黒柴スポーツ新聞

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自信が姿を変える~ソフトバンク高橋純平、使いたくなる選手に進化

ソフトバンクが勝負どころで日本ハムに連勝。ゲーム差を5.5に広げた。勝ちゲームの継投の一角には高橋純平がいた。8月11日を終えて29試合に登板、防御率は1.27と堂々たる内容だ。

投げる度に自信を深めているんじゃないか。この日のDAZNの解説の斉藤和巳とアナウンサーがそんな話をしていた。しかしリポーターからは、真逆の報告があった。
「不安しかない」
何と高橋純平は不安を感じているという。今なぜ好調なのかが分からない。朝起きたら以前の自分に戻ってしまっているんじゃないか、ストライクが入らなくなっているんじゃないか、と。
それは高橋純平がブレイクするまでに3シーズンの助走を必要とした背景があろう。もがく中で何度もフォームを変えた。一歩間違えば自分を見失い、プロ野球の世界からいなくなってしまった可能性すらあった。才能を見込まれてプロ入りした人には誰にでもあるリスクだ。
だが高橋純平は2019年にじわじわ結果を積み上げていくことで信頼感を得てきた。最初はビハインド、次は同点、次は勝ちパターン。任されるイニングも中盤から後半へ。そうやって中継ぎピッチャーは階段を上がっていく。高橋純平もまたそうだった。本人的には1イニングずつ抑えようという意識の方が高いかもしれない。
そうやって防御率1点台をキープしているのだから、斉藤和巳が、高橋純平が投げる度に自信を深めているんじゃないかと見るのは当然と思う。それがそうではなかった。
そこに斉藤和巳は理解を示した。斉藤和巳自身、1996年にプロ入りするもその年は1軍成績なし。そこから3年は毎年1登板のみ。プロ5年目の2000年に5勝とようやく結果が出た。だから自分と同じく高卒後にプロ入りした高橋純平が4年目に結果を出していることを「順調」と表現した。
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そして斉藤和巳は、不安を持つのは悪いことじゃない、とも話していた。不安と緊張は持っていていいんだ、とも。それがあるから準備をするのだし、しっかり準備をすればいいのだ、と。
「マウンドに上がるまでに、やることはやったんだ、と覚悟が決められる、そんな時間の使い方ができればいい」
本当にその通りだと思う。
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アナウンサーが思い出したように言った。昨シーズン中継ぎで活躍した加治屋も、投げるごとに雰囲気ができてきた、と。すると斉藤和巳はこう言った。
「自信が姿を変える」
表情にも余裕が生まれるし、オレはやれるんだと胸を張ることで周りからは堂々としているように見えるのだろう。
不安しかないと言っていた高橋純平はまだ表情に慎重さが一番にじみ出ている。それはそれで斉藤和巳が言うように上手に不安と付き合えばいいわけで、ぼちぼち「打てるものなら打ってみろ」くらいの気迫があってもいい。気が付けば日本ハムと入れ替わり、西武が2位に浮上してきた。高橋純平には西武の強力打線をねじ伏せてもらわないと困るのだ。シーズンを終えて高橋純平に確固たる自信が芽生えていたら、その時は間違いなくソフトバンクがペナントを奪回している。

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