黒柴スポーツ新聞

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悔しさをぶつける〜5月4割の牧原大成、スタメン獲りへ猛アピール

たまには牧原大成をヒーローインタビューに呼んであげてくれ、と思っていたら和田毅と一緒に呼ばれていた(5月23日、オリックス戦)。さぞウハウハ喜んでいるかと思いきや、口から出てきたのは悔しさだった。「開幕スタメンを勝ち取ることがなかったので、その悔しさを試合に出た時にぶつけるという気持ちで立っている」。5月、打率4割という好調の要因を聞かれて牧原はそう答えた。

忘れていた。牧原は当初、周東とセカンドのポジションを争っていたのだった。2020年シーズンで周東が盗塁王を取ったこともあり、世間的にも周東推し。チーム的にも周東を一本立ちさせようというムードに感じられた。しかし牧原だって複数ポジション守れるとは言え、セカンドはスタメンの最短コース。周東に簡単に渡すわけにはいかなかったはずだが開幕スタメンは周東が勝ち取った。それどころか周東はホームランまで打った。これは期待できるぞとファンも首脳陣も思ったことだろう。

そして牧原はセカンド、ショート、サード、そして代走と、主に交代要員としての出場となった。かっこよく言えばユーティリティプレーヤー。しかし器用さは足かせになることもある。牧原もまた使い勝手のよさが裏目に出た格好で、スタメンの座をつかめずにきてしまった。だが牧原はあきらめていなかった。ヒーローインタビューの中でスタメンへの気持ちを問われ、「少しも崩さずやっていこうと思う」と話した。「少しも」とあえて付け足したのがよかった。忘れていた。プロ野球選手はポジション争いをしているのだという当たり前のことを。牧原はユーティリティプレーヤーとして生きるのではなく、あくまでもスタメンを目指している。そこを目指してやるのと、ユーティリティプレーヤーだから出るのはどこでもいいやというのでは気迫が違う。牧原は初回、キャッチャーが投球を前に弾いた時すかさず二塁を陥れた。牧原にとってはすべてがアピールなのだ。

周東と牧原。上林と真砂。栗原だって本来は捕手だが甲斐がいる。ホークスにはチーム内によきライバルがいる。傍目にはチームとしてまとまってはいるが確かに競争がある。ひとまず牧原は3安打2打点と申し分ない働きをした。先日の西武戦ではものすごく浅い外野フライでタッチアップし決勝点を奪い取った。セカンドの守備でもしぶとさを見せた。このところよいアピールが続いている。牧原は周東からセカンドの定位置を奪うのか。それとも不調の今宮健太に変わってショートに入るのか。はたまたユーティリティプレーヤーとして守備固めもしくは代走として貢献するのか。レギュラー争いから一歩も引かないとお立ち台で宣言した格好の牧原大成。悔しさを胸にバットを振る姿は何だかとても応援したくなる。


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