黒柴スポーツ新聞

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メモすることは真剣に生きること~メモで成功した高井保弘と長池徳士と野村克也

ライブ動画配信サービスSHOWROOMを手掛ける前田裕二さんの「メモの魔力」が売れているという。累計17万部だと、購読している新聞の読書面で見た。この新聞の読書面は、日曜日のちょっとした楽しみであり、自分をアップデートするツールにしている。

メモの魔力 The Magic of Memos (NewsPicks Book)

メモの魔力 The Magic of Memos (NewsPicks Book)



読書面で見ただけだからもちろん読んでいないのだが、こんなくだりが紹介されていた。
「勝負は、書くか書かないか。もはやこれは、テクニックの問題ではなく、自分の人生とどれだけ真剣に向き合うかという、『生き方』の問題なのです」

きょうはこれを念頭に、メモで成功したプロ野球人を紹介する。


まずは高井保弘。阪急が誇る代打本塁打27本の世界記録保持者だ。同僚の助っ人、スペンサーが相手投手のクセをメモしていたことに触発され、自分でもマメに付けるようになったという。



スペンサーがメモしていた風景は「豪打列伝」(文春文庫ビジュアル版)に西本幸雄の言葉でこう出てくる。
「チームが勝つために自分が何をすればいいのかを常に考えている男だった。凡打して帰ってくると、ベンチで頭をかかえて考えこみ、またそのことを克明にメモしていた」(248ページ)
豪打列伝 (文春文庫ビジュアル版)

豪打列伝 (文春文庫ビジュアル版)



高井保弘は一発を期待される場面で起用されるから、相手のクセを見破り即対応せねばならなかった。二宮清純のインタビューでは、「投げるほうの手首のスジを見よった」「まずは始動から見るね」「(セットポジションの場合は)最初のグラブの位置やね」などと、鬼のように細かい観察眼を披露している(詳しくはスポーツコミュニケーションズ「長嶋監督の分かりやすいクセ~代打男・高井保弘インタビュー」をご覧ください)。

自分で集めた情報はまさにお宝。ベンツと交換しないかという申し出さえあったらしいがもちろん高井保弘は断った。書いておきたいのは、高井にはクセを見破るだけでなく的確に対応する技術力があったこと。抜群の勝負強さは研究熱心さと技のたまものだったのだ。

次に紹介する長池徳士(徳二)もスペンサーの影響を受けた一人。というか、長池はスペンサーが不在の時にスペンサー・メモを見ちゃっていた。というか、通訳に中身を教えてもらっていたという(サイト 週刊野球太郎「阪急の4番を作った“スペンサー・メモ”」より)。

そこから長池徳士は真似してメモをとるようになり、スペンサーに情報提供する側になっていったという。優秀な助っ人スペンサー、代打本塁打世界記録を打ち立てた高井、本塁打王打点王3回ずつの長池。阪急が強かった裏には飽くなき探求心があったのだ。そりゃ、結果が出るはずだ。

長池は同僚と情報を「シェア」したが高井は長池から見せ合おうと言われても応じなかったという。この辺りは野球太郎のサイトにも書いてあるが、代打から成り上がった高井と4番を張った長池の立場の違いを読み取ることができて面白い。

そして最後はやっぱり野村克也。1軍に定着した頃からメモをつけ始めた。対戦した打者の長所や短所。忘れないよう、その日のうちにノートにまとめていたという(東洋経済オンライン 野村克也「メモを取る習慣が弱者を強者にする」より)。
野村メモ

野村メモ



相手投手のクセもメモしていたが、クセが修正されたらそれも書いたという。この更新作業がやれそうでやれないこと。書きっぱなしにしないところはさすがだ。
弱者の流儀: 野村克也31の考え

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野村克也の観察眼もすさまじい。サインを出された時の投手のうなずき方や選手の性格までメモしたという。そう、優れたメモは優れた観察眼とセットなのだ。
いかがだろうか。結果を出す人は探求心があり、観察眼に優れ、時に周りを巻き込み、メモの中身をアップデートする。メモを使い倒しているのだ。

メモから得た対応策を実行する力も欠かせないのだが、まずはレベルアップのヒントを蓄積するためにこまめにメモを取りたいものだ。今はちょっとした思い付きや気付きに過ぎなくても、いつか「あの時のメモが……」となる可能性はある。

前田裕二さんの言うように「勝負は、書くか書かないか」。人生と真剣に向き合うためにも、メモを上手に活用してみよう。
メモの魔力 The Magic of Memos (NewsPicks Book)

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