黒柴スポーツ新聞

ニュース編集者が野球を中心に、心に残るシーンやプレーヤーから生きるヒントを探ります。

無謀だが真面目な連投防止策を考えてみた~金足農業・吉田輝星をリスペクトしつつ

終わった。100回目の甲子園が。秋田県民の有給消化日が。そして東北の人々が見た、深紅の大優勝旗白河の関を越える夢が。

秋田が誇る「雑草軍団」金足農業が、史上初の2度目の春夏連覇を狙う大阪桐蔭に挑み、壮絶に散った。逆転スリーランに、意表を突くツーランスクイズ。大黒柱のエース吉田輝星だけじゃない、まさに全員野球で全国の高校野球ファンを楽しませてくれた。みんな、ありがとう、と言ってくれるに違いない。

しかし、多くの人は思っているはずだ。最高のコンディションの吉田輝星を、最強の大阪桐蔭打線にぶつけてみたかったな、と。

もちろん、体調管理やリスク管理も含めてのトーナメント戦である。もはや継投は甲子園を勝ち抜く上での常識かもしれない。

実際、1994年の佐賀商業の峯謙介以来、6試合を投げきった優勝投手は出ていない。それでも準決勝までの吉田輝星の力投を見ると、ついに壁が破られるのかと期待したのだが……結局、吉田輝星は5回を投げ被安打12の11失点。甲子園初戦から4試合連続で2けた奪三振だったが、決勝は四つにとどまった。

大阪桐蔭打線が見事に吉田輝星をとらえたのは紛れもない事実だが、吉田に疲労の2文字をダブらせない人はいないだろう。そこが「どうにかならないのか」と思う理由だ。

選手を守る方法として提案されるのが球数制限。よくプロで目安にされるのが100球だがそれだと大概完投できない。つまりピッチャーが複数必要になる。そこがまず問題。才能ある選手が集まりやすい強豪はいいが、公立校は逸材が入って来るのを待つばかりだ。

2番手投手がいなければエースが投げ続けるほかない。今でも公立高校が勝ち進むのは厳しいのに、球数制限をしたらさらに道のりは険しい。ちなみに吉田輝星は最も少なかった準決勝の日大三戦ですら134球。130球なら今と変わらないから、せめてMAX120球と制限した場合、吉田は1試合も完投できなかったことになる。金足農業は粘り強く戦ってきたわけだが、背景に吉田の好投あってこそ。やはりエース頼みの学校は球数制限が導入されると不利が予想される。

BRASS BEST J-POP甲子園

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次に、発想を変えて、試合自体を短くする手。これは解説者の里崎智也が日刊スポーツ記事で言っていてなるほどなと思った(ちなみに球数制限の下りも参考にさせてもらっている)のだが、やはり野球は9回で争ってほしいよなと思う。過去の記録との比較も何かとやりにくくなりそうなので、試合そのものをあまりいじってほしくない。そこで提案なのだが、すぐできそうなのが休養日の追加。欲を言えば決勝前に2日。最低でも1日挟んでもらいたい。球児は若いから1日でもだいぶ回復すると思うが、決勝まで残れるのはたった2チームなのだから、じっくり体調を整えてもらいたいと思う。高校野球ファンはひたすらネット検索やSNSで時間をつぶしたり想像力をふくらましたりできるから2日くらいなら我慢できる(はず)。もうひとつは補強選手制度の導入。都市対抗野球で適用されているのだが、高校野球にアレンジして言えば、同じ都道府県の大会で敗れた学校の選手を借りる。都市対抗だと3人までOKらしいが、高校野球は教育的であるべしなどと必要以上に言う人もいるので遠慮して2人まででいかがだろうか。エースの負担を軽くするため、投手を2人でもいい。バランスを取って投手と打者1人ずつでもいい。2人くらいなら母体の学校のカラーは変わらないのではないか。例えば今大会派手な打ち合いを演じた高知商業は県大会で明徳義塾を撃破したわけだが、そこからエース市川と四番谷合をレンタルする。投手は北代から市川に継投できるし、打線はここぞの時に谷合を代打に送ることもできる(事情が許せばスタメンでもOK)。実際、北代は高知大会から全試合投げきったわけだが、市川と併用したら負担は減っていた。また、敗れた済美戦はあと一本が出ていたら結果は違っていた。結果が出たかは分からないが相手の中矢監督からしたらとっておきの代打に谷合が出てきたらすごく嫌がったと思う(明徳の後輩でもあるし)。補強選手にもメリットはある。何せ甲子園に出られるのだ。県大会で負けた悔しさは何とか消化できるだろう。さらにはプロ入りを目論む選手なら最大のアピールチャンスになる。ライバル校の戦力になることさえ我慢できれば損にはならない。とまあ、選手の負担軽減が少しずつしか進まないことに業を煮やしての、真面目な提案なのだが「明徳と高知商業が一緒にやるなんてありえん!」と一蹴されそうな気配が……同じことは各県で起きること必至。八戸学院光星青森山田早稲田実業日大三……。ライバルゆえに無理な提案ではあるが、このくらい大胆なことをしない限り、公立高校が優勝するのは難しいように思うのだがいかがだろうか(公立にこだわるなら公立同士で選手を融通する手もある)。あの剛腕・吉田輝星をして、最後の最後に「もう投げられない」と言わせた事実を、大会関係者やわれわれ高校野球ファンは重く受け止めねばならない。

甲子園で農業高校が優勝したことはある?~金足農業34年ぶりベスト4に秋田沸騰

秋田の金足農業高校が第100回夏の甲子園で旋風を巻き起こしている。ドラフト1位候補のエース吉田輝星が軸なのは確かだが、3回戦で劇的な逆転ホームランの高橋、準々決勝でツーランスクイズを決めた斎藤&2塁走者の菊地彪吾など、日替わりヒーローが出てきて見ている人を楽しませてくれている。

金足農業の夏の甲子園ベスト4はあのPL学園と好勝負を演じた1984年以来、34年ぶりの快挙。そのPL学園で一時代を築いた桑田真澄が、金足農業対日大三の準決勝前にレジェンド始球式を行うのも不思議な縁だ。34年前は桑田真澄のホームランで金足農業は敗れたが、今回はレジェンドからパワーをもらってほしい。
完本 桑田真澄 (文春文庫)

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当時のPL学園は今で言えば大阪桐蔭。抜群のセンスや能力の選手が集うタレント集団だ。対する金足農業は雑草軍団を自認。これは今も変わらないらしい。農業高校だけに雑草というのも誉め言葉には見えない?が、雑草軍団が決勝でタレント集団の大阪桐蔭と相まみえるともなれば、判官贔屓高校野球ファンはこぞって金足農業を応援するに違いない。そのためにはまず金足農業は準決勝で名門の日大三に勝たねばならないのだが。そして大阪桐蔭を先に書いてしまったが大阪桐蔭とて実力校の済美にまず勝たねばならない。大阪桐蔭には大阪桐蔭の思いがある。みんな大阪桐蔭で甲子園を目指してきた。同じ私立の済美日大三の選手にも当てはまるだろう。こうした強豪と、金足農業のような公立校がぶつかり合うのも高校野球、甲子園の醍醐味だ。まさに100回大会にふさわしい。そこでふと疑問が。過去99回で「農業高校」が優勝したことはあったのか? スポーツ紙のサイトで歴代優勝校を眺めてみたら……答えは、農、いや、NO。中京商業や広島商業松山商業など「商業」はいっぱいあるが農業高校はゼロ。「工業」ならば三池工業があまりにも有名。果たして金足農業は農業高校初の甲子園制覇ができるだろうか?ちなみに戦前1931年に台湾の嘉義農林(かぎのうりん)が準優勝を果たしている(優勝は中京商業)。台湾というのが時代背景を感じさせるが、嘉義農林の活躍については映画化(さらには漫画化、小説化)もされているのでそちらで勉強しようと思う。興味のある方はぜひ。
KANO ―カノ―: 1931 海の向こうの甲子園

KANO ―カノ―: 1931 海の向こうの甲子園

KANO 1931海の向こうの甲子園

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奇しくも嘉義農林関係者はこの第100回大会開会式にユニフォーム姿で参加していた。胸には「KANO」の文字。金足農業のユニフォーム「KANANO」とはデザインこそ違うものの、通じるものはある。嘉義農林がつかめなかった栄冠に果たして金足農業は手が届くだろうか。秋田県民ならずとも目が離せない。

8月20日追記 金足農業は準決勝で日大三を破り決勝に進出しました。おめでとうございます!

甲子園でガッツポーズは悪なのか~創志学園・西投手に球審が「指導」

岡山が生んだ「燃える男」星野仙一ならどう評価するだろうか。創志学園(岡山)の西純矢投手に対し、必要以上のガッツポーズをしないよう球審から指導が行われた。舞台は夏の甲子園。気持ちが高ぶるのも無理はないのだが…

岡山県高校野球本2018

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高野連事務局長によれば大会本部からの注意ではないという(8月15日スポニチ記事より)。審判が見るに見かねて、といったところだろう。映像で見てみたが確かになかなかのもの。体を反らせながらの「チョレイ!」でおなじみの卓球・張本智和をほうふつさせる。

そもそも野球は礼儀にうるさいスポーツ。高校野球ならなおさらだ。試合前は整列して一礼。グラウンドの入退時も帽子を取って一礼。勝ったチームは負けたチームより先に引き揚げるが、その際も破ったチームの最前列にいる監督に一人一人一礼してから出ていく。必要以上に礼儀を求めるのはどうかと思うが、これらからは勝利史上主義は感じられない。あるのは野球ができることへの感謝なり、相手校への敬意といったところだろう。

創志学園の西純矢が相手をリスペクトしていない、とは言わないが、割合としては自分を鼓舞する要素が非常に多いように見える。スポニチ記事によれば長沢監督いわく、ガッツポーズは西の自己表現であり、弱いからこそ取る態度という。

同じ高校野球で活躍した田中将大は現役屈指のガッツポーズ実践者だ。日本シリーズでは派手に吠え、当時巨人のロペスと険悪なムードに。沢村賞選考委員からは少年の模範であれと、マウンド上の態度に注文がついたこともある。

田中将大の場合はエンジンがかかってきたなというのが見ていて分かる。勝負所でギアを上げる。そこで仕留めて雄叫びを上げる。それでも相手に対してやっているようには見えない。

そう、ガッツポーズにもやりようがあるのだ。クールに見える大谷翔平だってここぞの場面では声が出ていた。菊池雄星みたいにうつむきながらパチーン!とグラブをはたいて自己完結する手もある。

自分がやりたいからやる、というのはいかにも未熟。自分さえよければいいのかとも思ってしまう。自分のペースでしか話せない。自分のペースでしか動かない。話を聞かない。そんな方々は社会に一定いて、迷惑この上ない。そういう人にはなりたくないものだ。

創志学園には申し訳ないが、2年生である西純矢の精神的成長を期待する意味でも、この下関国際に喫した逆転負けには大きな意味があったと思う。伸びのあるストレートは一級品。クールに試合運びができるようになれば鬼に金棒だ。

一つ残念だったのは球審からの指導を西は「強い口調」と受け止め、リズムが狂ったと感じていることだ。そもそも原因を作ったのは西だから自業自得にも思うし、敗因をそこに置いてほしくもないのだが。熱くなりがちな選手には特に、的確に指導するためにもイニング間に監督も交えて一緒に「しっかりやろう」と諭すことはできなかっただろうか。今回は非常にレアケースだろうが効果的な指導を求めたい。

また、ガッツポーズ自体は悪くないので必要以上にナーバスにならないでほしい。確かに西純矢が言うように「出てしまう」ものなのだろう。学校によっては一律禁止の所もあるようだがそれも何だか味気ない。相手をリスペクトしつつガッツポーズすることはできるし、そういう人の方が素敵と思う。お互いに力を出しきり、高め合って、これからも熱い試合を見せてほしい。

監督はなぜ投手交代しないのか~高校野球で酷使論、再び

酷暑も相まって、高校野球の投手の起用方法が注目されている。炎天下、エース一人に延々投げさせていいのか。技術、体力共に発展途上の若者を守るのは指導者の責務ではないのか。これらの疑問はもっともだ。

完全保存版 夏の甲子園100回 故郷のヒーロー

完全保存版 夏の甲子園100回 故郷のヒーロー

大阪府知事橋下徹氏も「球数制限は直ちに導入すべき」と主張している(8月14日サンケイスポーツ記事より)。橋下徹氏はさらに「練習日数・練習時間制限を導入して、決められた練習時間でいかに結果を出すかを切磋琢磨させるべき」とも述べた。いかにも合理的な発想だが確かに一理ある。高校生からこうした時間の使い方ができたら社会人になってから苦労しない。
ルポ・橋下徹 (朝日新書)

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効率よく結果を出す、という意味では150球以上も投げてやっと勝つのは対極にあると言える。しかし投げている方も投げ続けさせる方も好んでやっているわけではあるまい。技術的に未熟であることに加え、球児は全力プレーをするから試合がどうしてももつれるのだ。よって球数は増える。

1イニング3アウト。9イニングで27アウト。各打者を初球で打ち取れば理論上27球で完投できる。しかしそんなことはまずあり得ず、だいたいエースでも120球くらい要する。この第100回大会でも注目の1人、金足農業の吉田輝星が初戦の鹿児島実業戦で157球完投(14奪三振)、続く大垣日大戦では154球完投(13奪三振)。打たせて取るより三振が取れるタイプのようだから、どうしても球数はこのくらいいくのだろう。

ここで思うかもしれない。ピッチャー代えたらいいじゃないの、と。確かに二人で分ければ単純に負担は半分。連投してもダメージは減らせる。じゃあなぜ監督は代えないのか。

理由は二つ思い浮かぶ。まず、「代わりはいない」。超高校級、そこまでいかなくともエースクラスは何人もいない。実力が同じくらいであれば監督だって併用は思い付く。調子がいい方から起用して、継投を模索すればよい。柱を何本も育てるのが指導者の役割かもしれないが、やはり逸材はそうそういるものではない。甲子園で活躍するレベルならなおさらだ。結局、最も勝てそうな投手を使い続けることになる。

二つ目の理由は「野球は流れのスポーツ」だから。投手交代はリスクを伴う。例えば前半抑えられていても、2番手が捕まることがある。夏の甲子園史上初のサヨナラ逆転満塁ホームランという奇跡的な結末でかすみがちだがタイブレークにもつれ込んだ星稜対済美では、投手交代が影響を及ぼしていた。星稜の好投手・奥川恭伸がふくらはぎをつって降板。済美は一時6点ビハインドだったが追い付き、死闘を制した。星稜の救援陣もよく投げたが、果たして奥川が投げ続けていたらどうだっただろうか。済美はエース山口直哉が13回、184球を投げきった。愛媛大会から5試合完投。まさに大黒柱だ。試合展開からして中矢監督は代えるに代えられなかったことだろう。延長に入ってからも気迫の投球だったし、代えるのも勇気がいる。奇しくも済美と次に当たるのは、これまた高知大会から投げ続けている北代真二郎がエースの高知商業。北代は初戦の山梨学院戦で9回150球完投。2回戦の慶応戦は121球を投じてまたも完投。高知大会から6試合ずっとマウンドに立ち続けている。特に山梨学院戦では12失点。これは9回では最多失点完投らしい。北代がマウンドを降りる時、それは恐らく高知商業の夏が終わることを意味する。共に四国勢ということ以上に、両エースが地方大会からマウンドを守り続けていることに注目したい。勝ち上がり方からして乱打戦は十分あり得る。それは見栄えもするだろうがエースの負担を考えると、なるべく少ない球数での好ゲームを期待したい。ちなみに、1人で6試合投げきっての夏優勝は、1994年の峯謙介(佐賀商業)以来1人もいない。

猛攻呼んだ高知商業初回の堅守~またも2けた得点で慶応を撃破

高知商業対慶応。最初に書いておくがこの記事は高知商業びいきで進行する。試合展開の予想から書こうと思ったら高知商業は初回いきなりヒットからのスーパー1年生、西村貫輔がタイムリ三塁打。1回戦の山梨学院戦に続き活躍の予感だ。相変わらず笑顔がまぶしい。2点目が取れたらよかったが、後続は断たれた。

さあ高知商業はエース北代真二郎が先発。恐らく北代が降板する時は高知商業がかなり劣勢だろう。初回いきなりヒットを許すと次は死球で慶応チャンス。さらにヒットで無死満塁。打者は4番。三塁西村を強打が襲い打球はレフトへ。ここはレフト藤高が好返球でホーム寸前タッチアウト! タイムリーで2点目を失うも、ライト前ヒットではライト前田がストライクの返球でまたもや本塁タッチアウト! 北代が打たれまくっているのは気になるがバックはしっかりもり立てた。2点取られて逆転されたがもっと取られてもおかしくなかった。追い付きたい高知商業。2回は先頭が四球。送りバントを試みる間にバッテリーミスがありランナー二塁へ。ここで北代が送りバント。続く浜田が三振するも結果的に振り逃げに。浜田は盗塁に成功し1死二、三塁。次がピッチャーゴロになるも本塁へは悪送球に。三塁ランナーが帰り同点! そしてまたもやスーパー1年生、西村貫輔がタイムリ二塁打! これで西村は甲子園初打席から7打席連続出塁。思えば1回戦も初回に打球を弾いたがその後西村は大活躍。これは吉兆か?
甲子園 2018 [雑誌] (週刊朝日増刊)

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セカンドゴロでようやく2回の攻撃終了かと思われたら、慶応二塁手お手玉。ここで藤田が外野を真っ二つのタイムリ三塁打! この回一挙7点を奪い8-2とした。何か高知商業に見えない力がはたらいているようだ。

2回の裏は慶応にヒットを許すも後続をゲッツーに仕留め得点許さず。流れは徐々に高知商業か。

高知商業は4回、1死満塁のチャンス。ここで藤田がタイムリ二塁打! 慶応はたまらず先発・生井から渡部に継投した。なおも1死二、三塁。ここで北代が犠牲フライ。さらに浜田がタイムリーを放ち12-2とした。今どき高校野球にセーフティーリードなんてないだろうが、このまま勝たないかと期待は高まる。慶応は5回裏、下山の2点本塁打で12-4。高知商業としてはとにかくビッグイニングを作らせなければいい。さあ試合は後半に。

慶応は2番手の渡部がスライダーを駆使して高知商業を封じ始めた。が、6回に高知商業がランナーを二塁に進める。続く打者がレフト前に運ぶがここは慶応が前進守備からうまく中継し本塁タッチアウト。慶応もまだまだあきらめない。

試合は終盤。高知商業はいい当たりを放つも慶応が好捕。こうしたことが続くと流れが慶応に行きかねない。高知商業は反撃ムードを断たねば。

7回は1死から慶応がランナーを出す。慶応側のスタンドは盛り上がる。ここで失点したらまだまだ差はあるとはいえ気を付けねば。と思っていたらピッチャー強襲の打球を北代がグラブに当て、二塁に送ってダブルプレーに。高知商業は好調な打線に目が行きがちだが、ここまでノーエラー。思えば初回大量失点を防いだのはバックの堅い守りだった。

さあいよいよ9回。慶応は先頭奥村が二塁打。代打田辺も続き1点を返した。12-5。さらにライト前ヒットでチャンス拡大。慶応は宮尾がライトに大飛球を放つも前田が背走しながらナイスキャッチ! 犠牲フライにはなり12-6。追い上げムードは高まったが、何とか振り切った。ツーアウトから連続で捕手・乗松がキャッチャーフライを落としたのはご愛敬か。
夏の甲子園 名勝負ベスト100 (文春MOOK)

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結局、高知商業は2試合連続の2けた安打、2けた得点。打線は水ものとは言うが、行けるとこまで行ってほしい。次はベスト8をかけて同じ四国の済美と16日に対戦。済美は延長13回、タイブレークの末、逆転サヨナラ満塁ホームランで星稜を下した。果たして壮絶な打ち合いになるのか。高知商業の強力打線にまたまた期待したい。

二松学舎、ペース離さず広陵破る~光った堅守と好救援

高校野球の観戦流儀で、テレビをつけた時に、負けている方を応援する。きょうは朝から広陵二松学舎を見ているが、西日本豪雨もあったので心情的には広陵を応援しながら見た。

日本で最も熱い夏 半世紀の時を超え、二松学舎悲願の甲子園へ

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共に高校野球ファンには馴染みの高校であり、落ち着いた試合運び。二松学舎が初回に2点先制し、広陵が1点ずつ返して6回終わって2-2の同点。どちらも投手が崩れず守りもいい。野球の神様がどちらにつこうか、考えあぐねているようだ。こういう試合は見ていて楽しい。7回裏、送りバント広陵三塁手の野選で二松学舎は無死一、二塁のチャンス。さらに送りバントが捕手前に転がるも捕手は手につかず、1死二、三塁。続く打者が初球をライト前に運び、二松学舎が2点勝ち越した。一つのプレーから一気に試合が動く。接戦はやっている方は大変だが、見ている方は楽しい。
甲子園 2018 [雑誌] (週刊朝日増刊)

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2点差でとどめておきたかったが、広陵は5点目を取られてしまった。広陵は8回、1点でも取っておきたい。と思ったら先頭打者が出塁。しかし次打者がダブルプレー二松学舎は守備も堅い。広陵は8回、1点も奪えなかった。

二松学舎は8回裏、ランナーを二塁まで進めた。流れを広陵に渡さない。流れといえば、思い出した。二松学舎も追い詰められたシーンはあった。4回、1点を返されなお満塁。ここで変わった岸川が好救援。さらなる失点は防いだ。

広陵も意地を見せ、9回一死から死球、さらに意表を突くバントヒットで一、二塁のチャンスをつくった。が、最後はまたもやダブルプレーで試合終了。結果的に広陵は試合のポイントごとにダブルプレーで反撃を絶たれた。
ともに泣きともに笑う 広陵高校野球部の真髄

ともに泣きともに笑う 広陵高校野球部の真髄

東東京大会はつぶさに見られなかったが、二松学舎は終盤の粘りが持ち味らしい。それがどこから来るのかと問われた監督は、落ち着いて試合ができるようにとずっと言い続けてきた、と答えた。序盤をしのげばという心持ちになれるのは大きいと思う。一時追い付かれはしたが、トータルで見たら二松学舎のペースだったということだろう。年々打力が向上する印象があるが、5点以内で収まり、ほんの一つ二つのプレーの結果で勝敗が分かれる。そんな玄人好みの試合もたくさん見たいものだ。二松学舎、そして広陵の皆さん、素晴らしい試合をありがとうございました。

14対12の接戦~甲子園で高知商業が山梨学院に打ち勝つ

14対12というスコアを見て、聞いて、どんな試合展開を思い浮かべるだろう。断っておくが高校野球のスコアである。

ピッチャーが四死球連発とか。守りがエラーばかりとか。いえいえ‼️実は2桁得点を取り合っても「接戦」だったのだ、この日の山梨学院対高知商業の試合は。

筆者は高知商業を応援していたのだが、業務のため「ガン見」は無理。ただし小さめの音声で職場のテレビはついていたので、かろうじて試合展開は追えた。

が、ビミョーに棚類が視界を遮り、リアルタイムに得点シーンは見られなかった。実況が叫んだり、見ている人が「おっ!」と反応する度に立ち上がらねばならない。さながらミーアキャットの警戒ポーズである。

しかし2時間にわたりミーアキャットになるのは無理がある。しかも14対12。何回立ち上がったことか。もちろん業務があるから立ち上がる回数も徐々に減少。で、夜帰宅してから22時までかかってネットの「バーチャル高校野球」で試合を見直した。便利な時代である。

どんだけ乱打戦やねん!と思っていたが、野球の神様は山梨学院についたり高知商業についたり。一時高知商業が7対1と突き放して安全圏に入ったかと思えば山梨学院が怒涛の攻撃で5回に一挙8得点。満塁ホームラン込みの波状攻撃だった。

勝敗のポイントは山ほどあるが、面白かったのは6回、山梨学院が継投した場面。スコアは山梨学院が10対9と1点リードするも高知商業が1死一、三塁と攻め立てた。ここで一塁を守っていた相澤が三番手投手としてマウンドへ。二番手の鈴木はわずか4球しか投げず。ここは左対左のワンポイントか。この相澤が1球投げた後、事件が起きた。

高知商業の一塁走者が牽制に誘い出されたのだ。タイミング的には二塁に転送されタッチアウト…と思いきや、一塁からの送球がわずかに遅れセーフ。これが運命の別れ道だった(まあ、この後まだまだ打撃戦が展開されるのだが)。

走者が二、三塁となりダブルプレーはなくなった。そしてやや前進守備になった内野を、4番・藤高の打球が抜けていった。二人の走者が帰り逆転。もしも牽制で走者が刺されていたらランナーは三塁のみ。タイムリーが出たとしても10-10と同点止まりだった。たった一つのプレーが勝敗に大きく影響する。野球の怖さでもあり醍醐味でもある。

輝け甲子園の星 2018年 07 月号 [雑誌]

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この後、山梨学院は「山梨学院のデスパイネ」こと野村健太の特大ホームランで追い付き、さらに鈴木が名誉挽回の勝ち越しタイムリーを放つ。さすがに高知県大会で明徳義塾を打ち破った高知商業とてもう無理かとなりそうなところだが、なんと3点取って14-12にしてしまった。

この回、2点タイムリーを放ったのは1年生にして高知商業のホットコーナーを守る西村貫輔。西村はこの日の5打席すべて出塁。黒柴スポーツ新聞が選ぶ、この試合のMVPである。

何せ名門高知商業のホットコーナを1年生が守っているのである。初回、先制打を与える形となってしまったが三塁線を襲う強烈な打球に反応しグラブには当てていた。また、強烈な三塁ゴロも基本に忠実に、身を呈して前に落としてアウトにした(外から強い力が伝わり具合が悪くなってしまう心臓震盪の恐れがあるため、この捕球に是非はあろうが)。守りが良さそうだ。

なお、この日は三塁打あり、試合を決めるタイムリ二塁打あり、得点のきっかけとなる四球ありと、西村貫輔は5打席すべてで出塁した。エース北代真二郎も、打たれながらも150球の力投を見せたが打撃戦という試合内容を加味してやはり西村貫輔をこのゲームのMVPとしたいがいかがだろうか。

近年は守り勝つより打ち勝つ野球がトレンドのようにも見える。その意味では、高知県大会決勝で高知商業明徳義塾に打ち勝ったのは非常にオーソドックスな試合運びだったのかもしれない。とにかく出てくる高知商業のバッターは振りが鋭い。打倒明徳義塾イコール打倒市川悠太を目標に160キロの打撃マシンと対峙した効果がもろに現れている。さらに速い球だけでなく、緩い球も我慢して体の近くまで引き付け鋭く打ち返している点も見逃せない。明徳義塾は堅守と巧みな試合運びが身上だが高知商業は北代の完投とここ一番の集中打が勝利の方程式。壮絶な打ち合いを制したのを目の当たりにすると、次戦以降も期待してしまう。次は激戦地の北神奈川を制した慶応が相手(12日=日曜日の第4試合)。バントを絡める上田修身監督の采配込みで楽しむことにしよう。

※掲載当初、「第3試合」と紹介しておりました。正しくは「第4試合」です。失礼致しました。観戦予定の方はご注意願います!

チャレンジの先に見える景色~中日ドラゴンズ新人の鈴木博志に期待

中日ドラゴンズの新人、鈴木博志に密かに注目している。ドラゴンズファンでもあるまいに。

たまたまテレビ中継で鈴木博志の投球を見たのがきっかけだが、勢いのある、荒々しいストレートに心を奪われた。リーグが違うのだが、何か懐かしいパ・リーグの香りを嗅いだような気分になった。中日は素晴らしい新人を獲得したたなあと思ったことだった。2017年のドラフト1位である。社会人のヤマハを経ての入団。即戦力とされていたのだろうが、8月2日までで45試合に登板。中日は95試合を消化しているので半分ほどになる。これはもう、なくてはならない戦力ということだ。

中日には鉄腕・岩瀬仁紀がまだいるが、鈴木博志はどうなるだろうか。ダイナミックな投げっぷりから、太く、短く、かなと想像している。近年のプロ野球は、再びかつての酷使時代に戻っている気がする。とにかくいいピッチャーは惜しげもなく、短い登板間隔で使っている。鈴木博志も2試合に1回のペースに近い。投手の肩は消耗品だから、鈴木博志はシーズンオフ、かなり年俸を望んでいい。

細く長くがいいのか、短くても行けるとこまで行っておくか。以前は細く長くがいいに決まっていると思っていた。しかし最近は期間は度外視している。結果さえ残せば、短期でも長期でも、どちらでもいいじゃないか、と。

鈴木博志に感じてほしいのは、今まさにチームに必要とされているんだなということ。筆者は精神論とか根性論は嫌いなのだが、鈴木博志には、新人にもかかわらず、ずっとチームに必要とされていることを意気に感じてほしい。

鈴木博志は、2日までで4勝4敗。救援投手として4敗というのはあまりよろしくない。きのう8月3日の巨人戦でも9回、阿部慎之助に同点タイムリーを喫し、岩瀬仁紀の救援を仰ぐ形になってしまった。

中日は首位争いをしているわけではないから、鈴木博志を育てながら起用できていると見た。上位争いをしているチームなら救援失敗はすぐ責任論に発展する。特に鈴木博志は新人だから、先輩の勝ち星を消してしまった場合は立つ瀬がない。新人投手はそういう事とも戦わねばならない。

だが、2試合に1回のペースで登板するからには、失敗してもいちいち落ち込んではいられない。とはいえ何も感じていないように振る舞えば「責任を感じていないのか」とつっこまれる可能性もある。難しい。

鈴木博志は今、打たれるのが仕事のような気がする。そうやって駆け引きなり投球術を身に付けていくのだ。いくらブルペンで豪速球を投げ込めようとも、そこに相手打者はいない。やはり実戦に勝る経験はない。いかにヒリヒリする場に立てるか。そう、場数を踏むことが成長につながる。

ヒリヒリする場面は、ミスをした場合のダメージも軽くはないし、とにかくその最中はしんどい。しかし乗り越えた時の成長は約束されている。いきなり責任あるポジションを任されて、鈴木博志も大変だろうけれど、2018年シーズンが終わる頃、マウンドから見える景色はずいぶん違ったものになっているのではないだろうか。

それはチャレンジした者にしか見えない。ドラゴンズファンでもないくせに、思う。いつか鈴木博志が優勝を決めるマウンドで仁王立ちしている姿を見てみたい。

自分のストライクゾーンをつくれ!~岡本和真は村田修一を追い越せるか

巨人の岡本和真に対し、ラジオで解説していた山崎武司がこう言っていた。まだまだ未完成。もっとよくなる、と。3割40発もいけますよ、と。

そのために必要なのは、「自分のストライクゾーン」なのだという。

ストライクゾーンはだいたいこの辺だと決まっている。しかし、もしバットが届いてヒットにできるのであれば、そこはストライクゾーンというか、振っていっていいらしい。

そう、ヒットにできるゾーンは人それぞれ。ある人には苦手なコースでも、別の人には大好きなコースだったりする。まだまだ発展途上の岡本和真のストライクゾーンは定まっていないのだろう。

経験が浅いと、自分ではボール球だと見送った球が「ストライク」とコールされる場合もある。この場合、ストライク!とジャッジするのは価値観が合わない上司だったりするのだが。それはもう、かつてパ・リーグにいた村田康一審判ばりにストライクだアウトだと価値観を押し付けてくる。もう、従うしかない。ではなくて、きちんとここからここまでなら勝負できるんだぞと自分で把握できていたら、あたふたすることもない。線引きさえできていたら、仮に他人に、思っていたのと違う判定をされても「ああ、考え方が違うのだな」と割り切ればいい。

では、自分のストライクゾーンって、どうやったらつくれるんだろう? やっぱり、最初はとりあえず振っていくしかなさそうだ。ここは当たる。ここは当たらない。ここはヒットにできる。ここはヒットにできない。経験を地道に積み重ねていくしかあるまい。

そういう意味では試行錯誤のシーズンなのに、岡本和真はスタメン定着初年度にして3割という数字を残そうとしている。ゆえに山崎武司が「まだまだよくなる」というのもうなずける。

野村監督に教わったこと―僕が38歳で二冠王になれた秘密―

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岡本和真が自分のストライクゾーンを確立できた時は、どんな数字を残すだろうか。まだまだ背中は遠いが、同じように高卒ドラフト1位の筒香嘉智のように「大木」に育つのが楽しみだ。そういう意味では2018年のNPB復帰が消滅し、否応なしに引退を突き付けられた村田修一は、巨人が「間伐」したことになるのだろうか。

巨人は伝統的に外様の強打者に冷たい。古くは張本勲が3000安打前にロッテへ。巨人への初恋を実らせた清原和博にも戦力外通告を突き付け、村田修一もその座を追われた。着けていた背番号25を背負っているのは実質的に村田修一を追いやった岡本和真である。もちろんこればっかりは巡り合わせだから、岡本和真が悪いわけではないのだが。岡本ならば、村田修一に匹敵する選手になれる可能性を十分感じさせてくれている。

岡本和真が自分なりのストライクゾーンを確立し、大打者になった時、ひっそりと浮かばれるのが村田修一なのかもしれない。

その頃にはまた、次のジャイアンツを担う若手が背番号25を奪いに来たりして…プロ野球の生存競争は恐ろしい。

リベンジの機会を逃さなかった武田翔太~無期限2軍調整から1軍昇格即3度目完封

ボロクソに言われたら、結果をもってそれを封じるに限る。ソフトバンク武田翔太の今季3勝目はまさにそれだった。

ちなみに7月29日の登板前までで2勝7敗。主力としては不甲斐ない限り。特にプロ最短の2回KOを喫した7敗目直後はファンから「2軍で出直してこい」くらいのことをネットで言われていた。もともと闘志を全面に出すタイプには見えないのだが、倉野コーチいわく「戦っているように見えない」(西日本スポーツ記事より)と厳しい評価を受け、無期限2軍調整とされていたようだ。オリックスからDeNAに移籍した伊藤光の記事でも書いたが、こうした降格処分は本人のためになるのだろうか? きちんと「これができるようになったら戻ってこい」というのが指導であって、とりあえず無期限な、というのは懲罰としか思えない。
tf-zan96baian-m-stones14.hatenablog.com

だが勝負強いのか何なのか、武田翔太は1軍に呼び戻された。登板予定の中田賢一が胃腸炎になったから代役に立てられたのだ。

実は武田翔太、呼び戻される前のTwitterでこんなことを書いていた。

「考え方も色々あれば、受け取り方も色々あって今までにない新たな発見もあります」「力不足でファンの方には申し訳ないという気持ちしかないですが、しっかり見直して頑張って行こうと思います」

この「受け取り方もいろいろ」とは武田自身の態度のことだろうか。別にやる気がないわけじゃない。だけど、それが伝わっていない。そんなモヤモヤのように読み取れた。それをTwitterでつぶやく。ともすると指導者への批判になるのでやり方としては非常に危ない。全文読めば反省モードだからぎりセーフか。まだまだ血気盛んな若者である。

こんなことをつぶやくくらいだから、恐らく、いや、確実に燃えるものがあったに違いない。ふたを開けてみれば3安打完封。やり返した感ありありだろう。まあ、先輩のけがなどアクシデントでフォローに回った後輩がそのまま1軍に定着するのは、プロ野球によくある話。武田翔太の場合はもともと主力だからパターンとしては少し違うのだが、ミスを取り返すチャンスをものにした。これはとても大事なことだ。取り返すチャンスは平等に与えられるわけではないからだ。そういう意味では武田翔太にはツキがあった。もしかしたらこの登板機会は選手生活の一つのターニングポイントになるかもしれない。いや、ぜひともそうしてほしい。まずは勝敗を五分に戻す。それからだ。それが首脳陣やファンからの信頼回復につながる。果たして武田翔太は3勝目についてどうつぶやくだろうか。いろいろな意味で武田翔太から目が離せない。

横浜DeNAで輝け伊藤光~オリックスまたも生え抜き放出

今、気になっている選手がいる。DeNAの捕手、伊藤光だ。今月オリックスから移籍したばかりだが、オールスター明けから即スタメン。最初の2試合は連敗したが3試合目にようやく勝ちに貢献した。

伊藤光メッセージBOOK クールに熱く

伊藤光メッセージBOOK クールに熱く

春先から伊藤光が気になっていた。攻守に精彩を欠き、2軍に降格。懲罰交代とも報じられた。もし事実であるならば、このような措置はやっても短期であるべき。反省なり改善が見られたら戻さねばならない。罰だけでは人は成長しない。伊藤光はキャッチャーとして入団し、主力へと成長した。選手会長も経験した。プロ通算10年を超え、オリックスでは生え抜きとしての地位を固めたとみていた。それがDeNAにトレードだという。昨シーズン、捕手ではなくサードも経験。出場試合数が増えたとしても、捕手としてこの世界に入っただけにうまく消化できたかは疑問だ。こうした起用や2軍降格を経ての、トレードである。別にトレードを否定しない。むしろ適材適所の観点からもっとトレードが増えてもよいと思う。戦力外にする前に、環境を変えてもうひと勝負する、させる。そんな流れを定着させてほしい。その意味では伊藤光のトレードはどんな意味なのだろう。ちなみにDeNAからオリックスに行った1人は高城。伊藤光と同じくキャッチャーだ。同一ポジションだから弱点を補強し合う意味とは違うように見えてしまう。そう、もうオリックス伊藤光を必要と見なさなかったのではないか、と。このトレード、言い出しっぺがどちらかで意味合いは異なる。オリックスならば伊藤の「放出」。DeNAなら伊藤の「獲得」。DeNAは伊藤を即スタメンで起用しており、期待の高さがうかがえる。
横浜DeNAベイスターズオフィシャルイヤーマガジン 2018 ([テキスト])

横浜DeNAベイスターズオフィシャルイヤーマガジン 2018 ([テキスト])

なお、即起用された最初のカードのヤクルト戦ではもう「伊藤光」の文字入りの応援タオルをファンが掲げていた。この辺りの機動力が、DeNAの球団経営方針なのだろう。ファンが増えるのもうなずける。育ててくれたオリックスに恩義はあるだろうが、あえて伊藤光にはDeNAで活躍することでオリックスを見返してもらいたい。定期的に生え抜きを放出し、FAで大物を獲る。この辺りがオリックスにいつまでも伝統が生まれないゆえんと見ている。オリックスからトレードされた大引啓次自由契約となった坂口智隆選手会長経験者。こんなにリーダー格が他球団に行くチームは珍しい。オリックスは社会人野球から毎年のように好投手を獲得しながら上位に定着しない理由を今一度考えたらと思ってしまう。後ろ向きの話はよそう。伊藤光はこのチャンスをものにしなければならない。さい先よく移籍後初打席ではヒットを放った。一塁を守っていたヤクルトの坂口智隆伊藤光の気持ちが日本で一番分かる男かもしれない。記念の初安打のボールを回収し、DeNAのベンチに向かって放った。伊藤光とは何か言葉を交わしただろうか。交わさなくとも心は通じあっただろうけれど。組織に生きるものならば、必要とされることを意気に感じるものだ。「かっ飛ばせ~、ヒ、カ、ル!」の声援を聞く限りファンも受け入れてくれているようだ。もちろんオリックスに行った高城のファンは悲しんだだろうけれど、高城は高城でオリックスで頑張ってもらいたい。球団には球団なりの思惑があるだろうが、選手にも人生がある。トレードはそこまで見据えて行ってもらいたい。同じ捕手というポジションではあるものの、チームメイトはがらりと変わり、相方となる投手陣の特色を把握するのも一朝一夕にいかないだろう。ある意味ぶっつけ本番的な、暗中模索的な働き方になりそうだが、早く同僚たちと打ち解け、新天地で伊藤光がその名の通り光り輝くことを願わずにはいられない。2014年シーズン最終戦ソフトバンクに敗れ涙を見せた伊藤光。果たしてハマスタ歓喜の涙を流す日は来るのだろうか。

最小の傷で乗り切る男~日本ハム宮西尚生が最多タイ273ホールド

日本ハム宮西尚生が6月30日のオリックス戦で、山口鉄也(巨人)の持つプロ野球記録の273ホールドに並んだ。ちょうどこの日は600試合登板。これは現在プロ野球39位タイでもある。上には上がいるものだ。

とはいえ新聞記事によると宮西尚生は入団した2008年から2017年シーズンまで10年連続で50試合登板。タフである。中6日だ5日だと登板間隔のある先発とは違い連日出番があるのだから疲労もたまることだろう。けがしない点も素晴らしい。球団からしてもコスパのよい選手である。何より素晴らしいと思ったのは日本ハム吉井理人投手コーチによる宮西評。「どうしたら最小の傷で乗り切れるかを考え、その作戦を実行できるのがすごい」。そう、完璧な人間はいない。ミスなく過ごせればいいがそんな時ばかりではない。だとしたらどうやって最小の傷で乗り切るかを考えたらいい。

宮西尚生はそれを考えるだけでなく、その作戦を実行できるという。ホールドのタイ記録を作ったこの日も実はいきなり盗塁を許し、得点圏に走者を背負ってしまった。が、残り二つのアウトをセンターフライとサードゴロで取った。

ピンチになればついつい取り返そうという気持ちになる。責任感が強い人ほどそうだ。しかし、あるあるなのは深追いしてますます傷口が広くなるケース。社会人的には大概、ミスは帳消しにならないことを考えると、人が作ったピンチだろうが自分で招いたピンチだろうが、いかに最小の傷で乗り切るかを考える宮西的な考えの方が合理的である。思えば、仕事のできる人ってミスをしないのではなく、リカバリーできる人なんじゃないか。アクシデントがあったら、どうしたら相手方に迷惑をかけずに済むか。あるいは迷惑を最低限にとどめるかが想像できる。そして実行できる。もちろん、実行の前には「すみません」と言える…。

まだまだ現役を続けてほしいがリスク管理できる点ではそのまま日本ハムのコーチにもなれると思う。作戦面でも監督に助言できるだろうし、育成面なら中継ぎや抑えに対して危機管理のやり方を伝授できそうだからだ。

完璧に、ではなく最小の傷で。それこそが日本最多ホールド男たるゆえん。宮西尚生の思考は何かと面倒な仕事が多いアラフォー世代の参考になりそうだ。

真実は結果の中に~西野ジャパンはオレ竜の轍を踏むな

サッカーW杯の日本代表が、ポーランド戦での時間稼ぎ戦法で批判されている。チームというよりは西野朗監督が、かもしれないが。たった2カ月でチーム再建を託され、1次リーグ突破を果たした途端、勝ち上がり方を非難される。気の毒に思えてならない。

試合後すぐ西野監督は「本意ではない」と言っている。成長するために必要なプロセスなのだと、むしろ自らを納得させるようにも聞こえた。元々ズルなんてしない人なのだと、もう少し理解してあげられないものか。J1最多270勝の監督であり、アトランタ五輪指揮の経験者。結果を残すことの必要性を熟知しているからこその戦法に思える。
攻め切る―指揮官西野朗の覚悟

攻め切る―指揮官西野朗の覚悟

ともかく、選手も監督も「勝ちゃいいんだろ」的な態度じゃないのだから、その人らがなぜそうしたのか、思いをはせねばならない。一般社会でも、行動の背景を想像せず一方的に断罪する人、いるよなぁ…。例えばポーランドが無理に日本からボールを奪いにいかなかった理由を考えてみよう。ポーランドは日本戦を前に予選リーグ敗退が決まっていた。帰国したら結果を問われるに決まっている。だからなにがなんでも1勝しないといけない。日本が勝手に時間稼ぎしてるのだから仕方がない。実際、ポーランドのエース、レバンドフスキは「僕らにはどうしようもない」旨の発言をしている。そう、人にはそれぞれ立場があるのだ。ここからサッカーで言う「逆サイドに展開する」ばりに話を野球に振ってみる。2007年、落合博満監督が史上初の日本シリーズ完全試合の夢を断ち切り、9回に山井大介から岩瀬仁紀に継投したことがあった。正直に言うと山井の完全試合へのチャレンジを見てみたかった。何せ公式戦での完全試合は1994年の槙原寛己以来、達成されていない。それが日本シリーズで目前なのだ。そこを継投できるのはオレ流・落合博満しかいない。
完全試合―15人の試合と人生

完全試合―15人の試合と人生

落合は「日本一になるために必要だった」と言い切ればよかったのだが、どうも山井に原因があるかのような結論に至っている。落合クラスであれば「中日が日本一になったのは何年前だと思ってるんですか」(前回は2007年から53年も前の1954年)と、勝ちきる重要性を説けばよかった。落合ならばそれができた。だから山井が云々の話が出た時はがっかりした。だから西野監督には「あれがその時の最善策だった」と言い続けてほしい。
采配

采配

もう一つ書いておきたいのは長谷部誠の存在感。一歩間違えばチームが浮き足立つ状況で投入されたがしっかり「現状維持」と「イエローカードをもらってはいけない」の意思をしっかりチームに伝達。それができる長谷部誠がベンチスタートだったのは幸いだった。スポーツの世界でもビジネスでも、チームを制御できるのは素晴らしい人材である。本人に希望があるかは知らないが、いつか長谷部がどこかのチームで監督をしている姿が見たい。そんな長谷部誠が言った「真実は結果の中にしかない」とは、結果がすべての世界にいる人の言葉だからこそ重みがある。日本はグループリーグ突破を決め、それによって日本の多くの人がまだW杯を楽しめることになった。決勝トーナメントでは7月3日にベルギーと 戦う。そこで負けたとしても今回の西野ジャパンの頑張りが無駄になるわけではないのだが、少なくとも「善戦」という結果を残すことで、西野ジャパンの時間稼ぎは正解なのだったという真実が見たい。

巨人・和田恋5年目の初安打紙面に心がホカホカ

巨人5年目の和田恋(高知高校出身)が6月23日のヤクルト戦でプロ初安打を放った。当日にネットの記事をチェック済みではあったが、果たして地元紙の高知新聞がどのように扱うのか、興味津々であった。そして…

朝の黒柴社長(久々の登場)の散歩後、高知新聞朝刊を開く。いよいよスポーツ面。

バーン!
えっ、
おっ、
やったね!

さすが地元紙である。オトナの事情で紙面の画像は載せないので、気になる方は自力で確保願います。とにかくスポーツ面トップに和田恋のデカイ見出しと写真が鎮座していたのだった。

やはり地元紙はこれでなきゃ。デイリーが阪神タイガースをもり立てるように、地元紙は地域を応援せねば。きょうは和田恋の写真と記事をチェックできた時点で早々と本日分の新聞代の元が取れてしまった。

5年目で初スタメン。独立リーグとの交流戦で高知に来たことはあっても、それは一軍戦ではない。やはり一軍に帯同できていることに価値がある。最近のプロ野球は見切りが早い。しかも巨人。和田恋も今年が勝負の年かもしれない。巨人では同じように高卒の岡本和真が今年大ブレイクして四番を張っている。まだ初安打の和田恋と岡本和真を比較してはいけないのだろうが、和田恋も続いてほしい。ちなみに野球好きとしてはもう一つ、元が取れる記事を見つけた。高知出身の門田隆将氏の新作、敗れても 敗れても ――東大野球部「百年」の奮戦 の書評が読書面に載っているのだ。その中にはOBの岡村甫・元高知工科大学長も登場する。岡村氏はあの東大で17勝もしている。この数字、例えるならば決して強くはなかったヤクルトで名球会寸前の191勝を挙げた松岡弘くらいすごいと思う(分かる人だけ分かればいいです)。東大といえば、今の野球部監督は土佐高校出身の浜田一志氏が務めている。それでなくとも読んでみたいが、過去に読んだ門田隆将氏の「甲子園への遺言―伝説の打撃コーチ高畠導宏の生涯」も面白かったし、「神宮の奇跡」も面白かっただけに、東大野球部の本もいずれ楽しませてもらおうと思う。
神宮の奇跡 (講談社文庫)

神宮の奇跡 (講談社文庫)

まあ、こんな具合に何だかんだで毎日、新聞代の元が取れている。確かにネットの情報で事足りる人は多かろうが、地元紙に勤めるもののはしくれとしては、自分と同じように毎日、地元の新聞を楽しんでいただけるよう、やれることをやっていこうと思う。

選択が正しかったかは自分次第~佐賀北がばい旋風から11年

広島の野村祐輔が久々の一軍マウンドに立っている。舞台は甲子園。きょう6月23日までに2勝。他球団の主力は8勝~10勝しているから、野村はだいぶ水をあけられている。

野村祐輔はあす6月24日が誕生日で29歳になる。野村祐輔は18歳の夏、甲子園の決勝で躍動しながらも一発のホームランに打ち砕かれた。あの有名な佐賀北の副島浩史による満塁ホームランだ。

佐賀北の夏 (集英社文庫)

佐賀北の夏 (集英社文庫)

その副島浩史の記事を見つけた。西日本新聞の「新がばい旋風!甲子園V佐賀北OB指導者3人が火花 満弾男・副島は今…/夏の高校野球 佐賀大会」だ。懐かしみながら、楽しませてもらった。

書いておいてなんだが、野村祐輔にしろ副島浩史にしろ、何かとあのホームランに絡められてしまう。それはアスリートの宿命でもあるのだが、特に高校野球ファンは恐ろしいほどの記憶力なのでもはやあきらめてもらうしかない。

野村祐輔メッセージBOOK -未来を描く-

野村祐輔メッセージBOOK -未来を描く-

しかし野村祐輔明治大学へと進学してカープに入り、主力へと成長したのであのホームランはきちんと糧にできたはず。となると俄然副島浩史が気になる。

副島浩史は佐賀北ではなく、同じ佐賀県内の唐津工の副部長になっていた。大学卒業後に佐賀銀行に就職。おそらく佐賀県内では有名人だから、いや、それでなくともまじめにコツコツ働けば、それなりに地元で幸せをつかめたに違いない。

しかし副島浩史は教員試験にチャレンジした。今は保健体育の先生だという。詳しくは前述の記事を読んでいただきたいが、新たな生き方を高校野球の現場で探すことにした。

言うは易く行うは難し。試験は一発でパスした訳でもない。その時の選択が正しかったかなんて、すぐには分からない。正解にできるかどうかは自分次第だし、結果を残すしかない。

果たして副島浩史の「2本目の逆転満塁ホームラン」は出るのだろうか。それは育てた唐津工ナインと甲子園に出場することなのか。別に地元企業にいたままでも劣勢な訳ではないから「逆転」ホームランでもないのだが、ぜひ教え子らと夢を叶えてほしいなあと思う。それはきっと「がばい旋風」の続きなのだ。あれから11年。副島浩史も、野村祐輔も、それぞれの現場で戦っている。