬が驚異の粘り。ゴール前で東海大学を抜き返した。何という根性。正月からいいものを見せてもらった。 

あまりに細かすぎる箱根駅伝ガイド2020 (ぴあ MOOK)

あまりに細かすぎる箱根駅伝ガイド2020 (ぴあ MOOK)

  • 作者:EKIDENNEWS
  • 出版社/メーカー: ぴあ
  • 発売日: 2019/11/26
  • メディア: ムック
 

 

箱根駅伝のテレビ中継や東京国際大学のWebサイトによれば、部員3人からのスタート。箱根駅伝を目指すだなんて、笑う人さえいたかもしれない。箱根駅伝目指すなら実績ある大学だろう、と。しかし新興勢力には歴史を作るという楽しさがあったことだろう。伝統をつむぐにはつむぐなりのプレッシャーがあり、やりがいがあることだろう。どちらが優れているとかいいとは言わない。ただ、歴史は自分たちで作るんだという気概は見ていて気持ちのよいものだな、と思った。それは新興勢力がチャレンジャーである時期ならではの感動なのだけれども。

箱根駅伝ガイド決定版 2020 (YOMIURI SPECIAL 127)

箱根駅伝ガイド決定版 2020 (YOMIURI SPECIAL 127)

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 読売新聞社
  • 発売日: 2019/12/06
  • メディア: ムック
 

 

予選会で危うく出場権を失いかけた早稲田がきっちり10位以内に入ったのはさすが。こういう伝統校の粘りも素晴らしい。筆者の母校、法政大学は1区から最下位と苦しかったが山のスペシャリスト青木の踏ん張りで16位まで盛り返した。往路を制した青山学院大学の優勢は間違いないが東京国際大学がどこまで粘れるか。昨年覇者の東海大学はどこまで巻き返せるか。2位国学院大学、3位東京国際大学、4位東海大学まで往路新記録というスピードレースだったが、新興勢力も伝統校も復路で、日頃の練習の成果を十分発揮してもらいたい。

 

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続かない苦しい努力はしない~中日・山本昌「133キロ怪速球」を読んで

2020年は読書に力を入れよう、そう考えている。年末にいくつか読み、元日も続きを読んだ。読み終えたのはこれ、山本昌著「133キロ怪速球」(ベースボール・マガジン新書)。私はソフトバンクファンだから元日から山本昌じゃなくても、とも思ったが、なかなかためになるくだりがあった。読書イヤーとしては幸先いい。

 

133キロ怪速球 (ベースボール・マガジン社新書)

133キロ怪速球 (ベースボール・マガジン社新書)

 

 

 

本の中で山本昌は、自分は特別の才能の持ち主ではないと表現し続けていた。本の最後にもそう書いていた。名球会入りしているし、ノーヒットノーラン(しかも史上最年長)達成者でもある。最多勝3回、最優秀防御率沢村賞にも輝いた。特別な人でしょ、と今でも思う。しかし「133キロ怪速球」を読むと、数々の運や縁を大切にし、ひたむきに野球を続けてきたからこその成績だということが分かった。

 

レジェンドの軌跡 山本昌の32年

レジェンドの軌跡 山本昌の32年

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 中日新聞社
  • 発売日: 2015/11/20
  • メディア: 雑誌
 

 

 

また、山本昌は10.8の当事者でもあり(登板機会はなかったが)、その内幕にも触れている。その日は巨人が勝ったので巨人が優位だったと思いがちだが、巨人の投手のやりくりは厳しかったこと、そして中日は勝つムードがあったと書いてあった。10.8については鷲田康著「10・8 巨人VS.中日 史上最高の決戦」が詳しいが、今回山本昌の証言も興味深く読めた。

 

10・8 巨人vs.中日 史上最高の決戦 (文春文庫)

10・8 巨人vs.中日 史上最高の決戦 (文春文庫)

 

 

 

「133キロ怪速球」は七つの章から成っている。一番面白く読んだのは選手時代のエピソード以上に第7章の「正しい努力の方法」。本の帯に「小さな努力をコツコツと」と書かれていることに後から気が付いたが、そういうことが書いてある。中でも「続かない苦しい努力はしない」という小見出しが印象的だった。こういう考え方もあるんだな、と勉強になった。努力を続けるのにもコツがある。やるかやらないか、じゃなくて、続けてやるにはノルマを減らしてでもやる、でもそうする代わりに続けるのだ、と書いてあった。山本昌は人に誇れる才能があるとするなら「継続力」なのだそうだ。

 

継続する心

継続する心

  • 作者:山本 昌
  • 出版社/メーカー: 青志社
  • 発売日: 2019/03/22
  • メディア: 新書
 

 

 

第7章ではライバルの存在にも触れている。初登板ノーヒットノーランの近藤真一、エース今中慎二山本昌に刺激を与えた二人のピッチャーの存在は興味深かった。刺激を与える、与えられる。そんな関係の人がいるのは素晴らしいと思う。

 

悔いは、あります。

悔いは、あります。

 

 

 

というわけで、山本昌に興味がある方、努力について考えてみたい方にはおすすめです。どこかで見つけたら手に取ってみてください。それでは、2020年も黒柴スポーツ新聞をどうぞよろしくお願いいたします。

2019年ホークスコラムで一番シェアされた選手は?~意外、でも納得のあの人が1位

いろんなメディアが1年を振り返る企画をやっている。それにつられるわけでもないのだが、記録もかねてやっておこうかなと思った。果たしてこのブログ「黒柴スポーツ新聞」で2019年最もシェアされた記事は何なのか? そして読者のあなたがシェアしてくださった記事はランクインしているのか……

 

主にソフトバンクの選手や戦術、試合結果について2019年シーズン中に書いたブログ記事は110本だった。我ながらよく書いたなと思うが、その興奮や感動、落胆まで共有できたらとホークスファンの皆さんが集うコミュニティーにも記事を投稿させていただいている。その結果、たくさんシェアしていただけた。ブログはどうしても独善的になる懸念があるため、評価を今後に生かす狙いもある。では、いったいどんな記事が目の肥えたホークスファンに受けたのか。シェアの数をチェックしてみた。

【第5位】長谷川勇也の回、82シェア

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ベテラン長谷川勇也は2019年なかなか1軍に定着できなかった。しかし昇格の都度しっかり結果は残した印象。コアなファンはいるのでこの黒柴スポーツ新聞で取り上げると、たくさんのシェアを獲得している模様。2020年はバレンティンが加入し長谷川は若手とも助っ人たちとも競争しなければならないが、変わらずいぶし銀の活躍をしてもらいたい。

 

【第4位】平石洋介の回、85シェア

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2019年に楽天を率いた平石洋介が退団したのだが、ソフトバンクが手を差しのべた。最下位からクライマックスシリーズ進出を決めただけに監督として力を発揮するのはこれからという時。しかし楽天三木肇を1軍監督に据えた。だが捨てる神あれば拾う神あり。シーズンオフはFAなど選手の動向に目が行きがちだが平石に着目したソフトバンクはしたたかだ。この記事がシェアされたのはその辺りと、平石への同情票、そして応援票があると見た。

 

【第3位】高谷裕亮の回、90シェア

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高谷が日本一の胴上げキャッチャーたりえたのは抜群の安定感があるからこそ。高谷がいるからこそ、ここ一番では思いきって甲斐に代打が出せるメリットもある。頼れるキャッチャー高谷の評価はもっと高くていいんじゃない?と一石を投じてみた。このあと契約更改した甲斐は1億円を突破。高谷は3分の1だが出場試合数が違うから仕方ないか。それでもこのシェア数を獲得したのはひとえに高谷の人柄、存在感からくるものと思う。

 

【第2位】川島慶三の回、104シェア

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出ました、黒柴スポーツ新聞編集局長イチオシの川島慶三。スタメン起用されたらradikoにかじりついて聞きたくなる元気玉左キラーとして重宝され、しぶとく選ぶ四球はまさに芸術品。今何をやるべきかが分かっている選手。バレンティンの移籍に際しては背番号4を譲る男気も。2019年たった2つの3桁シェアの一人が川島慶三なのはコアな読者がホークスファンである何よりの証拠。

 

【第1位】牧原大成の回、118シェア

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何と1位が牧原。これは正直、筆者も予想せず。しかし声を大にして言いたい。2019年、けが人、離脱が相次いだホークスが優勝争いできたことに関して、牧原大成が内外野、献身的に頑張った功績は大きい。たぶんホークスファンはそれが分かっている。一番バッターとしては物足りない面があったが、西武戦で見せたあの外崎のライナーに食らいついた場面は本当にしびれた。果たして牧原は2020年、どういう形で試合に出るのか。さらなる活躍を期待したい。

 

というわけで第1位は牧原大成だったが、まあ松田宣浩はいないわ、内川聖一もいないわ、千賀もいないわで渋いメンバーがシェア数上位を独占した。筆者が好んで渋い選手にフォーカスしている面もあるが、スター選手ばかりでなく控えも含めて素晴らしい選手が持ち味を発揮しているからこそ、ホークスが日本シリーズ3連覇しているとも言える。2020年もホークスを応援しながら毎日楽しく過ごせたらと思う。2020年も黒柴スポーツ新聞への応援をどうぞよろしくお願いいたします。

伝統とファンサービス~ソフトバンク内川聖一がユニホームで持論

ソフトバンク内川が球団に提言 花盛り「特別ユニホーム」に一石、という西日本スポーツ記事を興味深く読んだ。ファンサービスの重要性は認識しつつ、年に1度クラスの地方球場ならばそこは普段のユニホームでやる方が子どもたちの心に焼き付くのでは?という持論だ。これを見て、今の黄色を生かしたユニホームも伝統の域に達したなという発見があった。

 

元野球カードコレクターとしては、「限定」とか「復刻」というキーワードにめちゃくちゃ弱い。希少価値に飛び付いてしまうのだ。それがコレクター心理、ファン心理というもの。別に強欲ではない。また、球団も記念ユニホームでしこたま稼ごうとも思ってはおるまい。実際球団が鷹ガールにピンク基調の記念ユニホームを配るなどしており、無料で記念ユニホームをゲットしてきたファンも多い。球団とファンが一体となり盛り上がれる。記念ユニホームは素晴らしいアイテムだと思う。

 

内川聖一とてそこは十分理解している。からの持論。内川自身、少年時代の巨人対ダイエーのオープン戦で見たユニホームが忘れられないという原体験がある。これが強いホークスのユニホームなのだ、と。そう思わせられるほどの自負がある。そういうことではなかろうか。先日見つけたFull-Countの記事の見出しは「強すぎるソフトバンク、優勝5度に勝率5割未満は1度もなし…10年代パ最強チ―ムは」。そう、ソフトバンクのユニホームに強さを感じても当然の成績なのだ。

 

ソフトバンクDeNA楽天と、IT系の親会社を持つ球団もぼつぼつ伝統を意識してもおかしくない年数になってきた。その中でもソフトバンクの成績には安定感がある。つまりファンサービスの一つである「勝利」はしっかり供給してきたのだ。なかなか生で見ることがかなわない地域のファンだからこそ、その目にしっかりと強いホークスのユニホームを焼き付けてほしい。内川聖一が言いたかったのはそういうことだと思う。ソフトバンクにはこれからも、期間限定などで記念ユニホームを上手に活用しながら、強いホークスを印象付けてもらいたい。

探究心と努力~代打本塁打27本の高井保弘と世界の盗塁王・福本豊

1年を振り返る時期。2019年になくなった一人の高井保弘氏(以下敬称略)について、澤宮優さんが追悼記事を書かれていた。タイトルは【追悼】「代打で世界一になった男」元阪急・高井保弘の勝負師人生。昭和の話ゆえに若い人からしたら遠い世界の話に聞こえるだろう。しかし、時代は変わっても努力の大切さは変わらない、ということを私は再認識した。

高井保弘といえばメモ。投手のクセを記録したメモについてはこの黒柴スポーツ新聞でも取り上げた。

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澤宮優さんによる追悼記事を読んだ後で、同じく阪急にいた福本豊の本「走らんかい!」(ベースボール・マガジン新書)を読んだ。そして高井と福本に共通点を見出だした。それは優れた探究心だ。高井は投手のピッチングフォームのわずかな違いからから球種を割り出しひと振りに懸けた。福本豊は投手それぞれのタイミングを熟知した上で盗塁を積み重ねた。いずれも投手を丸裸にすることが飯のタネになったわけだが、そういう努力をしない人はいくらでもいる。代打本塁打27本の世界記録と通算1065盗塁(元世界記録)はたゆまぬ努力の結晶なのだ。

走らんかい! (ベースボール・マガジン社新書 28)

走らんかい! (ベースボール・マガジン社新書 28)

 

 

厳しいプロの世界だから、やらなければ生き残れない。高井保弘にしてみれば代打で結果を出すことがレギュラー定着への道だった。福本豊にしてみれば走ることと守備で頭角を表すことができた。努力することは存在感を高めること。そう言い換えていいのかもしれない。

代打の神様: ただひと振りに生きる

代打の神様: ただひと振りに生きる

 

 

今年1年、自分はそういう努力をできただろうか。残念ながら、中途半端に終わった気がする。やるか、やらないか。何かを継続してやることがまず素晴らしいのだが、己の仕事に徹底的に向き合うこと。どうしたら壁を打開できるのか必死になって考えること。高井保弘福本豊もそこを妥協しなかったから世界記録を作れたのだと思う。今さら自分に世界記録など狙えるわけもないのだが、二人の姿勢は見習おうと思う。

エースの系譜を受け継げ千賀~20勝の斉藤和巳、18勝の杉内俊哉、17勝の攝津正

千賀の3億に対して、というよりも13勝に対して物足りないというコメントがヤフコメに多い印象を受けた。私は3億に全く驚かなかった。そして15勝やら18勝してこそエースという意見をもっともだと思う。また、それを法外なリクエストとも思わない。なぜなら千賀だから。千賀なら15や18行けるんだから、という考えからのヤフコメと見た。別に難癖つけてるとは思わなかった。

 

一つだけ付け加えるなら、4年連続2ケタだからよい評価を得ているということ。単年15勝も素晴らしいが、毎年2ケタは同じくらい、いや、それ以上に素晴らしいと思う。もはや千賀なら2ケタ勝つのは最低ラインの数字だ。

 

NPBのサイトにある千賀の年度別成績を見て気が付いた。2019年は227奪三振の一方で75与四球。前年が58だから際どいところに投げすぎなのではないか。球数も要するし、そこを改善することで180.1回だったのだが投球回数を200に近づけられるはずだ。

 

ヤフコメでなるほどなと思ったのは8敗への指摘。なるほどなと思った。千賀にしては負けている印象を持つ。先ほど4年連続2ケタ勝利に触れたが、この間の負けは3→4→7→8。エースになっていく過程でしんどい試合や重圧が掛かる局面での登板が増えていくから負け数が増えるのはやむを得ない。しかしやはりエースであるならば負けてはいけない。それがエースであり、そう見られるのはエースの宿命なのだ。

 

斉藤和巳杉内俊哉、攝津正。ホークスの歴代エースは背中で語る印象だ。エースは負けない。それを体現してくれている。斉藤和巳の20勝3敗、16勝1敗(!)、18勝5敗。杉内俊哉の18勝4敗、15勝6敗、15勝5敗。攝津正の17勝5敗。印象的な成績をピックアップするとまさにエースとうなってしまう。そしてカッコいい。そして思う。千賀にもこんな成績を残してもらいたいな、と。アメリカに行くのもよかろう。それが千賀の夢ならば。しかしその前に。千賀にはぶっちぎりの成績でパ・リーグ最多勝に輝いてもらいたい。強い、負けないエースの姿を、久しぶりに見てみたい。

 

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変えざるを得ないんだよ~王貞治がソフトバンク内川聖一にエール

「変えざるを得ないんだよ」
世界の王貞治はやはりすごいなと唸ってしまった。元ネタは西日本スポーツ記事、王会長「変えざるを得ないんだよ」名球会で正面に座った内川へのゲキ。内川を叱咤激励する内容だ。

 

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発言を詳しく振り返る。
「打撃フォームも何年型、何年型とあっていい。当然体だって変わってくるし、相手だって変わってくる。変えざるを得ないんだよ」
内川聖一は2020年、38歳のシーズンだ。王さんは同じ年齢の時、打率3割、39本塁打だったそうだ。王貞治クラスだとそれは才能で打ったのだと思われがち。もちろん天性のものもあったに違いないが、やはり裏では相当の努力があるに決まっている。ここで注目したいのは努力の仕方。王さんと言えば一本足打法だから、それを追求していけばよさそうだが、発言から深読みすれば一本足打法にも何年型、何年型とマイナーチェンジを積み重ねていたとも受け止められる。確かに年齢だけ考えても毎年違うのだから、何歳なりの、というのがむしろ自然だ。

 

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定番にこだわるのが職人と思いがちだが、型に固執してはむしろ可能性を狭めてしまう。また、年齢や環境に応じてやり方を変えていかないと結果は出せないし、出せても無理が重なるのではないか。2019年、内川聖一は不振に陥ったが本人的にはいつも通りのバッティングをしただけかもしれない。でもとらえられない。とらえきれない。とらえたと思ってもほんの少し芯からずれている。素人には分からないほどのズレだろうが、その誤差、狂いが命取りになった。そういうことだろうと思う。

そして内川はバットやタイミングの取り方を改善しようとしている。そのことは以前書いた。私は稀代のヒットメーカーの内川聖一がなお結果を求めて努力しようとしている姿に感動するのだが、今回王さんの「変えざるを得ない」を読んで、自分の甘さをあらためて感じた。私は変化を極度に恐れているな。だから成長しないのだ、と。変わらずにいられるならそれが一番楽。でも王さんが言うとおり、相手(環境)は変わるのだ。ならば順応していくしかない。適応力なきものは生き残れないのだ。すぐに変われるはずもないのだが、意識は変えられる。変わりたいとか変わりたくない、じゃなくて変えざるを得ない。今の自分の姿に迷う時は、王さんの言葉を噛みしめよう。

男気見せた川島慶三の新背番号は99~バレンティンとナインを橋渡し

見事だ。
見事すぎる。
川島慶三が背番号を変更した。ソフトバンクバレンティンを獲得。バレンティンはヤクルト時代に背番号4を背負っていたため、川島慶三自ら球団に、背番号4を譲ると申し出たのだという。どうやら4はバレンティンが付けるよね、とソフトバンクファンは分かっていたのだが私は仰天した。川島慶三が新しく付ける背番号が99だったからだ。

99はかつて中村紀洋が背負ったことがある。プロ入り初の番号66をひっくり返したと本人が語ったとの説明をWikipediaで見つけたが、中日で育成を経て背番号99を背負ったのを見ると崖っぷち感があった。松坂大輔も同じく中日で99を背負ったが、崖っぷち感と、足したら18になる両方の意味合いが感じられた。川島慶三の背番号99は自分で選んだのだろうか? コメントによれば球団は、背番号4を川島慶三に付けてほしいと話したという。それは川島がバレンティンに譲ったわけで、話の流れからしたら球団が提示しそうな番号ではない。となると川島慶三が選んだのかもしれない。だとしたらどんな思いを込めてのことなのか、詳しく聞いてみたい。左殺しで背番号4。必殺仕事人感が半端なかったので私は川島慶三の背番号4が大好きだったのだが、支配下登録で最も重い背番号99もなかなかのインパクトだ。99のグッズ買って!と川島はコメントしていたが、私も何かしら身に付けたい。バレンティンは緩慢なプレーをしたり私生活でお騒がせしたりと、チームに馴染めるか不安視しているファンもいる。ましてや年俸5億円。日本シリーズで巨人に圧勝し、もはや補強は要らんのじゃないの?と言いたくもなるが、念には念を入れての獲得なのだろう。2019年はデスパイネ、グラシアルが相次いで離脱した時期もある。リスク管理の範疇かもしれない。川島慶三はもろもろの事情は分かりつつ、しかしバレンティンのことはリスペクトしているとの姿勢を貫いている。そうやってバレンティンとチームの橋渡しをしている。たまたまヤクルト時代に同僚だっただけかもしれないが、川島は日本ハム→ヤクルト、ヤクルト→ソフトバンクと移籍を経験しているだけに、チームに溶け込む難しさやコツを知っていて、バレンティンのために一肌脱いだのだろう。川島慶三が背番号を譲るくらいの選手だ、となればイメージは変わってくる。もちろんバレンティンにはそれ相応のプレーが求められる訳だが。……からの川島慶三背番号99である。カッコよくないはずがない。背番号99が2ストライクから粘って四球を選ぶのかな。背番号99がライト前に打ってランナー1、3塁になるのかな。背番号99が左腕対策で1番バッターになるのかな。何かをやってくれる背番号99に期待しよう。

記憶に残る仕事をする~4打席連続本塁打の醍醐猛夫氏死去

元ロッテの醍醐猛夫氏(以下敬称略)が201912月11日、亡くなった。定期講読している新聞では、訃報記事の見出しが「4打席連続本塁打」となっていた。それはそのまま、プロ野球ファンが持っていた醍醐猛夫の記憶だった。私が、見出しを付ける整理記者であってもそうしたに違いない。訃報記事の見出しが故人のすべてを物語る訳ではないのだが、やはり一人の人間が人生で何かを成し遂げる、という意味では、見出しになるようなインパクトのある仕事を残したいものだ。

 

消えた球団 毎日オリオンズ1950~1957

消えた球団 毎日オリオンズ1950~1957

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: ビジネス社
  • 発売日: 2019/06/03
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 

醍醐の4打席連続本塁打は知られている話だが、今回訃報記事で気付いたことがある。醍醐は通算本塁打が81本だったのだ。18年の現役生活。単純計算で年間平均5本以下である。その男が4打席連続で本塁打を放つ。そこにしびれた。醍醐の4打席連続は2日にまたがっての記録だが、その2日に何があったのかが知りたい。広島の鈴木誠也は連日サヨナラホームランを放って緒方監督に「神ってる」と言われたのだが、醍醐もまたこの2日間は神がかっていた。

 

私が好きな本のタイトルで澤宮優さんの「燃焼の瞬間」がある。正確には「プロ野球・燃焼の瞬間―宮田征典・大友工・藤尾茂」。巨人の名選手の足跡、そして燃焼の瞬間を丁寧に綴った作品だ。人にはそれぞれ輝き時がある。早くから頭角を表す人がいれば、大器晩成の人もいる。醍醐の場合は早稲田実業時代に王貞治とバッテリーを組み、夏の甲子園に出場。プロ入り1年目から正捕手になっているから、早くから実績が積めていた。だが18年の現役生活の中では正捕手の座を奪われたこともある。4打席連続本塁打を記録したのは現役終盤と言える1971年。結果的には、まだまだやれるという良いアピールになったのではないか。まさに燃焼の瞬間で、気力体力が充実していたからこそ大記録が作れたのだと思う。

 

プロ野球・燃焼の瞬間―宮田征典・大友工・藤尾茂

プロ野球・燃焼の瞬間―宮田征典・大友工・藤尾茂

 

 

 

燃える男と言えば長嶋茂雄。だがみんながみんな長嶋さんのようにいつもいつも燃えられる訳ではない。むしろ燃えられない日の方が多いだろう。だからこそきょうは行けるぞと、何だか調子がいいぞという時には思いきって行動したいものだ。きょうなら結果が出せるかもしれないという日は貪欲に行動する。醍醐のようにとにかくバットを振ってみることで、ものすごい結果が残せるかもしれない。残念ながらその瞬間はいつやってくるかは分からない。裏返せば、だからこそ常に準備をしておかないといけない。自戒を込めて書いておこう。

 

記憶に残る仕事、と言えば醍醐猛夫は「連勝キラー」としても知られる。稲尾和久を20連勝(1957年)で、杉浦忠を12連勝(1959年)と13連勝(1964年)でストップさせる殊勲打を放っている。稲尾も杉浦も球史に残る大投手。しかも連勝中だ。4打席連続本塁打といい、やはりある程度の実力がなければ勝負強いバッティングはできまい。

 

神様、仏様、稲尾様―私の履歴書 (日経ビジネス人文庫)

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どなたかが紹介していたが醍醐猛夫は選手や指導者として、毎日、大毎、東京、ロッテ「オリオンズ」と千葉ロッテマリーンズのユニホームに袖を通したそうだ。これを知っていた方はなかなかの野球通。また、醍醐猛夫がそれだけ球団に必要とされていたことを物語っている。現役生活の安打数は18年間で1132安打だった。プロ野球記録大鑑の名簿には醍醐猛夫の近くに醍醐俊光の名前があった。猛夫の弟だという。醍醐俊光の成績は実働2年で2打数0安打。兄はオリオンズとマリーンズの長きにわたってチームに関わり、弟はわずか2シーズン。兄弟でプロ野球の厳しさをリアルに教えてくれている。


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