黒柴スポーツ新聞

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名脇役・山崎裕之の2000安打が語る「出続ける」尊さ~派手でなくとも、ヒーローでなくともいい

2000安打射程圏内の選手が騒がしくなってきた。5月19日のニュースウォッチ9のスポーツコーナーで、気になっていた情報をゲットした。

 

「同一シーズンで最も多く2000安打達成者が出たのは何人で、いつ?」

 

答えは1983年の4人。

藤田平

衣笠祥雄

福本豊

山崎裕之

 

今回は山崎裕之に注目する。

山崎裕之―キィ・マンへの道 (名球会comics)

山崎裕之―キィ・マンへの道 (名球会comics)

 

 山崎裕之は上尾高校出身。東京・ロッテを経て西武で活躍した。上の野球カード裏の情報によれば、1963年度高校野球でナンバー1の遊撃手であり、激しい争奪戦が繰り広げられたという。あくまでウワサではあるが史上初の「契約金5000万円」という話さえあったそうだ。

 

現代において契約金5000万円の高卒選手もいるが、時代が違う。山崎裕之のプロ初年度は1965年度。昭和40年前後の契約金5000万円と言えば相当の大金だ。ちなみに黒柴スポーツ新聞編集局長が初めて買ったプロ野球選手名鑑(1985年版)の上川誠二のページには「一流選手である2000万円プレーヤーに仲間入り」的な文章があったと記憶している。現代では8000万円から1億円プレーヤーが各球団のスター級選手だから、単純に4倍の価値と見込むと、山崎裕之の契約金が5000万円だとしたら2億円クラスの価値になる。

 

以前、何の実績もない高卒のドラフト1位選手に1億円も契約金がいるのかと問う記事を書いた。山崎裕之はドラフト制度以前の入団だが球団としてもばく大な投資であった。が、結論から言えば山崎裕之は実働20年、2000安打を達成した。東京・ロッテ在籍は1965年から1978年までの14シーズンだが、レギュラーを確保するまでに要した最初の3年と、1973年を除いて毎年100安打以上打っていた。まさに計算できる選手であり、東京・ロッテは投資額を回収できたと言ってよいだろう。

tf-zan96baian-m-stones14.hatenablog.com

 そう、山崎裕之は派手さはないものの計算できる選手だった。こういう人が職場にいると周りはとても楽だ。安定感があるので安心感がある。

 

同時期に2000安打を達成した顔ぶれをもう一度書く。その上で獲得主要タイトルを加筆してみよう。

藤田平首位打者1回)

衣笠祥雄打点王1回、盗塁王1回)

福本豊盗塁王13回)

山崎裕之(なし)

 

なし、と書いたが山崎裕之ベストナインを5回、ダイヤモンドグラブ賞を3回とっている。藤田平ベストナインを7回、ダイヤモンドグラブ賞を3回とっているから似ているように思うが、打率は名球会ホームページによると、藤田平が3割を4回記録しているのに対し、山崎裕之は1回のみだ。

 

山際淳司の「ダグアウトの25人」に山崎裕之が出てくるがそこにはこう書かれている。

「打率は常に2割台だがアップ・ダウンが少ないのも山崎の特徴だ」

ダグアウトの25人

ダグアウトの25人

 

 ここで本の紹介をしておく。もし山崎裕之のような味わいのある選手が好きな方はこの本、「買い」だ。「25人」の顔ぶれを見たら絶対買いたくなる。黒柴スポーツ新聞を「定期購読」されている方には本当におすすめだ。

【登場人物】高橋一三野村収鈴木康二朗山本功児太田幸司、辻恭彦、松岡弘森繁和小川亨有藤道世山森雅文達川光男池田親興、D・レーシッチ、河埜敬幸、西田真二、淡口憲治杉浦享、キム・アレン、田尾安志二村忠美山崎裕之川口和久水上善雄小川邦和

 

どうですか? ほしくなったでしょう。

 

「長くレギュラーとしてやってこれたことに誇りを持っている」

 

「ダグアウトの25人」の中にあった、山崎裕之の言葉だ。山崎裕之は打撃タイトルとは無縁だったが「レギュラー」だった。2017年、2000安打を達成しようとしている選手の一人の内川聖一について、解説者の多村仁志がこう評していた。「出続けているのがすごい」。そう、そうなのだ。毎年若くて力も期待感もあるフレッシュな面々が入ってくるプロの世界において、コンスタントに出続け結果を残すことがいかに大変なことか。

 

「長い間ユニフォームを着つづけることで、『2000本安打』という大台に到達できる。派手でなくてもいい。ヒーローとして持ち上げられなくとも、そこまでやることができるのだということを、彼は身をもって示しているのだろう」

 

「ダグアウトの25人」で書かれていた、山際淳司による山崎裕之の評価だ。山際淳司山崎裕之のことを「脇役」と書ききっているがその脇役にも確実にスポットライトが当たるのも、2000安打の素晴らしさだ。

 

脇役はどういう状況で引退するのか。その答えはぜひ「ダグアウトの25人」を読んで、かみしめていただきたい。

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