黒柴スポーツ新聞

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頼れるのは己れの力~平石コーチ、松本裕樹、岩嵜翔。それぞれのリベンジマッチ

よかったな、と思う。ソフトバンクが4年連続で日本シリーズを制したから? それはもちろんだが、私は3人の男のことを考えていた。平石洋介コーチ、松本裕樹、そして岩嵜翔。巨人との日本シリーズ第4戦は、彼らにとってのリベンジマッチとなったのだった。

 

まずは平石洋介コーチ。2019年に楽天クライマックスシリーズに導きながら、監督を事実上更迭された。生え抜きであり策士でもある平石監督を、ソフトバンクファンの私は厄介に思っていたのだが(バスターでサヨナラされたりダブルスチールを仕掛けられたこともある)、楽天は三木監督を選択。追い出される格好の平石コーチをソフトバンクは招き入れた。このことは以前コラムに仕上げたが、解任扱いされた自分を評価してくれた平石コーチは相当うれしかったのではと想像した。で、1年後どうなったか。平石コーチは最強軍団の一員として日本一の歓喜の輪の中にいた。一方の楽天はBクラスに転落し、三木監督は2軍監督に降格。まさに倍返しである。平石コーチが常勝ソフトバンクという勝ち馬に乗ったと見られなくもないが、平石コーチは川島慶三の4番起用を進言してくれたので、川島慶三フリークとしては満足している。きっと陰でいろんな策を講じてくれていたに違いない。

BBH2011 白カード 平石洋介(楽天)

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次に、松本裕樹。日本シリーズ第4戦では先発和田の後を受けてリードを保ったまま最強中継ぎ陣につないだ。松本にとっても悔しい開幕となった。先発ローテに入ったのは二保旭で、松本ではなかった。2軍生活を経て8月に昇格するも、直後のロッテ戦で1イニングに2発のホームランを浴びてマウンドにしゃがみこんでしまった。チームは2点リードを守れず、ロッテが勝利。この頃はマリンで呪われたように勝てず、一番苦しい時期だったが松本裕樹も同じだっただろう。その男がシーズン終盤には中継ぎで安定感を得て、見事日本シリーズの戦力に。力強いストレートで巨人をねじ伏せた。さっき気が付いたが第4戦の勝ち投手は松本裕樹だった。一時期サイドスローまで模索した松本は見事に結果を出した。

最後に岩嵜翔日本シリーズ第4戦の中継で、マウンドの岩嵜を見て池田親興が感慨にふけっていた。開幕当初は逆転満塁ホームランなど手痛い一発を何度も浴びて、先の見えない2軍調整を余儀なくされた。その投手が日本シリーズの勝ちパターンで登場するなんて……。そう、終盤の12連勝で、ぶっちぎりのイメージを持たれるが2020年のソフトバンクはめちゃくちゃ苦しい時期があった。その一因は岩嵜の不調であり、7回を任せられるピッチャーの不在であった。岩嵜は何とか終盤にチームに合流し、球速もコントロールも戻ってきた。またもや満塁ホームランを打たれて13連勝を逃したこともあったが、優勝できた今となってはドラマの一つと消化できよう。からの、日本シリーズだけに池田親興は感慨にふけっていたというわけだ。

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それぞれ歩みは異なるも、結局は自分の力で這い上がった平石洋介コーチと松本裕樹と岩嵜翔。そう、結局頼れるのは己れの力である。MVPや優秀選手賞には選ばれなかった3人ではあるが、努力賞には十分過ぎるくらい値する。ソフトバンクは選手層の厚さをやっかまれるが、その層一枚一枚は彼らのように努力と屈辱が練り込まれている。日本一、おめでとうございます。第4戦はまさに3人のリベンジマッチと呼ぶにふさわしかった。


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