黒柴スポーツ新聞

ニュース編集者が野球を中心に、心に残るシーンやプレーヤーから生きるヒントを探ります。

気持ちの強い方が勝つ~ソフトバンク、川島慶三と明石健志の代打タイムリーでロッテ撃破

「西武勝利の情報が入ってきております」
試合終盤、アナウンサーが他球場の結果を伝えた。ソフトバンクは8日のロッテ戦で先制するも、逆転されるなど苦しい展開だった。しかしベテラン川島慶三の活躍で同点、そして明石健志のタイムリーで勝ち越した。

 

ヒーローインタビューではまず明石が「いつ自分の出番が来るか」と考えていたことを明かした。呼ばれるかな、というより「いつ」呼ばれるか、と考えるところがさすがだなと思った。出る前提だから、準備もきっと本気だ。本気で準備しているからこそ代打でも結果が出る。そうに違いない。

 

川島慶三も「絶対打つ」という強い気持ちで打席に入ったという。ツーストライクと追い込まれながらも、低めに落ちていく変化球に食らいつきレフト前に運んだ。絶対に打つ。当てる。そんな気持ちで打ったに違いない。代走の周東もよくホームに帰ってきた。

 

何でもかんでも気持ちがあればできるというのは嘘だと思う。逆立ちしても無理なものは無理。そんな時はある。でも1%でも可能性がある場合は、気持ちが強ければ強いほど、うまくいく可能性は高まると思う。努力のしがいはそこにある。

この日はデスパイネの先制タイムリーを皮切りに、柳田悠岐、グラシアル、松田宣浩といった主軸に打点が付いた。そこにスーパーサブ川島慶三明石健志が加わった。特に明石のタイムリー後には内川聖一松田宣浩もグラシアルもベンチを飛び出し万歳やハイタッチ。総合力で勝つ。この辺りはソフトバンクの真骨頂だ。

 

勝負を決めた明石のタイムリーに至る起点は内川聖一二塁打だった。ここで内川は頭から滑り込んだ。タイミング的にはそこまでしなくても間に合っただろうが、気持ちが入っていたのだろう。2000本以上ヒットを打ったベテランが必死に次の塁を狙う姿勢は若手にもぜひ見習ってほしい。アラフォーの私にもよい刺激になった。

 

西武も勝ったためゲーム差は1のまま。ここまで来たら気持ちの強さがわずかでも上回った方が勝ちそうだ。最後の直接対決は死闘になる可能性大。ますます優勝争いから目が離せない。

千賀が初ずくめのノーヒットノーラン~甲斐との育成出身バッテリーで快挙

ソフトバンクのエース千賀が9月6日のロッテ戦でノーヒットノーランを達成した。令和初、育成出身初、育成出身バッテリー初、ソフトバンクホークス初、ホークス福岡移転後初と「初」ずくめだ(ほかにもあったら教えてください)。

 

ホークスとしては1943年南海の別所昭(後に毅彦)以来76年ぶり。最も達成から遠ざかっていた球団だったそうだ(歴史が浅い楽天を除く)。工藤公康斉藤和巳和田毅も攝津正もやっていない。

 

単純に、ノーヒットノーランをやっただけでも素晴らしいのだが、やったタイミングがよかった。千賀自身は3連敗中で、チームに勝ちを付けられていないことに忸怩たる思いがあった。やり返す、という意味ではこれ以上ないリベンジだ。

 

ホークスファンとしては甲斐拓也との育成出身バッテリーという点にフォーカスしてもらいたい。この二人が入団時、3桁の背番号だったなんて……今や知名度は全国区だ。育成出身投手によるノーヒットノーランはこれからもありそうだが、育成出身バッテリーによるノーヒットノーランは少しハードルが高そう。しかし、甲子園経験者でもなく、大学時代にタイトルがなくてもプロ入りして結果は残せる。そんなよい事例だから、プロを目指す豊かな才能たちに希望をもたらすことだろう。

 

甲斐は甲斐で心中機するものがあっただろう。正捕手ながらここ2試合は先発マスクを高谷に譲る形。しかも高谷はリード面と勝負強い打撃でチームに貢献した。甲斐にはよい刺激になったに違いない。

 

リード面では早速高谷の配球の影響かもというシーンがあった。藤岡だったと思うが左打者のインコース、ストレートで三振を奪った。前日、高谷が甲斐野に左打者のインコースにフォークを投げさせて見逃し三振に仕留めたシーンがよみがえった。甲斐野のフォーク、千賀のストレート。得意球をインコースに決めて見逃し三振を奪うリードはどちらも見ごたえがあった。

 

甲斐野のフォークに関しては、甲斐は空振りを奪うために使っている印象だから、見逃し三振を奪うために投げさせた高谷の組み立ては非常に参考になると思う。なんて偉そうに語ってしまうが、単純に、近くに思考の幅を広げてくれる存在がいることを、素晴らしいと思う。

 

ノーヒットノーランなんて明るい話題があるのだから首位固めは磐石、と言いたいが西武がなかなか脱落しない。さすが2018年クライマックスシリーズ終了後に辻監督が涙しただけのことはある。執念を感じる。現役時代、西武の黄金期を知っているだけに勝ち方を心得ているのだ。

 

となるとソフトバンクと西武の直接対決(11、12日)が本当に本当の天王山になりそうな……。その時千賀は投げるのか分からないが、最終盤、ノーヒットノーランとはいかなくてもまたチームに勢いをもたらす好投をしてもらいたい。

代わる代わる穴を埋める~ソフトバンク優勝ならMVPは誰なのか

東スポWebにこんな見出しを見つけた。
「パ首位なのに…ソフトBにはMVP候補がいない」

そんなことないだろうと思ったが、「?」。確かにこの人だ!と決めかねる。

 

MVPだから成績はぶっちぎるくらいでないと。その点、2019年のソフトバンクは打者でも投手でも軸があるようなないような。デスパイネは4番でそこそこ勝負強い打撃をしてくれているが例えば西武の山川やら中村剛也の方がインパクトは大きく数字も残している。

 

投手はもちろん千賀が軸だが 最多勝には届いていない。勝ち星では高橋礼と変わらない。さらにここのところ打ち込まれており、被弾はリーグワーストだ。印象があまりよろしくない。

 

それでもやはりMVPは優勝チームから選んでもらいたいのだが、このままでは票が割れると予想する。個人的には交流戦で活躍した松田宣浩かなと思う。数字的には抜きん出ていないが、チームに勢いをもたらした意味で、交流戦の活躍は評価されるべき。また、故障者続出の中、よく試合に出続けてくれた。

熱男のことば 球界最高のモチベーターが実践する究極のポジティブマインド
 

 

 

なお、開き直るがMVP候補がいないのはチームの総合力で首位にいることの、何よりの証しではなかろうか。特に前半戦、あれだけ故障者が続出したら下位を低迷してもおかしくない。もともとソフトバンクは野手が「高齢化」している懸念があった。だが、こんな時はスタメン奪取のチャンスとばかりに周東ら若手が台頭した。さすがに定着までは至らなかったが一時的には穴を埋めてくれた。

 

ピッチャーも五十嵐や攝津らがチームを去り、若返った。ルーキー甲斐野を筆頭に、椎野、高橋純平、松田遼馬らが競うように結果を残そうと踏ん張った。先発でも高橋礼が初のローテーション入りながら2桁勝利は立派だ。

 

助っ人外国人はデスパイネが徐々にエンジンを上げ、チームが苦しい時はグラシアルが勝負強いバッティングを見せた。モイネロも8回は定位置になり、森によくつないだ。キューバ代表としての活動のためグラシアルと夏場に離脱した時はもはやこれまでと観念したが、何とかチームは持ちこたえた。

 

 

…………なんて書いていたら、やっぱり一人の力だけでは勝ってきていないということがよく分かる。このままソフトバンクが優勝してMVPがさっと決まらなくても、そんなシーズンだったんだなということで別にソフトバンクファンはこだわらないのでは?と思う。みんなが代わる代わる穴を埋める。そんなチームが優勝するのも悪くない。

できる人は何度でもできる~ノーヒットノーラン3回の外木場義郎と沢村栄治

大リーグのバーランダーノーヒットノーランをやった。何と3度目だ。すごいなと思ったら、3回以上の達成者は6人目だというからまたびっくり。できる人はやはり違う。

 

ちなみに筆者が好きなノーラン・ライアンノーヒットノーランを7回やっている。余談だが、社会人になってからネット上でアストロズ時代のライアンのユニホームが36万くらいで売られているのを見つけて買おうかどうか迷ったことがある。

 

日本でもノーヒットノーランを3回やった人が二人いる。一人は沢村栄治。大リーガー相手に好投したのもうなずける。残念ながら太平洋戦争で出征し、戦死してしまった。平和な時代であればもっともっと活躍したことだろう。これだけ考えても、戦争はやってはならない。

沢村栄治とその時代

沢村栄治とその時代

 

 

 

もう一人は外木場義郎。広島のエースである。外木場がすごいのは、3回のノーヒットノーランのうち1回が完全試合ということ。そして外木場が立ち向かったのはV9時代の巨人だった。3回のノーヒットノーランのうち1回がその巨人から。ちなみに初勝利自体がノーヒットノーランだった。

 

3回には及ばないが、野茂英雄アメリカに渡り、ア・リーグナ・リーグ両方でノーヒットノーランを成し遂げている。これもまた快挙だ。

 

沢村栄治外木場義郎、そして野茂英雄ノーヒットノーランは1回やるだけでもすごいのに、何度もやるなんてすごすぎる。何でできるのかなと思う一方で、1回できた人ならもう1回やれても不思議じゃないという感じもする。つまり、地力があるということだ。

 

 

ノーヒットノーランを振り返ると、だいたい数回は味方がファインプレーしてもり立ててくれる。そういった運もないとなかなかできないだろう。と同時に、そもそもほとんどのバッターを打ち取れるくらいの制球力やら球威がないと無理だ。ノーヒットノーランを複数回できた人は、やっぱり地力があるのだ。

 

できる人は何度でもできる。反対に、できない人は何回やってもできない。それを覆すためには地力を付けるしかない。メッキではなく剥がれようのない実力を付けるしかないのだ。

 

バーランダーノーヒットノーランのニュースをきっかけに、本棚から鎮勝也氏の著作「二人のエース」を引っ張り出した。外木場義郎安仁屋宗八という名投手を丹念に綴ったノンフィクションである。外木場義郎がなぜ3回もノーヒットノーランを達成できたのか。またじっくり読んでみよう。興味がある方はぜひ手にとってみてください。

クールな人の熱いしぐさ~ソフトバンク、牧原ダイビングキャッチで首位陥落の危機脱出

「セカンドにスーパーマンがいましたね」
解説の松沼博久も脱帽だ。9月1日の西武戦。ソフトバンクが牧原大成のスーパーファインプレーで首位陥落の危機を乗りきった。

 

2点差に詰め寄られた8回裏、ツーアウトながら二、三塁のピンチ。モイネロの投じた球は外崎にうまくとらえられ、低い弾道で右中間目掛けて飛んでいった。同点か……と思った瞬間、牧原大成が倒れ込むのが見えた。起き上がる牧原。グラブには打球が収まっていた。内川聖一は両手を高々と突き上げ、モイネロはしゃがみこんだまま笑顔になっていた。

 

捕ったこと自体にグッときたが、さらにその後の牧原の動作に感動した。牧原は起き上がりながら、打球の入ったグラブでグラウンドを叩いたのだった。気合がにじみ出ていた。

 

あくまでもテレビで見る限り、なのだが牧原大成はクールだ。打てなくてもガムをクチャクチャしている一方、打っても浮かれる表情は見せない。わざとそうしているのだろうか。1番バッターとして結果が出ていない時期、見ているこちらは正直なところイライラしてしまった。初球から積極的に打ちにいくのはいいが、もう少しチームバッティングに徹してほしい。そういう思いがあった。だからこのブログでも厳しいことを書いた。

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だが、守備の面では牧原は今シーズン、本当に献身的な働きぶりだ。それはもっとクローズアップされていい。レフト、センター、ライト。ショート、セカンド。こんなにこなせる牧原はすごい。牧原がいるからこそ、ソフトバンクは日替わり打線が組めると言っていい。セカンドならセカンドに集中していれば、不動のスタメンになれているかもしれない。だが、牧原は忍者のように複数のポジションと打順をこなしている。

 

一つのポジションならば覚えることが少なく済む。もちろんその分、絶対的な存在感を出さねばならないから、そこは牧原はまだまだ足りない。だが、これだけ故障者が出ながらソフトバンクが首位をキープし続けられたのは、牧原を筆頭に福田秀平や川島慶三、周東佑京らスーパーサブが機能したからだ。複数ポジションをこなす人の大変さ、フォローする側の大変さは、やった人にしか分からない。

 

この西武戦、牧原大成はスタメンではなかった。明石健志が自打球により交代し、途中からセカンドに入ったのだった。そこでファインプレーが出るのだからドラマチック。明石も球際には強いから外崎の打球には食らいつけていたかもしれない。だが、この日牧原がファインプレーできたのは、絶対に勝つんだというチーム全員の気持ちが牧原大成の体に乗り移ったからのように思えた。同じ回、ライトで森友哉の打球を処理した周東も身を呈して、打球がフェンスに到達するのを防いだ。この隠れたファインプレーも付け足しておきたい。

 

クールな牧原が見せた熱いしぐさ。ヒーローインタビューは確かにこの大事な一戦を6回無失点と粘った武田翔太が選ばれて順当だけれども、牧原大成のダイビングキャッチはシーズンの行方を左右するワンプレーだったと思う。思いの強い者が勝つ。そんなことを再認識させてくれるスーパープレーだった。

鳥谷敬はどんな決断を下すのか~阪神一筋16年。生え抜きのキャリア論

「最後の神宮」発言で、あれ?と思っていたが、阪神鳥谷敬はこのまま引退してしまうのか。阪神鳥谷敬戦力外通告したことが8月30日、報じられた。

 

筆者はソフトバンクファンゆえに虎党の気持ちは想像するしかない。想像してみると、やはり阪神のユニホームのまま引退してほしいのではないかと思う。
もちろん、まだ引退すると決まったわけではないのだが。

 

引き合いに出されるのが今岡誠。彼もまた阪神で光り輝いた男だが、現役続行の道を模索してロッテに移籍。もちろん年俸は大幅にダウンした。ロッテには2年いて、選手兼任だがコーチもやった。

感じるままに生きてきて

感じるままに生きてきて

 

 

 

鳥谷敬とて将来的には指導者としても期待されているだろう。コーチは当然として、ひょっとしたら監督をやってほしいという声もあるかもしれない。だとしたら縦じまのユニホームのまま引退した方がよいのか。もはやそんな考え方は古いのか。指導者をやるならばさまざまな球団から野球を見るのも得策なはずだ。特に阪神は関西では特別な存在。一度外から見た方がいいかもしれない。

 

だが、まずは鳥谷敬が引くのか引かないのか、だ。彼には潔さを感じるので、あまり現役に執着しないような気がする。それよりは自分のバッティングができるのかできないのかの方が問題であり、そこを見極めようとしているようにも見える。

 

ほとんどのプロ野球選手は自分で引き際が決められない。しかしプロ野球歴代2位の1939試合連続出場、球団最多の通算2082安打など偉業を成し遂げた鳥谷は、自分で進路を決められる数少ないプレーヤーだ。もし自分の限界を感じていたら、すでに態度表明しているのではないか。そうしていないのは、つまり鳥谷敬はまだ現役をやめるつもりはなく、阪神でやれるか可能性を見極めていたのではないか。

 

阪神としても、功労者をわざわざ他球団に流出させようとは思わないだろう。一方で4億円といった年俸や、常時鳥谷を出場させられる環境にはないことを考えると、鳥谷が自らやめると言わない限りは球団が引導を渡さねばならない。シーズンも終盤に入ったから、タイミングとしてはこの時期になったのだろう。

 

鳥谷敬が態度表明する前に、中日が意思表示した。鳥谷が阪神退団なら獲得への調査をするそうだ(※この記事をアップ後、球団代表が完全否定した記事を確認しました)。中日と言えば松坂大輔を1500万で獲得したことを思い出すが、松坂大輔の時よりは相乗効果があるかもしれない。代打や守備力の底上げにつながるという期待だ。よく見聞きするのが鳥谷の練習量の豊富さ。よい手本になるとの思惑もあるかもしれない。

 

ちなみに筆者は鳥谷ファンの気持ちが少し分かる。筆者は元ソフトバンクの攝津正を応援していたのだが、攝津は戦力外通告を受けてしまった。現役続行を模索したが、結局そのまま引退。惜別のセレモニーは3月に行われたのだが、その時攝津が慣れ親しんだソフトバンクのユニホームを着てくれていたことがすごくうれしかった。本来なら、違うユニホームを着てでも現役を続ける姿を望むべきだろうが、ソフトバンクのユニホームがやっぱり一番だなというのが正直な気持ちだった。その後、実は一度楽天入りを考えたことがあるという記事を見つけてドキッとした。ちなみに攝津がセレモニアルピッチをしたのは阪神戦の前だった。

 

果たして鳥谷敬はどんな決断を下すのか。そして阪神ファン、鳥谷ファンはどのように受け止めるのだろうか。人生もプロ野球選手としてのキャリアも一度きり。だからこそ少々時間がかかっても鳥谷には納得いく結論を出してもらいたい。

新天地で戦力になる~日本ハムの公文克彦デビュー以来165試合連続無敗

日本ハム公文克彦が8月29日、プロ入りから165試合連続無敗となった。これはプロ野球新記録。巨人の高木京介と並んでいたが、単独トップとなった。

 

たった一球で勝つこともあるが、たった一球で負けることもある。それがピッチャー。プロ野球という、結果がすべての世界で生き抜くだけでもすごいのに、まだ1回も負けていないとは。実力もそうだが運もないと無理だろう。公文はすごい。

 

そして、それ以上にときめいたのは……公文克彦日本ハムで投げた試合数が150だったこと。これ、巨人で投げた15試合の10倍。トレードされた時は一緒に日本ハムに行った大田泰示の方がクローズアップされたが、公文もしっかり日本ハムで戦力になっている。

 

同じプロ野球チームでも歴史やカラーが違うし、設備や人間関係といったソフト面、ハード面の環境も変わるから、移籍先で活躍する人は本当に素晴らしい。巨人にいてもそこそこ活躍したかもしれないが、公文の場合は日本ハムに行ってこのように結果が出たのだから、あのトレードは大正解だった。

 

そして正解にしたのはもちろん公文が努力した結果であって、人知れず苦労もしたことだろう。トレードは志願して実現する場合もあるが、大田・公文の場合は本人よりは巨人と日本ハムそれぞれのお家事情によるものだろう。心の準備はできていなかっただろうが、二人は日本ハムに行き、活躍することでトレードを成功と印象付けた。本当に素晴らしい。

 

公文と同じ高知高校出身の和田恋も、今年の楽天へのトレード後に初本塁打やら1試合4安打やら、結果が出だした。そう言えば二人とも巨人出身……。和田もまた、公文がように新天地で結果を出せるだろうか。パ・リーグにいる限り、二人が直接対決する機会はある。ひょっとしたら公文の連続無敗記録を止めるのは……なんて想像してしまった。公文には1試合でも多く、無敗記録を続けてもらいたい。勝つのもすごいが、公文のような中継ぎピッチャーにとって、「負けない男」という称号は最高の評価。ぜひ、このまま行けるところまで行ってもらいたい。

 

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甲子園のガッツポーズは悪なのか2019~明石商業・狭間監督に賛否両論

数十年、甲子園の熱戦を見ていて初めてだったかもしれない。監督のガッツポーズを見たのは。明石商業の狭間善徳監督。筆者が見たのは1回だけだったが、オトナンサー記事「明石商監督の派手なガッツポーズ話題に…高校野球における敬意を欠かない喜び方とは」には狭間監督がガッツポーズを繰り返していた、と書いてあった。1回だけでもインパクトがあったから、繰り返したとなると確かに話題にはなるかもしれない。

 

肯定か否定かと言われたら筆者は肯定派だ。ガッツポーズを見た時には、おおっ、だいぶ入れ込んでるなぁと確かに思った。だが、甲子園まできて入れ込まない指導者なんているのだろうか。言動が勝利至上主義にならないのであれば、それはその監督や選手たちの人間性が素晴らしいだけだと思う。

 

ガッツポーズは入れ込まないと出てこない。もちろん甲子園出場チームの監督さんたちがこれまでガッツポーズをしなかったのは、見えるようにしなかっただけで、心の中ではそりゃお祭り騒ぎ、よっしゃよっしゃと大喜びしていたに決まっている。狭間監督は素直に感情表現してしまった。筆者が見たガッツポーズは宇部鴻城戦の8回、1死三塁から三塁ランナーを走らせてのエンドランで同点に追い付いた場面。高校野球経験者に尋ねると、軟式野球ではあるよとも聞いたが、まさに作戦がはまったシーン。一か八かだから、狭間監督くらい熱い人がガッツポーズせずにいられるはずがない。喜びが爆発してしまったのだ。

高校野球界の監督がここまで明かす! 野球技術の極意

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ガッツポーズも、一律で否定しなくてもよいのではないか。ガッツポーズというよりは、示威行為を慎んだ方がよいと思う。何が違うかというよりは言えば、相手に対してやるかどうか。つまり、身内に対してやる分には喜びの共有だから相手を侮辱する意味はない。

 

それでいうと、今年の夏は出なかったが、2018年の甲子園で吠えまくった創志学園の西純矢投手は少々やりすぎだったかなと思う。彼も感情を素直に出しているのだろうけれど、見方によっては相手を威圧しているように見えてしまう。前述のオトナンサー記事ではテニス選手が相手に対してはガッツポーズしたり大声を出したりはせず後ろを向いてやることが紹介されている。西投手も気合を入れるならセンター方向を向いて吠えたらまだましかなと思う。

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ガッツポーズではなかったが、昨年夏は吉田輝星のシャキーンポーズがご法度となった。あれはチームメイトとの意思疎通だから止められる筋合いはないと思うが、誤解を生むような行動は慎みなさいということだろう。だが筆者は、甲子園という最高の舞台を最高の仲間と楽しんでいる象徴に見えたから、シャキーンポーズは大好きだった。

金足農 旋風の記憶 [雑誌] (週刊朝日増刊)

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狭間監督のガッツポーズも決して相手に対してはこれ見よがしにやっているとは思わない。戦法がはまり悦に入っている面はあるかもしれないが、それは策士だから当然と言えば当然。明石商業などでこれから甲子園の常連、名物監督となれば次第にガッツポーズは減っていく……とはならないか、この熱さでは。

なぜ「あと1アウト」から逆転されるのか

なぜ「あと1アウト」から逆転されるのか

 

 

 

ちなみに宇部鴻城戦は明石商業がサヨナラスクイズで勝った。崩れ落ちるキャッチャーに声を掛ける明石商業の選手がいた。勝ったからできる仕草にも思えるが、相手を思う気持ちがなければやれるものではない。選手も監督も、ただただ勝てばいい、そんな気持ちだけでやっているわけではないのだと、もう少し信じてあげてもよいと私は思う。

活躍する場は自分でつかむ~阪神・藤川球児が現役最多タイ234セーブ

藤川球児が現役最多234セーブを記録。サファテに並んだ。サファテは故障で戦列を離れており、2019シーズン中に藤川が新記録を伸ばすことだろう。記録もさることながら、プロセスに心を動かされる。

 

新聞記事に書かれていた矢野監督の言葉。
「ことし、抑えではないところから始まって自分でつかんだところに価値がある」
深い。
そうだ、各球団の守護神はポジションが決まっているが、藤川の場合は定まっていなかった。キャリアから言えば指定席が与えられてもおかしくないが、藤川はその都度命じられた登板機会に投げてきた。藤川球児が守護神を務められているのは、任されたポジションで地道に結果を出してきたからにほかならない。

 

阪神藤川球児が代役守護神に任命 ドリスが登録抹消」
7月26日の日刊スポーツ記事の見出しだ。この時点で通算225セーブだったが、9セーブを足して234セーブとなった。藤川はあまり意識していないかもしれないが、名球会入り基準の通算250セーブ(日米通算でOK)は射程に入ったと言える。

 

藤川は大リーグで2セーブを記録しており、残り14セーブは数字上、今季中に到達可能ではあるが、そうなるとかなりの負担がかかることになる。39歳の藤川にそこまで投げさせるかはビミョーだが、来季につなげるためにも一つでも多くセーブを積み上げてもらいたい。投げる場面は自分でつかむ。それを実践する藤川球児は、なかなかカッコいい。

共感されるうれしさ~「あぶさんになった男 」など紹介料6円で得たもの

ざっくり言えば自己満足のために始めたブログではあるが、少しは人の楽しみになっているかと実感できる出来事があった。

 

具体的には本が売れた。
城山三郎「少しだけ、無理をして生きる」

少しだけ、無理をして生きる (新潮文庫)

少しだけ、無理をして生きる (新潮文庫)

 

 

 

澤宮優「『あぶさん』になった男  酒豪の強打者・永渕洋三伝」

「あぶさん」になった男 酒豪の強打者・永渕洋三伝

「あぶさん」になった男 酒豪の強打者・永渕洋三伝

 

 

 

いずれもブログで紹介させていただいたものだ。このブログ「黒柴スポーツ新聞」では主に野球に関する蘊蓄を書いているため、なかなか画像を用意できない。文字ばかりになる点を指摘されたことの改善にと、Amazonの商品紹介を貼り付けている。野球カードの紹介が多いのは、記事に出てくる選手の画像を見ることで、あまり馴染みのない選手でも分かるようにという狙いがある。

 

そしてできる限り、その選手や監督の著書やグッズがあればその商品紹介を貼り付けている。応援したい人に買ってもらいたいためだ。もちろんこのブログを見て注文していただくことで「小遣い」を得られるメリットもある。だが、額的にも気持ち的にもおまけの意味合いが強い。実際、今回2冊が売れたことへの報酬(紹介料)は合計6円である。

 

とにかく、自分がおすすめしたものに共感してもらえたことがものすごくうれしい。特に本の場合は読んでもらって自分の世界を広げていただくことにつながるからだ。これはもう、自己満足とは言わない。れっきとしたきっかけづくりだ。詳しくはそれぞれの作品を紹介した記事をご覧いただきたい。

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特に澤宮優さんの作品は個人的に何冊も集めている。澤宮さんの作品は労作ばかりで、かつ、あまり陽が当たらないようなシブイ選手にも温かい眼差しを向けているところが気に入っている。ご本人がこのブログを見つけてメッセージをくださった時は、飛び上がりたいほどうれしかった。ブログをやっていると、そんなごほうびもある。澤宮さんへの感謝の意味と、小遣い目的と正直に書いた上でまたPRさせていただこう。

ひとを見抜く 伝説のスカウト河西俊雄の生涯

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打撃投手

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戦火に散った巨人軍最強の捕手 (河出文庫)

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プロ野球・燃焼の瞬間―宮田征典・大友工・藤尾茂

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記録より記憶に残る野球狂列伝

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ドラフト1位

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趣味で書いているに過ぎないブログだが、誰かの役に立てているとしたら最高だ。最高の暇つぶしコンテンツになればこんなにうれしいことはない。いつも読んでくださっている読者の皆さん、あらためて「ありがとうございます!」。これからも暇つぶしにぜひ遊びに来てください。

切磋琢磨しながら成長する~ソフトバンク椎野が3回パーフェクト救援

椎野新が躍動した。8月19日の西武戦。ソフトバンクは先発の松本裕樹が腰痛で3回を終わり降板。まだ同点だったから、継投は若干繰り上がったか。しかし結果的には椎野が3イニングで1人も走者を出さないパーフェクト救援。西武は手痛いパスボールがあり、ソフトバンクが2-1で逃げ切った。

 

まず、椎野は京セラで活躍したことに意味がある。7月にも京セラで、オリックス相手に登板したが、その時も松本裕樹が先発。8回途中まで好投したがランナーを背負い、後を嘉弥真に託したが同点タイムリーを喫してしまった。椎野はそこからマウンドに上がったのだがオリックスの勢いを止められず、満塁からマレーロに走者一掃のタイムリーを浴びたのだった。

 

だが、今回は違った。打てるものなら打ってみろ。そう言わんばかりに、長身から投げ下ろす直球は威力抜群だった。別人のように自信があふれていた。悔しい思いをした後で、椎野は任された登板機会を一つ一つクリアしていった。だからこそ19日のような大事な試合、しかも同点の場面で使われたのだ。相手はオリックスではなかったが、見事に京セラでの悪い思い出を上書きした。

 

椎野には燃える理由が他にもあった。前日、1点ビハインドの状況で甲斐野や高橋純平が、共に3者連続三振。「年齢が近いんで」と、二人の好投を意識していたことを、ヒーローインタビューで明かした。

 

西武との3連戦は初戦で山賊打線が大爆発。千賀が火を付けてしまい、どうなることかと思われたが、初戦終盤にソフトバンクは8点を返して食い下がった。13点まで届かなかったが、やられっぱなしで終わらなくてよかった。2戦目は若い投手陣の頑張りにベテラン松田宣浩と明石がタイムリーで応えて逆転勝ち。3戦目は犠牲フライと相手のバッテリーミスで勝った。終わってみれば勝ち越しだ。

 

ソフトバンクにとって、若返った投手陣の頑張りは本当に財産だ。本人たちからしたら今が一番の踏ん張り時だが、優勝に向かって突き進める経験は誰もができるものではない。それを甲斐野、高橋純平、椎野は切磋琢磨しながらできている。中継ぎや抑えは、抑えて当たり前、打たれたら即戦犯という厳しいポジションだが、打線におんぶにだっこではなく、逆に抑えて打線に流れを持ってくるあたりは大したものだ。これからも若き中継ぎ陣から目が離せない。

鷹党思わず目を凝らすコラス初打席初球打ち初ホームラン~デスパイネ離脱にも見えた光明

ソフトバンクは西武との勝負の3連戦真っ只中だが、主砲デスパイネが故障で登録抹消。エース千賀を立てながらまさかの13失点で初戦を落としたこともあり、泣きっ面に蜂状態だ。が泣きっ面がうれし涙になるかもしれない。代わって昇格したコラスが初スタメンをゲットしただけでなく、初打席初球をホームラン。デスパイネ不在の暗雲を吹き飛ばす一発だった。

 

デスパイネに代わる4番はグラシアル。これは実績十分だから順当だ。コラスはライトの守備につき、7番に入った。今さらながらコラスのウエスタンでの成績を見たが、9本塁打41打点。見るからに当たったら飛びそうな、堂々たる体躯である。何よりまだ20歳。1軍初ホームランはさすがにうれしかったか、ゴムまりが弾むように、リズミカルにダイヤモンドを一周した。先輩たちはサイレントトリートメントの後、喜びを爆発。少なくともこの瞬間、前夜の大量失点のダメージは激減したと思われる。

 

デスパイネ、グラシアル、モイネロ、ミランダ。ソフトバンクの誇るキューバ勢は優良な人ばかりだ。そしてコラスも加わった。外国人枠の問題があり、全員がフル稼働できないのが残念だが、ひとまず復帰の見通しが不透明なデスパイネ離脱に関しては、少し光明が見えた。ライトの守備を無難にこなしてくれたら、中村晃のDHもあり。外野の出番争いはますますし烈になる。

 

グラシアル、福田秀平、中村晃が復帰して、突き出されたのが上林誠知。このまま埋没してなるものかと、上林は途中出場した試合でも結果を出そうと頑張っている。そこへパワーヒッターのコラスが参戦してきた。上林的には勘弁してくれと思っているかもしれないが、上林は強いリストを生かした打撃と強肩でアピールしていくしかない。前にも書いたが、ソフトバンクはチーム内で競争しているから首位をキープできていると思う。主力が離脱しても、新人が活躍すれば組織は活性化する。

 

デスパイネ離脱に沈んだソフトバンクファンも思わず目を凝らす、コラスの鮮烈デビュー弾。まだまだデスパイネの穴を埋められるかは分からないが、しんどい後半戦に現れた外国人選手の活躍と言えば昨年のグラシアルがまさにそうだった。果たしてコラスはグラシアルばりに鷹の救世主になれるのか。楽しみな新星がまた現れた。

敵が一番いい状態で勝負する~智弁和歌山の黒川、星稜エース奥川に熱中症対策アシスト

甲子園の歴史に残る名勝負がまた一つ生まれた。智弁和歌山対星稜。名門同士のぶつかり合いにふさわしく、いつ終わるとも分からない展開。得点が入りやすくなっているはずのタイブレークも意味をなさないほどの奥川恭伸の豪速球、そして智弁和歌山の鍛えられた守備力。どこまで続くかと思った矢先、星稜・福本の劇的なサヨナラホームランが飛び出した。

 

ホーム付近に整列した時、奥川は泣いていた。校歌を歌う時も涙をこらえきれなかった。大会ナンバーワン投手の涙。松坂大輔を思い出した。松坂もまた、あのPL学園との延長戦でチームメイトの常磐が決勝ホームランを放った時に涙を流していた。

松坂世代 (河出文庫)

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奥川はなぜ泣いていたのか。松坂大輔のように、チームメイトへの思いもあったと思う。だが、智弁和歌山への思いもあったと、デイリー記事、智弁和歌山が友情の手助け 黒川が星稜奥川に熱中症対策の錠剤を渡す「素晴らしい投手」を読んで知った。

 

あの名勝負の最中、敵のことを考えていたなんて。さすが黒川史陽。名門智弁和歌山のキャプテンはかくも素晴らしいものなのか。もちろん奥川が延長11回にふくらはぎをつったのは試合を見ていた人なら皆知っている。だが、まさか敵の黒川が奥川に手をさしのべていたとは……。

智弁和歌山・高嶋仁のセオリー 《甲子園最多勝監督の勝つための法則88》

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同世代の日本代表というつながりはある。しかし舞台は甲子園。何がなんでも勝ちたいと思うのが当たり前だし、それがモチベーションになるから信じられないプレーやドラマが生まれる。しかし勝負を超えた清々しさを感じる黒川のファインプレーだった。

 

「どちらも日本一を目指している。自分も本気だから、奥川にも一番良い状態で、本気で来てほしかった」(朝日新聞記事「こういうところが強さ」星稜・奥川が智和歌に感謝の訳 より)
足を引っ張り合う、我田引水、自分勝手な人が多い世の中に対するツーレツな一言である。久しぶりに正々堂々という言葉が浮かんだ。

甲子園「観戦力」をツーレツに高める本 (中公新書ラクレ)

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日本一を目指す熱い思いを託された奥川はあす8月18日、準々決勝第3試合の仙台育英戦に先発するのだろうか。智弁和歌山戦で14回165球を投げ、被安打3、奪三振23。登板はするにしても先発はないとみた。昔ならいざ知らず今は投手の酷使に敏感だ。いや、そんな空気を読んでの温存ではなく、奥川のコンディション第一に起用法を考えてもらいたい。もう黒川は甲子園にいない。優勝までの逆算と、一発勝負が続くトーナメント。星稜はおろか石川県勢初の甲子園制覇もかかっているだけに、奥川の起用法は大注目だ。

人が行く裏に道あり花の山~権藤博が説く「原監督の采配はなぜ当たるのか」

なぜ~~なのか、という見出しは散見されるが、記事にズバッと答えが書いていないパターンが多い。最後まで読ませる作戦か。そんな記事とは対照的に、8月1日の日経新聞のスポーツ面、権藤博の「悠々球論」はズバッと言いたいことが書いてあった。見出しは「原采配 なぜ当たるのか」。

なぜ当たるのか、「答えはあるわけではない」としているが、強いていえば「勝負に出ているから」だそうだ。海のものとも山のものとも分からない新戦力を抜てきする、外国人に送りバントさせて若手に打たせるなどなど。攻めている、ということらしい。

つまり、ハイリスクハイリターン。権藤博も書いているが、確かに当たり障りのないことをしていては、他人との差別化は図れない。ましてやプロ野球の監督だ。時にサプライズも交え、選手を鼓舞し、チームを勝たせてファンを喜ばせる。大変な職業だ。原監督は先日監督通算1000勝をマーク。それなりに采配が当たらないと成し遂げられない数字だ。

原辰徳 ―その素顔―

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このコラムに書いてあったが権藤博は色紙に「運」の一字を書くという。運とは軍を進めること。戦い続けるということだ。私はこの一文にシビレた。
「運は天に任せるものではなく、自分でつかむもの」

権藤博は選択肢の中でも「人がやらないこと」をやることの大切さを説いていた。ありきたりではなく、攻めた采配。人の行く裏に道あり花の山、なんて言葉もある。人とは一味違う結果を得るためにも、「人がやらないこと」をちょっと意識してやってみよう。

 

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tf-zan96baian-m-stones14.hatenablog.com

起用されたらすぐ結果を出す~ソフトバンク、福田と明石の活躍で打線に厚み

ソフトバンク打線が活発だ。8月14日の楽天戦で則本を4回でノックアウト。その後も手を緩めず19安打12点の猛攻で6連勝とした。そのおかげで久々先発の武田翔太は序盤ふらついたものの8回まで投げきってしまった。9回は笠谷を投入したのでいわゆる勝ちパターンの中継ぎ陣は小休止。思わぬ「夏休み」となったのではなかろうか。

 

ゲームの流れ的には武田翔太が和田恋に同点2ランを打たれた直後にやり返したグラシアルのソロホームランが大きかった。最近のソフトバンクの攻撃は攻め時を心得ており、非常に効率的である。

 

ソフトバンクは打線に厚みがある。それを生み出しているのは控えの頑張りである。8月14日は福田秀平の1番起用が大当たり。いきなり則本の出ばなをくじくヒットを放って出塁し、中村晃のタイムリーで先制のホームを踏むなど、3安打2打点と結果を残した。まあ、福田秀平はスタメンでも起用されるから控えという表現もビミョーではあるが。

 

福田秀平が毎試合出ないのは何ともぜいたくな起用に思うが、他にも明石が出たり出なかったりだ。ただし、二人とも起用された時はコツコツヒットを重ねている。明石も福田秀平と同じようによく試合に出るから、控えというのもビミョーではあるが。14日の試合では途中出場の高田や上林もヒットを放った。そう、今のソフトバンクはとにかく結果を出し続けないと試合に使ってもらえないのだ。

 

なぜ起用された人が次から次に結果を出すかと言えばこの競争原理と同時に、それぞれがきちんと準備をしているということだろう。呼ばれてから準備をするのではなく、出るつもりで準備している。エンジンを温めているのだ。だからスッと試合に入っていけるのだろう。

 

かつて明徳義塾高校馬淵史郎監督が言っていた。
「ぼた餅を手に入れるのは、棚に一番近いもん。手を上げ続けるのは辛(つら)いが、一番努力したもんがぼた餅を手に入れる」(朝日新聞記事、松井5打席敬遠の舞台裏で 明徳・馬淵監督に学んだこと より)

 

棚ぼたなんていうとラッキーな展開を思わせるが実は相当な努力があるから手にできる。ライバルチームと戦うまでに、まずはチームの中でアピールしていかないと試合に出られない。それをベテランの福田や明石がやっている。牧原、高田、上林、周東らは福田や明石以上にアピールしていかないと試合に出られない。それこそ餓えた獣のように貪欲にならないと……

 

前半戦はけが人や離脱が相次いでしんどい時期もあったがそこは若手にも台頭とベテランの頑張りで乗り越えた。今、一番の踏ん張り時でチーム内で競争できているのはまさに「けがの功名」なのだ。


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