黒柴スポーツ新聞

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いい仕事をして信頼を得る〜楽天の西口直人、6点ビハインドからの好リリーフ

いい仕事だった。敵(筆者はソフトバンクファン)ながらあっぱれと言いたいのは、楽天でリリーフした西口直人。4月10日のソフトバンク戦で6点差の4回からマウンドに立ち3イニング2安打無失点。この踏ん張りが楽天反撃の一因となり何と一時は8ー7と逆転した。最終的にはソフトバンクが追い付いたものの、この試合を面白くしたのは西口の好投であった。

西口直人。申し訳ないが楽天ファンでなければ誰それレベルの知名度ではなかろうか。wikiで調べると2016年ドラフト10位、2021年の年俸は530万円だという。それが億単位の選手が並ぶソフトバンク打線を小気味よく封じた。解説の川崎憲次郎によるとまだまだウイニングショットの精度は欠けるが、強気で投げ勝つピッチングを身に付けてほしいと期待していた。確かにそう思わせる、見事な投げっぷりであった。

6点差でマウンドに立つピッチャーに求められるのはなんだろう。それ以上試合を壊すなよ的な。主力ピッチャーが投入されるわけもなく、押されながら投げたらいわゆる敗戦処理になりがちだ。が、そこでの踏ん張りが味方に「あれ、ひょっとすると同点、逆転あるぞ」と思わせるから野球は面白い。いわゆる負けパターンのピッチャーであっても踏ん張り続けることで信頼を得て、いつしか勝ちパターンで投入されるピッチャーになっていく。出世である。この日の西口の頑張りはしっかり石井一久監督の目にも焼き付けていた。サンスポ記事、【指揮官一問一答】楽天・石井監督、7点ビハインドから2試合連続引き分け「攻撃的な姿勢がみえた頼もしい」、に書いてあった。
「中でも西口が、あの展開(6点を追う四回)から(2番手で登板し)我慢して我慢して、しっかりつないだ結果が、野手のみんなが追い上げる態勢を整えてくれた。価値のある3イニング(3回56球、2安打4三振無失点)でした」

やるべきことをやった西口と対照的だったのはソフトバンク杉山。150キロ台を連発できる、いわゆるパワーピッチャーだが四球が玉にキズ。この日は3人と対戦して2四球を献上。後を継いだ津森が浅村に逆転2点タイムリーを浴びたが、試合展開からして杉山の2四球がターニングポイントだった。杉山は豪速球が持ち足。だがストライクが入らなければ球速にはさして意味がない。そして何よりほぼ1イニング限定で登板する杉山にとって、最も回避すべきは四球ということをさらに意識してほしいところだ。長身の杉山が小さくなりながら途中降板する姿は情けない。豪速球で三振を奪って、胸を張ってマウンドを降りるようにしてもらいたい。

話を西口に戻す。この試合を見て一番喜んでいたのはその人ではなかろうか。そう、西口を発掘した楽天のスカウトである。西口のプロフィールを見てみると、甲賀健康医療専門学校(現・ルネス紅葉スポーツ柔整専門学校硬式野球部)出身。日本ハム入りした建山義紀阪神入りした藤本敦士の母校である。渋いけれどいい選手たちだ。西口もぜひ先輩たちに続いてほしい。でも…私はソフトバンクファンだからその西口を打ち負かすシーンを期待しているのだが。試合翌日、スマートニュースで楽天関連の記事を漁ったが西口直人単独の記事は見当たらなかった。これだけいろんなスポーツメディアがあるのだから、選手の名前で記事を書いてばかりなのもどうか。松井裕樹の記事をいくつか見かけたが、彼が3連投したのが果たしてニュースなのか。連日ランナーを出して失点のピンチ。土曜日の試合は失点しなかったのが相当うれしかったらしく小躍りしながらダグアウトに戻ってきた。守護神としての気概は感じられなかった。やはり守護神としての格はわがソフトバンク森唯斗が数段上である。そんな松井の記事よりも、地味ながら「試合をつくった」西口にフォーカスしてほしかった。ま、そこは地味な選手大好きな黒柴スポーツ新聞の出番か。これからもコツコツ頑張る選手にフォーカスしていこう。


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