黒柴スポーツ新聞

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日本シリーズで同点打を放ち1塁に立つまで8回ガッツポーズした大道典嘉

近年、とっておきの代打が減っていないか。ようやく阪神関本賢太郎が思い浮かんだが、2015年シーズンで引退している。代打とは原則一打席勝負。スタメンのようにだいたい4回打席が回ってくるわけではないのだ。


しかも起用されるのは相手にダメージを与えるチャンス(余談だがチャンスでもピンチヒッターというのはなぜだろう)。投手がバッターになるタイミングで代打に送られる場面もあるが、送りバントも含めて基本的に殊勲打が求められる。


ファンも心得ている。例えば90年代のカープ。終盤、ここで一打欲しい時に監督がグラウンドに出る。スタンドのあちこちがざわつく。「浅井(樹)だろう」。もちろん町田公二郎かもしれない。ともかくとっておきの代打というのはファンレベルでも予想がつくのだ。


経験も求められるのでベテランの可能性も高い。若い時のように常時出られない、守備は他の選手に譲っても勝負強い打撃はまだできる。代打が登場する場面はつい見入ってしまう。


黒柴スポーツ新聞が最も好きな代打の場面は2009年の日本シリーズ、巨人対日本ハム第5戦。バッターは大道典嘉だ。0-1とリードを許す展開で8回、東京ドームのマウンド上には巨人から移籍していた林昌範。代走・鈴木尚広を3塁に置いて、大道が高めの球に食らいついた。打球は前進守備のセカンドを超え同点タイムリーヒットに。1塁に向かい走り出してから1回、2回、3回と、時には巨人ベンチに向かって手を挙げながらガッツポーズを繰り返した大道。塁上でやったものを含め8回もガッツポーズした。どうですか、40歳のサラリーマンが一世一代の勝負の時に職場や現場で公衆の面前で8回ガッツポーズできますか?

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大道はこれに先立つ2006年シーズンをもってホークスを戦力外通告されたが巨人が獲得。巨人もたまにはいい補強するなとニヤついたものだ。2008年には古巣ソフトバンクとの対決で完封目前の杉内俊哉からホームランを打つなど勝負強さを見せた。杉内のまっすぐな性格を考え「最後はストレートで締めにくる」と配球を読んだのだという。大道は持ち前の長打力を捨て、バットを極端に持つことで知られている。厳しいプロの世界で生き残るためにはこうした思い切った決断ができるかどうか、なのではないか。自分のスタイルを捨てるのは勇気がいる。苦しい時ほど慣れ親しんだ自己流を通してしまいがちだ。


スタイルを捨てる、という後ろ向きな表現はしたくない。あくまでも新しい自分への進化。本紙編集局長は今年、「ブログをやる」に始まり今まで選んでいたのと別のカードを引き続け、妙に道が開けている。あなたも次に何かを選ぶ時、しかもその時がちょっと下り坂と感じたなら、思い切って違うカードを選んでみませんか? 大道みたいに8回ガッツポーズできる、かもしれませんよ。


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