やれることはやっておく~上林が劇的逆転ホームラン、高橋純平はうれしいプロ初勝利
「(柳田)三塁塁審が(インプレーであるという意味の)セーフとしていたので、自分で(本塁打と)判断せずに、やれることはやっておいてよかった」
6月29日配信の日刊スポーツ「ソフトバンク 上林V弾 骨折影響で手に違和感も工夫」の中で、冒頭の村松コーチの言葉が印象的だった。
やれることはやっておく。大切だ。劇的な上林誠知の逆転2ランはランニングホームランとされた。個人的にはスタンドインしたように見えたが三塁塁審はインプレーのジェスチャー。村松コーチは腕をぐるぐる回し、上林はスピードを緩めず本塁に突入した。
スタンドインしたかどうかに関係なくソフトバンクは9回二死の土壇場で逆転したからどっちでもいいじゃんと思うかもしれないが、仮に戻ってきた打球を日本ハムの野手が上手にフォローして素早くバックホームできていたら……打球の戻り具合からして迅速なバックホームは無理だったが、ホームランのダイヤモンド1周はスピードを緩めるもの。最後まで気を緩めなかった村松コーチ&上林の隠れたファインプレーと書いておきたい。
やれることはやっておく。それをやったもう1人は内川聖一。
「最後の打者にならないことだけを考えた。上林も調子が上がってきていたし、つなげば何か起きると思っていた」(日刊スポーツ「内川聖一 『つなげば何か起きると』上林V弾アシスト」より)
土壇場でライト前に運べる内川聖一はさすが。上林の逆転ホームランをお膳立てした。テレビ中継解説の岩本勉は「(内川の一打が)効いてるわ~」と誉めちぎっていた。4番を務めていた頃なら一発、同点ホームランを狙っていたかもしれないが内川が意識したのは最後のバッターにならないこと。これまた冷静な判断でチームを勝利に導いた。
上林の劇的なホームランに目がいくのだが、うるっときたのはプロ初勝利のウイニングボールを手にした高橋純平が工藤公康監督とツーショット写真を撮られていた場面。よかったね、という感じで工藤監督が高橋純平の頭をポンポンと軽くタッチしていたのが印象的だった。
ドラフトの超目玉とされ競合の末ソフトバンク入りしながら過去3シーズンは1軍でわずか1試合。戦力外になる恐れも感じていただろう。2019年はソフトバンクが投手陣をフル回転させており、高橋純平はまだまだ勝ちパターンでの起用ではないが登板機会を得られている。
この日もランナーを背負いながらも踏ん張って追加点を許さなかった。劣勢の中でもやれることはやる。日本ハムにダメ押しさせなかったことも逆転勝ちにつながった。プロ初勝利は決して棚ぼたなんかじゃない。やれることをやったからこそ野球の神様が高橋純平にごほうびをあげたのだ。そう思いたい。高橋純平はウイニングボールを亡き愛犬(柴犬のメス「ゆう」)に捧げるという。黒柴を飼っている黒柴スポーツ新聞編集局長は妙に親しみを感じてしまうが、いいお話である。
勝っている時でも、負けている時でも、やれることはやっておく。結果が出れば最高だが、結果を伴わなくてもやれることをやっていれば諦めはつく。ソフトバンクがなぜ強いのか、さまざまな見立てがあるが勝利への執念も付け加えておきたい。そんな劇的勝利だった。
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逆に土壇場でうっちゃられた日本ハムは5連敗と対照的だ。ソフトバンクとの差は何なのかと思うが、リーグ戦再開の日は岩本勉に、ランナーの進塁を何とか食い止めようとしない返球を指摘されていたし、2戦目のラジオ解説の大宮龍男には「この当たりならダブルプレーとらないと。自分がキャッチャーなら(喝を入れるため)蹴りを入れている!」と言われたりしていた。やれることはやっておく。それを意識するかしないかで結果は変わってくる。私も心に留めておこう。