黒柴スポーツ新聞

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代役を立てさせない〜牧原大成、代走送られた翌日に脚力アピール

いま牧原大成が熱い。このところの猛アピールは素晴らしい。周東の衝撃の走塁死がクローズアップされた中、牧原一人だけが別のことを考えていたに違いない。そう、なぜオレに代走なのだ、と。周東が一塁に来た時、牧原は名残惜しそうに下がったように見えた。

これはプロとして大事なことだ。たまたま中西太著「西鉄ライオンズ 最強の哲学」(ベースボール・マガジン新書)を読んでいたのだが、こんなくだりがあった。「プロでは、同情は絶対禁物である。同じチームでも、互いにライバル意識をむき出しにしてもらいたい」「仰木君、高倉君、みんな闘争心を燃やし、ライバルを蹴落としてポジションを手中にしたのだ」。牧原の闘争心を感じたシーンがあった。牧原に代走周東が送られた試合の翌日、2日の同じくベイスターズ戦のことだった。

四球で出塁した牧原はアンツーカーをはみ出る大きなリードをした。解説の多村仁志が「芝生(人工芝)まで出ている」と注目していた。牧原は再三、牽制を受けながらも結局二盗に成功。打者は犠打の名手・今宮健太だったが、アウトを増やすことなく牧原は二塁に進むことができた。そして今宮はセンターフライを打ったが、牧原はハーフウェーから戻り、再び三塁に向けてタッチアップした。多村はこれをトレーニングの賜物だと褒めていた。短い距離だからスピードが乗るのに三、四歩かかるといい、馬力がないとできないのだという。続く栗原の打球はセンター桑原の好守に阻まれてタイムリーにならなかったが、得点できていたら、間違いなく牧原の足で稼いだ点だった。

1番牧原、2番今宮であれば送りバントも強攻策もいける。そんな計算が立ったわけで、牧原的にはアピール成功だったように思う。もちろんチームが勝つことが最優先だから牧原も自分のことばかり考えてもいられない。だが中西太の著作にあったように、プロである以上、ライバルを蹴落とさない限りレギュラーポジションは手に入らない。そのためのアピールを、代走を送られた翌日に脚力で示したところに牧原大成の意地を見た。交流戦、いまひとつ乗り切れないホークスの中で、牧原の頑張りが目を引いている。


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