黒柴スポーツ新聞

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身につけた技術は消えない~ソフトバンク中村晃が復帰戦で即タイムリー

エド・シーランの「Shape of you」が流れてきて、あ、そうだと気付いた。今日は中村晃の復帰戦だったのだ、と。自律神経失調症。そして脇腹痛。共にじっくり向き合わねばならない「痛み」と想像する。おかえり、中村晃。スタンドには涙ぐむファンの姿があった。少しずつでいい。調子を整えていってほしい。まずは元気な中村晃を見られたことがうれしかった。

 

それを中村晃は上回った。復帰戦最初の打席でいきなり同点タイムリー。打球は中村晃らしいライナーで、ライト線を襲った。私はこの打球にしびれた。変わらない。これが中村晃のバッティングなんだ。解説者も誇らしげに言った。「ファウルにならない、技術の高さを見せた」。楽天・辛島の球を引き付けて、さばく。レフティー・スナイパーとはよく言ったものだ。まさに狙撃である。

 

復帰戦ということで緊張感もあっただろう。2軍戦に出ていたとはいえ、試合勘も完全ではないに違いない。それでもあの鋭い打球、そして相変わらずの勝負強さ。なぜそれが打てるのか、というと最高の技術が身についているからだろう。

 

プロだから行き当たりばったりでもヒットは打てる。しかし長くは続かないし、美しい打球にはならないだろう。もちろん中村晃も毎回毎回、ヒットは打てない。しかし復帰初打席であの打球だ。持っている技術はちょっとやそっとじゃ錆び付かないということを証明してくれた。最高の技術はブランクをものともしないのだ、と。

 

裏を返せばきちんと技術を身につけておかないと、行き当たりばったりのバッティングになってしまう。自分は大丈夫だろうか、と胸に手を当ててみる。職場が変わる度に新しいことは覚えられるものの、定着させていかないと薄っぺらい技術になってしまう。土台がしっかりしていないと、上に何も建てられない。やはり何事も基礎が大事だ。

 

中村晃の今後は、毎日の状態を見極めながら、だという。過度な期待は禁物だ。ついつい彼の打棒に期待してしまうけれど、そこはじっくり、ゆっくりいきたい。

 

「Shape of you」には、君の体の形が好きだ、みたいな歌詞がある。英語やら洋楽には詳しくないのだけれど、なんか、ありのままの君が好きだとも受け取れる。自律神経失調症のつらさは正直なところ分からないけれど、そういう病と向き合いながらプレーすることを選んだ中村晃を心から応援したい。♪テン、テン、テ、テン、テン、テ……また今、頭の中で「Shape of you」のリズムがループしている。

 

Shape of You

Shape of You

 

 


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