黒柴スポーツ新聞

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箱根駅伝は全国大会になるべき?〜見どころの山登りは残してほしい

スポーツ文化評論家の玉木正之さんが箱根駅伝のあり方に苦言を呈したという(RKBにて放送、radiko newsより)。放映権料の行き先のオープン化など同意できる部分もあるが、二つ反対意見が浮かんだ。箱根駅伝を全国大会にすることと、山登りの必要はないという2点に対して、だ。箱根駅伝は関東近辺の大学が参加するままでいいし、山を登るからこそドラマチックなのだと思う。

玉木さんが全国化を提唱するのは、関東にばかり戦力が集まることを懸念しているためだ。確かに特定の地区だけレベルアップするより全国的に底上げされる方が日本のスポーツ発展への貢献度は高い。また、何でもかんでも東京集中というのは如何というのも納得。われわれ地方在住からして東京はそんなに偉いかと思わないこともないし、便利さの追求は東京も地方も平等であるべきとも考えている。


でも全国大会と言えばすでに全日本大学駅伝があるので、それでいいじゃんと思った。その大会をもっと盛り上げ、メジャーにしていけば玉木さんが言われるように、全体的なレベルアップにつながるし、地方大学であっても参加しやすくなるのではないか?…と考えたが、素人でも一つ課題を見つけてしまった。箱根駅伝に出ないと、出雲駅伝を含めた「三冠」にはなれない…。


もう一つの山登り不要論には真っ向反対する。玉木さんはこの高低差はマラソンではルール違反と言われるが、箱根駅伝はマラソンではない。また、選手起用の失敗はあり得るが基本的には山登りを意識して選手は選ばれるし、登りを得意と思うからこそ5区を走りたいと思うわけだ。視聴者としては単純に山登り区間を楽しんでいる。なぜなら順位変動が起こりそうだからだ。平地だと持ちタイムがそのまま結果に現れるのではとドキドキ感が少ない。しかし山登り区間は高低差、気温差、風ありと選手を苦しめる要素がある。トップを走るからと言ってセーフティーなわけでもなく、下位だからと言って諦める区間でもない。一発逆転もあり得るし、リタイアや体調不良の危険性もある。選手にリスクを負わせることを喜んで見るつもりはないのだが、安全性が担保できるならぜひ山登りや山下りはそのままでお願いしたい。


箱根駅伝は中継も含めて総合芸術と思っている。日本テレビアナウンサーの淀みない実況はまさにプロの技。事前取材の内容はどの程度盛り込めるものなのか。当日のレース展開により話す内容は変わるはずなのに、上手に紹介できるよなと感心してしまう。解説陣も安定感あるし、ゲストは結果を残したOBらなので、タレント感もなく純粋に競技性を楽しめる。サッポロビールや競馬のCMが多い印象で、そこはちょっとげんなりしてしまうが、まあ正月らしさも感じられる。CM前に昔の映像が流れるが、ランナーの近くを走る車はだいたい人がわんさか乗っており法律違反じゃないのかと思う。そんな絵巻物感、心地よいマンネリズム、そのあたりが箱根駅伝人気につながっていると分析する。ちなみにわが黒柴スポーツ新聞も、箱根駅伝期間中は通常の3倍から4倍のアクセスがある。そして明らかに駅伝記事が読まれている。


出場校の栄枯盛衰もありながら連綿と続いてきた箱根駅伝はぼちぼち100回目だという。玉木さんは改革したらと提案されているが、変わったらよい点も、残してほしいスタイルもあると思う。レース自体はまだ高速化するというハイレベルな状況で、日本の若者の能力の高さには脱帽してしまう。箱根駅伝がどうなっていくにせよ最終的には、若いランナーが思う存分実力を発揮して、視聴者が楽しめる大会であってほしいと願っている。


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