デキる人はすぐ修正する~ソフトバンクのグラシアルが大野雄大から倍返し弾
やられたらやり返す。勝負の世界では大事なことだ。やられたのと同じシチュエーションでやり返せたら、なお気持ちがいい。ソフトバンクのグラシアルはそれをした。6月5日の中日戦。大野雄大から前の打席で三振を喫したスライダーを、次はスタンドに叩き込んだ。試合を決める価値ある一発だった。
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デキる人はなぜ修正能力が高いのか。
まずは意識。やられたことをしっかり分析している。グラシアルは4回裏の打席、最後は内角に切れ込んでくるスライダーに空振りした。いわゆる、打ってもファウルになる、くらいの厳しいコース。大野の見事なピッチングの組み立てだった。が、グラシアルはしっかりその軌道を覚えていた。やられたことを忘れなかった。だから次に同じ球が来たら打とうと思っていた。そういう「意識」だ。
次に技術。グラシアルはもともと内角をさばくのに定評がある。内角の球をホームランにできるのは、上手に腕をたためるから。練習量もさることながら、この辺りはセンスが左右しそう。呼び込むタイミングの取り方が抜群なのだろう。打とうという意識がいくらあっても、打つ技術がなければ打てない。
レベルが違いすぎる話で恐縮なのだが、私はグラシアルの気持ちがちょっと分かる。小学生の時のクラブ活動でソフトボールを選んだ私は、とにかくインコースの球が打てなかった。別のクラスの子にもそれはバレバレだった。試合で私が打席に立った時、その内野手がピッチャーに耳打ちをしに行った。「アイツ内角打てないから」と言いに行っていることくらい私も承知していた。狙うは内角一本。「来た!」。私は小躍りしたい気持ちを抑えつつ思いっきり振り抜いた。ガツッ。手応え十分の打球は外野の間を抜けた。ツーベース。私は二塁塁上で思った。
「バカにするなよ」
……とグラシアルが思ったかどうかはさておき、やられたことを覚えておくこと、そしてすぐさま修正して同じ轍を踏まないことは大事だ。グラシアルは4回裏の打席で空振りした球を、8回裏の打席でホームランにできるのだから、修正能力は抜群だ。
この試合は内川聖一、松田宣浩、デスパイネも一発を放ち、それぞれ意味のあるホームランだったのだが、復讐劇が大好きな私としてはグラシアルの倍返し弾が最も心に残った。やられたらやり返す。次は同じ轍を踏まないように……そう意識することで結果は変わってくる。うまくいかなかったことを振り返るのは楽しい作業ではないが、成長のためには必要なプロセス。しっかり検証して次につなげよう。