黒柴スポーツ新聞

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静かな男の秘めたる闘志~楽天・美馬、降板後にグラブを叩きつける

普段静かな男が怒ると怖い。実は私もそうかもしれない。ま、滅多に感情を露にはしないのだが。6月2日のソフトバンク戦で、楽天先発の美馬学が無死満塁で降板。自分への苛立ちからダグアウトの椅子にグラブを叩きつけた。

 

美馬はこんなに激しいんだな、と驚くと同時に見直した。やはり自分の仕事にはこれくらい思い入れがなければ。ミスを悔やむ気持ち、悪くない。

 

5回を終えて完全試合ペース。しかし6回に甲斐拓也にホームランを喫し、完全試合ノーヒットノーランも完封もなくなった。それで緊張の糸が切れた訳でもなかろうが、7回にペースが乱れた。先頭グラシアルがサード今江のエラーで出塁。続くデスパイネがヒット。そして美馬は松田宣浩死球を与えてしまった。冒頭のグラブを叩きつけたシーンは死球後の降板で起きたのだった。

 

美馬学。豪速球がある訳でもなし。防御率がピカイチといういう訳でもない。とにかく丁寧なピッチングが身上である。そういう意味ではコツコツ頑張るサラリーマンがシンパシーを抱くピッチャーである。

 

そんなサラリーマン美馬学がコツコツ投げてきてふとしたきっかけでランナーを背負ってしまう。でもまだ何とかなるかもしれない、何とかしなければいけない、という場面で痛恨の死球を与えてしまった。何やってるんだ、オレは。しっかりしなきゃいけないじゃないか!  そこでグラブをベンチに叩きつけ、バイーンとグラブが弾んだのだった。美馬学の頭からは湯気が出ていた。

 

ソフトバンクファンの私はこの回逆転を目論んでいたのだが、最後は内川聖一ダブルプレーに倒れ、無得点。すると、美馬が笑顔でダグアウトを飛び出してチームメイトを出迎えた。何か、憎めないなこの男は。飄々としたピッチングの裏側にあんな闘志を秘めていたのか。きょうはまんまとこの男にやられた。

 

時には美馬のように、素直に自分の感情を露にしてみたい。物に当たるのはよくないけれど、人を傷つけたりしなければ、溜め込むよりはいいか。自分の不甲斐なさに腹が立つこともあるけれど、悔しい気持ちがわき起こらなかったらそれこそおしまい。悔しがれるように、毎日目の前のことを一生懸命こなしていこう。


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