黒柴スポーツ新聞

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越えねばならない壁〜ソフトバンク泉、決勝被弾翌日またもや阿部に当たる

気になる四球の与え方だった。前日手痛い決勝ホームランを浴びた中日の阿部に、またもやソフトバンク泉圭輔が挑む形になった。だが泉はストライクゾーンで勝負できなかった。泉はどんな心境で投げていたのか。

DAZNで見ていたのだが解説は斉藤和巳泣く子も黙るホークスの大エースである。それだけに、勝負に行かない(もしくは行けない)泉のピッチングに物足りなさを感じている様子だった。斉藤は面白いことを言っていた。8回に投げることは分かっていた(9回には岩嵜が投げる)。そこで8回に阿部の打席が回ってくるのは巡り合わせであり、野球の神様による仕業ではないかというのだ。野球の神様が泉にあえて試練を与える。そこを乗り越えられるかどうか…そんな解説だった。

プロとして。リリーフとして。越えなければならない壁はあり、泉にはこの1打席がそれだった。やられたらやり返す。その気持ちがないと恐らくプロでは長くはやれない。たった一球でチームの浮沈が決まる。抑えて当たり前。勝ちパターンのピッチャーは華やかさの裏で責任重大である。工藤采配は時に勝負より選手の成長を優先しているのではないか。そう思うことがある。泉には山を越えてほしい。そう思うから泉には予定通り8回のマウンドに立たせたのだと思う。もちろん阿部に当たることも踏まえて、だ。

だが泉は勝負できなかった。それがいけないことだと泉にも分かっていたはずだ。だからこそ激しく動揺し、次打者の時にホームベースのだいぶ手前でワンバウンドしてしまう投球をしたのだろう。中日はさらに圧をかけてきた。代打福留。リリーフピッチャー出身の与田監督は泉の気持ちが手に取るように分かっただろう。そこに代打福留。泉は魅入られたかのように甘い球を投げてしまった。カッキーン!トドメの3ラン…にはならなかったがポール付近への大飛球。泉は血の気が引いただろう。その後はよく踏ん張った。何とか8回を0点に抑えた。

誰もが斉藤和巳のように強気のピッチングができるわけではない。だから解説を聴いていて、そうは言うけど大変なんだよと泉の肩を持ってしまった。「(やられた相手との連日の対戦は)きついですよ」と、ラジオ解説の岩瀬仁紀も言っていた。またやられたらそのままずるずるやられてしまいがちになりかねない。泉はパ・リーグだから次に中日と当たるのは来年までないが、同一リーグであればここは勝負しなければならないとも話していた。


本当に泉のことを思うならばやっぱり斉藤和巳が言うように、もう一回打てるもんなら打ってみろという勝負を要求しないといけないのかもしれない。壁は自分で越えなきゃいけないんだよなと改めて思った。被弾の翌日で泉はだいぶ緊張したと思うが、福留をフライに打ち取り何とか無失点で切り抜けた。とりあえずよく踏ん張ったと思う。優しい顔も泉の良さだけど、心の中では絶対抑えるぞと強く燃える気持ちを持ってほしい。そう感じた、阿部への四球だった。


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