黒柴スポーツ新聞

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結果が出なかった翌日をどう過ごすか~ソフトバンク上林9回同点弾、椎野はリベンジ登板で3勝目

結果が出なかった時、そしてミスをした時はその次の機会が大切だ。ソフトバンクにとって7月8日の西武戦は大事な一戦。前日のオリックス戦は松本裕樹が好投しながらも8回に捕まり、リリーフ陣も打たれて一挙5失点。手痛い逆転負けで工藤政権初の10連勝を逃したばかりだったのだ。そんな中、特に二人の選手が結果を出した。上林誠知と椎野新だ。

 

オリックス戦で上林が送りバントを命じられたシーンがあった。二塁には内川聖一。次打者は甲斐拓也。甲斐は今シーズン、打撃が堅調だ。とはいえ上林が送って甲斐に託すことは昨シーズンでは選択肢になりにくく、2019年上林がいかに不調であるかを物語っているように思えた。

 

すると上林がバントをファウルにした。「しっかりやれ!」。そんな野次が飛んだ。「打率が1割台だもんな」。バントくらいしっかりやれってことだよな。私は内野席で見ていたのだが、そんなことをしゃべっている声も聞こえた。長打を期待されていた昨シーズンとは明らかに上林の立ち位置が変わってしまった。だが上林にとってはまずはこの送りバントを決めることが大事だ。上林は無事に内川聖一を三塁に進めることができ、続く甲斐が犠牲フライを放ってソフトバンクは追加点を奪うことができた。

 

得点に貢献できたのだから上林は下を向く必要はないのだが、結局ヒットを打つことはできなかった。もともと強いリストを生かしてホームランを打てるバッターではあるが妙に手打ちのバッティングに見えるというか、腰の入ったスイングには見えない。結果が出ていないから余計に自信なさげなバッティングに見えてしまっている。上林は重症だ、しっかり自分のバッティングができるようになってもらいたいと思っていた。

 

そうしたら上林は翌日の西武戦で2発のホームランを含む4安打の固め打ち。特に2本目は9回裏の同点ホームランだった。ソフトバンクは一時5-0とリードしながらも逆転されていただけに貴重な同点打となった。前日手痛い逆転負けを喫しているだけにもしこの日も敗れていたら相当のダメージがあったが、上林の一発でソフトバンクは甦った。

 

延長戦ではお互い得点できず、12回の攻防に。ソフトバンクはマウンドに椎野を送った。マレーロに走者一掃の決勝タイムリーを浴びた翌日の登板。工藤監督が椎野をあえて送り込んだというよりは、この日は野手も含めてモイネロ以外全員出るような総力戦だったから、一戦力として起用されたのだろう。

 

とにかく、昨日の今日だから椎野は何とか抑えたい。しかし四球でランナーを背負ってしまった。ラジオ解説は薮田安彦だったが、切り替えの大切さを説いていた。結果よりも自分のピッチングをすることが大切である、と。原点に立ち返り、自分のボールをキャッチャーミット目掛けて投げ込むことが大切なんだ、と。シンプルに切り替え方がよいという。

 

プロ野球選手も社会人も、一晩寝たらまた勝負の1日だ。引きずっている暇はない。特に椎野はいま中継ぎの一角。早く切り替えないといけない。ここも厳しい場面ではあるが、抑えることによって信頼が得られ、勝ちゲームでの登板が増えていくと薮田。それは社会人も全く同じである。椎野は二塁までランナーを進められたが何とか後続を断ち切った。そしてチームは12回裏、代打栗原の犠牲フライでサヨナラ勝ちした。椎野には3勝目が転がり込んだが、前日の登板も含めて忘れられない勝ちになったと思う。

 

ソフトバンクにとっても大きな1勝。首位にいて貯金もたくさんあるとはいえ連日逆転負けを喫していたらズルズル行きかねない。追い付かれ、逆転されたのは反省材料だがサヨナラ勝ちで沈痛なムードも一掃できたと思う。2019年の鍵となる試合の一つだった。結果が出なかった時にどう対処するか。個人で言えば椎野のようにすぐ切り替えてやるべきことをシンプルにやる。あるいはホームランを放った上林のように持ち味を取り戻すことが大切だ。そしてチームとしては結果が何より大切……。そんなことがあらためてよく分かった熱戦だった。


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