黒柴スポーツ新聞

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落合監督は血の涙を出している~関根潤三さんの優しい解説に学ぶ

関根潤三さんが亡くなった。穏やかな語り口調の解説は、決して選手をくささないことを含めて聴き心地がよかった。解説者の鑑だと思う。そんな関根潤三さんがあの落合采配、完全試合山井大介降板からの岩瀬仁紀登板をリアルタイムで解説していたことを知った。関根さんはあの采配、決断をどう語ったのか。

誰もが山井大介の史上初日本シリーズ完全試合を望んでいたが、落合博満監督は9回、守護神・岩瀬仁紀へのリレーを決断した。このつらい決断をしなければならないのではないか。関根さんは試合途中からそう恐れていたという。そして、落合監督は決断した。そして、関根さんはその心中をこう解説した。

「監督も血の涙を出している」

采配

采配

 

こんな詩的な表現、なかなか昨今の野球中継ではお耳にかかれまい。そしてこうも思う。本当にそのような場面に遭遇した人でなければ、当事者の心境など分かりはしないのだ、と。関根さんは大洋とヤクルトで通算6シーズン監督を務めた。決して華々しい結果は残せなかったけれど、目の前の1勝を取るか、若手の成長を促すか、ピッチャー交代のタイミング一つとっても難しい決断はずいぶんあったことだろう。あの完全試合リレーのさなか、スタジアムはほとんどの観客が山井大介寄りの心境で、なぜ代えるのかと憤ったファンや視聴者もずいぶんいたに違いない(かくいう私も山井大介完全試合希望者だった)。そんな中、関根さんは落合采配を非情だとは言わず、監督としてこんなつらいことはない、と慮った。本当のつらさなんて、当事者や経験者にしか分からないのだ。

きょう書きたかったのはそういうことなのだが、もう一つ付け足したい。それは、本当のしんどさは当事者や経験者にしか分からないのだけれども、それを想像しようとする姿勢は大切で、そういう姿勢はピンチの人を勇気づけるということだ。私はいつも親友に助けてもらっている。私も困ったりピンチの人の存在に気付いた時は、つらい心境を想像してみようと思う。


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