黒柴スポーツ新聞

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ワンポイントリリーフの絶滅を防げ~永射、遠山、森福、嘉弥真……個性を発揮してこそ

ワンポイントリリーフ。打者1人~数人を討ち取るために投入される、ぜいたくな切り札である。投手の分業が確立された現代野球で、欠かせないポジションになっているが、アメリカではアクシデントがない限り、登板した投手は打者3人を相手にせよという改革案が浮上しているという。


 
アメリカで実施され、日本もそれにならえば野球の流れは大きく変わるに違いない。球界に全く影響力はないのだが、黒柴スポーツ新聞は打者3人しばりに反対の論陣を張る。 
ワンポイントリリーフは、何人かだけ相手にするから楽かと思えば大違い。成功したらお手柄だが、失敗してチームが敗れでもしたらその責めを一身に背負わねばならない。むしろ成功して当たり前くらいに思われている。ワンポイントに限らずリリーフを高く評価してあげてほしい理由はこれに尽きる。  
アメリカで打者3人しばりが浮上した背景には、試合時間の長さがある。これは日本も同じだろう。確かに試合が長くなっているし、その要因が投手交代にあるのも事実だ。
 
試合結果を報じる新聞業界も影響を受けている。試合が長引くということは、試合終了から、紙面を組み上げて紙面データを印刷工場に送信するまでの時間が短くなるということだ。有能な編集者なら試合終了までに見出しやレイアウトを何パターンもシミュレーションしておけよという話かもしれないが、それこそワンポイントリリーフの成功、失敗で試合結果は大きく変わりかねない。ドラマチックな分、紙面的には盛り上がるのだろうけれど。
中継ぎ投手 ---荒れたマウンドのエースたち

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だが新聞業界の立場で反対しているわけではない。ワンポイントリリーフには試合を盛り上げる貴重な役割があるから、それを大事にしてほしいのだ。
 
ワンポイントリリーフで名を馳せた1人、遠山奨志(阪神~ロッテ~阪神)。この球歴が物語るように、ドラフト1位で入団した遠山はトレードを経て古巣で輝けるまで、人知れぬ苦労があったことだろう。阪神復帰後は野村克也監督のもと、対松井秀喜のワンポイントリリーフとして起用され結果を残した。
 
そう、ワンポイントリリーフにはドラマがあるのだ。対戦する打者にネームバリューがあればあるほど、逆に登板する投手が「大丈夫だろうけど、頑張ってくれ」的な投手であればあるほど盛り上がる。
 
打者3人との対戦と言えば、かつて森福允彦が2011年、中日との日本シリーズで見せた「森福の11球」がある。中日2勝、ソフトバンク1勝で迎えた第4戦。1ー2とリードされながらも中日は6回に無死満塁の大チャンスを迎えた。ソフトバンクはホールトンに代えて森福を投入した。
森福允彦メッセージBOOK -気持ちで勝つ! -

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森福が対戦したのは一発のある小池正晃平田良介、そして経験豊富な谷繁元信。何せ無死満塁なのだからドラゴンズファンが盛り上がらないはずはなかったのだが、三振、浅いレフトフライ、そしてショートゴロで1点も奪えなかった。試合はそのままソフトバンクが逃げ切り対戦成績を2勝2敗とし、この第4戦は日本一の布石となった。
 
リリーフはこのように無死満塁で投入される場合もあるから、打者3人と相対しても十分見せ場になる。しかし、あの第4戦の中継で山田久志と思われる解説者が言っていたように「いつもいつもうまくはいかない」。毎回、「森福の11球」をやれと言われても無理な話だろう。
 
ワンポイントで出てくるのは、打者との相性が大きい。日本球界での先駆者は西鉄や大洋を率いた三原脩監督。例えば大洋のエース秋山登をある打者の時だけ外野に回し、すぐに再登板させた。監督はきちんと打者との相性を考えていたのだ。それを考慮せず、ただスピードアップのために一律で3人は投げろというのは乱暴だ。
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試合のテンポアップは別の方法で目指せばいい。例えば、打者が打席に入る時の登場曲。確かにエンターテイメント性もあるから全否定はしない。だが、もうちょっと短くてもよいと思う。西武・秋山翔吾の「人にやさしく」の10秒くらいが限度だろう。
 
ちなみにワンポイントリリーフで検索すると、永射保清川栄治杉山賢人藤田宗一らの名前を見つけた。やはり左対左の戦法から起用されるパターンが多いから、投げ方はさまざまだが基本的に左のサイドスローが名ワンポイントリリーフになる。遠山も森福もそうやって人々の記憶に残っている。
 
私が今応援しているワンポイントリリーフはソフトバンクの嘉弥真新也。守護神のサファテ、森唯斗といった剛速球ピッチャーではないが、左のワンポイントとして貴重な戦力だ。
 
そう、ワンポイントリリーフは個性の発揮の舞台なのだ。永射、清川、杉山、藤田に遠山、森福そして嘉弥真。いずれも個性を生かしてプロの世界で輝きを放った。日本ハムで一時代を築いた宮西尚生ソフトバンク中村晃が2018年シーズン終盤に対決したシーンなどは野球バカにはたまらなかった。  
個性派にはぜひ自分らしさを発揮してもらい、コントロール命のいぶし銀を絶滅させないためにも、投手に打者3人と対戦させるルールはナシにしてもらいたい。少なくとも、サシの勝負や「間」が大好きな日本社会ではワンポイントリリーフにまだまだ価値があると思うのだがいかがだろうか。今後のゆくえに注目したい。 
 
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