黒柴スポーツ新聞

ニュース編集者が野球を中心に、心に残るシーンやプレーヤーから生きるヒントを探ります。

切磋琢磨しながら成長する~ソフトバンク椎野が3回パーフェクト救援

椎野新が躍動した。8月19日の西武戦。ソフトバンクは先発の松本裕樹が腰痛で3回を終わり降板。まだ同点だったから、継投は若干繰り上がったか。しかし結果的には椎野が3イニングで1人も走者を出さないパーフェクト救援。西武は手痛いパスボールがあり、ソフトバンクが2-1で逃げ切った。

 

まず、椎野は京セラで活躍したことに意味がある。7月にも京セラで、オリックス相手に登板したが、その時も松本裕樹が先発。8回途中まで好投したがランナーを背負い、後を嘉弥真に託したが同点タイムリーを喫してしまった。椎野はそこからマウンドに上がったのだがオリックスの勢いを止められず、満塁からマレーロに走者一掃のタイムリーを浴びたのだった。

 

だが、今回は違った。打てるものなら打ってみろ。そう言わんばかりに、長身から投げ下ろす直球は威力抜群だった。別人のように自信があふれていた。悔しい思いをした後で、椎野は任された登板機会を一つ一つクリアしていった。だからこそ19日のような大事な試合、しかも同点の場面で使われたのだ。相手はオリックスではなかったが、見事に京セラでの悪い思い出を上書きした。

 

椎野には燃える理由が他にもあった。前日、1点ビハインドの状況で甲斐野や高橋純平が、共に3者連続三振。「年齢が近いんで」と、二人の好投を意識していたことを、ヒーローインタビューで明かした。

 

西武との3連戦は初戦で山賊打線が大爆発。千賀が火を付けてしまい、どうなることかと思われたが、初戦終盤にソフトバンクは8点を返して食い下がった。13点まで届かなかったが、やられっぱなしで終わらなくてよかった。2戦目は若い投手陣の頑張りにベテラン松田宣浩と明石がタイムリーで応えて逆転勝ち。3戦目は犠牲フライと相手のバッテリーミスで勝った。終わってみれば勝ち越しだ。

 

ソフトバンクにとって、若返った投手陣の頑張りは本当に財産だ。本人たちからしたら今が一番の踏ん張り時だが、優勝に向かって突き進める経験は誰もができるものではない。それを甲斐野、高橋純平、椎野は切磋琢磨しながらできている。中継ぎや抑えは、抑えて当たり前、打たれたら即戦犯という厳しいポジションだが、打線におんぶにだっこではなく、逆に抑えて打線に流れを持ってくるあたりは大したものだ。これからも若き中継ぎ陣から目が離せない。

鷹党思わず目を凝らすコラス初打席初球打ち初ホームラン~デスパイネ離脱にも見えた光明

ソフトバンクは西武との勝負の3連戦真っ只中だが、主砲デスパイネが故障で登録抹消。エース千賀を立てながらまさかの13失点で初戦を落としたこともあり、泣きっ面に蜂状態だ。が泣きっ面がうれし涙になるかもしれない。代わって昇格したコラスが初スタメンをゲットしただけでなく、初打席初球をホームラン。デスパイネ不在の暗雲を吹き飛ばす一発だった。

 

デスパイネに代わる4番はグラシアル。これは実績十分だから順当だ。コラスはライトの守備につき、7番に入った。今さらながらコラスのウエスタンでの成績を見たが、9本塁打41打点。見るからに当たったら飛びそうな、堂々たる体躯である。何よりまだ20歳。1軍初ホームランはさすがにうれしかったか、ゴムまりが弾むように、リズミカルにダイヤモンドを一周した。先輩たちはサイレントトリートメントの後、喜びを爆発。少なくともこの瞬間、前夜の大量失点のダメージは激減したと思われる。

 

デスパイネ、グラシアル、モイネロ、ミランダ。ソフトバンクの誇るキューバ勢は優良な人ばかりだ。そしてコラスも加わった。外国人枠の問題があり、全員がフル稼働できないのが残念だが、ひとまず復帰の見通しが不透明なデスパイネ離脱に関しては、少し光明が見えた。ライトの守備を無難にこなしてくれたら、中村晃のDHもあり。外野の出番争いはますますし烈になる。

 

グラシアル、福田秀平、中村晃が復帰して、突き出されたのが上林誠知。このまま埋没してなるものかと、上林は途中出場した試合でも結果を出そうと頑張っている。そこへパワーヒッターのコラスが参戦してきた。上林的には勘弁してくれと思っているかもしれないが、上林は強いリストを生かした打撃と強肩でアピールしていくしかない。前にも書いたが、ソフトバンクはチーム内で競争しているから首位をキープできていると思う。主力が離脱しても、新人が活躍すれば組織は活性化する。

 

デスパイネ離脱に沈んだソフトバンクファンも思わず目を凝らす、コラスの鮮烈デビュー弾。まだまだデスパイネの穴を埋められるかは分からないが、しんどい後半戦に現れた外国人選手の活躍と言えば昨年のグラシアルがまさにそうだった。果たしてコラスはグラシアルばりに鷹の救世主になれるのか。楽しみな新星がまた現れた。

敵が一番いい状態で勝負する~智弁和歌山の黒川、星稜エース奥川に熱中症対策アシスト

甲子園の歴史に残る名勝負がまた一つ生まれた。智弁和歌山対星稜。名門同士のぶつかり合いにふさわしく、いつ終わるとも分からない展開。得点が入りやすくなっているはずのタイブレークも意味をなさないほどの奥川恭伸の豪速球、そして智弁和歌山の鍛えられた守備力。どこまで続くかと思った矢先、星稜・福本の劇的なサヨナラホームランが飛び出した。

 

ホーム付近に整列した時、奥川は泣いていた。校歌を歌う時も涙をこらえきれなかった。大会ナンバーワン投手の涙。松坂大輔を思い出した。松坂もまた、あのPL学園との延長戦でチームメイトの常磐が決勝ホームランを放った時に涙を流していた。

松坂世代 (河出文庫)

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奥川はなぜ泣いていたのか。松坂大輔のように、チームメイトへの思いもあったと思う。だが、智弁和歌山への思いもあったと、デイリー記事、智弁和歌山が友情の手助け 黒川が星稜奥川に熱中症対策の錠剤を渡す「素晴らしい投手」を読んで知った。

 

あの名勝負の最中、敵のことを考えていたなんて。さすが黒川史陽。名門智弁和歌山のキャプテンはかくも素晴らしいものなのか。もちろん奥川が延長11回にふくらはぎをつったのは試合を見ていた人なら皆知っている。だが、まさか敵の黒川が奥川に手をさしのべていたとは……。

智弁和歌山・高嶋仁のセオリー 《甲子園最多勝監督の勝つための法則88》

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同世代の日本代表というつながりはある。しかし舞台は甲子園。何がなんでも勝ちたいと思うのが当たり前だし、それがモチベーションになるから信じられないプレーやドラマが生まれる。しかし勝負を超えた清々しさを感じる黒川のファインプレーだった。

 

「どちらも日本一を目指している。自分も本気だから、奥川にも一番良い状態で、本気で来てほしかった」(朝日新聞記事「こういうところが強さ」星稜・奥川が智和歌に感謝の訳 より)
足を引っ張り合う、我田引水、自分勝手な人が多い世の中に対するツーレツな一言である。久しぶりに正々堂々という言葉が浮かんだ。

甲子園「観戦力」をツーレツに高める本 (中公新書ラクレ)

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日本一を目指す熱い思いを託された奥川はあす8月18日、準々決勝第3試合の仙台育英戦に先発するのだろうか。智弁和歌山戦で14回165球を投げ、被安打3、奪三振23。登板はするにしても先発はないとみた。昔ならいざ知らず今は投手の酷使に敏感だ。いや、そんな空気を読んでの温存ではなく、奥川のコンディション第一に起用法を考えてもらいたい。もう黒川は甲子園にいない。優勝までの逆算と、一発勝負が続くトーナメント。星稜はおろか石川県勢初の甲子園制覇もかかっているだけに、奥川の起用法は大注目だ。

人が行く裏に道あり花の山~権藤博が説く「原監督の采配はなぜ当たるのか」

なぜ~~なのか、という見出しは散見されるが、記事にズバッと答えが書いていないパターンが多い。最後まで読ませる作戦か。そんな記事とは対照的に、8月1日の日経新聞のスポーツ面、権藤博の「悠々球論」はズバッと言いたいことが書いてあった。見出しは「原采配 なぜ当たるのか」。

なぜ当たるのか、「答えはあるわけではない」としているが、強いていえば「勝負に出ているから」だそうだ。海のものとも山のものとも分からない新戦力を抜てきする、外国人に送りバントさせて若手に打たせるなどなど。攻めている、ということらしい。

つまり、ハイリスクハイリターン。権藤博も書いているが、確かに当たり障りのないことをしていては、他人との差別化は図れない。ましてやプロ野球の監督だ。時にサプライズも交え、選手を鼓舞し、チームを勝たせてファンを喜ばせる。大変な職業だ。原監督は先日監督通算1000勝をマーク。それなりに采配が当たらないと成し遂げられない数字だ。

原辰徳 ―その素顔―

原辰徳 ―その素顔―

 

 

このコラムに書いてあったが権藤博は色紙に「運」の一字を書くという。運とは軍を進めること。戦い続けるということだ。私はこの一文にシビレた。
「運は天に任せるものではなく、自分でつかむもの」

権藤博は選択肢の中でも「人がやらないこと」をやることの大切さを説いていた。ありきたりではなく、攻めた采配。人の行く裏に道あり花の山、なんて言葉もある。人とは一味違う結果を得るためにも、「人がやらないこと」をちょっと意識してやってみよう。

 

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tf-zan96baian-m-stones14.hatenablog.com

起用されたらすぐ結果を出す~ソフトバンク、福田と明石の活躍で打線に厚み

ソフトバンク打線が活発だ。8月14日の楽天戦で則本を4回でノックアウト。その後も手を緩めず19安打12点の猛攻で6連勝とした。そのおかげで久々先発の武田翔太は序盤ふらついたものの8回まで投げきってしまった。9回は笠谷を投入したのでいわゆる勝ちパターンの中継ぎ陣は小休止。思わぬ「夏休み」となったのではなかろうか。

 

ゲームの流れ的には武田翔太が和田恋に同点2ランを打たれた直後にやり返したグラシアルのソロホームランが大きかった。最近のソフトバンクの攻撃は攻め時を心得ており、非常に効率的である。

 

ソフトバンクは打線に厚みがある。それを生み出しているのは控えの頑張りである。8月14日は福田秀平の1番起用が大当たり。いきなり則本の出ばなをくじくヒットを放って出塁し、中村晃のタイムリーで先制のホームを踏むなど、3安打2打点と結果を残した。まあ、福田秀平はスタメンでも起用されるから控えという表現もビミョーではあるが。

 

福田秀平が毎試合出ないのは何ともぜいたくな起用に思うが、他にも明石が出たり出なかったりだ。ただし、二人とも起用された時はコツコツヒットを重ねている。明石も福田秀平と同じようによく試合に出るから、控えというのもビミョーではあるが。14日の試合では途中出場の高田や上林もヒットを放った。そう、今のソフトバンクはとにかく結果を出し続けないと試合に使ってもらえないのだ。

 

なぜ起用された人が次から次に結果を出すかと言えばこの競争原理と同時に、それぞれがきちんと準備をしているということだろう。呼ばれてから準備をするのではなく、出るつもりで準備している。エンジンを温めているのだ。だからスッと試合に入っていけるのだろう。

 

かつて明徳義塾高校馬淵史郎監督が言っていた。
「ぼた餅を手に入れるのは、棚に一番近いもん。手を上げ続けるのは辛(つら)いが、一番努力したもんがぼた餅を手に入れる」(朝日新聞記事、松井5打席敬遠の舞台裏で 明徳・馬淵監督に学んだこと より)

 

棚ぼたなんていうとラッキーな展開を思わせるが実は相当な努力があるから手にできる。ライバルチームと戦うまでに、まずはチームの中でアピールしていかないと試合に出られない。それをベテランの福田や明石がやっている。牧原、高田、上林、周東らは福田や明石以上にアピールしていかないと試合に出られない。それこそ餓えた獣のように貪欲にならないと……

 

前半戦はけが人や離脱が相次いでしんどい時期もあったがそこは若手にも台頭とベテランの頑張りで乗り越えた。今、一番の踏ん張り時でチーム内で競争できているのはまさに「けがの功名」なのだ。

すべて勝負のつもりでいく~ソフトバンク高橋礼、粘投で初の10勝目

「全て勝負球という気持ちでいった」
8月13日の楽天戦で好投したソフトバンク高橋礼の言葉だ。なぜ勝てたかを端的に表している。

 

先発投手の場合、長いイニングを投げたいがためにアクセルの踏み具合は加減しないといけない。飛ばしすぎたらバテてしまいかねないし、安全運転すぎては狙い打ちされるおそれもある。ソフトバンクは中継ぎが充実しているので高橋礼が「あとはよろしくお願いします!」と思っているわけではなかろうが、いけるとこまではいってみようと思っての「全て勝負球という気持ち」だったかもしれない。

 

この副産物は、相手に「球が走っている」と印象付けられたかもしれないこと。この日の高橋礼はピンチを背負うもことごとく脱出。ウィーラーを投ゴロ併殺打に、銀次をキャッチャーフライに打ち取った場面は素晴らしかった。勝負せざるをえない場面ではあったが、まさに「全て勝負球という気持ちでいった」からこそ打ち取れたのだと思う。

 

言うは易し行うは難し。気持ちが充実していても力が伴わなければ結果は出ない。高橋礼はこれで10勝目。これも立派だが、「3つしか負けてないところが大きい」と工藤監督が言うように高橋礼だけで貯金7だ。孝行息子である。

 

今や球界の絶滅危惧種となった下手投げだが、高橋礼は直球の速さもそこそこあり、久々の本格派下手投げである。ぜひレジェンド山田久志と対談して下手投げ論を熱く語ってもらいたいが、このまま結果を出し続ければ「令和のサブマリン」の称号は間違いない。10勝と言わず、ぜひ最多勝争いにも挑んでもらいたい。

求められた役割を果たす~ソフトバンクの左キラー川島慶三と長距離砲デスパイネ

8月12日の日本ハム戦は目の覚めるような速攻だった。左キラー川島慶三が1番に入った。レフト前にしぶとく安打を放つと、今宮健太送りバントで二塁へ。内川聖一のタイムリーで一気にホームに帰ってきた。

川島慶三については解説の若菜嘉晴が誉めていた。

「やるべきことが分かっている」
「四球(を選ぶ)、セーフティーバントと、相手の嫌がることをやる」
これはそのまま川島慶三の存在価値を表している。

 

工藤公康監督も川島慶三の存在感を評価していた(8月11日のfull-count記事 鷹、Vへ鍵握るベテラン川島の復帰 工藤監督も全幅の信頼「戻ってきたことで…」より)。声がけが具体的だし、タイミングもよいのだろう。そんな評価を聞くと、ぜひ川島慶三には将来的にコーチとして入閣してもらいたいなと思ってしまった。もちろん川島慶三フリークとしては1年でも長く現役でいてもらいたいに決まっているが。

 

私が注目したのは、冒頭紹介した速攻で川島慶三がホームイン後に見せたガッツポーズ。両手を突き上げてジャンプしているのだ。これには二つの意味がある。まずは川島慶三がこの得点シーンをイメージしていた可能性が高いこと。自分が出て今宮健太だから送りバントで進塁できるはず。3番は内川聖一だからヒットが見込め、外野まで抜けたら先制のホームインだ……そんなイメージを作っていたら本当にそうできた。だからあんなに喜んだのではないか。

 

そして二つ目はこの試合における先制点の重要性を川島慶三が意識していたことだ。もう日本ハムが3位に後退しているがこの3連戦は直接対決で、ソフトバンクにしてみたら一気にゲーム差を付けられるチャンスだ。日本ハムにしてみたら一つでもゲーム差を縮めたかったが2連敗。何とか一つでも勝ちたいと3戦目は思っていたはずだ。そこでソフトバンクが先制点を奪う。心理的にも日本ハムに3連敗をちらつかせる効果はあった。1点でも効果的だったのだがさらにデスパイネが2ランを放ち初回に3点を奪ってしまった。終盤少し追い上げられたが試合の流れは初回に形成されたと言っていい。先制点の重要性を誰よりも理解している。だからこそあんなに喜んだのだと思う。

 

日付を越えた翌8月13日の楽天戦も初回に川島慶三が四球で出塁。相手はまたまた左腕の弓削だった。川島慶三は本当に自分の役割をわきまえている。この回ソフトバンクにタイムリーは出なかったが、川島慶三は内野ゴロの間に先制のホームを踏んだ。ヒットを打たなくてもチームに貢献する方法はある、と川島慶三は教えてくれている。

 

この2日間でもう一人、自分らしさを発揮したのがデスパイネ。12日に2本のホームランで5打点の大暴れ。特に8回の3ランは日本ハムにとどめを刺す一撃だった。そして13日の楽天戦でも8回に貴重な追加点となるソロホームラン。これで30号となった。8月のデスパイネは本当にいいところで一発が出る。

 

川島慶三デスパイネみたいな打球は飛ばせない。そしてデスパイネには川島慶三みたいな小技はできない。そして二人とも、そんなことはやらなくていい。おのおのが求められた役割を果たせばよいのだ。それができたからきのうもきょうも勝てている。

 

役割を果たすためにもまずは自分がどんな役割を求められているかは把握しておきたいものだ。私はかけ出しの記者のころ先輩に「頑張るベクトルが違う」と言われてへこんだことがある。頼まれていないことでも頑張って結果を出せればまだよいが、頼まれていないことで失敗するのはみじめなものだ。効率主義という意味ではなくて、やはり貢献するためには今自分が何をすべきかはきちんと理解しておきたい。

新聞記者 (角川新書)

新聞記者 (角川新書)

 

 

 

川島慶三デスパイネ。似ても似つかぬ二人だが、求められた役割を果たしているのは全く同じ。他にも中・長距離砲のグラシアル、守備の要の今宮健太、背中で語れる千賀滉大、元気印の松田宣浩、強肩の甲斐拓也、俊足の周東佑京などなどソフトバンクは個性や特性を上手に組み合わせている。だからこそ見ていて楽しい。長所を生かした野球をするソフトバンクにこれからも注目していこう。

自信が姿を変える~ソフトバンク高橋純平、使いたくなる選手に進化

ソフトバンクが勝負どころで日本ハムに連勝。ゲーム差を5.5に広げた。勝ちゲームの継投の一角には高橋純平がいた。8月11日を終えて29試合に登板、防御率は1.27と堂々たる内容だ。

投げる度に自信を深めているんじゃないか。この日のDAZNの解説の斉藤和巳とアナウンサーがそんな話をしていた。しかしリポーターからは、真逆の報告があった。
「不安しかない」
何と高橋純平は不安を感じているという。今なぜ好調なのかが分からない。朝起きたら以前の自分に戻ってしまっているんじゃないか、ストライクが入らなくなっているんじゃないか、と。
それは高橋純平がブレイクするまでに3シーズンの助走を必要とした背景があろう。もがく中で何度もフォームを変えた。一歩間違えば自分を見失い、プロ野球の世界からいなくなってしまった可能性すらあった。才能を見込まれてプロ入りした人には誰にでもあるリスクだ。
だが高橋純平は2019年にじわじわ結果を積み上げていくことで信頼感を得てきた。最初はビハインド、次は同点、次は勝ちパターン。任されるイニングも中盤から後半へ。そうやって中継ぎピッチャーは階段を上がっていく。高橋純平もまたそうだった。本人的には1イニングずつ抑えようという意識の方が高いかもしれない。
そうやって防御率1点台をキープしているのだから、斉藤和巳が、高橋純平が投げる度に自信を深めているんじゃないかと見るのは当然と思う。それがそうではなかった。
そこに斉藤和巳は理解を示した。斉藤和巳自身、1996年にプロ入りするもその年は1軍成績なし。そこから3年は毎年1登板のみ。プロ5年目の2000年に5勝とようやく結果が出た。だから自分と同じく高卒後にプロ入りした高橋純平が4年目に結果を出していることを「順調」と表現した。
野球を裏切らない――負けないエース 斉藤和巳

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そして斉藤和巳は、不安を持つのは悪いことじゃない、とも話していた。不安と緊張は持っていていいんだ、とも。それがあるから準備をするのだし、しっかり準備をすればいいのだ、と。
「マウンドに上がるまでに、やることはやったんだ、と覚悟が決められる、そんな時間の使い方ができればいい」
本当にその通りだと思う。
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アナウンサーが思い出したように言った。昨シーズン中継ぎで活躍した加治屋も、投げるごとに雰囲気ができてきた、と。すると斉藤和巳はこう言った。
「自信が姿を変える」
表情にも余裕が生まれるし、オレはやれるんだと胸を張ることで周りからは堂々としているように見えるのだろう。
不安しかないと言っていた高橋純平はまだ表情に慎重さが一番にじみ出ている。それはそれで斉藤和巳が言うように上手に不安と付き合えばいいわけで、ぼちぼち「打てるものなら打ってみろ」くらいの気迫があってもいい。気が付けば日本ハムと入れ替わり、西武が2位に浮上してきた。高橋純平には西武の強力打線をねじ伏せてもらわないと困るのだ。シーズンを終えて高橋純平に確固たる自信が芽生えていたら、その時は間違いなくソフトバンクがペナントを奪回している。

地位は与えられるより奪う~阪神・大山が6番降格の日にサヨナラホームラン

スポーツニュースを見ていたら、広島が勝つんだなという構成だったがスコアが出てびっくり。8月10日は阪神がサヨナラ勝ちした。大山悠輔がサヨナラ3ランを放ったという。さすが4番だな、と思ってDAZNを見返してみて気が付いた。大山は6番に降格されていた。

「ランナーを返すことを考えた」と大山は振り返ったが、どうだろう。おれが決めてやる。そんな野心はいくらか芽生えなかったか。別に偉ぶれという意味ではない。4番を張る選手にはそのくらいの強烈な自負がほしい、そういう意味で、だ。

 

自分で自分の進路を決められる人は自分で責任を負う代わりに自由を手にできる。しかし誰もが自分で自分の進路を決められるわけではない。大山とて4番を任してもらいたいと思っても、頼りないと思われたら4番では使われない。結果を出し続けねばならないのだ。

 

新聞記事には大山の4番は与えられたものなんて書かれていた。将来性を見込んでの先行投資という意味合いもあるのだろう。だとしても誰もが4番を張れるわけではない。大山には大山の、4番としての自負はあるはずだ。それが6番に降格となった。

 

言い渡された時はどんな気持ちだっただろう。悔しかっただろうか。やり返したいと思っただろうか。ヒーローインタビューでは、6番で使われたらそこでやれることをやるというようなことを殊勝に話していた。アナウンサーに、4番サード大山が待たれていると水を向けられても、頑張ります、と短く答えた。そう、大山が正しい。何かを語るよりも大山はバットで答えればいいのだ。

 

矢野監督とて6番での起用については迷いを匂わせた。しかし4番を取ってほしいとも語っていた。そうだ。大山がこれから4番に座るとしたらそれは、実力で手にした座でなくてはならない。

 

若き4番である巨人の岡本和真にも同じことが言える。右の長距離砲としての期待から高橋由伸前監督が種を植えた岡本だったが、昨年大ブレイクしたものの2019年は思うような結果が出ているとも言えない。4番を外れた日もあった。だがヤクルトから13年ぶりに7点差をひっくり返した試合でのホームラン2発など勝負強さを発揮しだした。結果を出し続ければもう与えられた4番とは言われない。

 

人生初のサヨナラホームランが6番降格の日に出た。矢野監督は「何かある」と話していたが、何かあるに決まっている。くそったれ。別に降格を嫌がるとかそんなに小さな理由ではない。結果が出ない自分のふがいなさに対する怒りもあろう。それはバットを力強く振り抜くことでしか打ち破れない。

阪神タイガース 選手フォトタオル (3大山)

阪神タイガース 選手フォトタオル (3大山)

 

 

 

ここでホームランがでればサヨナラだ、打ってみろよ。野球の神様が大山を試したようにも思える。それに大山は一発回答した。チャンスで打席が回ってくる、というのもスター選手に求められる要素だ。打てれば誉められ、打てなければこき下ろされる。特にタイガースファンは厳しいだろう。だが大山はそこへの挑戦権を持つ、数少ないバッターである。きょう早速4番に戻るのか、少し様子が見られるのかは分からないが、大山の4番復帰を楽しみに待ちたいと思う。

選手層が厚いと強い~ソフトバンク、首位攻防戦で福田秀平ら5人復帰

シーズンを決定付ける試合になる、かもしれない。ソフトバンクが宿敵の日本ハム・有原航平を攻略。エース対決を制した千賀滉大がリーグトップタイの11勝目を挙げた。これで日本ハムとのゲーム差は4.5になった。

 

ロード9戦を4勝5敗と負け越したが、8月10日は潮目を変えるのに絶好のタイミングとなった。離脱していたグラシアル、モイネロのキューバコンビに加えて川島慶三、福田秀平、中村晃が戻ってきた。試合後、工藤公康監督は「上がってきた選手は早く使いたかった」と話していたが、川島以外は早速出場。それぞれヒットを放ったり抑えたりとチームに貢献してくれた。

 

中でも福田秀平の活躍は光っていた。ラジオ解説の浜名千広がきょうのヒーローに福田を選んだが激しく共感する。ヒーローインタビューは確かに千賀と、決勝打の甲斐拓也でもよいのだが、おかえりなさいという意味でも試合の流れ的にも福田秀平がヒーローインタビューされてもおかしくなかった。

 

 

福田はまだ4点リードされている6回に四球を選んで出塁。そして盗塁に成功。甲斐のタイムリーでホームに帰ってきた。内川、デスパイネにもタイムリーが出て1点差まで追い上げた。福田の出塁が反撃ののろしとなったのは間違いない。

 

7回には1死二、三塁の場面で甲斐拓也がセンターに大飛球をかっ飛ばした。センター西川遥輝は一旦捕球するも(犠牲フライに)グラブからボールをこぼし(エラー)二塁ランナーだった福田秀平までホームインした。犠飛とエラーというプレーは初めて見た。甲斐拓也は打点1が記録され、そのままセカンドに残った。これでソフトバンクは6-4と逆転。打った甲斐拓也はもちろん素晴らしいが、犠牲フライ対応からの一気ホーム生還は経験豊富な福田秀平ならではの激走。センスも含め浜名千広が評価していた。

 

逆転打を喫した有原はマウンドを降りた。結果的に有原は負け投手となり、千賀は一転勝ち投手に。最多勝争いの意味でも、日本ハムがゲーム差を広げられた意味でも、西川のエラーは非常に大きな意味があった。捕ったようにも見えたが、その後こぼしたことで福田がホームに帰るきっかけを作ってしまった。自分の背後で起きたわずかな隙を見逃さず、強い意思でホームに戻ってきた福田の気迫が逆転劇を呼び込んだ、としておきたい。

 

福田は8回にはだめ押しとなる2点タイムリーを放っている。守備でも深い当たりをジャンピングキャッチするなど躍動感いっぱい。この辺りは先輩たちの復帰によりスタメンを外れた上林誠知や牧原大成にもおおいに刺激になることだろう。

 

グラシアル、福田秀平、中村晃が復帰即スタメンで外野は「3枚替え」。出番争いは一気にヒートアップした。場合によっては中村晃が一塁に回り内川を補完する可能性すらある。有原がじわじわ崩れたのはいろんな選手に攻撃されたから、と見ることもできる。ソフトバンクは層の厚さで勝ったとも言えるのだ。

 

逆に日本ハムは勝負どころで西川、清宮、近藤がエラーしていずれも失点に絡んでいる。3連戦初戦にエース有原を立て、3連勝で一気に0.5ゲーム差に詰める……そんなプランが無残にも吹き飛ぶ手痛い逆転負け。ソフトバンクファンですら4点差で有原なら敗戦覚悟だっただけに、日本ハムファンのショックは大きかろう。

 

ただ残り試合はまだある。あす、あさっての直接対決はペナントレースを占う意味で非常に重い。ソフトバンクファンからしたら5人も一気に復帰させないで、一人ずつ丁寧に、なんて思うところだが、ひょっとするとこの日本ハム初戦に一気に畳み掛ける、チームを鼓舞する意味で5人同時復帰プランを作っていたとしたら……。実戦モードになったことで涙を流した柳田悠岐まで戻ってきたらまさに鬼に金棒状態になってきた。やはり選手層の厚いチームは強い。それを実感した一戦だった。

ナンバーワンが率先する~DeNA筒香嘉智が骨折宮崎の離脱でサード守る

スポーツニュースを見ていたら筒香嘉智がサードを守っていた。面白いことやってるなと流してしまったが、けさの新聞スポーツ面を見て思い出した。そうだ、三塁手の宮崎敏郎が骨折で離脱したんだった。宮崎はDeNAの主力選手。巨人を追い上げる上でも痛い離脱である。

空に向かってかっ飛ばせ! 未来のアスリートたちへ

空に向かってかっ飛ばせ! 未来のアスリートたちへ

 

 

 

そこでラミレス監督が打ったのが筒香のサード起用。それに備えて筒香は早出で守備練習したと記事に書いてあった。「ナンバーワン選手が率先することはチームへの影響が大きい」とラミレス監督。今は緊急事態だよ、主力だろうが若手だろうが、今を乗りきるために各自やれることをやろうぜ。そんなメッセージを発したかったのかもしれない。

 

実際、いる。世の中には緊急事態だと分かっているのに動かないやつが。猛者になると、緊張事態に気付いていないふりをしたり、緊張事態だと分かった上でいなくなったりする。そんな奴に限って緊張事態の時は泣きついてきたりするからたちが悪い。

 

DeNAの場合は巨人を倒して逆転優勝という共通目標があるから一致団結できそうだが、そういうものがないところほど自分勝手な行動が生まれがちだ。筒香のようなナンバーワン選手が率先して動くことには意味がある。トップレベルの人が自分の時間を削って周りをフォローしている。そういう姿勢をさりげなく見せられる筒香、いい選手である。

 

私の職場は正社員が男ばかり、ノリは完全に高校の男子クラスだが、何かをやる時は基本的にみんなで手分けしてやる。先輩も偉ぶらずに一緒に作業するのは昔からの伝統なのか分からないが、下に任せてもよさそうなものまで「やっとくわ」と言ってくれる。上が率先して動くと下は上手に引っ張られるものだ。

 

さて、DeNAは宮崎の離脱がかなり痛いが逆に一致団結して巨人を追撃する可能性も。巨人は巨人でヤクルト相手に7点差をひっくり返す13年ぶりの大逆転劇を見せるなど踏ん張っている。果たして筒香のサード効果はチームに、そしてペナントレースにどんな影響を与えるだろうか。

緊張しても開き直る~ソフトバンクが今宮健太の逆転3ランで連敗止める

胸のすくような一発だった。今宮健太の起死回生の逆転3ランが飛び出しソフトバンクがロッテに勝利。連敗を3で止めた。今宮は頼もしい限りだが、実は緊張していたという。

今宮でも緊張するんだな、と意外に感じたが代打での起用がほとんどなかったからだと分かった。今宮ほどのキャリアがあっても普段と違うこと、慣れない環境だと緊張してしまうんだなというのは発見だった。

じゃあなぜ今宮がホームランを打てたのか。
「代打の経験がほとんどないので緊張したけど、開き直っていけた。打つ前の何秒か記憶がないので、帰って映像を見て余韻に浸ります」(西日本スポーツ記事、ソフトバンク今宮、代打逆転3ラン!! ロッテ戦6年ぶり負け越し阻止 より)
そう、開き直りである。

だからこそ初球に思い切ってバットを出せたのだろう。代打はここ一番での起用だし、ロッテに連敗していることからも、今宮にしてみれば結果を出さねばと気負ってしまう場面だ。しかし打つ前の何秒かは記憶がないという。相当集中していたのではないか。もしくは無心、か。

私はどちらかといえば緊張しやすく、初めての場面はとても苦手だ。なぜか初対面の人と話すことだけは苦痛ではなく、逆に密かな楽しみなのだが。それはきっと、これから親しくなれるのではというほのかな期待感がそうさせるのだろう。これをうまく応用して、緊張する場面ではこの後何かいいことがあるんじゃないか、と期待するようにしてみよう。そしてもう1つは開き直り。もう緊張してしまっているのだから、開き直ってやるしかない。中途半端なスイングではなく思い切って振る。そうすれば案外うまくいくのかもしれない。

この日は2位の日本ハムが敗れたため、ソフトバンクとのゲーム差が3に広がった。ソフトバンクは10日から本拠地で日本ハムとの直接対決が控えているだけに、今宮健太の逆転ホームランはソフトバンクにとって非常に価値のある一発だった。今宮は脚の調子が万全ではないが、無理せず残りの試合を戦ってもらいたい。

考えることは悪くない~ソフトバンク上林、本多コーチに「笑顔になれ」と言われた日

試合前、上林誠知が本多雄一コーチにこんなことを言われていたという。出典はRKBエキサイトホークス。

「誠知、考えすぎるな。もっと笑顔でプレーしろ」

確かに、上林がニコニコしているシーンをほとんど見ない。それも仕方ない。今年の上林はようやく打率が2割になったところなのだ。

 

上林とすれば白い歯を見せている場合ではない。だが考え過ぎて凝り固まってしまうのも考えものだよ。本多コーチが言わんとするのはその辺りではなかろうか。笑顔になることで多少肩の力を抜くことができるかもしれない。

 

「考えることはいいです」

ラジオ解説の多村仁はそう話していた。

「引き出しが増えることですから」

「乗り越えたらさらなる結果が出る。成長できますから」

 

多村さんは不調の時、どうしてましたか?と聞かれると「逆にバットを振らない、練習しない。悪いものは捨てる」とまさかの回答。なるほど、そういう手もあったか。そんな多村仁も晩年はバットを振ったという。筋力を落とさないためでもあったが、感覚は体で、頭で覚えるからだそうだ。

 

上林は感覚をリセットするために敢えてバットを持たないのか、練習することで効果的な打撃を体に覚え込ませるのか。どちらをやるにしても、上林にはもっと打ってもらわないと困る。前田智徳みたいにストイックになる、近寄りがたいイメージになる。それでも構わないが、まだまだ若いし、弾けちゃってもいいんじゃないか、と思っている。

 

この日はようやく8回に松田宣浩がタイムリ二塁打を放って同点に追い付いた。レフトスタンドが盛り上がったのも束の間、上林が倒れてチェンジになってしまった。見逃し三振。外角いっぱいの判定だったが、上林は「外れてるよ!」と不満そうにアピールした。それはいかにも、本多コーチが望んでいる笑顔の真逆の表情だった。

 

結果が伴わなければ笑顔も何もない。上林はきっと真面目すぎるのだろう。しかし真面目な人ほど力を抜くのは難しい。考えすぎるなと言われても考えてしまうのだ。それでも、多村仁が言うように、考えること自体は意味はある。そして本多コーチが言うように、自分で乗り越えるしかない。その先にはきっと新しい上林がいるはずだ。笑顔でプレーする上林を、1日も早く見てみたい。

いいイメージを持つ~サヨナラ本塁打を打ったロッテ清田と打たれたソフトバンク松田遼馬

松田遼馬が清田育宏サヨナラホームランを喫した。8回にデスパイネが同点ホームランを放ち、ソフトバンクファンの私は小躍りしたのだが、2019年のソフトバンクにとって、ロッテは厄介である。

 

清田いわく、「(本塁打を放った打席を)思い出しながら打席に入りました」(スポニチ記事「ロッテ・清田 人生初のサヨナラ弾!『“打ったことないんだよな”とか話していたんですけど、まさか』」より)。清田は松田遼馬から5月にもホームランを放っていた。やはりいいイメージを持つことは意味がある。

 

逆に松田遼馬は前回ホームランを打たれた場面が頭をよぎったのでないか。もちろんやられた相手とその内容を覚えておくことにも意味はある。やられたらやり返す。倍返ししてやろうと思うのは半沢直樹プロ野球選手も同じこと。同じ相手と何度も対戦し、切磋琢磨するからこそプロ野球は面白い。

 

松田遼馬の記事はまだ見つけられていないが、「打たれてチームに迷惑をかけた。申し訳ない」(西スポ記事「ソフトバンク 千葉でサヨナラ悲弾 やっぱり鬼門、今季1勝6敗」より)とうなだれた。結果はともかく、どんな気持ちで清田に立ち向かったのかは気になる。

 

何かに取り組む時、どんな結果になるかをイメージすることは大切だ。と自戒を込めて書いている。かくいう私は悲観主義者。だからこそ割と準備に時間をかけるタイプだ。慎重に事を進めたおかげで大事故は少ない。だが、大成功も少ない。逆に周りを見渡してみると、結果を出している人は完成形までしっかりとイメージできているように見える。だからこそ何をいつまでにやらねばならないのか、しっかり工程管理ができるのだろう。これは本当に見習わねばならない。

 

気持ちの持ちようで結果が出ることはある。今年は甲子園に行けなかったが、昨年度の夏の甲子園に出た高知商業は「予祝(よしゅく)」というイメージトレーニングをしていたという。
「選手たちは朝練の中で、部員一人一人がお互いを褒め合い、最後には日本一になることをみんなで想像しながら、どんな状況でも最終的には『勝つ』ことをイメージする習慣をつけていたそう」(高知県のサイト「甲子園で光り輝いた高知の星!高知商業高校野球部ナインと甲子園を振り返る」より)

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事前にお祝いのイメージだなんて、悲観主義者からすると考えられないのだが、実際、甲子園に出て勝ち進んだ姿を見ると、明らかに結果が出ている。もちろんいくらイメージだけしても実力を伴わなければ絵にかいた餅だ。昨年の高知商にはいいイメージを具現化する力があったということだ。

 

というわけでソフトバンクの松田遼馬に話を戻すが、リリーフピッチャーはいつ登板指令が来るかは分からない。また勝負どころで清田と対戦するかもしれない。だからこそ次こそは抑えるんだと今からいいイメージを持つように努めてもらいたい。二度あることは三度ある、なのか、三度目の正直、なのか。次こそは松田遼馬が清田のバットをへし折ることを期待している。

新天地で結果を出す~元ソフトバンクの山田大樹、ヤクルトで2年ぶり勝利&4連勝

ソフトバンクファンだが、密かに気になっている。ヤクルトスワローズ山田大樹。2017年秋、ソフトバンクから無償トレードされた。2019年シーズンは2年ぶりの勝利を飾り、それを含んで4連勝と結果を出している。

 

無償トレードというのは、ソフトバンク山田大樹を構想外にしたところにヤクルトが手を差しのべたから。差しのべた、というと救う感じがするが、実際、ヤクルトが手を挙げなければ山田はプロ野球選手ではなくなるところだった。チームは変わるけれど、山田にとってはありがたい話だったに違いない。

 

ヤクルトはかつての野村再生工場が有名だが、その後もちょこちょこ選手を獲得して一花咲かせようとすることでチームを強くしようとしている。自前の選手を徹底的に鍛え、補強が少ない広島とは対照的である。

 

私は異動が多かっただけに、トレードや移籍した選手についつい目がいく。新天地でも頑張ってほしいなあと、ついつい肩入れしてこのブログでも書いてきた。思うように生きられない人たちが自分を重ねられるのか、そういう記事の視聴率は悪くない。共感もしてもらえるようで、この森岡良介記事はわが黒柴スポーツ新聞で唯一の3ケタシェア。森岡もまたヤクルトに拾われた選手だ。

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山田大樹は左投げだし、先発ができるから面白い存在だと思っていたが、登板機会がなかなかないままソフトバンクを去った。気になる選手がいなくなるのはファンとしては寂しいが、さらに寂しいのはそのままいなくなってしまうことだ。だから山田がヤクルトに行くことが決まった時はよかったなあと思ったことだった。

 

同じプロ野球チームとはいえ勝手が違うだろうし、新しい環境で結果を出すのは生え抜き以上に大変だ。山田は初年度は勝てなかった。しかし2年目の今年はじわじわと勝ち星を積み重ねている。豪速球があるわけでもない。代名詞のウイニングショットがあるわけでもない。それでも勝てるのは丁寧なピッチングだからだろう。最近は軒並み150キロを投げる人ばかりだが、こういう勝ち方も味がある。

 

無償トレードで獲得した選手が2年がかりとはいえ4勝してくれたことは、ヤクルトの編成的にもまずまずというところではないか。今年は広島の下水流と巨人の和田恋が楽天に移籍した。彼らは元いたチームではなかなかレギュラーの壁を崩せなかった。壁を崩してこそプロ野球選手なのかもしれないが、何かのきっかけでブレイクする選手はもっともっといるのではないか。日本ハムに移籍した宇佐美なども面白い存在になりそうだ。

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山田は残りのシーズンで何勝できるだろうか。外様選手は生え抜きよりも厳しい立場だ。だが山田はそもそも育成出身。はい上がってきた男だ。まだ30歳。結果を出すことで1年でも長くマウンドに立ち続けてもらいたい。


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