黒柴スポーツ新聞

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どうせ遠回りするのなら~阪神・藤浪晋太郎692日ぶり勝利

阪神にようやく得点が記録された。しかも藤浪の内野安打で。実に38イニングぶりの得点だった。そのトンネルも長かっただろうが、藤浪晋太郎はそれよりはるかに長いトンネルを脱した。692日ぶりの勝利。その長さ、苦しさは、体験した者にしか分かるまい。

大阪桐蔭高校時代には甲子園春夏連覇を達成。阪神タイガースにドラフト1位で入団し、デビュー年から3年連続2桁勝利。年俸は2013年1500万円だったが2019年には1億7000万円になった。ところが制球難に陥り2016年ごろから成績は下降線をたどった。2019年度はついに0勝。同年代のスター大谷翔平が海を渡り二刀流に挑戦するまでになったのとはずいぶん差ができてしまった。

藤浪晋太郎―阪神タイガース (スポーツアルバム No. 46)
 

 

もう藤浪にはトレード、環境を変えるしか手はないんじゃないか?と余計なお世話を考えていたのだが、どうにか藤浪は戻ってきた。コロナ感染した時はもはやこれまでかとも思ったのだが、とにかく勝ててよかった。今の藤浪には勝ち星が必要だったのだから。久々の勝利とはいえ7回4失点。次は内容を伴う勝ちになればいいなと思う。

692日ぶり勝利を報じる記事にはこんなくだりがあった。「人の痛みが分かる。誰かの失敗にどうこう思わなくなった」。順風満帆だったら気付かなかっただろう人の痛み。それは遠回りの副産物だった。普通のコラムなら遠回りもいいよね的な締めに入るのだが、そんなのは気休めだと思う。遠回りしたら時間も労力もお金も掛かる。それよりはなるべく最短ルートが望ましい。人生は有限なのだから。じゃあ遠回りは悪なのかと言うと、それも違う。言いたいのは藤浪のように、何かしらを得られたならばその遠回りを少しは肯定できるということ。そう思えるようにジタバタすることが大事なんだと思う。自分ではどうにもできないことはいちいち悩まない、という考え方もある。しかし私はできる限り太刀打ちしたいと考える。自分の人生の主人公は自分なのだから、自分の道は自分で切り開きたい。私は阪神ファンでもないのだが、どうにかこうにか勝利を手に入れた藤浪の姿に、ちょっと勇気付けられている。


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