黒柴スポーツ新聞

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周東の走塁死が敗因なのか〜ソフトバンク、DeNAに手痛い逆転負け

あまりにも衝撃的な結末だった。一塁ランナーの周東が、三嶋の牽制球がそれた隙に一気に三塁を狙った。しかしバックアップのセカンド牧からの好返球にあえなくタッチアウトでゲームセット。パッと見、周東の暴走に見え、逆転負けのフラストレーションが溜まったホークスファン的にはついつい周東に敗因を求めてしまいそうになった。

が、果たして敗因は周東だったのか? 私はそうは思わない。周東が生還したとてまだ同点。勝てたわけではない。また、周東が欲張ったというのもお門違い。ライト側からの映像をTwitterに上げている方がおられたが、確かに村松三塁ランナーコーチが腕を回していた。これが決め手となり、周東の冤罪は晴れそうだ。かつて日本シリーズ初退場となった阪急・岡村捕手とランナー土井のクロスプレーで、土井がきっちりホームベースを踏んでいる写真が翌日の新聞に掲載されて、セーフの判定が正しかったことが周知されたことがあった(1969年)。時は流れ、試合当日の夜にはTwitterで別角度からの映像が確認できるようになった。プロ野球の楽しみ方は進化している。

周東の冤罪が晴れたとなると、村松コーチが追及されそうだ。実際、試合後には工藤監督がこんなことを言っていた。「まあ、致し方ないとは思います。あれは周東の後ろのエラーなので。あそこで三塁ランナーコーチの村松が回したのか回していないのかというところ。回しているなら行かないといけないですから、あいつ(周東)に罪はないので。そこはまだ確認を取っていないですけど」(西日本スポーツ記事、工藤監督が周東かばう「あいつに罪はない」9回2死、痛すぎる走塁死、より)。これはもう村松コーチが悪いと言っているに等しい。記者経験者なりの深読みなのだが、こういう場合、記者は監督のセリフとはいえ「村松コーチ」と肩書きを足す。「村松」などと呼び捨てのままにはしない。事実、スポーツ報知記事では「致し方ないと思います。サードの村松コーチが回しているのなら、行かないといけない。まだ確認は取ってないですけど、あいつに罪はない」と書いている。しかし東スポ記事でも「致し方ないと思う。周東の後ろのエラーなので。あそこで三塁(ランナー)コーチの村松が回したのか、回していないのかというところもあるので。まだ確認していないけど、回しているなら行かないといけない。(そうならば)アイツに罪はないので」村松呼ばわりをしている。記者がわざわざ「村松」などと呼び捨てにはしないはずだから、これは工藤監督が村松と言った可能性が高い。だいたい工藤監督は、裏では知らないが表では「周東クン」などと君付けするタイプ。村松と呼び捨てにしたり、周東をアイツ呼ばわりしているとしたら、結構頭に血が上っていたのではないか。

とは言え、個人的には工藤監督の采配が疑問だった。まず松本裕樹の続投。工藤監督が言うように、このところ好投していた松本の起用自体は間違っていない。しかし牧に逆転打を浴びる前に、あわや逆転3ランとなりそうな大飛球を宮崎に打たれている。幸い宮崎の打球は二塁打となり、ホークスはまだ1点勝っていた。最終回に投げる機会があれば岩嵜だから、板東あたりを牧に当ててもよかったのではないか。また、申告敬遠も、結果論だが松本には重荷になったのではないか。DAZNでは飯田哲也が解説していたが、満塁だと真ん中で勝負せざるを得なくなる。外角の球がアクセントである松本には、ハードルが上がってしまった感が確かにある。ソトへの初球が大きく外れたのを見て工藤監督はすぐさま申告敬遠したが、同じ敬遠をするにしても、あ、もうアカンわみたいな見切られ感がにじみ出てしまっていた。松本にはプレッシャーが余計かかったはずである。工藤監督は試合を通じて選手を伸ばそうとする所があるのではないか。モイネロ、森という勝ちパターン2投手の穴を泉、岩嵜で埋めたいが泉は登板過多。調子も落ちており、松本というカードを作りたい。そんな思いが伝わってくる。それは間違っていないのだが、勝負をかけてやるのは危なっかしい。そうやって修羅場をくぐり抜けさせて選手層を厚くしてきたのかもしれないが、やはり試合に勝ってこそではないのか…と珍しく采配に疑問を感じた逆転負けだった。


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