黒柴スポーツ新聞

ニュース編集者が野球を中心に、心に残るシーンやプレーヤーから生きるヒントを探ります。

視野が広い人はカッコいい~2016年日本シリーズ解説が細かすぎて「神ってる」宮本慎也

同じ場にいても人によって見ている所も違うしとらえ方も違う。アンテナの張り方が違うのだろうし、感度も違うのだろう。



それを日本シリーズの解説をしている宮本慎也で再認識している。第1戦のTBS中継にがっかりして途中からNHKラジオの宮本慎也解説を聞いたことは以前書いた。第3戦もTBS中継で我慢して聞いていたが8回にギブアップ。また映像を見ながらNHKラジオを聞いた。

意識力 (PHP新書)

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TBS解説は衣笠祥雄佐々木主浩、ゲストの阿部慎之助の3人。だが第1戦再三の言い間違いで物議をかもした初田啓介アナウンサーともども情感も抑揚もない淡々とした進行に飽きてしまった。深みがない。解説3人とも実績は申し分ないのだがそれと解説の力量が比例するとは限らない。



その点、宮本慎也は実績も知識もトーク力も十分すぎる。きょうもたっぷり楽しませてもらった。

歩-私の生き方・考え方-

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ラジオに変えた時、広島がチャンスを迎えていた。8回表無死1塁(ランナーは代走の赤松真人)、打席には鈴木誠也赤松真人が盗塁するかが焦点だったがスタートを切った時の外角低め投球を鈴木誠也が打ちあげてしまった。これで1死1塁。



「赤松がスタート切っていたので見逃せばノーアウト2塁でしたね。厳しい球でしたがあれを見逃せるようになれば」。なるほどね。



続いてバッター、エルドレッド。「赤松がキャッチャーの構えを見られるようになりましたね。エルドレッドがどういう打者かを考えれば、内角に構えればストレート。外角は変化球なんです」。そう、外角に構えた時が狙い目と言うのだ。だが赤松真人が走る間もなく打ち上げて2死になった。結局次の打者の時に赤松真人は盗塁失敗。攻撃が終わってしまった。



9回表、日本ハム宮西尚生で締めにきた。「外スラ」と呼ばれる、ボールゾーンから外角いっぱいに決まる球が持ち味だ。右打者には相当遠く感じられ、代打で出てきた下水流昂は当てることも難しいという感じで三振。宮本慎也は外スラについて「(右打者なら)ライトライナーを打つつもりで」と攻略法を解説した。こういう話を先に聞いておけば打者がどう打とうとしているかを注意深く見られるというものだ。ライト岡大海のファインプレーの餌食になってしまったが実際、代打の小窪哲也は引っ張らずにライトに持っていっていた。



余談だが岡大海の好捕は守備固めでセンターに陽岱鋼が入り岡大海がライトに回ったからこそ生まれたとも言える。近藤健介ではジャンプしても届いていたか怪しい。日本ハムにはツキがあった。



田中広輔や菊池涼介は上手に宮西尚生の球を打ち返し2死ながら満塁。スコアは1-3と2点差だから1塁上の菊池涼介が逆転のランナーだ。ラジオを聞きながらテレビ画面を見ていた黒柴スポーツ新聞編集局長は打席の丸佳浩にくぎ付け。打席を映すアングルだから当然ではあるが意識が丸佳浩のバッティングに集中してしまっていた。

広島アスリートマガジン2016年7月号“特集 丸佳浩。

広島アスリートマガジン2016年7月号“特集 丸佳浩。"



ここで耳に入っていたのが宮本慎也の解説。「菊池のリードが小さいんですよね」。



指摘した理由は二つ。一つ目は自分が逆転のランナーで、いい当たりなら一気に生還するぞという意思を示せという点。確かにいろいろな手法で宮西尚生にプレッシャーは与えられる。



もう一つは丸佳浩が内野ゴロだとしてもリードを大きめにとっていた菊池涼介が2塁にいち早く到達すれば送球されてもセーフ、つまり野選となってオールセーフになる可能性を高められるからだ。



守備の人、2000安打の人、犠打の人とばかり思っていたが走塁、盗塁に関する解説もばっちり楽しませてくれた。やはり解説者には目の前で起きたプレーを的確に意義づけ、背景や見て楽しむためのツボを解説してもらいたい。

師弟

師弟



通勤時間、休み時間、移動時間は特別な作業をする必要がないため漫然と過ごしがち。だがアンテナを張っておけば何かしら引っ掛かるもの。意識して探せるよう感度を上げておけば課題解決のヒントが見つかる可能性も高まる。黒柴スポーツ新聞編集局長もできるだけ毎日ブログを書けるよう、ネタ探しを意識して物事を見聞きするようになった。これもちょっとした成長だ。



宮本慎也のように視野が広い人と話をするのは物事が立体的に見えて楽しい。幸い先輩後輩でそういうことができる人がいる。黒柴スポーツ新聞編集局長も見習ってアンテナの数と感度を増やそう。



きょうの1枚は宮本慎也。このカードは1996年版だが宮本慎也1995年ドラフト2位だからルーキーカードと言ってよさそう。通算安打がまだ11本と2000本を記録する気配は全くない。このあたりにこそルーキーカードの価値がある。宮本慎也はいずれヤクルトの監督になりそうだが視野の広さを生かして侍ジャパンも率いてほしい人。ぜひ選手の野球脳を鍛えてほしい。
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ブランドは自分でつくるしかない~前進守備をとらせなかった大谷翔平と、とってもらえなかった大瀬良大地

日本シリーズ第3戦中継は朝日放送系列だったため黒柴スポーツ新聞編集局長はいつものように日本シリーズ難民となった。第3戦は黒田博樹ラスト登板(の可能性)ということもあるが、個人的にはいかに日本ハムが立て直せるかに興味があった。見たい、見たい、見たい…



ということで野球通がいらっしゃる某所にお邪魔して見させていただいた。日本シリーズ中継を見ているのに「梶本隆夫って結構負けたよね」「真弓は若菜と一緒に太平洋から阪神に来た?」てな具合に思い付くことをひたすらしゃべってきた。何しに行ったんだか。
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いやいや、試合自体も熱戦で楽しめた。最後に大谷翔平がライト前にタイムリー。だが注目したのは打撃ではなく広島の守備位置。前進守備を解き定位置に戻ったのだ。

大谷翔平 二刀流

大谷翔平 二刀流



解説の古田敦也はそれを見て敬遠だと言った。確かに前進守備でなければ2塁ランナー西川遥輝は刺せない。広島は大谷翔平の打撃力から大きな当たりが来ることに備えたのだろうか。スポニチはそのように分析していた。
www.sponichi.co.jp



広島は勝負を選択。インコースの窮屈さをものともせず大谷翔平が鋭く振り抜いて外野まで運んでしまった。



1点を防ぎたい時に外野はどこまで前進するのか。「自分の肩で刺せるとこまで、と言いますね」と野球通。なるほど。決してホームベースから何メートルなどと決まっているわけではない。ゴロでもバウンドでも捕ってバックホームしたのと、2塁からホームに走り込む走者の脚をイメージして、刺せるところまで前進すればいいのだ。肩の強さは人それぞれ。どこまで前進すればいいのかという限界は本人が設定すればよい。



仕事も本当はそう。ここまでの量、ここまでの質は確保できる。端から見てると楽々かもしれないが本当は必死のパッチで仕上げた結果かもしれない。偶然できちゃっただけかもしれない。質、量ともどこまでが限界かリアルな部分は本人にしか分からない。



過労死や過重労働という悲劇はそれとのギャップで起きているのだろう。もちろんスポーツだって選手がもうだめだ、できないと言ってもコーチがいけるぞと選手の力量を把握した上で鼓舞した結果クリアできることもある。負荷をかけねば伸びるものも伸びないのも事実だ。



だがデキる人ほどどんなポジショニングなら課題というランナーをホームで刺せるか、自分の肩を把握できている。周りから何と言われようとリスク管理ができているのである。



リスク管理と言えば、結果的に逆転されたが広島による8回裏の大谷翔平敬遠は順当と考える。ヒットこそ出ていたがチャンスに併殺打に倒れるなど中田翔は結果を出せていない。一打逆転の場面で、しかも天秤にかけられるのが大谷翔平とは言えわざわざ自分の前で敬遠するのだから、これで打てなければ主砲の心を折るには十分すぎるシチュエーション。やってみる価値がある戦法だった。



ただしTHE PAGEで池田親興が指摘していたが敬遠と同時に守備固めをしていてもよかった。黒柴スポーツ新聞編集局長と一緒に見ていた野球通は日本ハム逆転直後に「松山は代えとくべきだったかな。たら、ればだけど。赤松とかに」と言っていた。確かに森祇晶監督などはここと言う時にショートを田辺から奈良原に代えたりとやれる手はことごとく打っていた。緒方孝市監督、外野手出身だが抜かったか…。
thepage.jp


後ろにそらしたとはいえレフト松山竜平も果敢に突っ込んだ。いっぱいいっぱいのプレー。ドライにワンバウンドで捕っていたら「なぜ突っ込まない!」と熱いカープファンに突っ込まれたことだろう。でも精一杯のプレーだったから勝ち星が消えたとはいえ黒田博樹も何も言わなかっただろう。



サヨナラの場面、大谷翔平と勝負しつつもそこそこの打球を打たれる前提で前進守備を敷かなかったとすればその時点で気迫負け。江夏豊だったら前進守備やないってことは俺がデカい当たり打たれる前提やないか!と激怒しただろう。大瀬良大地もいい球投げるだけに、あそこで安心して前進守備をとらせられるピッチャーになってほしい。そのためには自分で実績を作るしかない。ブランドが確立されているかどうかでは大谷翔平の圧勝だった。

左腕の誇り 江夏豊自伝

左腕の誇り 江夏豊自伝



きょうの1枚は羽生田忠克珍プレー好プレーでも西武球場でのえげつないバックホームがよく放映されるあの人である。野球通の中居クンも推していた。第3戦ラストシーン、前進守備プラス羽生田忠克の強肩なら西川遥輝を刺せてたかもしれない?とちょっと遊んでみた。いやいや、刺せたとしたらこの人の強肩でしょうという選手が思い浮かんだらぜひコメント欄に投稿お願いします。この野球カード裏に書いていたが羽生田忠克は1992年の開幕前に雪の北海道でトレーニングするも足に凍傷ができて出遅れたのだとか。なぜ雪のあるところでわざわざ…。
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生き時間と死に時間~移動日と休養日で復活した稲尾和久

日本ハムファンには申し訳ないが、日本シリーズが面白い展開だ。劣勢こそ栗山英樹のマネジメント力が発揮されそうだからだ。


案の定連敗後に言っていた。自分たちのやりたいことができているか、それが大事なんだと。


並の指揮官なら勝敗にこだわる。だが栗山英樹は自分たちがやりたいことができているかを重視しており、それができれば結果はついてくるという考えなのだろう。下手したら敵の失策で勝ってもうれしくないくらい言いかねない。


日本シリーズの醍醐味の一つは移動日だ。試合がないのに何が面白いの?と言われそうだが移動日を上手に使うのも技術の内、と思うからだ。


時間には「生き時間」と「死に時間」がある。前者はプラスに作用する。後者は無駄である。


待ち合わせをする。相手が遅れる。想定外で暇つぶしできるものがない(今時はスマホタブレットがあればどうにでもなるが)。ただ待っているだけなら死に時間。隙間時間で持っている本を読んだり音楽を聞いて気分転換したりできれば生き時間になる。時間の長さによるがやろうと思えば勉強だってできる。大事なのは時間をどう使うかだ。


日本シリーズのカレンダーでは第2戦の翌日は移動日。だが日本ハムナインにしてみれば気分転換の意味がある。しかもホームに戻れる。サッカーもホーム&アウェーという言葉があるように野球でも地の利はあろう。日本ハムにはよい切り替え時。生き時間にするチャンスだ。


日本シリーズがぶっ続けで毎日行われればいい加減短期決戦なのだから勢いが付いた方が有利。あっさり終わり逆転のドラマはもっと少なかったことだろう。単純に開催地が離れていて移動日というルールができたのだろうがこの移動日が休養日になったり気分転換になった事実はある。



例えば1958年の西鉄。後楽園球場での日本シリーズ第1戦、第2戦で連敗。今では考えられないが西鉄ナインは宿敵巨人と同じ寝台列車で次の舞台、福岡に向かった。「伝説」によると巨人の選手は寝台でおとなしく寝たのに対し西鉄ナインは食堂車でにぎやかに飲んだ、食堂車のビールを飲み干したとされている。ひっくり返す自信があっての行動と理解されている。



エース稲尾和久の著書「鉄腕一代 超人投手の豪快野球人生!」(ベースボールマガジン社)によれば、にぎやかに飲んだのは事実だがそこまでの余裕はなかったという。むしろ負けるかもしれないという不安があった。何とかなるという気持ちと混ざり合って複雑な心境だった。



ただ稲尾和久に限れば平和台球場に戻ると「もうシャキッとなっていた」。自信を持って上がったマウンドで納得いく投球ができた。しかし序盤に失った1点に泣き0-1で負けた。これで3連敗。前年まで2年連続日本一の西鉄がついに追い込まれた。
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ところが翌日第4戦の朝、稲尾和久が起きると試合中止が決まっていた。前夜から雨が降ってはいたがすでに止み昼前には青空さえ見えた。だが遠方からバスで来る人たちのために中止なら早朝決定が必要というのが西鉄の大義名分だった。


巨人は押せ押せだったしやりたかったに違いない。中止も稲尾の休養目的と見るのが自然だろう。中止には強く抗議したという。


稲尾和久自身は休養は休養でも「精神の休養」だったと振り返る。考える時間ができたのだと。心身ともにリフレッシュして4連勝とすべて勝ち投手となり第5戦に至ってはサヨナラホームランまで打った。休みが生き時間になったのだ。


稲尾の復活は超人的で別次元なのだがこういう切り替えの時間を持とうという意識は真似できる。アイデアが煮詰まったら散歩する。たばこを一服。コーヒーを一杯。それぞれのやり方で自分らしさが取り戻せたらいい。それは決して死に時間にはならない。


黒柴スポーツ新聞編集局長も胸に手を当てて振り返ると、今年様々な出会いや学びの場に恵まれ「生き時間」が増えた。そういう環境を作ってくれた先輩後輩友人にはとても感謝している。


話は戻るが、不可能、無謀と思われた二刀流をこなし165キロも記録した大谷翔平なら何かやってくれそうな期待もできる。果たして投打に活躍し、神様仏様大谷様状態になるのだろうか。


ちなみに例の1958年第4戦三原監督は稲尾和久を登板させるつもりだった。負けてもファンは稲尾和久が投げた上でなら納得してくれたと考えたからだ。もしも崖っぷちまで追い込まれたら栗山英樹監督も同じように大谷翔平投入を考えるだろうか。起用法も注目しよう。

やらない勇気~日本シリーズ第1戦、第2戦の大野奨大と増井浩俊の送球による失点を例に

日本シリーズ第1戦、第2戦と日本ハムらしからぬプレーが出た。負ける時はそういうものかもしれないが。


第1戦、広島先制のシーンは重盗だが1死1、3塁で1塁走者がスタート。キャッチャー大野奨大が2塁に投げるもセカンド、ショートが入っていなかった。外野に抜けるところを慌ててショート中島卓也が横っ飛びで好捕。すぐさまバックホームするも3塁走者・鈴木誠也がわずかに早くホームを陥れた。


2塁への送球をマウンドの大谷翔平がカットしていれば1塁からの盗塁は許したかもしれないが失点は防げた。鈴木誠也も好判断だったがそもそも「投げてはいけなかった」と、第2戦中継解説の大矢明彦が言っていた。


「ダメもと」という考えもある。どうせならやった上で諦めればいい、負けを認めればいいという考え方もある。だが「やらない」ことが、最善かどうかはともかくベターな選択である時はある。


大矢明彦が言うように大野奨大が投げなければ3塁走者が突っ込んでくることはなかった。アウトカウントは増えず、得点圏にランナーが進むから日本ハムにはより厳しい状況にはなるが失点はしない。次の打者は投手のジョンソンなので打ち取れる可能性は高かった。だからこそ「投げてはいけなかった」のだ。


第2戦はビデオ判定で本塁タッチアウトが広島の得点に覆るビッグプレーがあった。草野球でレフトを守っていた黒柴スポーツ新聞編集局長的にはダイレクトでバックホームした西川遥輝の気持ちになってしまいかわいそうだなと思ったが確かに返球は高かった。伸びあがって受けた大野奨大は追いタッチになり、上半身からホームに突っ込んだ田中広輔の手が一瞬早くホームベースに届いたようだ。タッチが空タッチだったようにも見えたが読者の皆さんはリプレー検証の意味も含めどう見ただろうか。

西川遥輝メッセージBOOK

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1-2と再びリードを許したもののまだ1点差。黒柴スポーツ新聞が突っ込むのは次のプレーだ。主軸の丸佳浩がまさかのバント。慌てたかピッチャー増井浩俊は転がるボールを右手でつかみそのまま1塁へ…と思いきやボールはシュートボールのような軌道でぐんぐんそれた。悪送球となり走者の生還を許してしまった。これで2点差…。


丸佳浩のバントも大野奨大と増井浩俊のちょうど間に転がった。大野奨大が処理すれば進行方向のファーストに投げやすかったと思うがマウンドを駆け降りてきた増井浩俊は振り向きざま投げる。増井浩敏は「捕らない」という選択肢も、捕ったとしても「無理に投げない」という選択肢もあった。日本ハムは打線が当たっていないのでこの1点は痛かった。


成功する確率を瞬時に判断するのは至難の業。マニュアルやセオリーではやってはいけないとされていてもやらなければどうにもならないこともある。だがやってもし失敗したら取り返しが付かないこともある。ポイントはここ。目前の失点は防げないとしても次の1点は絶対与えない。そこが大事だ。


みすみす1点与えるなんて、みすみす相手を利するなんて、プライドの高い人はできない。しかしつまらないプライドのために傷口を広げる方がカッコ悪い。無理して自分が調子悪くなるのももったいない。「きょうはやめとくか」。それもまた勇気である。


ただ、矛盾するようだがこの作戦は20代の人にはおすすめしない。なぜなら若い人にとって失敗は特権なのだ。これを活用しない手はない。この世代は積極的な走塁をしてアウトになる分は問題にならない。むしろリードが小さかったり進塁しようとしない姿勢が問題視されるのでそこはご用心あれ。


きょうの1枚は大矢明彦。リプレー検証の際はセーフかなと思いつつも「これはアウトにしてあげてほしい」と言っていた。ゴールデングラブ賞6回の名捕手がいうのだからそういうプレーだった。もはやアウトでないものをアウトにする技は使えないのか。それも含めてプロと思うが将来に渡って誤審だ何だと言うよりはいいのかもしれない。頭から滑り込んでうまくタッチをかいくぐった田中広輔のセンスが素晴らしかった。
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似たタイプの人を並べると組織は単調になる~2016日本シリーズ第1戦で宮本慎也が指摘した中田翔と陽岱鋼の打順

2016年の日本シリーズが始まった。大谷翔平対ジョンソンの投げ合いは予告先発で分かっており予想する楽しみがなくなってしまった。まあほとんどの人がこの取り合わせを想像できただろうけれど。


日本ハムと言えば「世紀の奇襲」と表現される故・工藤幹夫さんが有名。黒柴スポーツ新聞でも追悼記事を書かせていただいたが、故・大沢啓二監督ならば決して監督会議で日本シリーズでの予告先発にうんと言わなかったことだろう。お楽しみが提供できることも含めてプロと考える人だったからだ。
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緒方孝市監督に至っては黒田博樹が引退表明をしているため、いつ投げるのかお客さんが分かった方がいいということで日本シリーズ開幕前に札幌での第3戦での登板を予告。順当に考えれば2戦目は野村祐輔。ここまで相手の出方が分かっていれば日本ハムとしては組み易しとなりそうだが果たしてどうなるだろうか。


黒柴スポーツ新聞編集局長は第1戦を地上波のTBS中継で見ていた。解説は衣笠祥雄槙原寛己、そして2016年限りで引退した三浦大輔。だが視聴しながらうならされるような解説がなかった。実況も単調で情感もない。このままでは楽しめないなと考え、中盤からテレビはつけたまま音を消し、NHKラジオを流してみた。


解説は宮本慎也。知性を感じさせる語り口。黒柴スポーツ新聞編集局長好みである。きょうの試合展開をわざわざこのブログで書くのは芸がないので宮本慎也の解説からネタ探しをすることにした。


さすが宮本慎也。期待にたがわず興味深いことを言ってくれた。初戦ブレーキの中田翔陽岱鋼の4番、5番はタイプが似ているので離して配置したらどうかというのだ。

翔! 頂点目指して

翔! 頂点目指して


よく聞いてみると、この2人は「来た球を打つ」タイプという。配球を読んで仕留めるのとは違うらしい。2人に連打が出れば打線に一気に流れが生まれる。しかし逆に凡打や三振に倒れれば流れが断ち切られる。単調になる。そういう意味合いのようだ。確かに攻め方が同じでいいから抑える側は楽かもしれない。

陽岱鋼メッセージBOOK -陽思考-

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中田翔陽岱鋼が快音を発しなかった日本ハム打線は10安打を放ちながらレアードのソロホームランによる1点にとどまった。宮本慎也はレアードがよい選球眼だったと話していた。例えば4番中田翔(来た球を打つ)、5番レアード(球筋をよく見ている)、6番陽岱鋼(来た球を打つ)、7番田中賢介(考えて打つ人)と並べ替えても確かに面白い。広島投手陣も攻め方が変わってきそうだ。


まあレアードがホームラン王になったのは下位打線で自由に打たせた結果かもしれないから、5番あたりに上げて重圧がかかったり力んで結果が出ないことも予想される。一人一人の力量、性格、プレースタイル、打線としての流れなどを総合的に考えると9人を並べる打順はなかなか奥が深い。


社会人で言えば人事も一人一人が活躍できるよう配置されるのがベストだが実力以外に入社年次やら序列やら玉突き人事的な組織の論理でどうにでもなる。


だが同じ部署やら同じチームにイケイケの人ばかり、感性の人ばかり、論理的な人ばかりかたまっても危なっかしい。やはり打線のようにチャンスメイク出来る人(とっかかりをつかめる人)、クリーンアップ(ものにできる人)、小技が得意な人(機転がきく人)などがバランスよく配置された方がうまくいくに決まっている。あまり小さくまとまりすぎても面白みに欠けるが。


適材適所という意味では第1戦は緒方孝市監督の圧勝。ともに大谷翔平からホームランを打ったことがある松山竜平を4番に、エルドレッドはファーストとして、それぞれ新井貴浩に代わって出場。2人とも大谷翔平からまたホームランを打ってしまった。管理職としてもしてやったりだろう。


初戦は5-1で広島が勝ったがシリーズの流れはまだ分からない。先制点のホームスチールのシーンは日本ハムのキャッチャーが1塁ランナーの二盗を防ごうとセカンドに送球する間に生還を許した。しかしあれはピッチャーカットだったのではないか。セカンドとショートが2塁に詰め切れておらず危うくキャッチャーからの送球がセンターに抜けるところだった。あれを大谷翔平がカットして3塁走者を殺していたら失点は防げたと思うがいかがだろうか。


大谷翔平は165キロを記録してからますます球速がフォーカスされているが、球威だけで勝てないのも野球の奥深いところ。投球術やコントロール、流れを渡さず踏ん張った点はジョンソンの圧勝だった。打線では3番の岡大海が若干迫力不足である点も含め、2戦目以降栗山英樹監督がどう組み立ててくるか興味深い。大技、小技ともに期待できる両チームの戦いを楽しむことにしよう。

未徹在

未徹在


きょうの1枚は原辰徳。1989年日本シリーズでは不振を極めたが第5戦でシリーズの流れを大きく変える満塁本塁打を放った。中田翔も2016年CSファイナルステージで優勝を決めた試合、劣勢から反撃ののろしとなるホームランを放ち札幌ドームの雰囲気をがらりと変えた。この人の1発にはそんな力がある。2戦目以降、中田翔の活躍に期待したい。
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必死にもがけ。自分次第だ~ドラ1田中正義担当の山本省吾スカウトが心に刻んだコーチの言葉

ドラフトの目玉、田中正義(創価大)が5球団競合の末、ソフトバンクに交渉権が与えられた。そのことよりも、というと少々オーバーだが「おっ」と思ったことがあった。ソフトバンクホークスツイッターに「『空振りが奪えるストレート』が真骨頂。ローテーションの中心へ、将来は球界を代表する投手へと期待。(山本省吾スカウト)」というくだりが。そっか、山本省吾はスカウトになっていたのか(熱心なホークスファンには怒られそうだが)。申し遅れましたが黒柴スポーツ新聞のツイッターはこちら(@kuroshibasports)。フォローしていただいている方には最新記事をお伝えしております。


山本省吾星稜高校時代に甲子園準優勝。慶応大学では通算21勝。逆指名で近鉄入りした左腕だ。派手さはないが巧さを感じさせ、印象に残っていた。


近鉄消滅に伴いオリックスに行った山本省吾寺原隼人高宮和也と、喜田剛山本省吾のペアが入れ替わるトレードで横浜に渡る。2011年には開幕投手も務めた(ときょう知った)。そして今度は多村仁志ら3人と山本省吾ら3人が入れ替わるトレードで2013年はソフトバンクでプレーした。


通算40勝42敗。ドラフト1位としてはいくらか物足りない気もするが40勝というのも立派な数字である。過去、どれだけのドラフト選手が勝ち星に恵まれなかったことか。物足りなさを感じてしまうのは甲子園や東京六大学での華やかなキャリアにしてみれば、という意味だ。


きょうの1枚はここで。入団会見の時の1枚だろう。こういう野球カードもいいものだ。隣の梨田昌孝監督と山本省吾。今年、2016年のドラフトは楽天監督と、ソフトバンクスカウトとして相まみえることになった。
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田中正義だ、佐々木千隼だ、柳裕也だ、寺島成輝だ、今井達也だ、藤平尚真だ、ビッグネームが続々と名を連ねた2016年のドラフト会議。逆指名であったが山本省吾も2001年、同じようにドラフトの日を迎えた。その15年後はスカウトとしてこの日を迎えた。これぞプロ野球、と思う。まばゆいカクテル光線、グラウンドを渡る風の中に人生が詰まっている。それがプロ野球。だから目が離せない。


山本省吾はなかなか文章が上手い。ネットでもオフィシャルブログの名文が取り上げられていた。名文と言うとちょっと違うかもしれないが何とも言えない雰囲気がある。黒柴スポーツ新聞編集局長は2016年のドラフト直後と引退決断時の二つ読んでみたがうならされた。くせがなく、透明感がある。文は人なり、という言葉もあるからそれに照らし合わせれば山本省吾という人はとても正直な人だろうと想像する。


ソフトバンクの発表では2014年1月1日付で東海・北信越担当スカウトになるとされていた。ただし2016年ドラフト関連の記事では交渉権を獲得した「田中正義担当スカウト」になっていた。担当地区が関東になっていたのだろうか。
www.nikkansports.com


かつてのドラフト1位がスカウトとしてドラフト1位を取りに行く。いちいち現役時代のプライドなんて考えていたらできない職業だ。だが山本省吾の文章にはつまらないプライドなど感じられない。そればかりかすでに優しいまなざしを持って、必要な心構えを説いている。まだ数年ではあるがこの人、いいスカウトになるかもしれないと予感させる。ぜひドラフト後にアップしたオフィシャルブログの「一夜明けて」をご覧ください。
一夜明けて | 山本省吾オフィシャルブログ


ユニフォームを脱ぐ日が、1年でも先になるように。偽らざる願いだろう。「1年でも先に」というのがリアルである。


引用されているコーチの言葉も説得力がある。たいがいの選手はユニフォームを脱ぐのではなく脱がされる。引退する日は必ず来るのだがそれを先延ばしにすることはできる。それは自分次第。だから必死にもがけ…。心に突き刺さる言葉だ。無断引用を避けるためリライトしたがぜひ「山本省吾オフィシャルブログ」で検索するなり上のリンクをクリックするなりして原文でお楽しみいただきたい。


定年が決まっているサラリーマンとは違う。個人事業主であるプロ野球選手は1年1年が勝負だ。活躍すれば大金と名声を手にできる。逆なら仕事を失う。先日引退した鈴木尚広高橋由伸監督に意向を伝えた時、「おまえは巨人の中でも、自分の選択をできる人間だ」(東スポweb記事)と言っわれていたがそんな選手は一握りである。


結局は自分次第なのだ。やるか、やらないか。それだけ。ハイリスク、ハイリターン。ローリスク、ローリターン。やり方は人それぞれ。どちらにせよ結果はすべて自分で背負わねばならない。だったらせめてもがきにもがいて自分らしい選択をし続けたいものだ。


山本省吾が引退という選択をした時の文章もよかった。ぜひオフィシャルブログに収められている「30年分のありがとうm(__)m」をぜひご覧ください。
30年分のありがとうm(__)m | 山本省吾オフィシャルブログ


愛すべき左腕が自分を素晴らしい世界に導いてくれた。素敵な言葉だ。


山本省吾が担当する田中正義の右腕はホークスとホークスファンをどんな世界へ連れて行ってくれるのだろう。打倒日本ハムへこの上ない戦力を手に入れたホークス。田中正義対大谷翔平の投げ合いが、今から楽しみだ。

人生はどう転ぶか分からないから楽しい~後藤正治氏が綴るミスターラグビー平尾誠二の楕円的人生論

ミスター神戸製鋼、ミスターラグビー平尾誠二氏が亡くなった。53歳という若さ。何より2019年ワールドカップを前に亡くなったことが悲しい。黒柴スポーツ新聞編集局長はラグビーファンでもないけれど、合理的な平尾誠二の思考には引かれていた。


確か大好きな後藤正治氏の作品に平尾誠二を扱ったものがあったはず。本棚を探すと、あった。「人生の冒険者たち」に収められた「楕円球、自在なり」である。きょうはこれをテキストにする。あらためて読んでみると無駄な表現がない。洗練された文章は読んでいてすがすがしさを感じる。

人生の冒険者たち

人生の冒険者たち


平尾誠二は全国制覇した伏見工高時代も有名だが、ラグビーに出合ったのは京都市の陶化中学時代。「楽しむラグビー」の原点はここにある。顧問の寺本義明先生は兄貴的な雰囲気で、生徒と一緒にラグビーを楽しんでいたそうだ。他の部はやたら先輩が怒鳴っていた。平尾誠二は思った。「怒鳴ったってうまくなるわけじゃないのに」。


いる。部活動やスポーツの取材でも見たが、確かにいる。指導者でもやたら高圧的な態度で支配しようとする人が。支配という発想自体がいけない。指導的な立場の人には才能を上手に「導く」ことを念頭に置いてもらいたいものだ。


その点、平尾誠二は指導者に恵まれていた。ドラマ「スターウォーズ」のモデルになった伏見工高の監督は山口良治平尾誠二の中学時代のプレーに魅せられ自ら口説いて伏見工高に入れた。平尾誠二もまたこの「泣き虫先生」の喜ぶ顔が見たいと思って高校時代を過ごしていた。

気づかせて動かす (PHP文庫)

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後藤正治氏はこう表現した。「山口という人一倍情感溢れる男のもとで、平尾は多感な思春期を送っている。知識や理屈よりも、『情』に接することが必要な季節があろう」(182ページ)。ここで「時期」と言わずに「季節」という言葉を選ぶ感覚が大好き。黒柴スポーツ新聞編集局長の個心の師匠である。


平尾誠二同志社大学在学中に史上初の大学選手権3連覇を果たす。入学したころの同志社大学は戦後第二期の黄金時代を迎えていた。名将・岡仁詩平尾誠二が抱く、ラグビーについての「なぜ」に的確に答えられる人物だった。「たかがラグビーじゃないか。ラグビーだけじゃ人生寂しいじゃないか」という岡仁詩の言葉は平尾誠二にも合っていた。一芸に秀でるのは素晴らしいがそれで人生に幅が出るとは限らない。

ラグビー・ロマン―岡仁詩とリベラル水脈 (岩波新書)

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実際、平尾誠二は大学卒業後、イギリスに渡っている。家具デザイナーか起業家になりたかったそうだ。どちらでも平尾誠二の柔軟な思考で大成功しそうに思うが再びラグビー界に戻っている。口説いたのは神戸製鋼専務(当時)の亀高素吉だった。


神戸製鋼では社会人選手権7連覇を達成した。1991年1月8日、三洋電機に対し12-16と敗色濃厚だった神戸製鋼はイアン・ウイリアムズの逆転トライで社会人選手権3連覇を達成した。それをアシストしたのは平尾誠二の無意識のパス。右目の端でウイリアムズを認識しながらもパスが渡ったのは「運」だったという。


Amazonで見たら平尾誠二の著書はたくさんある。その中でも気になったタイトルがこれ。「理不尽に勝つ」。平尾誠二が書いていたように世の中、理不尽だらけである。黒柴スポーツ新聞編集局長も入社1年目、歓送迎会で上司に言われた。「理不尽なこと言われたらどうする?」。あのう、その質問自体が理不尽なのですが…。

理不尽に勝つ

理不尽に勝つ


理を重んじる平尾誠二が「理不尽なことを経験すればするほど強くなれる」というのだから、やってみる価値はある。もちろん心身を害するほど自分を追い詰める必要はない。


平尾誠二阪神淡路大震災を経験している。その時悟ったのは人間の無力さ。そして現状を受け入れるしかない、気持ちを切り替えるしかないということだった。大切なのは理想の人生にできるだけ近づこうとすること。その過程にこそ生きることの醍醐味や喜びがあると説いている。


人生はどう転ぶか分からないから楽しい、と思えるのは強者の論理に思える。だがそうとでも思わなければ一歩踏み出せないのも事実だ。


平尾誠二が書いているように世の中はフェアではない。尊厳が踏みにじられた結果若くして自殺してしまった電通社員のニュースを見るたびたまらない思いがこみ上げてくる。これを読んでくださっている方でもしつらい思いをしている方は本気でその状況から逃げるのも手だ。逃げると決めたら全力疾走あるのみ。逃げ切って下さい。ぶち当たって打開できる人はそうすればいい。もし当事者でなくとも周りでしんどそうな人がいるならば手を差し伸べていただきたい。「上手に気付かない人」には決してならないでほしい。自戒も含めてそう書いておく。


普段はきょうの1枚として黒柴スポーツ新聞編集局長所蔵の野球カードを紹介しているがあいにくラグビーにまつわるものはない。きょうは平尾誠二氏追悼の気持ちを込めて著書を紹介させていただく。編集局長も折を見て読むつもりだ。日本のラグビー界は平尾イズムをしっかり受け継いでもっともっとラグビー界を発展させてほしい。

求心力 (PHP新書)

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人は誰もがリーダーである (PHP新書)

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型破りのコーチング (PHP新書)

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流れをつかむなら一気にやるべし~2016年日本シリーズ第1戦で田中広輔は1998年の石井琢朗ばりに奇襲するのか

短期決戦とあれば勢いがついた方が勝つ。その火種は長打とは限らない。キーマンは1番打者。2016年セ・リーグCSファイナルステージで打率.833とDeNAを翻弄した田中広輔が最たる例だ。


日本ハムとの日本シリーズでも田中広輔の出塁がシリーズを左右するだろう。過去に1番打者が相手をかき回したのはいつだったか。1998年の横浜・石井琢朗を思い出した。

BBM 石井琢朗メモリアルカードセット2012 軌跡 BOX

BBM 石井琢朗メモリアルカードセット2012 軌跡 BOX


第1戦の先発は西武の西口文也石井琢朗の脚は当然警戒していただろう。だがそれをあざ笑うかのように石井琢朗は2球目を3塁前に転がした。


際どいタイミングではあったがセーフ。石井琢朗はしてやったりの顔。この日のヒーローインタビューで明かしたが3日前から考えていたという。この3日前というのが秀逸。前日ではない。3日前というからにはずっと練っているということだ。
www.sponichi.co.jp

目標を逆算して努力するのが楽しみな黒柴スポーツ新聞編集局長には石井琢朗のワクワク感が痛いほど分かる。黒柴スポーツ新聞編集局長はサプライズを提供しようと考えれば考えるほど挙動不審になる。面白いアイデアがあると言いたくて言いたくて仕方がない。


石井琢朗はさらに盗塁を敢行しまたセーフ。名キャッチャーの伊東勤も形なしだ。盛り上がる横浜スタジアム。2016年もすごかっただろうが1998年の映像を見てもなかなかである。やはり勝つことがファンサービスである。

空気のつくり方

空気のつくり方


このチャンスで鈴木尚典がタイムリー。マシンガン打線はそつがない。初戦の初回からベイスターズが押せ押せ。この後も石井琢朗は盗塁を決めたり、西武の中継の乱れを突いて生還したりとやりたい放題。それで横浜が勝ち例のヒーローインタビューに立ったわけだ。


1998年に横浜が日本一になったことを考えると、石井琢朗がその流れを作ったのは明白だ。


流れを引き寄せる時は一気呵成にやらねば。ビジネスも一緒。いいアイデアが出たら即断即決即実行。これができないと中だるみしうまくいくこともいかなくなる。逆に歩調を合わせたい時はじっくり待てばいい。


2016年、石井琢朗と同じことを田中広輔がやるかなと予想した瞬間アッと思った。石井琢朗は広島のコーチだった。こりゃ何かしら仕掛けてきそう。だからこそ大谷翔平も対策を練ってきそうだ。


なお、田中広輔を進化させたのはアシックスのスパイクという東洋経済新報の面白い記事を見つけた。田中広輔がさらに日本シリーズで結果を出せばアシックスの株が上がるだろう。
toyokeizai.net


日本ハム対広島というただでさえ面白そうな組み合わせが、ますます初回から目が離せない展開になりそう。田中広輔がバントヒットを狙っても大谷翔平がきっちり殺したら逆にカウンターとなって一気に日本ハムペースになるかもしれない。初回の攻防を楽しみにしておこう。


きょうの1枚は石井琢朗。横浜で引退せず広島でもうひと勝負したことが広島優勝につながった。ベテランの補強はこういう副産物をもたらす。人間の可能性ってすごいな、と改めて思う。
tf-zan96baian-m-stones14.hatenablog.com
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黒田博樹引退表明の夜に敢えて加藤健論~第3の男が意地を見せ戦力外通告に

加藤健戦力外通告を受けた。巨人ファンにしかピンと来ない話題だろう。小林誠司、実松に次ぐ第3のキャッチャーだから試合に出られないことの方が遥かに多い。かといっていなければもしもの時はキャッチャー不在となる。ぶっちゃけ保険なのである。


ディスイズ、プロ野球プロ野球は平気で一人の人生を潰す。加藤健はプロ生活18年だが正捕手のシーズンはない。正捕手ではなく控えとして重宝されて長いキャリアとなった。細く長くと、短くとも彗星のように光を放つのと、どちらが幸せだろうか。


加藤健は18年で通算185試合出場。59安打。単純平均で年間10試合。それでも雇われるところが加藤健の魅力であり価値である。


野球にはポジションが九つある。このうちのどれを選ぶか、またはやらされるかで歩み方が違ってくる。有能な同僚がいたら自分が出られないのだ。


そこから脱出する方法は二つ。相手を上回る魅力を身に付けるか、自分が変わるかである。


プロ野球の世界、特にキャッチャー業界では力ずくで世代交代が行われる(首脳陣の方針も含めて)。勝てなくなったり、打てなくなったり、刺せなくなったりしたら交代。だが裏を返せばどれもできていればスタメン捕手は変わらない。


最も犠牲になったのは野村克也と同時代の南海の捕手。プロ野球記録大鑑には野村克也にチャンスを摘み取られた控え捕手が取り上げられている。22年間に38人が野村克也の同僚になったが100試合以上出られたのはたった2人。22人は1試合もマスクを被れなかったという。泣きそうだ…


加藤健阿部慎之助との競争に勝たねばならなかった。しかし無理だった。加藤健じゃなくとも2000安打が射程圏内の阿部慎之助を上回るキャッチャーはなかなかいないだろう。


阿部慎之助のコンディションを考え、また世代交代を促すべく巨人は小林誠司を一本立ちさせようとしている。阿部慎之助がファーストに回っても加藤健が正捕手とはならなかった。長打力も打率が高い訳でもない。もっとも加藤健にはこれまで与えられたチャンスが余りに少なかったのだが。


じゃあ正捕手がのほほんとしていられるかと言えば逆。巨人V9時代の森昌彦、西武黄金期の伊東勤も何人もの挑戦を退けその座をまさに死守してきた。プロ野球でレギュラーを維持するのは並大抵ではないのである。野村克也に葬られた捕手のことを先ほど書いたが野村克也もまた努力を続けたということだ。


関連画像として加藤健のカードを持っていないか探してみた。だが心当たりの時期の選手のセットが入ったファイルにはなかった。野球選手は活躍しないとカードにしてもらえない。チームごとのセットもあるので巨人ファンで熱心なカードコレクターなら加藤健のカードを持っているかもしれないが。


加藤健とはそういう選手である。だが控えには控えのしんどさがある。スタメンではないから出番がいつか分からない。抑えや中継ぎ、代打なら試合展開からそろそろお声が掛かりそうだと読めるがキャッチャー、しかも正捕手の交代は希。下手したら死球、自打球、捕球時のけがなどアクシデントによるもの。さらに言えば加藤健は第3のキャッチャーだから第2のキャッチャーに代打が送られた後に出場するなど、さらに読めないのである。


これを10年以上やったのだ。単純に試合にも出たかっただろうと思う。そう、それが今回戦力外通告に至った一番の理由ではなかろうか。


引退すれば球団内にポストが用意されていたとも聞く。加藤健はそれよりも現役続行の可能性を求めた。ゆえの戦力外通告。ヤクルトの田中浩康と同じパターンである。違うのは加藤健が第3の男という点だ。田中浩康ベストナインにも輝いたバリバリの1軍選手なのだ。
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第3の男ではあるが今、キャッチャーは絶対的な選手が少ない。ソフトバンクも最終的には細川亨が出てきたが高谷が正捕手になれたとは言えない。西武の炭谷銀二朗あたりが移籍を模索すれば競合しそうだ。加藤健もひょっとしたらオファーがあるかもしれない。

BBH2013追加 EP炭谷銀仁朗(西武)

BBH2013追加 EP炭谷銀仁朗(西武)


18年プロの飯を食うだけで十分すごいし、どうでもいい選手ならとっくに整理されるから加藤健は球団内で評価されてきたのだろう。だが加藤健にしてみればオレはまだ何もやっちゃいないと言いたいのだ。組織にいる=仕事をしている、ではない。


加藤健が待機することが巨人の危機管理だった。だから加藤健は出場しなくとも仕事はしていた。だが仕事とはその人にしかできないことをして初めて仕事。誰がやっても同じことは作業なのだ。


果たして第3の男が新天地で仕事をすることができるのか。そもそも新天地が見つかるのか。世間的には黒田博樹の引退表明で持ちきりの夜、敢えて加藤健の記事。これからもユニークな視点を大切にしていくのでぜひ皆さんの第3の暇つぶしメディアにしていただければ幸いです。
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きょうの1枚は小田幸平加藤健と同じく控えキャッチャーだったが中日に移籍した。とっくに巨人ブランドはあせているし、であるならプロ野球選手なら試合出場を模索するのは当然。輝けないのはその人に原因があるばかりでなく、環境とのミスマッチかもしれない。各球団は選手が最後まで悔いなく過ごせるよう、構想外になった選手もトレードなどで可能性を引き出してあげてほしい。
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自分を客観視できない人は間違いに気付かない~日本ハム投手陣を充実させた吉井理人の「オフィス」

CSを突破した日本ハム大谷翔平を軸にたくさんの記事が書かれているがダントツで面白かったのが現代ビジネスの吉井理人投手コーチの記事。本日のテキストとしてぜひご覧いただきたい。
大谷翔平という天才を預かって」吉井投手コーチが明かす一流の秘密
gendai.ismedia.jp


吉井理人箕島高校出身である。近鉄に入団し、あの10.19第一試合でも登板。ビミョーなコースをストライクととってもらえず球審に凄い剣幕で詰め寄っていた。



熱い部分が根底にあるのだろうがヤクルトなり、メジャーでの経験で多少はマイルドになっただろうか。日本ハムでは投手コーチとしてダルビッシュを指導している。


記事タイトルは大谷翔平という至宝をいかに上手に導くかは大変だと言いたげに見えた。165キロも出せるのに吉井理人いわくまだフォームは未完成。確かに投げ終わった時少々ガタつくし、160キロ出ても当てられている。改良の余地はありそうだ。


だが黒柴スポーツ新聞編集局長は大谷翔平のくだりよりも吉井理人が「オフィス」と呼ぶ場所が気になった。センターのフェンス手前に日本ハム投手陣が集う場があるというのだ。そこでみんなで話をするという。


日本ハム投手陣はざっくり言えば勝ちパターンで投入されるAチームと負け展開で投入されるBチームがある。チームの防御率がいい時はBチームが頑張っている時だそうだ。投手陣はほぼ毎日、みんなでBチームの様子を振り返る。よかったところも、悪かったところも。反省なくして成長なし。スポーツ選手もビジネスマンも同じである。


自分を客観的に見ることが大事だと吉井理人は説く。「自分を主観でしか考えられない選手は、何か気づくことがほとんどないどころか、感覚的にそれが自分に合っていると思って間違った方向に行ってしまうことが多いんです」


グサッ。胸に突き刺さる。黒柴スポーツ新聞編集局長も独りよがり満点の自覚ありありだからな…。気付きさえなくそれどころか誤った方向に向かうのか…。恐ろしい。すさまじく遠回りをしている。これでは成長できるわけがない。気をつけよう。


日本ハムの選手は2軍降格の時でも足りないところを問われればちゃんと答えられるそうだ。だから下でも腐らずやれる。日本ハムの層の厚みの背景を見たようだった。


先ほどの、Aチームの選手の中にはBチームから昇格した選手もいるそうだ。負け試合でも粘り強く淡々とよい仕事をすればやがて信頼感を得られる。ビジネスマンも最初は地味な雑用、事務作業があてがわれるがそういうことすらできない人はその後も責任ある仕事ができるはずがない。

投手論 (PHP新書)

投手論 (PHP新書)


「僕のコーチングの基本は選手としっかり話し合うことです。選手はコーチがみずからの経験をそのまま押しつけてくることをもっとも嫌がります。まず選手の主張を受け入れて、選手がやりたいことを、選手の気持ちになって考え、その上で理由も説明しながらアドバイスする」(上記現代ビジネス記事より)


素晴らしい上司である。信頼関係を築けなければ話ができないと、吉井理人は自身の現役時代を振り返りながら語っている。実績のる宮西尚生、経験がある谷元圭介は放っておいても大丈夫なのでフラットに接するというから吉井理人はかなり柔軟性があると見た。


黒柴スポーツ新聞編集局長はホークスファンゆえに残念だ。何故こんな素晴らしい人物がソフトバンクから日本ハムに行ってしまったのか(2016年、4年ぶりに日本ハム復帰)。ぶっちゃけ人間関係とか価値観とか野球観の相違、指導法、選手の起用法をめぐってなどいろいろあったのだろう。別に負け惜しみではないが吉井理人が輝ける環境が日本ハムであっただけだ。日本ハムという土壌の方があっていたのだ。合わないところで吉井理人の才能が埋もれていたかもしれないと思うとそちらのほうがゾッとする。


タナキクマル(田中広輔、菊池涼介丸佳浩)と鈴木誠也エルドレッド新井貴浩というカープ強力打線を、吉井理人の愛弟子たちがどう抑えるか。現代ビジネスの記事を読んでますます楽しみになった。

広島アスリートマガジン特別増刊号 2016 カープ優勝の軌跡

広島アスリートマガジン特別増刊号 2016 カープ優勝の軌跡


きょうの1枚は吉井理人エクスポズ時代のカードと迷ったがやっぱり懐かしさという点では近鉄時代ということでこれにした。黒柴スポーツ新聞編集局長が仕入れた情報では1981年秋に発行された雑誌「高校野球」の箕島特集では記事に吉井理人の名前はなく、写真の端にボールボーイとしてバットを引いてる吉井理人の姿が写っていたという。甲子園、10.19、野村克也率いるヤクルト時代、メジャー…あらためてみると吉井理人の球歴はものすごく興味深い。かつてボールボーイだった吉井理人は今、何度目かの輝き時である。
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ミスをしたらその後こそ大事~2016年CS第5戦明暗分けたソフトバンクと日本ハムの継投

ミスをしたらやることは一つ。後片付けだ。その後、落ち着いて挽回すればよい。


ここでやってはいけないのが責任の追及。つい誰が悪いかとか言いがちだがその場で責め立てても失敗が成功にひっくり返るわけではない。スポーツならその試合を、ビジネスならそのプロジェクトを終わらせてから責任の所在を明確化し、反省を次につなげることでしか挽回できない。


2016年パ・リーグCSセカンドステージ第5戦、日本ハムはいきなり4点を失った。先発は新人の加藤貴之。勝てばCS突破の大一番、やや重荷だったか。


ここで栗山英樹監督は二番手にバースを持ってきた。先発もできるのでロングリリーフも考えての起用。反撃を抑えているうちに追い付け、追い越せという「攻め」の継投である。


結果的にバースは無失点。その間に日本ハム中田翔のホームランなどで2点を返した。失ったものは泣いても返ってこない。であるなら切り替えてできることをやるしかないのだ。バースも指揮官の起用に見事に応えた。


一方、ソフトバンクはベテラン摂津正が先発。2点を失いながらもまずまずストライク先行で大量失点は防いでいた。


ところが4回から継投に入った。二番手は東浜巨。これにNHK解説の小早川毅彦が異議を唱えた。いわく、追い上げを受けている中で登板させるなら反撃を断ち切らねばダメ。球威のあるスアレスあたりを投入するか、摂津を続投させるかの方がよいと説明した。


引き分けすら許されない一戦でしかも追い上げられて流れは日本ハム。それを押し止める力が東浜巨にあるのかと小早川毅彦が言ったわけだ。しかし不幸にも指摘は当たってしまい、じわりじわり追い詰められ一死満塁の大ピンチ。


押せ押せの日本ハムは勝負をかけ代打に岡大海。2点タイムリーが飛び出し一気に同点。小早川毅彦が「(ソフトバンクにしてみれば)同点なら御の字」という流れだったが東浜巨から引き継いだ森唯斗中島卓也スクイズを決められて5-4と逆転した。


ソフトバンク東浜巨でも反撃を食い止められると踏んだのだろうが日本ハムの勢いはそれを上回った。結果論だが岩嵜翔を投入してもよかった。出し惜しみした訳でもあるまいが反撃の芽は小早川毅彦が指摘した通り徹底的に摘まねばならない。短期決戦では流れを相手に渡してはならないのだ。


いきなり4点のビハインドを背負いながらもゲームプランを立て直した栗山英樹監督。むざむざ流れを相手に渡した工藤公康監督。采配の差が出た。


5点目となった中島卓也スクイズも一気に逆転するぞという日本ハムの意思の現れ。一方でソフトバンクバッテリーはどこまで逆転を防ぐ意識があったか。思いきって外す細やかさがほしかった。


締めのマウンドには大谷翔平指名打者から投手に変身した上に165キロまで記録。ソフトバンクは引き立て役になってしまった。黒柴スポーツ新聞編集局長はホークスを応援しているが素直に負けを認めざるをえない。ベンチワーク、打力、投手力とも日本ハムが上回ったことはホークスファンも分かったはずだ。編集局長は選手と一緒にこの悔しさを噛み締めようと思う。

大谷翔平 二刀流

大谷翔平 二刀流


日本シリーズは広島と日本ハムの顔合わせとなった。打てるし大技小技あるしピッチングスタッフも充実。日本シリーズ史上に残る激闘になる予感もする。野球の醍醐味をファンにたくさん見せつけてほしい。


きょうの1枚はバース。と言っても日本ハムのバースのカードは持っていないので阪神のバース。広島の強力打線と張り合うためにはレアードがバースばりに打つことが求められる。1985年のバースは126試合で174安打、54本塁打、134打点、打率.350。素晴らしい助っ人だった。
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最優秀救援投手は「津田賞」に衣替えを~中﨑翔太は被本塁打2でタイトル逃す

抑え投手は相手の反撃を食い止めるのが仕事。無事お務めを果たすとセーブが記録される。セーブが最も多い投手がそのシーズンの最優秀救援投手となる。


10月15日、広島はDeNAを下し25年ぶりの日本シリーズ進出を決めた。ラジオ中継を聞いていたが耳を疑った。胴上げ投手になった中﨑翔太は6月からホームランを打たれなかったという。しかもシーズン被本塁打はたったの2本だ。


接戦の終盤、最も怖いのは一発だ。1球が命取りとなる。抑えて当たり前。抑えなかったら戦犯扱い。厳しい職場である。そんな中で中崎は61登板34セーブ、何より防御率1.32。打力と機動力がクローズアップされがちだが抑えの活躍ももっと注目してあげてほしい。


2016年の最優秀救援投手は中﨑翔太ではなく37セーブの沢村拓一。2人の成績を並べてみよう。
【中﨑翔太】61登板 3勝4敗34セーブ 四球19 死球2 奪三振54 被安打50 被本塁打2 暴投0 失点11 防御率1.32
沢村拓一】63登板 6勝4敗37セーブ 四球22 死球1 奪三振55 被安打60 被本塁打5 暴投9 失点20 防御率2.66


沢村拓一は被本塁打5本の印象も強い。抑えで出てきて6勝というのは逆に多いと感じてしまう。暴投9はお話にならない。安定感で言えば圧倒的に中﨑翔太に軍配が上がる。


ここで提案したい。最優秀救援投手はMVPや新人王と同じく投票で決めたらどうだろうか。


投票だとしてもベースは従来通りセーブ数となろう。最初は点差に応じて、もらえるセーブ数を変えたらと考えた。例えば1点差なら4ポイント、2点差なら3ポイント、3点差なら2ポイント、4点差なら1ポイントとか。


だがポイントを稼ぐよりやはりチームに勝ちをもたらしてこその抑え。ならば大ピンチを何度も抑えた人ほど誉めてあげたい。職場でもトラブルを解決する人はカッコいいし、だいたい仕事ができる人である。


同じ救援機会でも天王山でのセーブや連敗ストップとなるセーブは価値が高い。そのへんは数値化するのも難しい。だから人の目による「印象」で審査するのだ。シーズン後、最多得票の人を最優秀救援投手にすればいい。


この際、沢村賞みたいに最優秀救援投手は「津田賞」とするのはどうか。沢村賞が先発完投型を評価するなら津田賞は守護神オンリー。燃える男が対象である。


津田賞の選考基準は例えば50登板30セーブ以上などどうか。こういう細かい条件つけようぜとよいアイデアがあればぜひコメント欄に投稿をお願いします。


ちなみにこれを書いている黒柴スポーツ新聞編集局長はカープファンではなく巨人ファン。普通沢村拓一の最優秀救援投手を喜ぶが中身が伴っていなければ話は別。さらに優勝中継で中﨑翔太が7月以降被本塁打ゼロと聞かされたらむしろなぜ中﨑翔太がタイトルをもらえないかと思ったのだった。


山崎康晃もストッパーとして完全に地位を確立した。DeNAはCSで敗れたものの選手の経験値は上がり、上昇気流に乗ってきた感がある。リードして山崎康晃につなぐパターンが確立されたら2017年も優勝争いに絡んできそうだ。


巨人はマシソンから沢村拓一につないできたが一発を食らいがちな沢村拓一が守護神のままでいいのか。黒柴スポーツ新聞はマシソンとの配置転換を提案しておく。


きょうの1枚は広島CS突破に敬意を表し「炎のストッパー津田恒実。神宮で胴上げ投手になったが最後のボールはボール球だった。それを指摘するのではなくボール球をストライクとコールさせる威力を評価したい。中﨑翔太には一個だけ注文。せっかく胴上げ投手になったのだから優勝決めたらキャッチャーとお互いダッシュで接近して派手に抱き合ってほしい。江夏豊津田恒実はとても絵になっていた。
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くしくもきょう10月15日はカープ初優勝の日(1975年)。朝、新聞を見て知った。初の胴上げ投手、金城基泰についての記事も合わせてお楽しみください。
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パの各エースは2016年の目標を達成したのか~3月27日のサンデースポーツを検証

3月27日のサンデースポーツパ・リーグ各球団のエース級に2016年度の目標を問う企画があった。きょうはその結果発表をしてみる。


それぞれ何と答えていたか。カッコ内は掲げた数字の理由である。

・則本昴大21勝1敗(これだけ勝てば優勝に近づく)

武田翔太15勝3敗(15が最低。できるだけ負けを少なくできたら)

大谷翔平20勝5敗(去年の15を超えるのは厳しいがやるからには頑張りたい)

菊池雄星15勝7敗(10勝を通過点にできればなと)

涌井秀章14勝6敗(去年より1少ないがと突っ込まれ「最後無理やり投げたので」)

西勇輝 13勝7敗(これまで12が最高なので1個越えればなと)
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これに結果を合わせてみよう。
・則本21勝1敗=11勝11敗
・武田15勝3敗=14勝8敗
・大谷20勝5敗=10勝4敗
・菊池15勝7敗=12勝7敗
・涌井14勝6敗=10勝7敗
・ 西13勝7敗=10勝12敗


だてにスタジオに呼ばれていない。皆、曲がりなりにも2ケタを達成した。それぞれ個別に見てみよう。


【則本】意気込みは良かったが目標に10も届かず。貯金もなし。エースがこれでは楽天もしんどかった。入団以来4年連続の2ケタは評価できるが省エネも考えてはどうだろうか。奪三振は204個、215個、216個と3年連続200個以上で、3年連続の最多奪三振を達成。一人一人と勝負するのは打たせてとるピッチングとは真逆だが、自分のスタイルを貫くかチームのために球数を減らして登板回数を稼ぐか思案のしどころである。

【武田】2015年は13勝6敗で貯金7、今年は6とチームに貢献している。そろそろ右のエースと認知されそう。同じ右で年齢も近い千賀滉大がライバルになりそうだ。目標の15勝を達成していたらペナントレースも面白くなっていた。いきなり20勝は無理だろうがまずは15勝を達成して階段を一つ上ってほしい。

【大谷】序盤勝てない日が続いたことを考えれば10勝は立派。しかもバットでチームに貢献した。優勝決定試合となった西武戦では1安打完封と大舞台になればなるほど力を発揮する。二刀流はやめておけとさんざん言われながらも結果を出すことでそれを封じている。前例にとらわれない起用法は栗山英樹監督だからこそできた。才能プラス理解のある上司。最高の結果が出るはずである。

【菊池】9勝が2回といまいち殻が破れていない印象だったが6シーズン目にしてついに2ケタ。菊池が踏ん張らないと西武浮上はない。もしこれまでに足りなかったものが「自信」だったとしたら2017年はもっと安定するかもしれない。ずっと12勝近辺なら郭泰源っぽい印象のまま終わり、15勝なり16勝すれば渡辺久信的な立ち位置になる。

【涌井】14勝とは遠慮がちな目標に思えたが四つ下回る10勝では本人も物足りなかっただろう。涌井が10勝ではチームは苦しい。防御率2.16で最優秀防御率に輝いた石川歩をまだまだ寄せ付けない実績はあるが、石川は14勝5敗とすっかり柱に。入団以来3年連続2ケタと着実に地位を築いている。石川は生え抜き、涌井は中途入社ということも考えれば涌井はうかうかしていられない。

【西】13勝と地味な目標を立てたがさらに下回る10勝。しかも12敗だから借金2とはお話にならない。3年連続2ケタとはいえ12勝、10勝、10勝だから力強い印象も他チームに植え付けられていない。金子千尋が本調子でないなら西がもっと頑張らないとオリックスの浮上はあり得ない。まずは15勝して自他ともに認めるエースになることが求められる。


という訳で黒柴スポーツ新聞が出した結論は、目標は高すぎても低すぎてもダメ。やっぱりそこに落ち着く。低めに見積もって着実にクリアするのもいいが実力がある人なら有言実行の方がカッコいい。夢を売るプロ野球選手ならなおさらだ。


それにしてもみんな爽やか。パ・リーグのエースはいつからこんなに爽やかになったのか。東尾修山田久志村田兆治鈴木啓示だと各チームのエースは大物感が尋常ではなかったが。人相も含めて爽やかエースたちがどう成長していくか楽しみだ。

きょうの1枚はトレンディーエースの一角、西崎。大谷翔平に負けない人気だったことだろう。入団から3年連続15勝以上と実力も抜群だった。もしも今のファイターズのような戦力で西崎がいたらもっと勝っていたかもしれない。西崎はオレンジ色のユニフォームが最も似合う美しい選手であった。
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鈴木尚広、代走で残したオレンジ色の軌跡~スペシャリストと単能工

巨人の鈴木尚広が引退を表明した。足のスペシャリスト、走塁のプロフェッショナル。一芸に秀でた選手だった。


代走が主戦場の鈴木が出てくるのは終盤だ。追いつきたい、追い越したい、ダメ押ししたい。そんなチームの願いを、磨いた走力で何度もかなえてきた。CSでまさかの牽制死を喫したのが引き金になったのかどうか。スポーツ報知記事によればこの1年、引き際を考えるようになっていたという。
 

ここのところ電撃引退というよりは事前に告知してみんなで送り出すパターンが続いていただけに、その人にしか分からない力の衰えによる引退劇は一昔前のプロ野球人を思わせる。鈴木はアウトになったら終わりという文字通り「真剣」勝負に生きてきた。最後のプレーが牽制死というのも代走に生きた男らしくてカッコいい。

すぽるとでは恒例だった選手間投票の走塁部門で2013年から3連覇した。2015年の投票結果時の映像を見返したが、福原忍山崎康晃藤浪晋太郎三浦大輔らも大絶賛。見た目や人気ではなく、同業者からの高評価に鈴木はうれしそうだった。


三浦と大瀬良大地が言っていたが代走の前から鈴木の存在を意識せざるを得ないという。そのへんは鈴木も心得ていてあえて相手にプレッシャーを与えるべくベンチ最前列で準備をしている。鈴木はそれを「宣戦布告」と表現していた。

かつて巨人には赤い手袋が代名詞の柴田勲がいた。意図的に目立つよう赤を選んだのかと思いきや、二宮清純氏の記事によれば柴田がたまたまアメリカで必要となり見つけたものが赤い女性用だったというのが始まりだった。
第588回 V9・柴田勲の“赤い手袋”伝説 – SPORTS COMMUNICATIONS

カラー手袋の歴史は年間盗塁数76のセ・リーグ記録を持つ松本匡史が水色の手袋をはめて継承。「青い稲妻」と呼ばれた。


鈴木はオレンジ色の手袋を着用。川上哲治赤バット大下弘青バット柴田勲の赤い手袋、松本匡史の水色の手袋と、色が名選手の代名詞になってきたが今最も旬なのは丸佳浩のピンクのリストバンド。アシックスのもので、担当者に色をまかせたらピンクになったとか。黒柴スポーツ新聞編集局長は丸のリストバンドを見るとストロベリーのアイスクリームが食べたくなる。

BBM2016/2nd ■レギュラーカード■550/丸佳浩/広島

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鈴木が代走で決めた盗塁は132として藤瀬史朗の持つ106のプロ野球記録を更新。藤瀬が好きな編集局長的には快足藤瀬の勲章が一つ減ってしまい残念だったが、鈴木もいい選手なのでよしとしよう。
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さらに鈴木はもう一人の超大物も超えた。南海の誇る俊足・広瀬叔功は通算盗塁成功率8割2分8厘9毛。鈴木は8割2分9厘0毛。まさに髪の毛1本ほどの差で上回ったのだ。ちなみにこれは通算200盗塁以上での比較。鈴木は228盗塁。広瀬は596盗塁。広瀬の素晴らしさが色あせることはない。

黒柴スポーツ新聞が選ぶ鈴木の感動シーンは2つある。まずは2009年11月5日、巨人対日本ハム日本シリーズ第5戦。8回裏1点ビハインドの場面で代走鈴木は2塁に盗塁。ここでバッターボックスに代打・大道典嘉が入る。


マウンドには林昌範。セカンドにいた鈴木は牽制されたがこれが悪送球となりすかさず3塁を陥れた。スライディング後、してやったりとばかりにオレンジ色の手袋をポーンと叩いた。


大道はいつものようにバットを短く持ち高めの球に食らいつく。ライナーで飛んだ打球は2塁手が頭上に差し出したグラブをかすめるように外野へ抜けた。鈴木は楽々ホームイン。この後、巨人は9回表に1点取られたが裏に亀井義行阿部慎之助のソロ2発でサヨナラ勝ち。ホームランで勝ったが代走・鈴木の盗塁に端を発する同点劇が光る。「盗塁だけでなくホームに返るのが自分の役割」という鈴木がここ一番で仕事をした。
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もう一つは2014年7月15日、東京ドームでのヤクルト戦。3-3で迎えた12回裏、坂本勇人のショートゴロの間に1塁代走の鈴木はセカンドへ。ヤクルトは前進守備を敷く。橋本到の打球は飛び付いたファーストのグラブをかすめつつライト・雄平の前の前に転がっていった。


さすがに元投手の雄平。ワンバウンドでいい球がホームに返ってきて捕手の中村悠平も完璧なブロック。しかし鈴木は3塁側から回り込みながら中村の背中越しに左手でホームベースに触れた。仰向けになりながら滑り込んだ鈴木の後頭部数センチの所で中村のキャッチャーミットが空を切る。これぞプロの走塁。コリジョンルール適用で今は見られない芸術的シーンであった。

鈴木はいかにして緊迫した平常心を保っているのか。すぽるとの中で石川雄洋が質問した。答えは「もう一人の自分を作る」。場面に入り込みすぎると態勢が投手寄りになってしまう。それを防ぐためにも俯瞰的な視点を作り出すことで自分を客観視し、冷静さを保つのだそうだ。編集局長は物事に集中すると視野が狭くなる自覚がある。アツくなる時ほど第三者的に自分を見てみよう。

失敗することは考えない 

失敗することは考えない 

もう一人、編集局長も大好きな荻野貴司が質問した。「代走に行く前の準備は?」。鈴木は起きる時間も球場入りする時間も決めている。例えばデーゲームの時は午前7時に球場に着き8時からストレッチをしていたそうだ。


別の番組で見たがその時も球場入りはゲーム開始8時間前。入念に体をほぐしてからでっかいボールの上に立ちあがったり、しゃがんで地面に手をついて肘にひざを付けながら足先は宙に浮かせて腕だけで体を支えたりして体幹を鍛えていた。プロ入り後はけがが多く、2軍時代から自費でトレーナーをつけていたそうだ。

こうした準備や物事を継続する姿勢は精肉店を営むご両親の姿勢が影響していると本人が語っていた。準備を大切にする。当たり前のことだがいつしかおろそかになりがち。最高のパフォーマンスは準備から始まることを改めて意識しよう。


巨人はドラフト1位でも花が咲かない選手は何人もいた。スカウト能力に特別たけているとも思わないが、ドラフト4位で鈴木を獲ったのは素晴らしかった。福島・相馬高校時代に甲子園には出ていない。だが鈴木にはベースランニング1周13秒3という俊足があった。1軍定着のきっかけの一つは脚力が原辰徳監督の目に止まったこととされている。


巨人で共に戦った木村拓也はプロで生き残るため外野も内野もキャッチャーもこなした。ユーティリティープレーヤーになることで戦力になった。一方で鈴木は足という武器に懸けた。準備を怠らず、自分の魅力を必死で磨いた。打撃力が人より劣っても自分にしかできない仕事をすることで頭角を現した。そして毎年何人も新人が入り生存競争が繰り広げられるプロで20年もやった。


同じ一つのことをやるにしても、他の追随を許さないスペシャリストと、それしかできない単能工とでは天と地の差がある。


鈴木は自分のテクニックを惜しげもなく披露する。たね明かしをしても自分の領域まで届きっこないからするという。経験値が違うと言っていた。だがその経験と知識を伝えることでぜひどこかのチーム、できれば巨人で後継者を育成してほしい。次なる巨人のスピードスターは果たして何色の手袋をはめるのか、今から楽しみだ。


きょうの1枚は鈴木本人。2004年版のカードではまだ背番号は68だ。球場での鈴木のテーマソングはTHE BLUE HEARTSの「TRAIN TRAIN」だった。鈴木尚広、ちょっとだけ休んだら、またどこまでも走っていってほしい。
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自分よりレベルが上の「やつら」を見ることは大事~日本代表・原口元気のインタビューより

サッカーのアジア最終予選を見越し、代表の原口元気のインタビュー記事を掲載した。黒柴スポーツ新聞編集局長の本業は新聞記者。といっても現在は主に紙面レイアウトを担当している。新聞記者は記事を書くばかりではない。


いかにしてカッコいい紙面を作るか。読みやすいレイアウトとは。毎日頭を使う。いいかげん印刷媒体は速報性が弱いのだから、せめて旬は外したくないものだ。原口の記事を掲載したのはオーストラリア戦の前日。このタイミングは原口がオーストラリア戦に出てこそ意味がある。実はちょっとした賭けでもあった。



原口は試合に出た。しかも先制ゴールを決めた。リアルタイムでは見られなかったため、ニュースでチェックしたのだがここまでは100点の展開。このまま日本が勝てば原口はヒーロー。インタビューはその手前に載せたのだから、編集者としては活躍を読みきったようで心の中はウハウハである。


が、原口は気合が入りすぎたか相手を吹っ飛ばしペナルティーキックを献上。決められて同点となりそのまま引き分けた。原口もへこんだだろうが編集局長もがっかりした。ニュースをいかにさばくかが腕の見せどころでありそれが今回うまくいきかけただけに残念無念。だが勝負は時の運。原口はちゃんとゴールを決めたじゃないか。次戦でもゴールを期待しよう。




原口のインタビューで編集局長はどのあたりが印象に残ったか。ずばり「自分より上の選手を見ることはすごく大事」というくだり。自分より才能のある人に勝つにはどうするかといえば、そのために「小さなことでもやるしかない」という。


そう、一気に追い抜くことはできない。本田圭佑にも岡崎慎司にもちょっとやそっとじゃなれない。でも勝つためには(すでにゴールをそこに設定しているのが秀逸)小さなことでも「やるしかない」のである。


ちなみにこのインタビュー記事は小学生でも分かるように書かれたもの。恐ろしくハイレベルな読み物である。


原口は思ったことを素直に語ってくれたようだ。その証拠に自分より才能のある人、とは言わずに、自分より才能のある「やつら」と書いてあった。別に口が悪いなんて思わなかった。「やつら」にはライバル視が感じられたからだ。原口はきっとそういう目標を一つ一つ「食って」きたに違いない。




どのフレーズにビビビと来て見出しにとるかも編集者の腕の見せ所だ。ちなみに新聞では見出しは多くても11文字までというおおまかなルールがある。だが文字数にがんじがらめになって中身が伝わらなければ本末転倒だ。読まれなければ意味がない。というわけで編集局長は教わってきた「11文字までルール」にはとらわれないようにしている。


もちろん簡潔な表現で伝わればそれが一番。だが読者に投げるボールは大谷翔平ばりの剛速球ばかりでなくてもいい。中嶋聡に素手で捕られた星野伸之スローカーブばりにゆったりした長めの見出しでもいいのではないか。


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というわけで原口のインタビュー記事で最も長い見出しは句読点を含み17.5文字にした。ちなみにこのはてなブログの1記事に付けられる見出しは最大54文字。ブログタイトルの付け方はまだまだ勉強中。目を引くために奇をてらいすぎてはいけないが新聞みたいに事実関係だけでもダメ。楽しみながら、楽しんでいただきながら、修業していこう。自分よりレベルが上の「やつら」に勝つために。


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