黒柴スポーツ新聞

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呼ばれなくなる恐ろしさ〜代打を送られた牧原と上林、そしてスタメンから外れた周東

その日2安打するのはノッている証拠だ。しかし6回のチャンスで牧原大成には代打が送られた。巨人が変則左腕の大江を投入してきたからだ。左対左は打者が不利というのは定説。しかも変則だ。ノッている牧原でも手こずると見たのか。はたまた、ここは素直に左キラーの代打川島慶三か。いずれにせよ打席には川島慶三が送られた。

ヘルメットをかぶりバットを持つ牧原に平石コーチが声をかけていた。牧原の心中をおもんぱかってのことなのか。牧原は頭では理解しつつ消化不良の表情に見えた。それでいいと思う。2安打してもダメなのかよ。牧原はそんな乱暴な言葉は発していないけど、そう思ったとしてもいいと思う。

川島慶三も大変なのだと池田親興が解説していた。さすが優しい池田さん。調子がいい牧原を引っ込めて起用されるのだから、結果を出さねばならない。そういうプレッシャーはあるのだと。もちろん川島はいつも以上に気持ちが入っていただろう。しかし川島は初球を打ち上げてアウトになってしまった。

やっぱり牧原をそのまま打たせりゃよかったじゃんというのは結果論である。牧原がタイムリーを打てたかどうかは分からない。チームとして最善手を検討した結果、川島が送られ、ヒットが出なかった。そういうことだ。牧原にできるのは、代打を送られないくらいの実績をコツコツ積み上げていくことだ。今日の悔しさをバネにするしかない。

この日は上林誠知にも代打(明石)が送られた。左投手に左の明石。上林も同じ左打者であるのに左の代打を送られて上林は悔しいだろうとまた池田親興が解説していた。上林もちらっと映ったが残念無念というか元気のない表情に見えた。それが正しいと思う。団体競技だから誰が出たとしても、チームが勝つことが最優先なのだけれど、まだレギュラーが確約されていない選手には、こうした代打や守備固めを送られた時の気持ちを忘れないでいてもらいたい。なぜオレではないのかと、オレではだめなのかと、そういう気持ちでいてもらいたいと思う。

代打を送られた牧原に、セカンドのポジションを奪われつつある周東はもっと厳しい立場である。牧原は外野も守れ、このところサードでもレフトでもしぶとい守備を見せた。コンスタントにヒットを打っており、いま周東より牧原が使われるのは当然だろう。代走ででも出てアピールしたいところだが、巨人戦ではチームがホームランを量産。周東の出番はなかなかなかった。ようやく代走で出してもらえたが、2戦目は最終回、サヨナラになりうる一塁ランナーとして出てきた。しかし前の二塁には柳田がいる。盗塁はほぼできない。つまり長打が出て初めて周東の俊足が生きるという、回りくどい起用であった。これも悔しい起用だと池田親興が触れていた。

牧原、上林、そして周東。代役を立てられることはなぜいけないのか。それは代役が活躍してしまうと呼ばれなくなる危険があるからだ。一般社会でも横一線だった人が結果を出すと頭一つ抜けてしまう。次もその人に頼みやすくなり、それが積み重なるともう自分の顔が思い浮かべてもらえなくなる。呼ばれなくなるのは寂しいものだ。レギュラーは活躍すれば賞賛され、ミスをすると酷評される。矢面に立たされるのはつらいが、もっとつらいのは何も起きないことだ。呼ばれないからミスもしない。でも活躍もできない。存在感が低くなれば戦力にならなくなる。プロ野球選手にとっては死を意味する。そのくらい厳しい世界だ。世間的にはようやく巨人が対ソフトバンクの連敗を止めた試合なのだが、ソフトバンクファンとしてはそんなことは大したことではなく、悔しい思いをした若鷹たちがどんなリベンジをするかが問題。彼らならきっとやってくれるはず…そう期待している。


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