黒柴スポーツ新聞

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片平晋作で清原和博を描いた山際淳司~「ルーキー」を堪能

ただ片平晋作を「読む」ためだけに買った。山際淳司の「ルーキー」。

ルーキーとは清原和博のことだ。清原和博が日の出の勢いならば、当時すでにベテランの片平晋作は夕陽と言って差し支えない。この対比は素人でも思い付くのだが、さすがに山際淳司片平晋作を単なる夕陽には描かない。

ルーキー (角川文庫)

ルーキー (角川文庫)

文庫本(平成8年のもの)では206ページに出てくる片平晋作のくだりは「トレード」というタイトルが付けられている。南海から西武へ。西武から横浜大洋へ。二度目のトレードの頃の話だ。

同じトレードではあるが片平晋作は一度目と二度目は違うととらえている。この辺りが味がある。それを書けるのが山際淳司でもある。また、片平晋作を通じて初期の西武ライオンズの本質を描いている辺りも秀逸。

今や競うように速報が出されていて、勝った負けたは誰でも発信ができる時代。であるからこそ余計に、心模様だとか独り言を映像化できる書き手は貴重だ。そこは目指していきたいと思う。

書き切る力と、感度が必要だ。

片平晋作清原和博の才能をさらさらと話していた。リアルタイムで清原和博を見た人ならそうそうと言うような話。打撃指導みたいな、決してテクニカルな話ではないのだが、清原和博のすごさがうかがえる。この辺りが山際淳司の真骨頂に思える。

それにしてもパラパラと本をめくっただけでも、山田久志、西川佳明、石田文樹、藤原安弘、藤本修二、松山秀明などなと、黒柴スポーツ新聞の読者にはたまらない名前がわんさか出てくる。清原和博が強烈な光を放つから周りが影になってしまうのだろうが、影をもって清原和博というまばゆい光の輪郭を描く手法にはうならされる。ウイスキーをなめるように、もしくは和菓子を上品に食べるように、少しずつ「ルーキー」を楽しもうと思う。この本の中の清原和博であれば、受け入れられるから。

あらためて、好打者・片平晋作さんのご冥福をお祈りします。

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